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フクシマの真実(1)東北新幹線に乗って測ってみれば…(上杉隆/文・写真)
http://no-border.asia/archives/10367
2013年07月01日 News Log
福島に通い続けている。
今年(2012年2月当時)に入ってからは、すでに12回、郡山、福島、二本松、いわき、相馬、会津と県内各地を飛び回っている。
3・11以降、「フクシマ」は世界でもっとも注目される地域の1つになった。哀しいことだ。東京電力福島第1原発事故への対応の失敗、そして放射性物質に関する住民への不誠実な情報提供は、政府のみならず、日本社会自体への不信感を生んでいる。
とりわけ放射能の問題は、福島県と日本一国だけに留まらない。大気や海洋を通じて、世界中に拡散されることから全人類共通の課題となったとみていいだろう。
実際にこの2月、私は、欧州・ルクセンブルクで開かれた欧州議会が主催する「オーフス会議」に日本の「代表」として呼ばれ、「フクシマ」の現実について語ってきたばかりだ。
四半世紀前、チェルノブイリの悲劇を経験した欧州の人々は、総じて放射能による環境汚染への危険意識が高い。
その彼らの口を借りれば、「実は、日本の国民こそがもっともフクシマの情報を持っていないのではないか」(フランスMustadis代表、ジル・エリアール・デュブルイユ氏/実は「エートス」の代表のひとりでもあった。後に判明)と疑問に通じる。
実際、そうした「情報隠蔽」は、福島に通い続けている私自身も実感している。
東北新幹線に乗って、放射線測定器(CsI(Tl)シンチレーション検出器)のスイッチを入れると、宇都宮駅まで低かった数値が那須塩原駅に近づく頃から急激にはね上がる。
福島県内では、走行中の新幹線車内ですら、毎時0・5マイクロシーベルトを超え、郡山駅前に降り立てば、空間線量は軽く毎時1マイクロシーベルトを超えてしまう(2012年2月当時/現在は0.6マイクロシーベルトまで下がっている)。
だが、こうしたセシウム汚染の実態を知る者はそう多くはない。あるいは気づいていても気づかないふりをしている者も少なくない。
政府の除染支援対象区域(現在の汚染状況重点調査地域)は毎時0・232マイクロシーベルトと定められている。県内の多くの場所はその数値を超えている。
私が、福島に通い続ける最大の理由はこれだ。世界でも最もフクシマの真実を知らない福島県の人々に、内外との情報格差を埋めてもらい、判断材料のひとつにしてもらいたいのだ。
なにより、真実を知る以外に福島の復興も支援も不可能なのである。
(つづく)
◇
フクシマの真実(2) 除染しても人の住めないところがある(上杉隆/文・写真)
http://no-border.asia/archives/10447
2013年07月02日
東京電力福島第1原発から外部に放出される放射性物資は、毎時7000万ベクレルを超えている(2012年当時/事故から2年が過ぎた現在でも毎時1000万㏃)。仮に3・11前にこの数値だったら、日本中が大騒ぎしていることだろう。
だが、いまの日本では放射性物質のリークというニュースが大きく取り上げられることはほとんどない。逆に、政府は「絆」を合言葉に「復興」や「支援」ばかりを謳い、多くのマスコミは原発事故による放射能の問題はあたかも終わったような雰囲気作りに協力している。
とりわけ、それは福島県の2つの県紙「福島民報」「福島民友」などでも顕著だった(当時)。
『除染元年 うつくしま、福島』(福島民報 2012年1月1日)
国と同様、福島県でも行政と報道による「官報複合体」が一体となって、こうしたキャッチフレーズを多用し、「フクシマの真実」から県民の目を背けようとしている。
福島での環境への放射能汚染、とりわけ人体への被曝の危険性は減っていないにも関わらずだ。
「信じられない。とてもではないが、人が生活できるような数値ではない」
イタリア「スカイTG24」のピオ・デミリア特派員はあきれたようにこう語った。
福島に通う筆者が、知己の海外特派員たちに、原発から50キロ以上離れた福島市と郡山市の空間線量の値を伝えたときの反応は概ねこうである(現在でも同じ反応を示す海外ジャーナリストは少なくない。海外特派員らによる「除染しても空間線量の下がらない場所がある」という指摘は、チェルノブイリの経験をした者であれば当然と見るようだ)。
また2012年2月、筆者が、郡山市役所前で測った地上1メートルの空間線量の値は毎時1.3マイクロシーベルトを超えた。一方、同じ日「地元紙」では、同じ地点での線量が0.6マイクロシーベルトとなっている。
