http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/830.html
Tweet |
クローズアップ2013:汚染水1日300トン流出 場当たり策に限界
http://mainichi.jp/opinion/news/20130808ddm003040187000c.html
毎日新聞 2013年08月08日 東京朝刊
放射性物質に汚染された地下水が1日300トンも海に流出しているとみられる東京電力福島第1原発の汚染水問題。流出防止のため水ガラスの壁を造っても、上を越えて汚染水が漏れるなど場当たり的な対策が目立つ。一方、原子炉建屋への地下水流入を防ぐため、国は東電に土を凍らせた凍土壁の建設費を支援するが、国費投入だけでは問題の解決にはほど遠いのが現状だ。
◇「水ガラス」越え海へ/くみ上げ、保管難しく
汚染水の海洋流出の発端は、2011年4月。福島第1原発の海側敷地の地中には、トレンチ(配管などが通る地下トンネル)が複数あり、建屋の高濃度汚染水がトンネルを伝って海に流れた。さらなる流出を防ぐため、東電は12年6月、海岸約780メートルを鋼製の板で覆う海側遮水壁の工事に着手(来年秋に完成予定)。トンネル内も部分的にふさいだが、今も2、3号機脇のトンネル内には約1万1000トンの高濃度汚染水が残る。
さらに今年6月、2号機の海側敷地内の地下水から高濃度の放射性物質を検出した。東電は「建屋に入らなかった山側の地下水が、トンネルからしみ出た汚染水と混じった可能性が高い」と説明。その汚染水が海に出る恐れがあり、7月8日から敷地の海に近い地中(深さ16メートルまで)を水あめ状の薬剤「水ガラス」で固めて壁を造る工事を進めた。だが、技術的な制約で、地下1・8メートルより浅い部分は工事できなかった。
海側に壁を造ると、敷地から海に流れる汚染水がせき止められ、行き場がなくなり水位が上がる。2号機海側の敷地にある観測井戸の水位は、工事開始から1カ月近くで約1メートル上昇。水ガラスの壁がない地下1・8メートルより高い位置にある。
東電は7月22日に汚染水の海洋流出を発表。同31日には、水ガラスの壁を越えて汚染水が海に漏れていることも認めた。経済産業省幹部は「水ガラスの上を越えて海に出ることは設計段階から分かっていたが、他に方法がなかった」と話す。
原子力規制委員会は今月2日、海洋流出防止のため、水ガラスでせき止められた地中の汚染水のくみ上げを指示したが、保管場所は限られている。問題が起きるたびに対応する対症療法で、抜本対策にほど遠い。
一方、1〜4号機の建屋には山側から地下水が400トン流入。溶融燃料と触れて汚染水が生じている。
その一部はセシウムを取り除くなどの処理をして敷地内の貯蔵タンクに保管。6日現在、建屋内の汚染水は約7万7000トン、タンクに約33万トンたまっている。
しかし、タンクを設置する敷地は15年9月になくなる。経産省は今年5月、地下水流入を防ぐため、1〜4号機全体の周囲の土を凍らせる凍土壁の設置を指示した。粘土やコンクリートで造る壁よりも水を通しにくいことなどが長所だが、大規模工事は世界初で成功するかどうかは不透明だ。【奥山智己、鳥井真平】
◇国、東電任せに危機感
「これだけ大規模な凍土による遮水壁を造るのは例がない。国も一歩前に出て支援する必要がある」。菅義偉官房長官は7日、こう語り、東電福島第1原発の汚染水対策への国費投入方針に理解を求めた。
「福島原発廃炉費は事故を起こした東電の負担が原則」としてきた政府が国費投入に踏み込む背景には、資金不足や社員流出で疲弊する東電任せでは「汚染水問題が解決できない」(官邸筋)との懸念がある。出口の見えない汚染水問題は廃炉計画そのものを狂わせかねず、安倍政権も厳しい批判を受けるのは必至だ。
福島県など地元はこれまでも「国は(事故処理で)もっと前面に出てほしい」と再三要請。これに対し、安倍政権は「出過ぎれば『東電救済』と批判されかねない」(関係筋)として、事故処理への本格的な関与に慎重姿勢を続けてきた。しかし、汚染水の海への流出量が1日300トンにも達し、地元の漁協が沖合での試験操業を延期するなど影響が広がる中、東電任せを続けるわけにいかなくなった。参院選大勝で国会運営が安定化したことにも背中を押され、安倍政権は汚染水対策で一歩踏み込む方針に転じた。
政府内では汚染水対策なら国費を投入しても「国民の理解を比較的得やすいのではないか」(経産省幹部)との読みもあった。福島第1原発事故後、政府は原発の廃炉技術の研究開発費(約1000億円)を予算に計上、一部は福島原発の廃炉に向けた技術開発に使われているためだ。汚染水対策はこの延長線上で説明できる余地がある。
昨年7月に公的資金約1兆円を資本注入し実質国有化した東電への支援について、政府は賠償などの資金繰りを支えることを主にしてきた。被災者への賠償資金の原資として約3・8兆円(東電の申請ベース)を貸し出しているほか、除染費の立て替え費として約1兆円を確保したが、いずれも東電が将来の収益で返済するのが前提。回収が見込めない補助金による支援は最小限にし、国民負担抑制の姿勢を示してきた。
ただ、賠償や除染費は最終的に計10兆円規模に膨らむと見られる一方、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の見通しが立たないことなどから東電の収益構造は改善せず、再建計画は瓦解(がかい)寸前だ。事故処理を円滑に進めるには、政府が汚染水対策以外にも補助を拡大する局面が予想されるが、国民負担抑制との兼ね合いが難題となりそうだ。【大久保渉】
==============
◇汚染水海洋流出を巡る経緯
2011年
4月2日 2号機取水口付近から高濃度汚染水の海洋流出が判明
4日 東電が低濃度汚染水を海に放出
5月11日 3号機取水口付近でも海洋流出が判明
2013年
6月3日 2号機東側の観測井戸から50万ベクレルのトリチウム(三重水素)などを検出
24日 井戸近くの港湾内で海水のトリチウム濃度上昇が発覚
7月8日 汚染水海洋流出防止のため水ガラスによる地盤改良工事に着手
9日 井戸の南側でも地下水から高濃度の放射性セシウムを検出
10日 原子力規制委員会が「海洋拡散が強く疑われる」と見解
22日 東電が海洋流出を認める
27日 漏えい源とみられるトレンチ(地下の配管用トンネル)のたまり水から23億5000万ベクレルの放射性セシウムを検出
29日 規制委が汚染水の分析作業チーム設置
31日 東電が地盤改良では流出が防げないと認める
8月2日 東電が11年5月の対策後のトリチウム海洋流出総量を20兆〜40兆ベクレルと発表。規制委が地下水くみ上げを指示
5日 東電が週内の地下水くみ上げを発表
7日 政府が汚染水対策に国費投入方針示す
※放射性物質濃度はすべて1リットル当たり
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。