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米原発に「経済性」の壁
シェール革命・老朽化…採算厳しく 計画凍結・廃炉相次ぐ
【ニューヨーク=小川義也】米国で原子力発電所の新設計画の凍結や廃炉、事業者の撤退が相次いでいる。「シェール革命」で天然ガス価格が下落。老朽化や東京電力福島第1原発事故を受けた規制強化もあり、原発のコスト競争力が低下しているためだ。原発推進の方針を堅持するオバマ政権下で新設の動きもあるが「経済性」の壁は高い。日本の原発メーカーの戦略にも影響を与えそうだ。
米電力大手のデューク・エナジーは1日、フロリダ州で計画していた原発2基の新設計画を凍結すると発表した。デュークは2008年に米原子力規制委員会(NRC)に建設と運転の一括認可を申請したが、NRCによる認可手続きが遅れていることや、最大240億ドル(約2兆3700億円)と試算するコストの回収に不透明感が強まったことを理由としている。
計画では東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)の新型原子炉「AP1000」(出力110万キロワット)を2基建設。24年をめどに稼働する予定だった。米電力大手ではエクセロンも昨年8月、テキサス州で進めていた原発2基の新設計画を撤回している。
一方、世界最大の原発事業者である仏電力公社(EDF)は7月30日、米国内で原発5基を運営する合弁会社から撤退する方針を発表した。EDFは09年に米電力大手のコンステレーション・エナジーと合弁会社を設立したが、折からのシェールガスの開発ブームで安価な天然ガスを使った火力発電が急増。「いまの米国に原発拡大の余地はない」(アンリ・プログリオ最高経営責任者=CEO)との結論に達した。
EDFは合弁会社が米東部で運営する5基の原子炉の運営権を、コンステレーションと12年に合併したエクセロンに譲渡する。EDFはエクセロンから4億ドルの特別配当を受け取るなどの権利を確保した。
米国は世界最多の104基の原発を抱えるが、1980年代以前の完成が多く、老朽化が深刻。補修費用がかさみ、採算が悪化した原発を廃炉にする動きも相次ぐ。
米電力大手のドミニオンは昨年10月、ウィスコンシン州のキウォーニー原発の廃炉を決定。デュークも今年2月、フロリダ州にあるクリスタルリバー原発3号機の廃炉を決め、代替としてガス火力発電所の建設を検討し始めた。同国はすでに世界最多の約10基を廃炉にした経験を持つ。
オバマ政権は昨年、34年ぶりに原発の新設計画を承認した。だが、ガス価格の低下や建設・維持費の上昇などで、20件以上あった新設計画は停滞気味。東芝=WH陣営だけでなく、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と組む日立製作所や、三菱重工業も米国でそれぞれ原発の新設案件を抱えているが、予断を許さない状況だ。
新興国では原発需要は拡大しているものの、シェール革命と福島第1原発事故の「ダブルパンチ」(米GEのジェフ・イメルト会長)を受けた米国は例外。世界最大の原発市場が転機を迎えている。
[日経新聞8月6日朝刊P.6]
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