公の発表と筆者の測定値がなぜこうも違うのか。ちなみに私の使っている測定器は、日立アロカ製(サーベイメーターPDR-111)、政府や福島医大の使っているものと同種である。
「だって、あの発表の数値は、測定前(設置前)に水で地面を洗って測ったりしているんです。違うのは当然ですよ」(当時、この発言をデマだという「同業者」たちが数多くいた。だが2012年秋、全国紙が相次いでモニタリングポストの計測前(設置前)の「除染」の実態を報じると、逆に「福島エートス」の案内で取材をしていたジャーナリストの方の誤報が明らかになった。つまり筆者らの指摘は正しかったのである)
地元の記者がこう種明かしをする。もはやジョージ・オーウェルの「1984年」の世界だ。
「もう、空間線量の値をいちいち指摘する人はいません。いくら言っても放射能がなくなるわけではないですから」
事実を伝えなくてはならない記者ですら、こうである。現実を直視するものがデマ扱いされ、奇異な目で見られる…。哀しいかな、それが「フクシマの現実」なのである。
(つづく)
◇
フクシマの真実(3) 海はつながり、水は流れ、魚は移動する(文・上杉隆/写真・グリーンピース)
http://no-border.asia/archives/10491
2013年07月04日
「分水嶺となる阿武隈山脈から、F1(福島第1原発)を洗い流すように太平洋に地下水が流れている」
事故以来、福島第1原発の緊急対応に当たっていた馬渕澄夫原発事故担当首相補佐官〈当時〉は、2月21日(2012年当時)の自由報道協会の会見で、驚きの事実を次々に明かした。
「使用済み燃料プールのある4号機は雨ざらしになっており、天井がドスンと落ちる形で爆発し、当時からそのまま海洋に汚染水が流れ出している状態だ」
建設会社に勤めていた馬渕議員は、事故後の4号機の中に入った唯一の国会議員(2012年3月当時)で、現在の政府の事故対応を批判している数少ない当事者の1人。だが、馬渕氏の重要な発言が、マスコミで報じられることはめったにない。まるで「馬渕証言」が存在していないような報道ぶりだ。
馬渕氏の言う通りであるならば、当然に福島や周辺の海は放射能で汚染されており、そこにすむ海洋生物も危機にさらされているということになる。
海はつながり、水は流れ、魚は移動する。だが、日本政府とマスコミはこの自明の理を忘れたかのような対応を続けている。
例えば、2011年4月、国際環境NGOのグリーンピースは海産物の放射能調査を日本政府に打診した。結果は、世界で2例目となる「拒否」であった(インドネシアに次いで。インドネシア政府はその後国内メディアなどの批判を浴びてに解除している)。
当時、そのグリーンピースとともに東日本の各漁港を取材していた私は、わかめや昆布などの海藻や魚介類の中に、高いレベルの放射能汚染個体のあることを知り、さっそく自身の「メルマガ」(2011年4月)や『週刊文春』(2011年5月)などでリポートした(当時、取材に当たってはグリーンピースジャパンの佐藤潤一事務局長および花岡和佳男海洋生態系問題担当に多くのアドバイス・協力をいただいた)。
その直後、猛烈な批判の声が寄せられる。ツイッターなどでも「魚が危ないというデマを流すな」「寿司屋の敵は死ね!」と罵(ののし)られる日々が続いた。
そうした声の中で励ましの声をくれたのは、何と、当の福島の人たちだった。
「上杉さん、ありがとう。それこそ俺たちが一番知りたかったことだよ」
(いわき市漁協の漁師=現在も休漁中/発言は2011年12月。2011年4月から通い続けた漁協・漁港取材の一環。ちなみに蛇足ではあるが、筆者は「漁協」を「漁港」と誤記したために「そんな漁港は存在しない」という理由でずっと嘘つき扱いをされることになる。ミスは反省するが、本筋(海洋リーク)から外れた議論が永遠に続くのは極めて不健全であると考える)
「(いわきの)海が好きだから、本当のことを知りたいだけだ。できることならばなんでも協力するよ」(同県いわき市のサーファー)
いまなお、東京電力福島第1原発からは、海洋への放射能汚染が続いている(2013年現在、それはさらに深刻な事態になっていることは各報道でお分かりだろう)。米国海洋調査会社ASRによれば、その汚染は東北太平洋岸を北上し、すでに北海道南東岸にまで達している。
北海道のタラバとサバの缶詰めから、放射能汚染が見つかったのは昨年夏のことである(北海道庁の発表による/2011年当時)。
しかし、政府もマスコミも、その事実を「黙殺」したままである。
※ 当記事は2012年3月、「夕刊フジ」に連載した「福島の真実」に、加筆・修正しタイトルを変えたものである。
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