44. 2013年7月12日 14:40:47
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日本はいつから無法国家に成り下がってしまったのか。今日本で動いている原発は大飯(福井県)の3・4号機のたった2基に過ぎない。残りの48基は何ら法的根拠もなく止められたままである。この事態が理解できない。法治国家においてあってはならないことである。止まった原子力を代替するのは石炭やガス火力だ。その代金は2013年度で見れば、東日本大震災前に比べて3兆8000億円も増えることになる。アベノミクスで株価の上昇に浮かれる国民はごく僅かであろう。他方、アベノミクスのもう1つの効果である円安が進むと、この約4兆円さらに膨れ上がる。4兆円は消費税の約1.5%に相当する。1.5%というと小さいと思うかもしれないが、平均的な4人家族でみれば月間1万円(年間12万円)もの負担増になる。この負担増はいきなり電力料金には跳ね返ってこないものの、場合によっては更なる値上げも見込まれる状況だ。 そもそも直近の電気料金の値上げは、原発の運転再開を見込んで抑えられた値上げ幅になっていた。東京電力は2013年4月に柏崎刈羽(新潟県)の運転再開を計画していた。どの電力会社でも、もはや資金源は尽きつつある。そうなれば、今政権が掲げる政策の1つである発送電分離どころの話ではなくなる。電力会社に体力つまり内部留保という金力がなくなれば、発送電分離の資金は一体どこから調達するというのか。 電気料金値上げの負担は貧富にかかかわらず、国民全てに一律にのしかかる。多額の国富をみすみす海外へ流出させ、その結果、国民生活を圧迫する。この現状を政治は看過していいのだろうか。 電気料金値上げは産業、特に製造業の空洞化を誘起する。日本のモノ作りを支える金型産業まで海外に拠点を移すようになれば、これはもう取り返しがつかない事態になる。それを防ぐには、産業向け電気料金の値上げ幅を抑える他なく、その分、家庭用電気料金をさらに引き上げざるを得なくなる。30%、50%の値上げも止むを得ない事態になるのである。原子力規制委員会は2013年7月8日に新しい規制基準を施行したが、そうなると原子力事業はますますイバラの道を強いられる。政府が進める成長戦略に逆行する地盤固めを原子力規制委員会は着々と進めている。その背景には反ニッポン的思想がある。 そもそも、運転再開(再稼働)の条件としたストレステストの一次評価は、国内の30基の原発で実施され、その評価も終わっている。2013年7月8日に新規制規準が施行されるまでは、従来の規制体系のもとで運転再開がなされるべきだったが、事業者にも、監督官庁である経産省にも、そのような動きがなかった。その結果、多額の国富が海外に流出している。これは国民に対する不作為ではないか。事業者も霞が関も、エネルギーセキュリティーから見れば、まったくもって国民の生活を支える心棒になっていない。どうしてこのような為体に陥ってしまったのだろうか。 国民の過半数が未だに原発の運転再開に否定、ないしは慎重な姿勢をみせているという『朝日新聞』などの世論調査がある。そのような世論を背景に、原子力規制委員会が原発敷地(サイト)内での活断層問題をめぐって科学的根拠を蔑にし、随分と思い切った裁断をしているという事実がある。それを見て、今原子力規制委員会と事を構えると、先々強権を発動され、厄介なことになりかねないと事業者は考えている。このような世論や原子力規制委員会の空気を読み取った結果、事業者は「自主的」に運転再開してこなかったというのが実態である。自粛していたというわけだ。 原子力規制委員会の委員長・田中俊一氏は「このままでは安全審査に入れない」などという言説を折に触れてメディアに提供している。それを受けて一部の大手新聞の紙面は「廃炉しかない」という論調を繰り返す。そもそも原子力規制委員会の権能は安全審査にあり、運転再開(再稼働)の審査権はない。運転を許可するか否かはあくまで経産大臣の手中にある。 原子力規制委員会には運転停止命令を出す権能はあるが、それも出していない。だから、事業者は腹を決めて運転しようと思えばできるのだ。ただし、2013年7月8日に施行された新規制基準は、活断層や追加的安全設備などをめぐってこれまでよりもかなり厳しいものになっている。