http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/227.html
Tweet |
福島原発、「燃料取り出し」いつ始まる?〈現地ルポ〉廃炉への遠い道のり(下)
http://toyokeizai.net/articles/-/14369
2013年06月20日 中村 稔 :東洋経済 記者
東京電力が6月11日、報道陣に福島第一原子力発電所の現場を公開した。報道陣への公開は今年3月以来となる。その取材内容をレポートする。
※「〈現地ルポ〉廃炉への遠い道のり(上)」はこちら
http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/214.html
■地下貯水槽も地上タンクも汚染水漏れで不安だらけ
4月には地下貯水槽で汚染水漏れが発覚した福島第一原発。汚染水の移送先のひとつとなった新設の地上タンク(G6タンク)も見えた。
地下貯水槽は、地上タンクが設置できない送電線下の土地を活用して施工された汚染水貯留施設であり、敷地内に7カ所(全容量5.8万トン)ある。
しかし、4月5日に2号貯水槽で漏洩が発覚。その後、1号、3号でも漏洩を確認。東電は地下貯水槽の使用をやめ、すべての汚染水を地上タンクに移すことを決め、4月16日から移送を続けている。すでに低濃度汚染水が入った4号の0.3万トン(7月上旬移送完了予定)を除くすべて汚染水(2.4万トン)の移送が終わっている。
漏洩した汚染水の量について東電は当初、2号貯水槽から最大120トンと推定していた。ただその後、水位計の不具合が見つかり、別の方法で再計算した結果、1〜3号の総計で20〜30リットルにとどまると修正。ただ、漏れた事実に変わりはなく、原因もいぜん不明。貯水槽を再利用できるメドは立っていない。
汚染水漏れに関しては地上タンクでも発生している。最近6月5日には、地下貯水槽の移送先であるG6タンクで3〜4秒に1滴程度の水漏れが見つかった。タンクは鋼鉄製の板をボルトで組み合わせた円筒形で、つなぎ目部分から漏れていた。貯水量を減らして漏れは止まり、漏れた水も回収したというが、原因はまだ調査中。施工時間を短くするため、溶接ではなく、ゴム製パッキンをはさんでボルトでつなげており、パッキンの耐用期間は5年程度といわれる。
こうしたいわば“仮設”のタンクが全体の3割近くあるとされ、今後も漏洩が続く不安がつきまとう。
■4号機プールから1533体の燃料取り出しが11月開始
一方、4号機の原子炉建屋では、今年11月の使用済み燃料取り出しを目指し、燃料を取り出すクレーンを固定するためのカバー設置工事が行われていた。
事故当時、4号機は1〜3号機と同様、全電源を失い、冷却機能を喪失したが、定期検査中で全燃料が炉心から建屋内の使用済み燃料プールに移されていたためメルトダウンは起きていない。ただし、プール内には今も1533体の使用済み燃料が存在している。
また、3号機と共用している排気筒を通して3号機の水素が流れ込み、水素爆発が発生したため、建屋が大きく破損している。2011年7月にプールの耐震補強工事が行われ、12年7月には建屋上部のガレキ撤去も完了したとはいえ、燃料の安全性を確保するには建屋からの取り出しが急務だ。
4号機から取り出す燃料は、4号機の建屋近くにある共用プールに移送される。共用プールには現在、事故前に運び込まれた1〜6号機の使用済み燃料(当初6377体)が沈められている。4号機の燃料を入れる空きスペースを確保するため、燃料の一部を4月から順次、乾式キャスクと呼ばれる専用容器に入れ、新設した乾式キャスク仮保管設備に移送しているところだ。同保管設備は取材コースの最後にバスから確認できた。
4号機からの燃料取り出しは2014年12月まで続く計画。作業中に大規模な地震が発生しないことを祈るしかない。3月18日にはネズミの接触が原因と見られる仮設電源盤のショートで停電が発生し、4号機燃料プールを含む重要施設の冷却が最長29時間にわたって停止した。こうした事故を起こさないよう万全の態勢が求められる。
