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汚染水はやっぱり海へ漏れていた。一カ月余、東電はなぜそれを認めなかったのか。発表はどうして遅れたか。漁師は怒る。あなた方は誰のために、どこを見ながら、事故の収束を図るのか、と。
このタイミングは、何だろう。
福島第一原発海側の観測井戸では五月以降、放射性物質の濃度が上がっていたという。今月に入ると、それが目立って高まった。港湾の海水からも高濃度の放射性トリチウムが見つかった。
十日には、原子力規制委員会が「高濃度の汚染水が地中に漏れ出し、海へ広がっていることが強く疑われる」と指摘した。
一方、東電は「データの蓄積がない」として、海洋への流出を認めず、具体的なコメントも避けてきた。ところが二十二日になって突然、汚染水が原発建屋の地下から海に漏れ出していることを初めて認めた。海の潮位が変わったり、雨が降ったりするのに合わせて、井戸の潮位が上下する。従って原発敷地内と海との間に水の行き来があると判断したという。毎日観察していれば、小学生にも思いつくことだろう。
ではなぜ、これほど発表が遅れたのだろうか。
二十二日といえば、参院選投開票日の翌日である。自民だけが、原発再稼働に前のめり、他党はすべて脱原発か、脱原発依存を掲げて戦う最大級の争点だった。
海洋流出が明らかになれば、原発の大きなイメージダウンになり、選挙の結果にも影響し、その分再稼働が遠ざかるから−。東電は否定しているが、これまでの姿勢を見れば、このように疑われても、仕方がない。
それにしても東電は、いったいどちらを向いて事故収拾に当たっているのだろう。
不信が募れば募るほど、周辺の漁業に対する風評被害を助長してしまうのではないか。試験操業のデータを積み上げながら、漁が再開できる日を心待ちにしている地元漁民の思いを、誠実に受け止めてきたのだろうか。
規制委は十八日に、東電から報告を受けていたという。原発規制に対する国民の信頼を高めるためにも、その時点で東電に公表を促すか、規制委として公表すべきではなかったか。
今度のケースを教訓に、安全配慮の深さ、情報開示の迅速さなども、再稼働の判断基準にすべきではないか。規制委自身、安全文化の必要性を語っているのだから。
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