また、追加的安全施設の即時性(その時に既設であること)には不透明な部分がある。その代表はフィルター式ベントだ。施行前に原子力規制委員会の不評を買えば、新規制基準の発効後、運転停止命令権が濫用されることを事業者は懼れていたとも取れる。 すなわち原子力規制委員会は、その与えられた権能の範囲を逸脱した行為に走っているのだ。メディアを通じて安全規制や運転再開を社会問題化し、「廃炉やむなし」という言論を新聞紙面やテレビ画面に誘出するという手法である。これはもはや行政行為を逸脱して、政治を行っていると言ってよい。政治の権能が侵されているのだ。 2013年5月15日、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)について、運転再開に向けた準備作業を認めないという事実上の運転再開”停止命令”が原子力規制委員会によって出された。約1万件にものぼる安全点検漏れが発覚したことによるものである。 このこと自体は、もんじゅを所有管理する日本原子力研究開発機構(JAEA)の重大なミスであり、原子力規制委員会の措置は順当なものと言える。しかし、驚いたのは、この命令発行にかかる記者会見の場で、原子力規制委員会委員長の田中俊一氏、委員長代理の島崎邦彦氏をはじめ、委員が口を揃えて「こういった組織が存在していること自体が問題だ」と発言したことだ。まるで、魔女狩りのような様相である。このように、メディアに向けて感情的な発言を躊躇なくする人たちに、規制における冷静かつ合理的な判断を委ねられるのだろうか。暗澹極まる疑念を抱く。 その直後に辞任したJAEA前理事長の「ナトリウムは漏れが起きない方がおかしい」などの発言が不適切だと問題視された。しかし、メディア発言における不適切さは、原子力規制委員会も被規制側の長も似たり寄ったりである。嘆かわしい限りだ。 さらに、2013年5月23日に、田中俊一氏の肝いりで進められてきたJ-PARC(大強度陽子加速器施設・茨城県)の大型ハドロン実験施設で放射性物質を環境に漏らしてしまうという事故が起こった。この実験施設はJAEA内にあるものの、筑波の高エネルギー加速器研究機構(KEK)が実質的に運用するものであり、ある種異文化の独立王国の様相がある。安全管理の問題が問われているが、異文化を含めたガバナンスの難しさがある。 田中俊一氏は記者会見でこの事故の影響をもんじゅの保全プログラムの問題との比較で問われて、「比較にならないほど軽微」という旨を答えた。しかし問題なのは、環境に出た放射線量の軽重ではなく、放射線管理のシステムと現場の意識である。すなわちJ-PARCの事故ともんじゅの保全プログラム問題とは通底するところがある。一方で口酸っぱく非難し、一方で庇う。そこに意図と思想が見え隠れする。 田中俊一氏は東海村長の村上達也氏とともに東海村を脱原発し、サイエンスビレッジとする構想を進めてきた。J-PARCはその中核施設であるから、もんじゅのようになられては困るのだ。なお、電力会社の中では日本原子力発電が電力各社の代表として、もんじゅに最も多くの人員を派遣してきた。また東海村にある東海第二原子力発電所は、日本原子力発電の施設である。 現在のJAEAの上層部には、田中俊一氏と通じて人事を動かしている者がいる。この春、もんじゅ発電所の所長を大型ハドロン施設をもつ原子力科学研究所の所長に異動させたのはその一例である。もんじゅや高速炉研究のキーパーソンの異動により、その方面の弱体化、骨抜きが始まっている。 敦賀原発(福井県)に続いて、いよいよ「もんじゅ」への”断層攻め”が始まった。2013年5月の事実上の停止命令に追い打ちをかけるように、原子力規制委員会は7月上旬にもんじゅ敷地内断層の現地調査をすると発表。6月13日、現地調査の事前会合が開かれた。島崎邦彦委員長代理の言う”敦賀半島の非核化”の始まりである。脱核燃料サイクルに向けた攻防が始まったと言えよう。 もんじゅは日本の核燃料サイクルの中核施設の1つであり、もう1つの重要施設は青森県六ケ所村の再処理工場である。島崎邦彦氏は六ケ所村のある”下北半島の非核化”も遂行するという強い魂胆を持っている。下北攻略の先鞭が東通原子力発電所(青森県)の断層問題なのである。 活断層問題がなぜ問題なのか。