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2013/9/3 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
「東電任せにしてきた弊害」「国が前面に出るべきだ」――。
福島原発のタンクから汚染水が漏れている問題を受け、メディアは政府への要求を強めている。
確かに東電にはムリだ。安全よりも稼ぎが大事という会社である。3期連続赤字を避けるため、しゃにむに柏崎刈羽原発の再稼働を目指し、国民を呆れさせた。事故の反省はどこへやら。カネも時間もかかる汚染水処理に本腰を入れるとは思えない。
もっとも、東電の代わりに政府がやっても、解決は困難だ。事態は収拾しないだろう。
現場では、1日400トンの地下水が流れ込み、原子炉を冷やした水と一緒に汚染水となっている。これを地上の貯水タンクと地下の貯水槽で保管してきた。だが、今年4月に貯水槽からの汚染水漏れが相次いで発覚。すべて地上のタンクに移したが、今度は、タンクから汚染水が漏れだしたのだ。
現在は、地中を凍らせて氷の壁をつくる「凍土壁」プランや、流れ込む地下水をくみ上げて海に流す「バイパス」プランが持ち上がっている。
だが、どれも問題解決の決定打にならない。
環境ジャーナリストの天笠啓祐氏が言う。
「汚染水の問題は、技術的に可能かどうかという話ではありません。むろん、地面を凍らせ、その状態を維持するには、膨大なエネルギーが必要になる。それをどうやって賄うのか。冷静になれば、夢物語のようなアイデアとしか思えませんが、それを実現したとしても、汚染水は増え続けるのです。つまり、これは量との戦いになる。汚染した水は、無尽蔵にためられるわけではありません。いつか限界が来ます。そのとき、どうするのか。完全に、お手上げです。政府と東電は、海に捨てればいい、と割り切っているのでしょう。そう考えれば、対策が手抜きなのもうなずけます」
◆放射線濃度を薄めて海に捨てる
実際に東電は、「ALPS」と呼ばれる装置で汚染物質を取り除いてから海に流そうとしている。現在、装置は故障し修理中だが、稼働すれば汚染水を海に放出する計画だ。
原子力規制委員会の田中俊一委員長も、きのう(2日)、外国特派員協会で「基準値以下のモノは海に出すことも検討しなければならない」と言っていた。
もっとも、ALPSは濃度を下げるだけで、放射性物質をゼロにできるわけではない。トリチウムも除去できないことが分かっている。結局、放射性物質を含んだ水が海にどんどん捨てられるということになるのだ。
東電によると、タンクから漏れた汚染水は、最大で毎時1800ミリシーベルトという。4時間ほど浴びれば死亡するレベル。それを薄めて海に流しても、あとからあとから捨てられれば、濃度はどんどん濃くなる。それで国民の健康や安全は守られるのか。大いに疑問だ。
◆国際社会も注視する「レベル3」の事故
汚染水問題は深刻で、見通しは絶望的である。国際社会も注視し始めた。
韓国では日本の水産物を禁輸すべきとの論調も出ているし、欧州のメディアも「最初に東電が認めていたよりも深刻」(独DPA通信)、「メルトダウン以来、最大の危機」(英BBC)などと報じている。世界中が「レベル3」に引き上げられた汚染水事故に危機感を抱いているのだ。
それでも、この国のリーダーは、事態をみくびっている。安倍首相は、東電が汚染水問題で会見をしているときに、ボルフ場でクラブを振り回していた。その後は中東を訪問し、原発を売って歩いている。この感覚が恐ろしい。原発に振り回される人たちの痛みがまるで分からないのだろう。
五輪だって諦めていない。福島原発から220キロの東京に招致しようと必死だ。
ジャーナリストの横田一氏が言う。
「本来なら、国会を開いて汚染水問題について審議し、与野党が知恵を絞り、対策を打ち出すべきです。どうしても東京に五輪を招致したいのなら、IOC総会に国会で決めた対策案を持っていき、安倍首相自ら理事たちに説明する。それが世界からトップアスリートたちを招こうとしているリーダーのあるべき姿でしょう。招致にマイナスだからと国会を開かず審議さえしないのは、国民にとっても世界に対しても、あまりに無責任です」
安倍は中東で「国が責任を持ってやる」とか何とか言っていたが、具体的な動きは何もない。しょせん口先だけのパフォーマンスなのだ。
これでは、たとえ招致に成功しても、大会の成功はおぼつかないだろう。大気汚染が懸念された08年の北京大会では、マラソンのゲブレシラシエ選手が「あんな汚いところで走りたくない」と出場を辞退した。東京でも、放射能を危惧してボイコットが続出する恐れは十分ある。
◆世界中から非常識と思われる日本
今年6月に明らかになった福島県の県民健康管理調査によると、18歳以下で甲状腺がんの診断が「確定」した人が12人、「疑い」が15人だった。小児の甲状腺がんは100万人に1〜3人とされる。調査の数字は、その70倍だ。
こうなると放射能の影響を疑いたくなるが、環境省が3月に青森、山梨、長崎で行った甲状腺の検査(3〜18歳が対象)では、5ミリ以下の「しこり」や20ミリ以下の「嚢(のう)胞(ほう)」が出た子供の割合は「福島とほぼ同様か、大差なし」とされた。放射能による汚染は列島の南から北まで、全国に広がっている危険性が高いのだ。
むろん東京も例外ではない。こんな場所でノンキに「スポーツの祭典」なんてやっていられるのか。五輪のために来日した選手が晩年、次々にがんを発症させるなんてことになれば、目も当てられない。いったい、だれが責任をとるのか。
東京には五輪を開く資格はないのだ。放射能入りの水を海に捨てようとしている迷惑千万な国が、世界中からスポーツ選手を招いてお祭り騒ぎなんて、許されるわけがないだろう。
日本人は恥の感覚を大事にした。他人に迷惑を掛けることも、良しとしない。それなのに一部の政治家が、恥知らずで非常識な振る舞いをしている。
五輪招致がどれほど国益を損ねるか、もう一度考えた方がいい。
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