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福島第1原発の汚染水漏れがあったタンク近くで説明を受ける防護服姿の安倍晋三首相(右から2人目)=福島県大熊町で9月19日(代表撮影)
止まらない放射性汚染水の流出 安倍首相が「国際公約」政府が対策の前面に[原発事故]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37209
2013年10月13日(日)毎日フォーラム
東京電力福島第1原発(福島県)の放射性汚染水漏れが止まらない。東日本大震災から2年半が過ぎた今も、事故が収束したとは言えない状況だ。事故の対応責任は東電にあるとの立場をとってきた政府も重い腰を上げ、対策への国費投入を決めた。世界的に懸念が広がる中、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席した安倍晋三首相は「状況はコントロールされている」と演説し、2020年夏季五輪・パラリンピックの東京開催決定にこぎつけた。結果として、汚染水対策は「国際公約」となったが、問題解決の道筋は不透明なままだ。
東電によると、福島第1原発の汚染水は9月10日現在、1〜4号機の建屋に約7万4300トン、敷地内の地上タンクに約34万6000トンの計約42万トンがたまっている。
福島第1原発には津波で大量の海水が浸入した。炉心溶融や水素爆発で原子炉格納容器などが壊れ、原子炉の冷却もできなくなった。消防ポンプ車などで外部から原子炉に水を注いだが、冷却水は格納容器の損傷部分などからタービン建屋地下などに広がった。
東電は11年6月、放射性汚染水からセシウムや塩分を除去し、原子炉に戻す「循環注水冷却システム」を導入したが、その後も汚染水は増え続けた。1日1000トンもの地下水が敷地山側から1〜4号機周辺に流れ込んでいるからだ。
経済産業省の試算では、1000トンのうち400トンが原子炉建屋に流入し、溶け落ちた核燃料と接触して汚染水となっている。残り600トンのうち300トンも、放射性物質に触れて汚染された後、海に流出しているとみられる。
最初に汚染水漏れが注目を集めたのは今年4月。地上タンクと並んで主要な貯蔵場所だった地下貯水槽(7基で容量は計5万8000トン)から汚染水が漏れたことが分かった。東電は参院選投開票日翌日の7月22日、汚染水が海へ流出しているとの発表に至る。発表を意図的に遅らせたのではないかという疑惑も持ち上がった。そして、8月20日には300トンもの高濃度汚染水が地上タンクから漏れていたことが発覚した。
■東電のその場しのぎが元凶
汚染水漏れの連鎖の背景には、東電のその場しのぎの対応がある。
地下貯水槽は、タンクに比べ大量の汚染水をためられることから採用された。だが、穴を掘り、3層の防水シートで覆った簡便な構造で、結局はタンクへの移送を強いられる結果を招いた。
漏れを起こしたタンクは鋼製の板をボルトでつなぎ合わせたフランジ式と呼ばれるタイプだ。継ぎ目から水が漏れやすいことは最初から分かっていたが、組み立て期間が短く、コストも下げられることから採用された。大小約1000基あるタンクのうち約300基をフランジ式が占めている。
海外メディアも事故後最大の危機として大きく取り上げ始め、汚染水に対する懸念が世界的に拡大する。東京の五輪招致に影響しかねない状況になってしまった。
五輪開催地を決めるIOC総会を目前に控えた9月3日、政府は原子力災害対策本部会議(本部長・安倍首相)を開催、福島第1原発の汚染水漏れ対策に政府として主体的に取り組むことを明記した「基本方針」を了承した。地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ凍土遮水壁(地下ダム)の建設や汚染水処理装置の増設・改良計画に国費470億円を投入することが柱になっている。安倍首相は「政府が前面に立って解決に当たる」と決意を述べた。
凍土遮水壁は延べ1・4キロで、1〜4号機の原子炉建屋を囲むように設置する。凍結管を1メートル間隔で地中に打ち込んで冷却材を循環させ、氷の壁を作る。東電は15年度の完成を目指していたが、計画を1年早めることにした。
このほか、基本方針には敷地山側に掘った井戸から、汚染前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」や関係閣僚会議の設置なども盛り込まれた。
首相はこれらの対策を携えてブエノスアイレスに飛んだ。
招致演説では「状況はコントロールされている」と訴え、その後の質疑応答で「抜本解決に向けたプログラムを決定し、着手している。汚染水の影響は第1原発の港湾内で完全にブロックされている」と強調した。多くのIOC委員が首相発言を好感したという。
■「汚染水ブロック」に疑問視
だが、被災地などからは首相発言を疑問視する声が相次いだ。
防波堤に囲まれた港湾内(0・3平方キロ)には、汚染水の拡散を防ぐ水中カーテン(シルトフェンス)が設置されているものの、水に似た性質を持つ放射性物質のトリチウムはフェンスを通過する。港湾口や沖合の海水の放射性物質濃度は検出限界値を下回るが、「海水で汚染水が希釈されただけ」と指摘する専門家もいる。
IOC総会前にまとめられた基本方針にも、疑問符が付く。
凍土遮水壁は対策の切り札になり得る。しかし、大規模な工事は世界でも前例がない。
地下水バイパスも汚染水の削減効果が期待できるが、タンクから漏れ出た高濃度汚染水が建屋に流入前の地下水に達している恐れが出てきた。汚染が判明すれば、計画見直しが迫られるだろう。
東電はセシウムを除去した汚染水を多核種除去装置「ALPS」で再度浄化する計画だが、試運転段階のトラブルで停止中だ。稼働しても、トリチウムは除去できない。政府が基本方針で増設・改良を盛り込んだ浄化装置も同じだ。
東電は浄化水を希釈して海に放出したい考えだが、トリチウムを含むだけに地下水バイパス以上に強い反対が出るのは間違いない。
安倍首相は帰国後の9月19日、第1原発を視察し、同じ敷地内にある5、6号機の廃炉を東電に要請した。「事故対処に集中してもらうためにも」というが、5、6号機が再稼働できるとは東電も考えていなかったはずだ。
視察に立ち会った東電の広瀬直己社長は年内に取り扱いを判断すると答え、タンクに貯蔵している汚染水の浄化を14年度中に完了する方針を明らかにした。
IOC総会での「国際公約」の実現に向けた第一歩となるのか。東京五輪開催まで7年。日本の責任と信用が問われている。
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