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【 度重なる失態、発生が続くトラブル、深まる一方の福島第一原発の実態に対する懸念 】《前篇》
http://kobajun.chips.jp/?p=13729
2013年9月10日 星の金貨プロジェクト
原子力ムラ『標準仕様』の事故処理作業を続け、取り返しのつかないところまで追いつめられてしまった日本
反故にされ続ける、周辺住民への日本政府の公約
それぞれの段階において東京電力が行った対策は、次々と新たな問題を作り出しただけ
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 9月3日
事故を引き起こした福島第一原発を取り囲むように存在する、農業を基幹産業とする小規模なコミュニティ福島県楢葉町、立ち入り禁止区域内のこの場所では防護マスクにゴム手袋をした人々が、日本政府の約束 – いつの日か83,000人の住民の帰還を可能にするという約束を現実のものとすべく、地面の表土を削り取る懸命の作業を行っています。
けれども雨が降る度、ごつごつした岩肌を伝い、汚染物質を含んだ水が滝のようになって流れこみ、除染を終えたはずの地面に浸み込んでいくのです。
そしてこの場所の近く、相変わらず深刻な状況が続く福島第一原発で、周辺諸国が懸念を深めていく中、これ以上の環境破壊を食い止めるための作業に取り掛かるべく、数千人の作業員と何台ものクレーンが準備態勢を整えようとしていました。
原子炉建屋が破壊された原子炉4号機の核燃料プールから、使用済み核燃料を取り出す作業です。
日本政府は9月3日火曜日、地下水が原子炉建屋の地下に流れ込み高濃度の汚染水が作り出されないようにするため、地中に凍土壁を作り上げる対策に約500億円の政府資金を投入することを公表しました。
そして日本政府が東京電力に代わり、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の管理監督を行うことになりました。
2011年、3基の原子炉がメルトダウンした福島第一原子力発電所の事故は、チェルノブイリ以来最悪のものであるという評価は、すでに定着しました。
これから始まる取り組みは、その危険性、そして複雑さゆえに、費用的にも高額なものとならざるを得ませんが、これまでいくつものトラブルが繰り返された事により、現在行われている事故収束・廃炉作業がさらに高額なものとなり、時間的にも大きく遅れる事態が避けられなくなってきました。
その結果、原子力発電に関与する複数の政府機関が事故の初期、国民に対して行った『福島第一原発の跡地を元通りにして返す』という約束は反故にされ、大量の汚染水が漏れ出し、それが海洋にまで達する事態となってしまいました。
事故発生からすでに2年半が経つ中、福島第一原発の周辺の環境破壊と海洋汚染には一向に改善の兆しが無く、日本政府と東京電力にはこの問題に対処できるだけの専門知識、そして収束させる能力があるのかどうか、多くの専門家が疑問を抱き始めています。
東京電力は事故の初期、事故を制御下に置くための対策の実施に失敗、日本は原子力発電分野の危機対応能力の弱さを露呈した上、難しい問題については、解決に向けた対策の実施をすべて先送りしたという批判がこれまで相次ぎました。
日本政府が新たに提案した対策も、結局はこれまでの失敗の二の舞になる可能性がある、そうした指摘と批判が繰り返されています。
「明らかに日本は、受け入れ難い状況を認めようとしない姿勢に終止しています。」
福島第一原発の事故を受け昨年組織された、国会事故調査委員会の議長を務めた黒川清医学博士がこのように語りました。
「福島第一原発の敷地内では汚染水が積み上がり、敷地の外では汚染された廃物が積み上がっている、そうした状況が続いています。解決不能の問題はすべて将来に先送りする、巨大な八百長試合が行われているのです。」
福島第一原発の状況は7月に汚染水が海洋に直接漏れ出していることが明らかになってから、急激に悪化して行きました。
8月中旬には東京電力が、人間の体内に入った場合、骨に蓄積しやすい性質を持つ放射性ストロンチウムを含む高濃度の汚染水が、貯蔵タンクから漏れ、海洋に流れ込んだことを公表しました。
