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2013年8月26日 俺的メモあれこれ
「原発事故が起きても逃げ場がない。それなのに政府は再稼働を急ごうとしている」−。電力各社は原発再稼働に向け、新たな安全基準の適合審査を相次いで申請している。審査する原子力規制委員会が、再稼働の条件のひとつに挙げているのが防災の強化。しかし、そこに山積されている課題は放置されたままだ。福島原発事故を体験しても、命よりカネなのか。住民たちの憤りは噴出寸前だ。(榊原崇仁)
◆事故時は「陸の孤島」
「『孤島』になったら食料品は確保できるのか。放射性物質が飛んできたら逃げ場がない」
能登半島最先端にある石川県珠洲(すず)市。地元市議の北野進さん(53)は目前の日本海を見やりながら、防災の現状にいらだたしさをあらわにした。
珠洲市などの能登半島先端部は半島中部の北陸電力志賀原発(同県志賀町)から50キロ前後離れているが、原発事故で放射能汚染が20キロ、30キロと広がり、半島中部一帯の通行が規制されると「陸の孤島」と化す。
しかし、対策は後回しになっている。
石川県は3月に改定した地域防災計画で「緊急防護措置区域(UPZ)」を原発の30キロ圏に設け、範囲内の住民の避難を優先的に検討した。
おおむね国の方針に沿った対策内容だが、北野さんは「十分と言うには程遠い」と話す。
「30キロ圏じゃ不十分だ。福島はその外でも高線量地域がある。放射性物質が風に乗って来ることも考えないと」
県の計画ではUPZの住民は原発から遠ざかる方向へ避難することになっているため、原発の北側で暮らす30キロ圏の住民は北の半島先端部に逃げることになる。
「どんづまりの方になんか、誰も行きたかない」。原発から北東12キロの同県七尾市で自治会役員を務める野中久輝さん(63)はそう話す。原発の北9キロの志賀町内で医院を営む平川知之さん(57)も「先端部は過疎高齢化が深刻な地域だ。普段から生活物資は乏しく、事故時に避難先になる集会所も狭い。一週間もおれん」と語る。
石川県は海路や空路による避難や物資供給を検討する考えだ。しかし、漁業を家業とする珠洲市の竹沢留美子さん(57)は「冬の日本海はしける。うちの船でも一週間出せんかったことがある」。悪天候がネックに供給が滞る可能性がある。
次々に浮かび上がる防災の課題。中でも先が見通せない孤立の問題は、何も能登半島や石川県に限った話ではない。
青森県の東通原発は下北半島の中ほどに位置しており、愛媛県の伊方原発は佐田岬半島の付け根にある。事故があれば、いずれも先端部は「孤島」になりかねない。
伊方原発については既に、四国電力が再稼働に向けた安全審査の申請を済ませており、新規制基準後の再稼働第一号になるとも目されている。
愛媛県は既に防災計画を見直し、半島問題についてもフェリーなどで対応しようとしているが、同県の担当者は「悪天候時の避難は今後の検討課題だ」と先送りを示唆する。万全の防災は、いまだ確立できずにいる。
◆国、自治体「これから」連発
昨年9月の原子力規制委員会の発足当初から、田中俊一委員長は防災を重視し、再稼働条件にも挙げていた
同年10月以降は避難準備を進めるUPZの目安を30キロ圏とする方針や毎時0.5ミリシーベルトの空間線量で即時避難する基準などを決定。これを受け、UPZ内の21都道府県と135市町村のうち、福島を除くほぼすべてが防災計画を改めた。
しかし、自治体防災を詳細に確認していくと、半島の孤立といった特殊な地形に由来する課題のみならず、根幹からも不備が浮かび上がる。
緊急的に甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤は、少なくともUPZの住民分は配備することになっている。だが「まだ必要数の購入を終えていない自治体がある」と原子力規制庁の金子修一・原子力防災課長は言う。
副作用や誤飲などを防ぐことを目的にした住民説明会に至っては、規制委が6月の原子力災害対策指針の改定に伴って自治体に開催を求めたばかりでもあり、いまだ実践例はないという。
事故時の住民避難についても課題が目立つ。
UPZに当たる自治体は円滑に避難を進めるため、移動ルートや避難先を定めた避難計画をつくることになる。被ばく防止の最大のよりどころになるはずなのだが、既に手掛けたのは策定対象の135市町村のうち、5割前後にすぎない。
対象地域の住民は合計で480万人。「自家用車を持ってない高齢者らもおり、移動手段を確保するのが難航しているようだ」(金子課長)
東通原発の30キロ圏に入る青森県むつ市の担当者は「避難の前後で地域のつながりが壊れないよう、町会単位で避難先を割り振ることが必要と考えている」と、手間がかかる背景を説明する。「本年度中に何とかできればいいが…」
避難計画をつくっていたとしても、中身が万全かというと、これまた疑問が出ざるを得ない。
規制委は原則、「基準づくりは国、詳細は地方」という線引きをしており、避難計画の作成も多くが自治体に委ねられている。そのため中身に差が生じている。
金子課長は「避難先や移動手段、通るルートをより具体的に決める自治体がある一方で、避難する方面や主要な幹線道路を大まかに示す程度の計画もある」と語る。
多くの自治体で道半ばとなっている避難計画の作成は今後、規制庁が支援するという。では、解決が難しい「陸の孤島」の問題はどうするか。
金子課長は「自治体レベルで海路や空路の交通手段まで確保するのは大変だ。規制庁に自衛隊、海上保安庁、警察などを交え、何の交通手段がどれだけ必要で、国がどういう人員体制で避難を支援するか議論する場をつくる必要があると思っている」と述べる。
ただこれも具体的にはこれからの話で、悪天候でも問題なく避難できるかなど、不透明な部分は依然として残る。
再稼働条件として位置付けられている防災対策だが、内容はこんなにお粗末で、しかもお役所仕事の域を出ない。
原子力資料情報室の伴英幸共同代表は、こう訴える。「実効性のある防災対策を打ち出せない地域は、原発立地にふさわしくない。規制委は防災強化を目玉の一つにしてきたのだから、防災上の問題を抱える原発は廃炉の判断を下すべきだ」
[デスクメモ]
新基準には「5年猶予」がてんこ盛りだ。事故時の遠隔操作施設に非常用電源の三系統目、加圧水型原子炉のベント装置…。理由は車も5年使わないとさびが出て危ないからだとか。再稼働ありきなのだ。電力は足り、事故は拡大中。再稼働は電力会社の都合だけ。東電の破綻処理からメスを入れよう。(牧)
2013年8月26日 東京新聞:こちら特報部
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013082602000133.html
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