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8月に外遊し、環境対策の先進国を訪問。愛弟子・安倍首相の姿勢に一言いいたくなったのかも〔PHOTO〕gettyimages
フィンランドの「核廃棄物」最終処分場を見に行って 小泉元首相がいま思っていること
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36936
2013年09月10日(火)週刊現代 :現代ビジネス
汚染水垂れ流しという危機にもかかわらず、原発再稼働に向け動く安倍政権。そんな安倍首相の「恩師」が、弟子の暴走を戒めるように爆弾発言をした。師匠の苦言は、舞い上がった弟子に届くのか。
■どう考えても原発は無理
「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」
小泉純一郎元首相が語ったそんな発言が、話題と波紋を呼んでいる。
福島第一原発で大量の汚染水漏洩が発覚し、まだ事故が収束にはほど遠いことを日本中が痛感している中、小泉氏はフィンランド・ドイツを訪問していた。8月中旬のことだ。
旅の大きな目的は、フィンランドにある核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を見学すること。オンカロとはフィンランド語で「洞窟」「隠し場所」などを意味する。ヘルシンキから約250km北西に位置するオルキルオト島に建設されたこの施設は、原子力発電所から出る使用済み核燃料、いわゆる核のゴミを地中深く封印するための施設だ。
プルトニウムの半減期は2万4000年。このオンカロは、こうした放射性廃棄物が無害になるまで、10万年にわたって地下深く封じ込めるために作られた。
人類は現在、核燃料を使ってエネルギーを生み出したり、兵器を作ったりする方法は知っているが、その後に出る"ゴミ"を安全に処理する方法を見出していない。手の施しようのないものは、見ないことにして土の中に埋めてしまうしかない。オンカロは、原発が抱える大いなる矛盾を象徴する施設だ。
「小泉さんは首相退任後、国際公共政策研究センターというシンクタンクの顧問についています。そこで参加者を募り、フィンランド視察を行いました。同行者は、主に原発施設に関係する、いわば推進派の企業から来ていました」(シンクタンク関係者)
どうもチグハグな組み合わせだが、企業サイドにも狙いがあったようだ。いまだ国民の間で人気を誇る小泉氏を、道中説得して原発推進派に引き入れようとの魂胆もあったという。
だが、小泉氏はそれを突っぱねた。推進派への鞍替えを勧める人々に対し、逆に「むしろ脱原発への意志が強まった」と言い放ったのが、冒頭の言葉である。この経緯は、毎日新聞の山田孝男編集委員によるコラム「風知草」(毎週月曜掲載)で紹介されている。
小泉氏は、こう語ったという。
〈「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」〉
〈「今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」
「戦はシンガリ(退却軍の最後尾で敵の追撃を防ぐ部隊)がいちばん難しいんだよ。撤退が」〉
〈「必要は発明の母って言うだろ? 敗戦、石油ショック、東日本大震災。ピンチはチャンス。自然を資源にする循環型社会を、日本がつくりゃいい」〉(毎日新聞8月26日付・風知草より)
■なぜ安倍はわからないのか
原発推進の国策から撤退せよ―。かつて、小泉氏によって引き上げられ、首相への道が開けた安倍晋三首相は、「脱原発を目指せ」という提言をどう受け止めているのか。
安倍首相と小泉氏の関係は長い。もともと小泉氏は、首相の父・晋太郎元外相も領袖を務めた自民党の派閥・旧清和会の出身だ。
安倍首相は'00年、森喜朗内閣において、小泉氏の推挙で内閣官房副長官に就任。'01年に小泉内閣が発足すると留任し、その後は党幹事長、内閣官房長官など、政府と党の要職を歴任した。小泉氏から「帝王学」を授けられ、首相の座に上り詰めたのが安倍首相だ。
政治評論家の浅川博忠氏は二人の関係をこう語る。
「安倍首相の父・晋太郎さんが清和会の会長の頃から、小泉さんは派閥の会合などで尖った発言をし、物議を醸すことがありました。そんな時、晋太郎さんは小泉さんを個別に会長室に呼び、『こういう言い方をしたほうがいい』などと、親切に教え諭していたそうです。
そのため小泉さんは自分が首相になった時、道半ばでこの世を去った晋太郎さんの恩義に報いる意味もあって、息子の安倍さんを引き立てていった」
こんなエピソードもある。'95年に小泉氏が自民党総裁選に出馬表明したとき、30人必要だった推薦人が集まらず苦悩した。当時の自民党は、旧経世会(額賀派)の全盛期。逆風の中、新人だった安倍首相が推薦人に加わることで、小泉氏は橋本龍太郎元首相との対決に臨むことができた。
