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◆福島第1原発大事故で、自民党の高市早苗政調会長が「死者が出ている状況ではない」と発言し、厳しい批判の嵐に晒されている。当たり前である。これは、いかなる認識なのか。原発大事故発生時から、今日まで、現場の作業員が、その実数がつかめないほど多数、命を失っているというのに、この実態を調査しようともせず、「死者が出ている状況ではない」と平気で発言しているその無神経さが、疑われている。
現場の原発施設に投入された作業員は、すでに2万〜3万人と言われている。このうち、体調が悪くなって、東北大学医学部付属病院や福島県立医大に送り込まれて、そのまま帰ってこない作業員は、最低でも3000人を上回ると見られている。死者は、全国の大学医学部で不足している解剖の検体に供されたり、あるいは、家族も知らないうちに闇から闇へと人知れず始末されているという。こうした情報を部外に流出させていた放射線医療関係者の多くは、情報を口外しないことを条件に、特別の地位を与えられている者もいる。
大半の作業員の体に変調が現れるところは、心臓部だという。最初は心臓がバクバクするところから始まって、心筋梗塞になって、死亡するというケースが、少なくないというのだ。放射能を大量に浴びて、この結果が、後に現れて苦しむケースになると、原因を実証するのはかなり難しくなるけれど、このなかから、死者が少なからず出てくる。
しかし、東京電力は、原発施設から消えた作業員の情報一切を「極秘」にし続けているけれど、作業員を集めて、原発施設に送り込んだ仲介人や放射能被害を受けた作業員の体を検査したり、最後を看取った関係者の口までは閉ざすことはできないのである。
従って、高市早苗政調会長が、いかに福島第1原発関連施設の内部で起きていることに無知であるかということが、今回の「死者が出ている状況ではない」という発言にモロに表れたとも言える。
◆高市早苗政調会長の無知さ加減は、これだけには止まらない。福島医科大学付属病院や福島県医師会など医療機関が、ひた隠しにしている極めて重大な事実である。市民団体の一部から報告されているのは、子どもたちが放射線被害に遭っているという。その被害状況を福島県医師会など医療機関が、ひた隠しにしているという。放射線の影響で甲状腺がんが生じるというのは、1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故後、チェルノブイリ地方の小児、とくに女児に多くの甲状腺がんが見られたことが報告されている。長野県松本市の菅谷(すげのや)昭市長は、1996年から2001年まで約5年半、外科医としてベラルーシに長期滞在し、チェルノブイリ原発事故後に多発した小児甲状腺がんの治療に当たり、医療支援を続けてきた。2012年7月、ベラルーシを訪れ、かつて自分が診た患者や知人、政府の医療関係者に会って、現在もなお悲惨な状況が続いているのを実感してきているという。
だが、日本政府は、もとより、自民党、医師会、大学医学部など医療界、さらにマスメディアは、この菅谷昭市長の知見を無視し続けている。福島第1原発大事故直後、マスメディアの一部は、菅谷昭市長をテレビ画面にも登場させて、意見を聞いていたが、間もなく、その姿と声は、消えてしまった。菅谷昭市長にしゃべられると余程都合の悪いことがあると、恐れたのであろう。
この都合悪い連中のなかに、自民党の高市早苗政調会長も含まれていると見なくてはならない。政治家は、社会のなかで異常事態が発生しているのを事前に予見して、政策的に
予防措置を取っておくのが最大の務めであるのに、その想像力すら働かないとみえる。異常事態は、科学的、医学的に実証されるまでには、相当の時間がかかる。しかし、実証された時は、「時すでに遅し」ということにもなりかねない。政治家は、科学者ともましてや医者とも違う。この意味で、高市早苗政調会長は、真の政治家とはとても言えない。
福島民報は6月19日付け紙面で「放射線の影響否定 甲状腺がん診断確定12人に」という見出しをつけて、以下のように報じている。