事業者の言い分をじっくり聞かない、提示されたデータを活かしていない、後出しジャンケン的に結論が誘導されるなど枚挙に遑がない。事業者が科学的な証拠をもって活断層ではないことを明確に示しているのに、それを全く意に介さない判断が下される。これはもはや地震科学者の所作ではない。規制の皮を被った脱原発政策の実施、つまり政治を行っているに等しい。行政行為からの逸脱である。これは、ニッポン再生の成長戦略に原発推進を盛り込んだ政権への挑戦であり、日本経済の衰退を目指すものだ。 原子力規制委員会の活断層問題の基本理念は「”活”の疑いがさして強くないグレーなものも活断層とする」というものである。こうした基本理念のもとに事業者には”活断層はない”という明確な証拠を示すように求めている。これはいわゆる「悪魔の証明」の手法である。すなわち「ある事実や現象が全くないことを証明させてはならない」という論争上の手練手管の1つである。 例えば、敦賀半島に蛇がいることは1匹でも捕まえれば証明できる。しかし、蛇がいないことは敦賀半島をくまなく探査しなければできない。仮にくまなく探査して、蛇がいなかったと証明して見せたとしよう。それでも硬く分厚い岩盤の下に潜んでいるかもしれないと権力者が言えば、その岩盤を掘って不在を確かめなければならない。そこでいないことが証明できても、また別の岩盤を掘削しなければならない・・・・・このように目標は次々に移動させられ、相手が力尽きるまで「悪魔の証明」は延々と続いていく。 科学者たるもの、ましてや公的立場で中立公正に合理的判断を下すべき立場の者がこの「悪魔の証明」を意図すれば、おしなべて物事を停滞、頓挫、破綻させることができる。いま田中俊一氏のもとで島崎邦彦氏はお気に入りの有識者を召し抱えて、この「悪魔の証明」の手法を面白がるように駆使している。 4月24日に日本原子力発電が出席を認められた最後の評価会合では(なお5月25日は有識者のみで評価書がまとめられた)、日本原子力発電側が敦賀2号機の下を走るD-1破砕帯は活断層ではないと証明をしたにもかかわらず、その形成の仕組みが全く異なる正断層と逆断層を一緒くたにするという非科学を絵に描いたようなストーリーを恥ずかしげもなく披露した。さらに、日本原子力発電による地層の年代認定が信用できるものではないとして、D-1破砕帯が活断層であることを否定できないと裁断されてしまった。極めて恣意的な裁断である。 この会合は4時間半にも及び議論を尽くしたと原子力規制委員会は言う。しかし、その実態は議論を尽くすどころではなかった。1つの論点で、日本原子力発電から質問や疑義が出されると、島崎邦彦氏の得意技である”フリ”によって、別の論点に議論を移すのである。そのような”迷”進行ぶりによって、表面的な議論の繰り返しが、あたかも議論を尽くした4時間半のように演出された。 とりわけ会合の締めくくりにおいては、それまでの議論一方的に断ち切った後に、島崎邦彦氏が背伸びをしたり、机を持ち上げるというおかしなパフォーマンスをして、今にもD-1破砕帯が動いて段差ができるような印象を植え付けようとした。この滑稽な様は今でも原子力規制委員会のホームページで公開されている。その馬鹿さ加減は一見に値する。 この裁断後の記者会見を終えた島崎邦彦氏は、得意満面の表情で会場を退出していったという。島崎邦彦氏や田中俊一氏を起用した細野豪志氏やその親玉である菅直人氏は今や下野した身だが、原子力規制委員会に残してきたパートナーが着々と民主党の脱原発政策を実践していることにほくそ笑んでいるに違いない。本質を見失い、右顧左眄する中で、見せ物政治を演出し続けた小屋掛け政治家の負の遺産である。 敦賀原発の事態はもんじゅに飛び火し、今や下北半島の東通原発が本格的に攻め込まれようとしている。ここには明確な意図がある。東通原発の活断層問題は、六ケ所再処理工場という核燃料サイクルの本丸への総攻撃の序章である。つまりそれは、日本国の原子力政策の中核的施設への攻撃である。 東通原子力発電所の断層調査の現状を見る機会を得た。深さ10m程度、幅数十m、長さ100m近くにも及ぶ大規模なトレンチ(試掘溝)が何本もあった。ここでは膨潤(層状粘土鉱物の層間に水が浸入して体積が増加する現象)による地層の変形が断層ではないかと疑われたが、そのことは明確に否定されている。