「小泉さんが退任する時、『次は福田(康夫元首相)で』という党内の声も根強かった。しかし小泉さんが、『いや安倍だ』と後任指名をしたため、'06年に第一次安倍政権が誕生したのです」(自民党ベテラン議員)
互いに恩義があり、信頼もある。その小泉氏が、今このタイミングで安倍首相の耳に届くような形で、あえて原発問題に言及した背景には何があるのか。
「ある種のメッセージでしょう。福島第一の汚染水の問題に対し、中国・韓国だけでなく、欧米各国も日本政府の姿勢を批判し始めています。このままだと日本は外交的に窮地に陥る。今だからこそ脱原発を前面に打ち出すべきだ―小泉さんはそう言いたいのではないでしょうか」(浅川氏)
安倍首相は高支持率に胡坐をかき、政権は増税や憲法改正問題などで、暴走の気配も見せつつある。小泉氏にしてみれば、愛弟子が自分を無視して独走していることに、立腹しているのだろう。
だが今のところ、安倍首相が小泉氏のメッセージに反応した気配はない。福島第一の処理に、東京電力に代わって政府が乗り出すことを決めたが、原発政策の方向性は、相変わらず「推進」のままでいる。
自民党幹部のベテラン議員も、苦虫を噛み潰したような表情でこう話す。
「小泉さんは政界を引退した人だからね。いくらでも気楽なことが言えるんだよ。日本のエネルギー事情を考えると、『原発ゼロ』なんて、とても無理だ」
だが、福島第一原発の汚染水問題は、まさに危機的状況だ。福島第一では毎日400tの高濃度汚染水が発生しているが、これが敷地内から溢れ海へと流れ出ていたことが明らかになった。そうならないよう、今まで汲み上げた水は地上に設置されたタンクに保管してきたが、そのタンクもたった2年で老朽化してしまい、水が漏れだす事態となっている。
「福島第一の敷地全体が、"放射能の沼"のようになっています。溶けた燃料棒の冷却には水が必要でしたが、水をかけ続ければ汚染水が大量に発生するのは最初から分かっていたこと。そのための措置を施すべきでしたが、東電は敷地内のタンクに応急的に保管しただけでした」(京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏)
■やればできるはず
政府は、原発の敷地内の地中を凍らせて遮水する「凍土壁」などの対策を検討し始めている。だが完成まで数年かかる上、維持するために原発1基分ほどの電力が必要になると言われる。汚染水対策は、すでに破綻しているのだ。
オンカロでは、人が近づかないよう地下400m以深に封印される超危険物が、福島第一では地表近くや海中へとダダ漏れだ。オンカロの封印は10万年。ならば福島第一周辺もまた、今後10万年は汚染されたままということ―。
さすがに自民党内からも、こんな声が上がり始めた。
「自民党は事故以来、推進派、懐疑派、脱原発派に分かれています。小泉進次郎氏は脱原発。中東の政情不安や再生可能エネルギー普及の遅れなどを考えると、国としてのエネルギー問題で見た場合、原発ゼロでいいのかどうか議論はある。
ただ、推進派は、稼働もしていない高速増殖炉『もんじゅ』に年間200億円をつぎ込み、青森・六ヶ所村の再処理施設に数千億円も費やしておきながら、『コストが上がったから原発は再稼働しなければ』ということを主張する。この理屈はどう考えてもおかしい」(河野太郎衆議院議員)
「事故の原因究明も、その処理もままならない現状で、原発の新規建設や再稼働は無理というもの。政府は原発を海外に輸出しようとしていますが、事故処理や核廃棄物処理の方向性もないまま、海外に原発を売ろうというのはおこがましい」(自民党・福島原発事故究明に関する小委員会委員長の村上誠一郎衆議院議員)
先の参院選で脱原発を掲げ、初当選を果たした山本太郎参議院議員もこう語る。
「正直言えば、小泉政権時代も自民党は、原発推進を続けてきたという事実もあります。それでも、政界にまだ影響力がある小泉さんが脱原発の声を上げているのは大きい。
今の安倍政権は、まるで独裁政権です。国民の多くは原発に不安を抱き、再稼働にも慎重な声が多いのに、推し進めようとしている。小泉さんは、ぜひ政治の第一線にいる、息子の進次郎さんにも脱原発を呼びかけてほしい。そして進次郎さんには、自民党の暴走に歯止めをかける存在になっていただきたい」
事故原発から海を通じて全世界に放射性物質をまき散らしておきながら、原発を他国に売る。安全基準も曖昧なまま、なし崩しに他の原発を再稼働する……。
私たちは、あの大震災の悲劇から、「本当は何が大切なのか」を学んだ。元首相に言われるまでもなく、その思いは、決して忘れてはならないはずだ。
「週刊現代」2013年9月14日号より
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