メルトダウンにより溶け落ちた核燃料が再び過熱しないよう、3基の原子炉内に毎日絶え間なく水が送り込まれ、その結果大量の汚染水が作り出されている他、地下水が建屋の地下、汚染のひどい場所に流れ込むことによっても汚染水が作り出されていますが、その流れ込みを食い止めるまでには短くて数か月、長ければ数年という時間が必要と考えられています。
それと同時に、汚染された農地や土地の大規模な除染作業の遅れ、そして思わしくない結果が明らかになるにつれ、日本政府の公約の実現能力に対する信頼は徐々に蝕ばまれ、原子力発電に対する市民の信頼は失われていく一方です。
政府当局、そして除染作業が有効だと信じる人々は、問題の巨大さを考えれば、困難が伴うのは当然のことだと語っています。
しかし、一見部分的に見えている様々なトラブルは、実は現在の事故収束・廃炉作業の根本部分が間違っている、その事を証明するものだとする批判が高まる一方です。
そして日本政府が資金を拠出して、直接事故対応にあたるとの発表は、すぐ後に実施される2020年夏のオリンピック開催地を決める投票に合わせ、同委員会の視線を意識して行われた、そう批判する意見もあります。
以下のような批判があります。
日本の原子力産業界、すなわち原子力ムラは、排他的であり、しかも利益をグループ内で独占しようという傾向が強いことで知られていましたが、福島第一原発の事故を起こしたことで一般社会や外部からの批判が一気に高まる可能性がありました。
そこで中央官庁の官僚たちはこれまでもそうしてきたように、この批判をかわし、原子力ムラを守ろうと動いたのです。
その結果が今日まで行われてきた事故収束・廃炉作業であり、事業規模と予算ばかりが膨らんで結果が出ない、悪い意味での『公共事業』に他ならなかったのです。
しかし日本の原子力行政に対する最大の批判は、完全に制御下に置くどころか、結局事故収束・廃炉作業を軌道に乗せることが出来なかった東京電力に、福島第一原発の現場を任せ切ってしまったことに集中しています。
それぞれの段階において東京電力が行った対策は、次々と新たな問題を作り出しただけのようにも見受けられます。
今回の汚染水漏れのトラブルは、430,000トンに及ぶ高濃度汚染水を貯蔵するため急造された、何百というタンクのひとつで発生しました。
この汚染水は一日に400トンのペースで増え続けています。
4日になると、日本の原子力規制委員会は汚染水の貯蔵タンクが並んでいる場所で、放射線量が非常に高くなっている個所がある事を公表しました。
新たな汚染水漏れが原因である可能性があります。
さらには東京電力の事故収束・廃炉作業を監督してきた政府の委員会には、原子力ムラの内部関係者が含まれており、その上原子力発電を推進する立場の経済産業省の茂木大臣が管理する立場にある事に対しても、批判の声が上がっています。
同時に、もしこれまでの事故収束・廃炉作業を、国内の原子力ムラ以外の企業、そして経験のある外国企業にも門戸を広げていれば、事故収束作業を前に進め、その場限りではない、長期に安全を確保できたはずだと指摘しています。
結局は日本政府が直接乗り出さなければならない事態に陥り、茂木大臣はこれまでの状況を見る限り、従来の手法では満足な結果が得られなかったことを認めざるを得ませんでした。
「汚染水問題への対応を東京電力に任せてきたが、結局はモグラ叩きゲームに終わってしまった。」
2日月曜日、記者の質問に対し、茂木大臣がこう返答しました。
〈 後篇に続く 〉
http://www.nytimes.com/2013/09/04/world/asia/errors-cast-doubt-on-japans-cleanup-of-nuclear-accident-site.html?pagewanted=1
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今日から前・後編に分けて、ニューヨークタイムズのマーティン・ファクラー氏の長編の記事をご紹介します。
通常なら3回に分けて掲載するほどの文字量ですが、緊張感が途切れる事の無いよう、2回に分けてご紹介します。
私から付け足すような事は何もありません。
大切な事はすべて語られている、そう思います。
