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http://www.magazine9.jp/article/osanpo/8712/
『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』
の恐ろしさ
先日(9月27日)、僕も協力している市民ネットテレビ「デモクラTV」の中の「内田誠の デモくらジオ」という番組に、なぜか呼ばれてゲスト出演してしまった。ま、枯れ木も山の賑わい…といったところ。
この日は特別公開生放送ということで、千葉県浦安市のとあるスタジオでの収録。
ジャズバンド「サード・コースト・ジャズ・オーケストラ」(千葉県船橋市を活動拠点とするフルバンド)のうちの精鋭7人による生演奏つき。これがとても素晴らしくて心地よい。しかも「謎の美女・戸丸彰子さん」も出演、さらにはマエキタミヤコさんまで乱入するという、豪華で楽しい放送となった。20人ほどの観客の方たちも、それなりに満足してお帰りになったようだった。
その際、内田誠さんと僕の掛け合いの中で、やっぱり話題は原発事故のことになった。
興味深いことに、内田さんと僕が同時に読んでいた本があった。『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(日野行介、岩波新書、760円+税)という本だ。これはタイトルどおり、福島県における県民の健康調査問題を扱った内容で、著者は毎日新聞記者。
僕のささやかな趣味のひとつが、ミステリ小説を読むことで、最近はすっかり「北欧ミステリ」に凝っている。でも、ここでそれについて語ろうというのではない。そんなミステリ小説よりも、この『県民健康管理調査の闇』のほうがずーっと怖いと言いたいのだ。しかもこれは小説ではない。現在も進行中の「恐ろしい闇」を追いかけたノンフィクション、事実の報告である。
とにかく、隠す、捏造する、偽造する、ウソをつく、責任者は逃げる、秘密会を行う、県の役人たちが秘密会の設定をする、県民には事実を知らせないように委員たちが口裏を合わせる、…という事例が、この本では、いやというほど明らかにされる。
放送中に内田さんと僕は、この本が明かした「闇」について、ほんの少しだけ話をした。すると、放送が終わった後、ひとりの女性が僕に話しかけてこられた。
「あの、私、福島からの疎開者なんです。先ほどのお話、ほんとうに身にしみてお聞きしました。私も同じ経験をしたんです」と、彼女は語り始めた。
「私たち家族は、南相馬市○○(かなり放射線量の高いといわれる地区)に住んでいたんです。そこで、知らないうちに被曝をしたと思うんです。だから、県民健康調査には積極的に応じました。特に子どものことが心配で仕方なかったからです。
ところが、その結果を聞きにいっても、県は絶対に教えてくれない。『大丈夫です』というだけで、何も開示してくれない。『自分の家族を調査しておきながら、なんで結果を知ることができないんですか?』と私は2時間も食い下がったんですよ。
でも、『とにかく心配は要らないから』の一点張りで、どんな結果が出ているのかについては教えてくれません。教えてもらえなければ、よけい心配になるじゃないですか。
『じゃあ、なんのために健康調査をしたんですか』と訊いても、『みなさんに安心していただくためです』と答える。そんな答えで安心できる人なんています? ひどい話です」
この方は、本気で怒っていた。当たり前だと、僕も思う。
福島県当局は、「この調査は県民の方たちに安心していただくため」と繰り返す。だが、調査結果の詳細は県民には知らせない。安心したいために我が子の調査に応じた親御さんたちは、詳しい結果を知らされないことで、よけいに不安に陥れられる。僕に話しかけてこられた女性の不安は、福島県民すべての不安だと思う。
ところが、その県民の不安をどうやってごまかすか、ということが「秘密会」で話し合われていたのだ。調査結果の検討会の前に、「検討会で、委員たちが各々どういう発言をするか」というシナリオが綿密に作られていた。それをすり合わせるのが「秘密会」だった。
この検討会を主導したのが、あの「ニコニコ笑っていれば…」発言ですっかり有名になってしまった山下俊一福島県立医大副学長と、同じ県立医大の鈴木眞一教授だった。
そして、前述の疎開女性の訴えとそっくり同じことが、彼らによって行われたというのだ。少し長くなるが、『県民健康管理調査…』から引用させてもらおう。