今は、その他の箇所で活断層ではないかと原子力規制委員会の有識者が疑いをかける断層が幾つかある。活断層の可能性が高い”横ズレ”の形跡(専門的にはフラワー構造という)があるというのだ。 東通サイトには、東北電力のサイトと東京電力のサイトがある。東電側のサイトにも原発の設置計画はあるが、未着工のままである。ただし、断層調査はすでに行われており、東北電力側のサイトと同様の横ズレが存在する疑いがあるとされたが、地質学的判断によって否定されている。 今は活断層があるのではないかという指摘があれば、どこでも掘らされて子細な調査検討が要求される。それが今の原子力規制委員会と有識者会合のメンバーの所作なのである。東通サイトは広大な敷地がありながらも原発は1基しかなく、広漠たる様子である。そのため、大規模なトレンチが掘りたいだけ掘れる。 東通原発の断層調査の有識者会合には、立川断層の”コンクリート断層”で一躍有名になった東大教授・佐藤比呂志氏がいる。地中に埋まった人工のコンクリート柱の残骸を断層の証しと思い込んでしまった、と恥ずかしげもなく吐露した人物である。まるで自己催眠にかかてしまったというしかないほど、断層を渇望しているのであろう。そういった人物が”ここがアヤシイ”と言えば、億単位の金も厭わずに大規模なトレンチを事業者は掘ってくれる。掘らせる側からすれば、愉快かもしれない。 東通原発に関しては、もう1人重要な有識者がいる。東洋大学教授・渡辺光久氏である。猫の化身を自称し、愛称はmanQ(マンキュー)先生。渡辺光久氏は2012年10月9日に北陸の志賀原発(石川県)を社民党党首・福島瑞穂氏と訪れている。原子炉の下にあると渡辺光久氏が主張するSー1断層の視察にやってきたのである。 2012年末にインターネットの「ニコニコ動画」でご一緒した帰りに、渡辺光久氏と少々話し込んだことがある。とても物腰が穏やかで愛すべき性格の方とみた。変動地形学の専門家である。その渡辺光久氏が東通原発のサイト内の地形の変動を見て、”この変形は断層が動いた結果の疑いが強い”という旨を指摘した場所がある。実際に掘ってみたところ、地層の変形や異常は何ら見つからなかった。のっぺりした地肌が現れただけである。マンキュー先生こと渡辺光久氏の断層は佐藤比呂志氏のコンクリート断層と同様に、≪マボロシ≫に潰えたのである。 変動地形学とは事ほどさように、山師的とは言わないものの、科学と言うには拙い部分があるようである。研究室や学会の中での話ならまだ害はない。しかし、今や有識者の発言は学者の思い込みでは済まされず、ニッポンの将来を左右する重要な行政行為の一端を担っている。権力を行使しているのである。 ただし、学問が悪いのではない。それを援用する者の資質の問題であろう。このままでは、その誕生からまだ日が浅い変動地形学という学問自体の資質が疑われかねない。余計なお節介だが、渡辺光久氏の好人物な側面を知っているだけに惜しい気がする。 2013年4月18日に原子力規制委員会で開催された東通原発敷地内断層の評価会合では、広島大学の奥村晃史教授、元・富士常葉大学学長の徳山明氏、そして首都大学東京の山崎晴雄教授の3人の専門家が見解書を提出した。これは科学的根拠をもって東通原発サイト内の断層が”活”ではないことを明瞭に説明したものであった。 しかしながら、その内容が会合の議論に反映されることはなく、翌日の新聞各紙の紙面でもまともに取り上げることはなかった。これは奇異である。今や、メディアも原子力規制委員会の基調路線に同調している感さえある。原子力規制委員会委員長の田中俊一氏のガバナンスが効いているのであろうか。 田中俊一氏は、学生時代は民青(日本民主青年同盟)の活動家であり、日本原子力研究所時代には共産党系の労組の教宣部長から中央執行委員まで上り詰めた。そのキャリアの中で組織に抑えを利かせる術を会得した。そこが買われて、JCO事故が起こった1999年に、当時の理事長であった松浦祥次郎氏(現・JAEA理事長)が副所長に抜擢した。その後、理事、副理事長へと昇進していった。 松浦祥次郎氏は、2011年に急遽召集された「原子力事故再発防止顧問会議」の座長を務めた人である。これは当時の原発事故収束および再発防止担当大臣・細野豪志氏が召集した会議だ。同会議は2011年10月4日に召集され、12月2日までにわずか4回のみ開催。