「東京電力福島第一原発事故を受けた県の県民健康管理調査の検討委員会は5日、福島市のコラッセふくしまで開かれた。2月の報告以降、18歳以下で甲状腺がんの診断が「確定」した人が9人増えて12人、『がんの疑い』が8人増えて15人になったとする結果が報告され、新たに就任した星北斗座長(県医師会常任理事)は会議後の記者会見で「現時点で、放射線の影響とは思えない」との見解を示した。星座長は、チェルノブイリ原発事故に起因するとみられる甲状腺がんが見つかったのは事故の4〜5年後以降だったとして、「放射線の影響があるものだとは思っていない」と述べた。会見には調査主体の福島医大の鈴木真一教授が同席し『(甲状腺がんやその疑いが複数見つかっているのは)検査機器が高性能になり、検査対象も広いためではないか』との考えを示した。一方、『放射線とがんとの因果関係の知見を得るには、時間をかけて調査を継続し、結果を積み重ねていくことが大事』とも語った。会議では、1次検査で一定の大きさ以上のしこりが見つかり2次検査を受けた子どもの診断結果が報告された。平成23年度の検査で甲状腺がんと確定したのは7人、疑いは4人で、計11人の年齢は13〜19歳。24年度は確定が5人、疑いが11人で、計16人は11〜20歳だった。県は、24年度の1次検査実施者が23年度と比べ3新たに就任した星北斗座長(県医師会常任理事)は会議後の記者会見で『現時点で、放射線の影響とは思えない』との見解を示した倍以上に増えたことが、確定と疑いが増えた要因の一つとみている」
この記事のなかで、注視しなくてはならないのは、「新たに就任した星北斗座長(県医師会常任理事)は会議後の記者会見で『現時点で、放射線の影響とは思えない』との見解を示した」という部分だ。武見太郎元会長以来、自民党の圧力団体であった日本医師会の下部組織である福島県医師会が、いかなる団体であるかだ。あくまでも開業医の利益を守る「利権団体」であり、一般国民や患者、ましてや放射線の影響を受けやすいと言われている子ども、とくに女児たちの味方ではないことを強く認識する必要がある。
◆高市早苗政調会長が、「死者が出ている状況ではない」と発言したのは、「原発セールス外交」を精力的、かつ無神経に展開している安倍晋三首相を援護しようとしたからではないかと思われる。だが、北アイルランドで開かれたG8に出席を前に訪れたヴィシェグラード4カ国(V4=チェコ、スロバキア,ポーランド,ハンガリー)に「原発売り込み」に力を注いだが、安倍晋三首相は、大事なことを計算に入れていなかった。それは、東欧諸国は、至近距離にあるチェルノブイリで起きた原発事故をいまでも恐怖感を持って記憶しているということだ。ヴィシェグラード4カ国からさらに西にあるドイツのメルケル政権が、福島第1原発大事故を教訓にして「2020年末までに原発ゼロ」を目指しているということも、意識の中からスッポリと消えて、何が何でも日本製の原発を売り込もうと盲目的に走り回っている感が強い。
この安倍晋三首相をまさに、盲目的にバックアップしているのが、高市早苗政調会長なのである。「民」という漢字が、「焼き火箸で目をつぶされた者」を示しているとはいえ、この盲目的な政治家に、盲従させられるほど国民有権者は、バカではない。
【参考引用】
産経新聞msn産経ニュースが6月19日午後2時10分、「原発再稼働関連発言、高市氏が撤回し陳謝」という見出しをつけて、以下のように配信した。
「自民党の高市早苗政調会長は19日午後、東京電力福島第1原発事故で死者が出ていないとして原発再稼働に意欲を示した自身の発言について『撤回し、おわび申し上げる』と陳謝した。党本部で記者団に語った。高市氏は17日、神戸市で講演し、原発の再稼働問題に『(東京電力)福島第1原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない』と述べ、党内外から批判が出ていた。党福島県連は19日午前、発言撤回と謝罪を求める抗議文を党執行部に提出。同県選出の森雅子少子化担当相(参院議員)も『大変怒っている』として高市氏に直接抗議したことを党本部で記者団に明らかにした。県連の抗議文は発言を批判した上で、『原発事故の影響による過酷な避難で亡くなられた方、精神的に追い詰められ自殺された方など1400人を超す災害関連死が認定されている』と被災地の現状を指摘した」
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