福島県川俣町から山形県に自主避難している母親は二〇一一年一一月、町の施設で当時一七歳の長女が一次検査を受けた。心配になり付き添ったが、県立医大の職員からはあらかじめ「付き添っても良いが、何も話はしません」との説明を受けた。
検査は二分ほどで終わり、「何も異常がなかったのだろう」と思っていたが、三ヵ月後に届いた判定結果は「A2」だった。事故から半年近く経ってから山形に避難したこともあり、母親は「影響があったのではないか」と心配し、すぐに県立医大に電話したが、対応した職員は「A2判定ですから異常がなかったということです」と繰り返すだけで、長女の状態に関する具体的な説明はなかった。
結局、福島県内で甲状腺を検査してくれる医療機関を探し出し、長女に再び検査を受けさせたという。そこでは「しこりがある。四ヵ月後見せに来てほしい」と診断された。母親は「外で部活をしていたので心配で仕方なかった」と振り返る。
さらに、周囲の母親たちに相談したところ、検査結果を記録したレポートと超音波検査の画像が残っているはずだと知った。しかし県立医大から届いた通知や説明資料には入手の方法が一切書かれておらず、個人情報保護条例に基づき本人情報の開示を請求する方法に行き着いた。(略)
その後、親子確認のために戸籍抄本や運転免許証のコピーを提出するよう求められ、七月中旬に県立医大から開示された。渡されたのはコピー用紙に印刷されて不鮮明な六枚の画像とレポートだった。「改竄の恐れがある」として画像のデジタルデータは提供してもらえなかった。
母親は「煩雑な手続きを取らせたうえにこの有様はひどい」と憤った。「この馬鹿げた話を知ってほしいと思った」と怒りが収まらない。(P131〜133)
僕が聞いた女性からの話とそっくりではないか。自分の娘の情報を入手するだけで、これほどの努力をしなければならない。しかもその努力の結果が、不鮮明なコピーとレポートだけ。
これが「県民の安心のために」を謳った「健康“管理”調査」の実態だった。行政に都合のいいように県民を「管理」するための検査・調査でしかなかったといわれても仕方ない。
さらにひどい話は続く。
この福島県立医大の山下俊一副学長(当時)と鈴木眞一教授が連名で、2012年1月に、日本甲状腺学界など7学会に1通の要望書を出した。これが、まるで「隠蔽」を指示したような内容だったのだ。前掲書によれば、こういうことだ。
要望書は、子どもが「A2」と判定された保護者からの相談を念頭に、「次回の検査までに自覚症状等が出ない限り追加検査は必要ないことを、十分にご説明いただきたい」と求める内容だ。その文面を素直に受け取れば、エコー検査を改めて受けたいと求めてきた場合は、検査は必要ないと断ってほしいということだろう。七学会の中には山下副学長が当時理事長を務めていた日本甲状腺学会も入っており、その影響力が十分に大きいことが容易に想像できる。
この要望書が明らかになると、「セカンドオピニオンを封じる気か」「診察拒否を求めるのか」などの強い批判が起きた。県立医大は一二年一〇月中旬になって、「他の医療機関での検査を否定するものではない」と釈明する文書を出すとともに、今度はホームページ上で公表した。
火消しを図るとともに、実質的に要望書を撤回する形になった。(P133〜134)
ここで、「A2」などについて補足しておく。
1次検査は首に超音波を当てて嚢胞(のうほう=液体が溜まった袋状のもの)や結節(しこり)を調べ、その大きさによって、A1、A2、B、Cの4段階に分類する。A1は何もない、A2は20ミリ以下の嚢胞や5.1ミリ以下のしこり、Bは20.1ミリ以上の嚢胞、5.1ミリ以上のしこり、Cは甲状腺の状態等から判断して直ちに2次検査を要するもの、とされている。B、C判定は2次検査を行い、超音波検査や血液検査、必要な場合は細胞診などのより詳細な検査で悪性がんの有無を確かめる(前掲書より)。
親が子どもの健康を願い、たとえ「A2」判定でも、その詳しい状態を知りたいと思うのは当然だろう。
だが、なぜか検討委員会も県当局も、その親の願いを聞こうとはしない。著者・日野記者の言うように、まさに「闇」なのである。その「闇」を知るために、ぜひこの本を読んでほしい。
なぜそこまでして、県民健康管理調査検討会が結果を隠したがるのだろう。行政が、住民の健康より上位に置いているものとは、いったい何なのだろう。
僕にはそれが分からない…。
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