異例の迅速さで12月13日、「提言取りまとめ書」が大臣に提出された。この提言書に基づき、さらに細野豪志氏が付加的に追加した要件(過去に事業者との密接な関わりがないことなど)をもとに原子力規制委員会の人選が進んだ。つまり、田中俊一委員長や島崎邦彦委員長代理は、細野ー松浦両氏の合作人事なのである。 さて、2013年4月18日の東通原発敷地内断層の評価会合に先立つ4月5日に、原子力規制委員会から「敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド」(案)なる文書が示された。 http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_taishinkijyun/data/..この文書には、下北半島の非核化を強く意識した箇所がいくつかある。これは東通原発を突破口にして、六ヶ所再処理工場を狙い撃ちの標的にしていると解釈するのが正しい。「審査ガイド案における下北半島」を強く意識した箇所はどこかというと、次の3点である。 「4.2.1 陸域における調査」 (5) 段丘面等の高度分布から、累積的な変動が明かな地域においては、累積的な変動の様式や広がりをもとに沿岸域に活断層が推定される場合がある。このような場合には、適切な調査技術を組み合わせた十分な調査が実施され、地下深部に至る震源断層の形状が推定されていることを確認する。 「2.2 将来活動する可能性のある断層等の活動性評価」 〔解説〕(5)顕著な海岸隆起によって累積的な変位が認められる地域では、弾性波探査によって断層が確認されない場合でも、これを合理的に説明する適切な地形発達過程について検討する必要がある。また、海底に顕著な変動地形が認められる場合にも、それを合理的に説明できる震源として考慮する活断層を想定する必要がある。 〔解説〕(6)地層が局所的に急傾斜している場所については、その地下の比較的浅いところに震源として考慮する活断層が存在する可能性を検討する必要がある。また、広域的な隆起等の変動についての要因を震源として考慮する活断層によらないものと判断する際には、その理由を明確にする必要がある。 これらはいずれも下北半島の地形や地質に詳しい者ならば、下北半島のどこを具体的に示しているかが即座に分かる。これは東通原発と六ヶ所村である。それと同時に、これらは日頃、東洋大学教授・渡辺満久氏が有識者会合等で主張していることをそのまま反映している。東通原発のサイトでマボロシの断層を指摘し、科学的判断を誤ったその先生の主張がそのまま審査ガイドになっているのだ。 とりわけ「4.2.1 陸域における調査」については、下北半島の東側にある「大陸棚外縁の断層」が下北半島に分布する段丘面の隆起に関連しているという仮説に立脚している。この仮説は事業者のこれまでの調査で明確に否定されているにもかかわらずである。まさにこのガイドが「悪魔の証明」の論法を駆使したものになっている。 審査ガイド案がもしこのまま採用され、事業者の意見を聞くふりだけをする事実上の欠席裁判のもと原子力規制委員会の独断専行が引き続けば、東通原発を取っ掛かりにして、六ヶ所再処理工場など下北半島にある原子力施設の稼働が暗礁に乗り上げてしまう可能性がある。 元祖・反原発を誇示する野党党首の”御用学者”然とした東洋大学教授・渡辺光久氏が公正中立たるべき原子力規制委員会の有識者であるのは、極めて問題である。ましてや原子力規制委員会の委員長代理・島崎邦彦氏は敦賀・下北半島の”非核化”を目論んで、渡辺光久氏の路線を授用する原子力規制委員会の委員長・田中俊一氏のもとで明確な思想と意図を持った学者たちを集め、日本の成長路線に異を唱えている。そればかりか、「悪魔の証明」の手法を権力行使の場に取り入れた政治を行っているのが実態だ。この状況を政権はじめ関係者はいつ糺すのか。 自民党は参議院選挙の勝利で安定的な政権運用ができるようになる可能性が高い。そうなれば、法改正をも視野に入れて、原子力規制行政の正常化に本腰を入れるべきであろう。さもなければ、ニッポンのエネルギー事情はさらに混乱を続け、アベノミクスの成長戦略の足をすくうことになる。
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