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【 度重なる失態、発生が続くトラブル、深まる一方の福島第一原発の実態に対する懸念 】《後篇》
http://kobajun.chips.jp/?p=13745
2013年9月11日
メルトダウンした核燃料の取り出し、実際には状況不明で、計画すら立てられない
ロボット工学の進歩も追いつかない程複雑な、福島第一原発の事故現場
チェルノブイリで実施された『石棺』を行っても、福島第一原発の汚染拡大は防げない
日本の原子力産業界の印象の悪化、そればかりを恐れる日本の原子力行政
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 9月3日
茂木氏が大臣を務める経済産業省は、福島第一原発の事故収束・廃炉作業を所管しています。
冷却剤を用い、1〜4号機の原子炉建屋の地下を凍結させて防護壁を作り、地下水の流れ込みを防ぐ対策も同省が担当することになります。
しかしこの凍土対策にも批判の声があがっています。
ひとつは広大な地面を凍結させ続けるためには莫大な電力を消費しますが、福島第一原発の施設内には間に合わせの送電システムしか存在せず、これまでもたびたび停電などのトラブルを引き起こしてきました。
もう一点はこの凍土対策は、もともとこれ程の規模で行う事を想定していない技術であり、しかも一時的に用いられる手法だという事です。
その手法を事故収束・廃炉作業に、これから数十年の月日を必要とする福島第一原発の現場に使っても大丈夫なのかどうか、その点の検証はなされていません。
しかし、業界の専門家はこの凍土策は大規模な建設事業で、軟弱な地盤を安定される際、用いられることが多い技術だと主張します。
アメリカではボストンのビッグディッグ・ハイウェイ・プロジェクトの際、実際にこの技術が用いられました。
原子力技術の専門家は、破壊された原子炉の炉心から溶け落ちた核燃料を取り出す、日本政府の長期にわたる計画についても、疑問を呈しています。
この作業が成功すれば、現在起きている汚染の大きな原因のひとつを取り除くことが可能です。
そもそも爆発とメルトダウンが起きた現場から、溶け落ちた核燃料だけを取り出すことが技術的に可能なのかどうか、その点を疑問視している専門家もいます。
原子炉容器には損傷が無かったスリーマイル島の事故の時ですら、リモコン操作で核燃料の核燃料を取り出す作業は、技術的に非常に複雑で気骨の折れる作業だったのです。
その当時と比べれば、ロボット技術は大きな進歩を遂げたかもしれませんが、福島第一原発の事故現場はその発展を凌ぐほどに複雑なものなのです。
スリーマイル島の事故では溶け落ちた核燃料は、ろうそくから溶け落ちたロウのような状態で原子炉容器の底に溜まっていました。
しかし今回は配管が破裂するなどして、溶けだした核燃料は格納容器の底を突き破り、建物の下の地中にまで到達している可能性がある、複数の専門家がそのように警告しています。
一方で現在福島県沿岸における放射性物質の脅威は、2011年3月の事故発生当時と比較すれば遥かに少ないものでしか無い、現在の危機についてそれ程重大なものではないとの見解を明らかにする科学者もいます。
「現在も汚染水の漏出は続いていますが、その規模は事故発生当時と比較すればそれ程大規模なものではありません。」
福島第一原発の事故発生当初から海洋汚染の問題に取り組んできた、アメリカのウッズホール海洋科学財団のケン.O.ビュッセラー博士がこう語りました。
「ただしその影響は、きわめて長期間に及ぶでしょう。」
今回の汚染水問題で最大のダメージを被ったのは日本政府だったかもしれません。
なぜなら元来政府発表に対する日本国民の信頼は薄かった上、福島第一原発の事故により原子力発電の安全性に関する疑惑も浮上しており、そこへ持ってきて今回の汚染水騒ぎは火に油を注ぐ結果となってしまいました。
こうした観点に立てば、福島第一原発で行われてきた作業は、日本の原子力ムラをそのまま温存するために、日本国民に対し、以下の事を信じ込ませようとしました。
すなわち、
現在のやり方で福島第一原発の事故収束・廃炉を前進させることは可能である
そして現在の体制で、避難・移住を余儀なくされた被災者に対し充分な補償を行うことも可能である
