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2013/8/21 晴耕雨読
農業情報研究所2013年8月19日
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/
放射性物質汚染農地で働く農民の被ばく・健康問題 マスコミ=東京新聞が初めて取り上げたから転載します。
今日の東京新聞が東電福島第一原発事故による放射性物質汚染農地で働く農民の被ばく問題を取り上げている。
除染後も被ばく不安屋内、農地とも高線量(核心) 東京新聞 13.8.19 朝刊 3面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2013081902000121.html
原発事故が農民に与える影響の問題は、ほとんど専ら、農産食品の安全性確保のための国の生産制限・出荷規制や、汚染地域で生産される農産食品の安全性に対する消費者の不安がもたらす”風評被害”を通しての経済的影響の問題として取り上げられてきた。
農地は汚染されていても作物の可食部への放射性セシウムの移行を減らす技術の開発・実施で食品に含まれる放射性セシウムの濃度を”基準値”以下に下げ、食品安全に関する”風評”さえ克服すれば、原発事故が汚染地域農民にもたらした問題はすべて克服できるとでも言いたげな論調だ(注)。
これに対し、筆者が早くから疑問を呈してきたことは先日もに述べたとおりである(福島県農業者の被ばく不安は消えない 農地土壌汚染地図作りで分かってきたこと,13.7.30)。
すなわち、汚染農地で働く農民の被ばく―健康問題が事実上、完全に無視されていることへの疑念である。
遅まきながら、多くの”専門家”、恐らくは汚染地域地元紙でさえまともに取り上げることがなかったこの問題を、”中央の地方紙”が取り上げたことは特筆に値する。
「除染が終わった家々を訪ね、居間や農地、作業場など住民の生活パターンに沿って放射線量を測った」記者たち(山川剛史、大野孝志)によるこの記事によると、福島県田村市都路町(避難区域に指定されている)に一時帰宅した一専業農家の玄関先や居間、寝室などの放射線量を測ったのちに自宅前の水田と畑に「足を踏み入れたとたん、(線量計の)数値がぐんと上がり、〇・四マイクロシーベルト前後で安定した。
・・・どこで何時間くらい活動するかの生活パターンを聞き、それぞれの場所の線量、時間をかけ算していくと・・・約二・五ミリシーベルトという結果が出た。一般人の上限値一ミリシーベルトの二・五倍ということになる」
記事はこうも言う。「福島は有数の農業県、除染後でも田畑には毎時〇・四ミリシーベルト程度の線量が至る所で確認された。作物への放射性物質の影響はコントロールできるとしても、問題なのは長時間の作業をする農家の健康だ」。
これは当然予想されることだ。
極めて限られた地点についてとはいえ、農水省の農地土壌放射性セシウム濃度調査が既にそれを示唆していた(農業情報研究所:福島県の放射性セシウム濃度別農地分布(2012年3月30日))。
それにしても、国や県ではなく、どうして一新聞社の記者たちがこんな調査に乗り出さねばならないのか。
原発事故が農家に与えた痛手を癒すために(→「原発災害による農家の痛手はどうしたら癒せるのか」=『科学』 2012年2月号)、政府は一刻も早く詳細な農地汚染マップの作成にとりかかるとともに、チェルノブイリ原発事故の牧場作業従事者への健康影響を調査したスウェーデンに倣い(スウェーデン防衛研究所・農業庁等 『スウェーデンでは放射能汚染からどう社会を守っているか』 合同出版)、汚染農地(避難区域や福島県内に限られない)で働く農民の労働・生活実態と(推定)被ばく線量の調査に乗り出すべきである。
(注)こういう思潮は、専ら産業としての農業、その食料生産機能を重視し、農民を生きた人間ではなく、取り替え可能な単なる生産手段=「担い手」と見做す近頃の農政思潮に通じるところがある。
農民は死に絶えても、効率的農業・食料生産さえ生き残ればそれでいいのである。
「新農基法においては、農民は農業生産の単なる一要素として観念されるにとどまる。たとえば第四条(農業の持続的な発展)はいう。農業に必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手が確保され、地域の特性に応じてこれらが効率的に組み合わされた望ましい農業構造が確立されることにより、農業の持続的な発展が図られねばならない。・・・ここでは、農民は土地、水などの農業資源と並列して単なる担い手として観念されるだけである。生きた農民、額に汗する農民の姿はみあたらない。