■人を寄せ付けない1〜3号機、メルトダウンした燃料はどこに
バスは敷地南側のG6タンク前を通り北上。地下貯水槽前で停車したあと、海沿いの原子炉建屋へ最接近する。水素爆発で無残に崩壊した3号機建屋が眼前に迫る。炉心燃料が溶融(メルトダウン)した1〜3号機は、注水冷却を続けることで約15〜45度の低温安定状態を維持している。だが、周辺の放射線量は依然高く、1、2号機の建屋山側の空間線量は1000マイクロシーベルト毎時に達した。
廃炉に向けた中長期ロードマップでは、今から8年後の2021年までに溶け落ちた燃料デブリの取り出しを開始する計画。今はまだ、溶けた燃料がどこにあるのかもわかっていない。そして、30〜40年後までに燃料デブリの取り出しを完了し、原子炉建屋等の解体や廃棄物処理を実施して、廃炉を完了することにしている。
30〜40年後というと、現場の担い手は次の世代、もしくは次の次の世代に移っている。彼らはどんな思いで作業に当たるのだろうか。
バスは再び山側に上り、多核種除去設備(ALPS、通称アルプス)前で停車。汚染水の最終的な目標は「きれいにすること(浄化)」だ。既存の水処理設備は主にセシウムを除去するが、処理水の放射性濃度をいっそう低くするため導入されたのがこのALPSだ。貯水タンクの水をALPSに通せば、トリチウムを除く62種の放射性物質の除去が可能とされる。1日最大500トンの処理能力があるという。
発生する廃棄物は高性能容器(HIC)に収容。HICの強度不足を改めたことで当初の計画から遅れているが、現在、8〜9月からの本格稼働を目指して性能確認(ホット試験)を行っている。
しかし、これも汚染水最終処理の決め手とはなっていない。東電は処理水の海洋放出を模索していたが、トリチウムが高濃度のまま残るため、原子力規制委員会では処理後も水を構内に保管するよう求めている。結果的に、処理済みの貯水タンクが必要となる。最近になってALPSの処理タンクで水漏れも見つかり、試験運転を一時停止に追い込まれた。
バスは最後に乾式キャスク仮保管設備を通過後、免震重要棟へ戻る。バスでの取材時間は約1時間半。その後、福島第一原発の高橋毅所長が囲み取材に応じた。
■「明確な見通しは困難」「人材確保が大事」と高橋所長
「私が来た1年半前と比べれば、安定した方向に向かっているとは思う。現場作業員の被爆線量も1カ月1ミリシーベルト程度まで落ちている。しかし、3月以降、停電や汚染水漏洩などトラブルが続いたことはたいへん申し訳ない」と高橋所長は語った。「今後は原子炉からの燃料取り出しなど新たな取り組みがあり、もっと放射線量が高い環境での作業になる。そのための人材をしっかり確保する必要がある」。
本当に30〜40年で廃炉が終わるのかとの問いには、「はっきりした見通しが立てられる状況ではない。(1〜3号機の)建屋の中の実態把握はこれからで、作業は(遠隔操作ロボットなどの)技術開発に依存している。うまくいった場合は前倒しできようが、障害があれば後ろ倒しもありうる。時間がかかる廃止措置だが、放射性物質を敷地外に出して不安を与えるようなことはしてはならないと思っている」と答えた。
Jヴィレッジに戻ったのは14時25分。積算線量計は68マイクロシーベルトを表示していた。
今回の取材を通じて実感したのは、事故収束の難しさだ。廃炉の工程は険しく、果てしなく長い。今は汚染水の処理に手を焼いているが、メルトダウンした燃料の取り出しについては方法論が定まっていないどころか、現状把握すらできていない。この日も約3000人の作業員が現場で働いていたが、厳しさを増す作業環境下で人材を確保し、士気を維持していくことは容易ではないだろう。
とはいえ、廃炉作業は何年かかっても貫徹するしかない。過酷事故を起こした国としての絶対的な責務である。東電に任せきりになるのではなく、国際的知見も取り入れながら、政府、規制当局、学界など国全体が総力を挙げて取り組んでいくことが求められる。
(写真は梅谷秀司・日本雑誌協会代表撮影)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。