したがって、福島第一原発以外の原子力発電所を廃炉にする必要などは無い
「これこそまさに責任を回避するための巧妙な戦術です。」
法政大学で社会科学を専攻し、2,000名の会員からなる日本学術会議において、復興のための検証作業のリーダーを務める船橋晴俊教授がこう語りました。
「現在生きている人々は、福島第一原発の周辺には一生住むことはできない、そのことを認めてしまったら、ありとあらゆる種類の質問、疑問が殺到することになってしまいます。」
船橋教授や他の専門家などは、他の選択肢、すなわち旧ソビエト連邦がチェルノブイリにおいて採用したコンクリートで原子力発電全体を覆い密閉してしまい、周辺地区を少なくとも4半世紀の間、立ち入り禁止とする方策なども検討する必要があると指摘しています。
日本の当局者は、大量の地下水が原子炉建屋の下に流れ込んでいる状況を考えれば、原子炉をコンクリートで覆ってしまうだけでは、汚染の拡大を防ぐことはできないと語っています。
さらには福島県内の広大な面積の土地を居住、使用ともに不可能にしてしまう事は、狭い国土に多数の人間が暮らす日本においては採用しがたい選択だと語っています。
そして次の点についても懸念を持っているのです。
ソ連が採用した石棺方式を福島で採用すれば、これまでの事故収束・廃炉作業が失敗に終わったことを公式に認めることになり、福島第一原発の事故で原子力発電に対し慎重になっている国民に対し、日本の原子力産業に対する信頼を決定的に失わせ、敵意すら抱かせることになる、と。
「福島第一原発で石棺方式を実施してしまったら、もう誰も他の原子力発電所が稼働している様子など見たく無い、そう考えるようになってしまうでしょう。」
日本政府の原子力規制委員会に関する諮問機関である、原子力委員会委員長の近藤駿介氏がこう語りました。
福島第一原発の状況は一層悪くなっているのではないか?
その事に対する懸念は、避難を強いられた楢葉町の旧住民の人々にとっては隠しようのない事実です。
楢葉町の除染作業は他の市町村よりも進んでおり、2014年度内には完了する予定になっています。
しかし楢葉町当局が7,600人の旧町民に聞き取り調査を行ったところ、福島第一原発が現在のような不安定な状態が続いていることを理由に、期間を拒否する住民がほとんどでした。
「福島第一原発では、3日おきに新たな問題が発生しているように感じられます。」
楢葉町町長の松本幸英氏がこう語りました
楢葉町役場は現在、半径20kmの立ち入り禁止区域のすぐ外側にある、いわき市の大学の会館内に仮住まいしています。
「こうした状態が続けば続くほど、東京電力と日本政府に対し、この町の人々の心はどんどん離れていく一方なのです。」
〈 完 〉
http://www.nytimes.com/2013/09/04/world/asia/errors-cast-doubt-on-japans-cleanup-of-nuclear-accident-site.html?pagewanted=1
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「福島の状況は完全にコントロールされている」
あの『ウソ』を、世界の人々はどう受け止めたでしょうか?
「板子一枚下は地獄」、本来は海洋航海の危険なことを指した言葉です。
今回ご紹介したこの記事をお読みいただければ、福島第一原発の実際の状況はまさにそれだということが解ります。
福島第一原発の現場では、破壊されたそれぞれの原子炉をマスキングするような建造物が出来ていることが、ニューヨークタイムズのこの画像から解ります。
ちなみに図の中の赤い線は『凍土対策』を実施するライン、黒い線は海洋漏出を防ぐための防護壁を設けるラインです。
http://kobajun.chips.jp/wp-content/uploads/071651f58520cf857dac3c60ba171bcb.jpg
『壁一枚向こうは地獄』、それが福島第一原発の現実なのではないでしょうか。
その現実を作り出した日本の原子力ムラは、世界の世論、そして市民感情をはっきり敵に回したのです。
それがこの2年半の現実です。
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