このように、新農基法においては、農民は農業生産の一要素として観念され、産業としての農業の効率性を高めていくことをひたすら要請されるのである。
新農基法第一条は、食料、農業、及び農村にかんする基本理念を定めるというだけで、農民にかんする基本理念を全く欠いている」(中村宗弘 『近代農政思想の私的展開』 丸善出版サービスセンター制作 2007年12月 247-248頁)
ちなみにフランス農業基本法(1999年)との対比。ここに言う「農業者」は「農民」に置き換えても差し支えない。
「第一条 農業政策は農業の経済的・環境的・社会的機能を考慮に入れ、持続可能な発展を目標として国土整備に参加する。それは(EU)共通農業政策並びに共同体(EU域内)優先原則と連携して、次のことをも目標とする。
−特に青年の、農業での自立、農業経営の持続性、その継承、農業における雇用の増進。この農業はそれぞれの特性に応じたフランスの諸地域全体においてその家族的性格が保存されねばならない。
―農業者の生産条件・所得・生活水準の改善並びに一般制度との均衡を目指しての農業者社会保障の強化
―活動期間に応じた農業者最低退職年金の漸次引き上げ並びに保証
・・・・・・・・・」(北林寿信解説・訳 フランスの新農業基本法―資料― 『レファレンス』(国立国会図書館調査および立法考査局) 1999年12月号から)
◇
【核心】「除染後も被ばく不安 屋内、農地とも高線量」2013/08/19(東京新聞)
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11595576261.html
東京電力福島第一原発事故で汚染された地域で、除染が進んでいる。実際に帰還したとき、本当に放射線の影響は大丈夫なのか。本紙は除染が終わった家々を訪ね、居間や農地、作業場など住民の生活パターンに沿って放射線量を測った。すると、国が目指す「早期帰還」は生易しくない現実が見えてきた。 (山川剛史・大野孝志記者)
◇当惑
福島第一の西約二十キロの福島県田村市都路町では、一時帰宅した専業農家の渡辺清栄えさん(76)が、農機具を収める倉庫の手直しをしていた。
自宅も田畑も国が除染を実施したが、ここで暮らしたら、どれくらいの年間被曝線量になりそうなのかは知らない。
そこで、線量計を手に、玄関先や居間、寝室などの放射線量を計測。屋外が毎時〇・二五マイクロシーベルト(一マイクロシーベルトは一ミリシーベルトの千分の一)だったのに対し、居間は〇・二マイクロシーベルト。屋内の値は屋外より二割ほど低かったが、それでも国が目安で使っている六割減には遠く及ばなかった。
事故前は一日八時間ほど作業していたという自宅前の水田と畑も測った。足を踏み入れた途端数値がぐんと上がり、〇・四マイクロシーベルト前後で安定した。予想した通りの値だったが、かなり高い。
どこで何時間くらい活動するのか生活パターンを聞き、それぞれの場所の線量、時間を掛け算していくと年間被曝線量が推定できる。
渡辺さんの場合、約二・五ミリシーベルトという結果が出た。一般人の上限値一ミリシーベルトの二・五倍ということになる。
数字を聞いた渡辺さんは「危ないのかどうか、自分にはわからない」と当惑した表情を浮かべた。
ただ、家族四人での四畳半二間の仮設住宅暮らしにも疲れを感じている。先祖から受け継いだ田畑で農業を続けたい。特別宿泊を利用し、一時的に帰るつもりだが、「このまま戻れと言われても困る。誰が責任を取るのか」と語った。
◇危険
本紙は、田村氏のほか、川内村や楢葉町も訪ね、同様の手法で六人の年間被曝線量を推計した。結果は、川内村の畳業者西山利夫さん(71)が一・七ミリシーベルトだったのを除けば、他の五人はいずれも二ミリシーベルト台だった。
確信が持てたのは、屋外の放射線量が毎時〇・二三ミリシーベルトを下回ってさえいれば、年間被曝線量は上限値の一ミリシーベルトを下回る。との見方は危ういということ。
訪ねた家々では、どこも玄関や縁側の窓を開け放ち、周囲の自然と一体化して暮らす良き日本の生活スタイルだった。
さらに、福島は有数の農業県。除染後でも田畑には毎時〇・四マイクロシーベルト程度の線量がいたるところで確認された。作物への放射性物質の影響はコントロールできているとしても、問題なのは長時間の作業をする農家の健康だ。
低線量の被曝をめぐっては、どれほどの健康影響があるのか、専門家の意見がまとまっているとはいえない状況もある。
一日おきに帰宅しているという楢葉町の専業農家青木良美さん(78)は、近くの水田に積まれた除染廃棄物入りの黒い大きな袋の山を見ながらこうつぶやいた。
「あれがある間は、避難指示が解除されても町には戻り難い。うちも孫が避難先で学校に通っているが、無理だろうな」
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