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高レベル核廃棄物を巡る攻防
週刊朝日6・28号に、広瀬隆ドイツ「脱原発先進国」の現場を行く 後編 地下1000メートルの処分場で浸水・崩落 核のゴミめぐる「地獄のババ抜き」 という記事が載っている。以下、その内容の要約。
ドイツ北部にあるゴアレーベンという高レベル核廃棄物処分場予定地は岩塩層であり、岩塩があるのは地下水がないということだという理由でゴアレーベンが候補地として選ばれたのだという。ところが、ゴアレーベンの岩塩層には石油とガスと地下水が出ているのだという。しかもガスは大量ということだ。石油は「坑道の壁面に太い帯状の浸出」していたという。
日本の岩手県日鉄釜石の鉄鋼山の坑道に高レベル核廃棄物を処分しようという話しが1989年にあり、広瀬氏は「坑道内に地下水が大量にあることを説明して計画を断念させた」ということだ。
アッセ処分場はゴアレーベンと同じ岩塩層だが、既に低レベル廃棄物が大量に投棄されてきている。投棄したコンテナは1978年までに総計12万個を超えている。地下750メートルの空洞に廃棄物のドラム缶を投棄し、上から岩塩をかぶせてきたという。しかし、空洞の天井が崩落し、1988年には「岩塩坑内で上部から下に向かって浸水が起こっていることが発覚し、この水がセシウム137で汚染されていた」ことが分かったという。そのため、この処分場は廃止と決定されている。
ドイツ連邦政府はゴアレーベンの高レベル最終処分計画を白紙に戻し、2015年までに候補地選定の基準を策定しなおし、2031年までに候補地を決定するという。
以上で記事の要約終わり。
ドイツのようなユーラシア大陸内部にある国で高レベル核廃棄物の処分などできるわけがないと思っていたが、実際に、このようなレポートが出てくるとその不可能性がよく分かる。地下水は地下でかなり複雑につながっている。数十万年と言う期間の安全保管が必要な高レベル核廃棄物が放射能漏れを起こさないはずがないし、それがユーラシア大陸の広い地域へ影響を与えてしまうことも確実だ。更に、高レベル核廃棄物の多くは重金属毒性を持ち、その毒性は永遠に残る。そんなものを何千万トンと言う規模で地下500メートルとか900メートルの場所に安全に埋めることなどできるはずもない。
同様なことは北アメリカ大陸でも言え、広大な土地であればあるほどその影響は大きくなることになる。だから、どうしてももっと小さな土地、つまり、島へ埋めたいということになる。
結局、大陸では高レベル核廃棄物の処分ができないということが原爆開発時にははっきりしていたので、日本を工業化させて原発を日本全国に造らせ、地震で原発事故になって全国が放射能汚染されて、結果的に世界中の核廃棄物処分場にしてしまおう計画が造られてそれが実行されたのだろう。
ただ、日本は地震や火山の活動が非常に活発で近くの安定性は大陸に比べてずっと低い。また、その結果起こるであろう放射能漏れの影響は以前考えられていたよりもずっと深刻でかつ大規模だということが1986年のチェルノブイリ事故から20年以上たってやっと分かってきた。だから、実際のところ、日本に高レベル核廃棄物を地層処分することはほぼ困難だ。
そしてここからが問題だ。つまり、高レベル核廃棄物をどうするのかということだ。国際的にも、そして、日本の国内問題としても。
日本もそうだが1970年代に建設された原発はほぼ稼働期間が40年になる。つまり、今後10年程度で世界中の原発の多くが廃炉の時期を迎えることになる。そして、それは当然その稼働期間中に作り出された核廃棄物の処分が問題なることでもある。
ドイツで言われている2015年までに候補地選定の基準を策定しなおし、2031年までに候補地を決定すると言うスケジュールはドイツだけに限ったことではなく、ほぼ世界中どこでも当てはまることだ。
つまり、この数年から10年程度で高レベル核廃棄物の処分方法について世界的な合意がされる必要があるということだ。それも、地層処分ではなく、乾式キャスクでの地上保管か半地下保管と言う合意だ。理由は単純で地層処分は数百年とか数千年後の地球規模での放射能汚染を引き起こしてしまうからだ。
もし、この合意がされなければ、やはり地層処分をしたいという意思が幾つかの国にあるということだろう。その結果は、例えばアフリカ大陸全体を核処分場にするというようなものになるはずだ。またはオーストラリア大陸が狙われるかもしれない。島では海洋への放射能漏れが起こるがずっと大きな大陸なら海洋汚染が起こるにしてもそれはずっと後のことだからだ。
仮に乾式キャスクでの保管が合意されたとして、その場合はどうなるだろうか。乾式キャスクでの保管の問題点は、乾式キャスク自体の耐用年数が現在のところ50年程度しかないことだ。つまり、数十年ごとに詰め替える必要がある。更に、燃料棒自体がどの程度の期間密閉性を保つかどうかが分かっていない。原子炉から出して50年程度はたぶん大丈夫だということであり、100年以上の期間については全く分かっていない。だから、乾式キャスクでの保管は当面数十年様子を見るという意味でしかない。
ただし、基本的に詰め替えは可能だと思う。30年もすれば半減期の短い放射性核種はかなり量が減少する。だから、燃料棒を切断して中のペレットだけを別の容器へ詰め替えることも、あまり環境中へ放射性物質を出すことなくできるはずだ。
しかし、それでも問題は残る。短くて数万年、長ければ10万年を超える期間、50年とか100年ごとに詰め替えを繰り返さなければいけない点だ。既に何の利益も生み出さなくなっている放射性廃棄物を人間の感覚でとらえればほぼ無限とも言える長期にわたって管理することを、または、その管理コストを負担することを合意できるかということだ。
仮に5万年の保管をするとして、50年ごとの詰め替えだと1000回の詰め替えが必要になる。そしてその後やっと地層処分をすることになるのだろう。
どちらにしろ、乾式キャスクでの保管は人の手を離れてはできない。常に人間の管理下に置かなければならない。それも数万年と言う期間だ。だから、多分、どこかの弱小国へ世界中の乾式キャスクの保管を押し付けるということも不可能だろう。乾式キャスク保管コストの負担を嫌って、それをまのがれようとすることは、ほぼそのまま地球規模での生命の衰退を招くことにつながる。
高レベル放射性廃棄物の海洋投棄禁止が1975年にされ、その後、放射性廃棄物の海洋投棄が全面禁止になったのは1993年の国際条約によってだという。これも、海洋生物がどんどんと姿を消したのを受けてのことのはずだ。1960年代の海岸は生命に満ち溢れていたが、今は見る影もない。
実質的に世界の政治を動かしているアメリカの軍産複合体の人びとは、今、地球の将来をどのようなものにするか、その決断を迫られている。現在世代の利益を優先して将来地球生命の死を招き入れるのか、それともある程度の負担を自ら引き受けて、地球生命体の存続を願うのか。
2013年6月21日午前4時15分 武田信弘 ジオログのカウンターの値:25568
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