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日本の原子炉輸出第1号となった台湾の第4原発建設反対を訴え、デモ行進する市民=台北市で2013年5月19日、鈴木玲子撮影
http://mainichi.jp/feature/news/20130522dde012010007000c.html
2013年05月22日 東京夕刊
トップセールスの売り言葉は「世界一安全」−−。アベノミクスの成長戦略として原発輸出を掲げ、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)を訪れ、原発輸出を約束した安倍晋三首相。いまだ16万人もの原発事故の避難者がいることを思えば、「恥ずかしいからやめてくれ」と言いたくなる。なりふり構わず利益を追求する姿は、経済活動に血道を上げ、エコノミックアニマルとやゆされた時代よりも深刻ではないか。【庄司哲也】
福島第1原発の事故後、官民一体で具体化させた4月30日からの中東歴訪。安倍首相は現地で「原子力の安全向上に貢献していくことは日本の責務」と、原発輸出を成長戦略の柱に据える考えを強調した。サウジアラビアでは「(日本は)世界一安全な原発の技術を提供できる」とアピール。一方、国内向けには2月の施政方針演説(衆院)で「できる限り原発依存度を低減させる」と表明、国内外で言葉を使い分けている。
「リコール中の自動車を他国で販売するようなもの。日本独自の経済倫理思想のかけらもない。たとえグレーゾーンであってももうければ良いという考えを私は『修羅の経済思想』と呼んでいますが、まさにそれです」。中央大学総合政策学部の保坂俊司教授(比較文明論)は、原発輸出を切り捨てる。
保坂さんによると、日本の伝統的な経済倫理思想を表す言葉は「三方善(よ)し」だ。近江商人に由来するもので、経済活動は生産者、流通者、消費者それぞれが、自己の利益ばかりを優先せずに他者の立場で考えるという発想だ。
エコノミックアニマルという言葉は1960年代後半から70年代にかけて、日本人が利己的に振る舞い、経済的利益ばかりに血道を上げることを示す言葉として流行した。
保坂さんは「当時でも他者の利益を考え、その上で自らの利益を上げるという姿勢はまだ残っていた。金が金を生むバブル経済の崩壊を経て『他者性』は失われました」という。
例として挙げるのが、日本国内だけで独自の進化をしたといわれる携帯電話。生産者側の価値観で作られ、利用者が使わない、使いこなせない機能がたくさんある。「付加価値をつけることで単価を上げ、利益を得てきた」と指摘する。
トルコとは、総事業費が2兆円超のシノップ原発建設の優先交渉権で合意した。輸出する側には大きな利益だが、福島原発では、最近も汚染水漏れや停電による冷却システムの停止が起きている。相手に「原発は有益」と胸を張って言い切れるのか。保坂さんは「もしも原発事故があった場合に、他者(相手国)に対して製造者としての責任を果たせるのか。そういう視点を持っているのでしょうか」と疑問を投げかける。
核拡散防止条約(NPT)未加盟のまま核実験を強行してきたインドとの原発輸出の交渉は、損得勘定では済まない恐れがある。この問題の調査を続けてきた岐阜女子大南アジア研究センターの福永正明・客員教授は「原発事故だけでなく、軍事転用やテロの危険性をはらんでいます」と、警鐘を鳴らす。
インドは核保有国だが、核実験の強行で30年以上も国際社会から原子力関連貿易や技術移転の制限を受けている。原発は老朽化し、ウラン燃料も不足する。福永さんは「原発は核兵器に欠かせないプルトニウムを生む。インドに原発を売ることは核兵器開発の促進につながる」と語る。
日本は民主党の菅直人政権の10年6月、原子力協定の締結に向けた交渉を開始した。だが、「インドが再び核実験を行った際には協力を停止する」という日本側の示した条件にインド側が反発し交渉は中断。その姿勢からは「核」の軍事利用へのこだわりが垣間見える。
インドと敵対してきたパキスタンでは中国が原発建設を支援する。インドへの原発輸出は地域の緊張感を高めることにも一役買う。だが、大型連休中に麻生太郎副総理兼財務相はインドを訪問し、シン首相と会談。今月27日にはシン首相の訪日が予定されており、交渉の再開に向け協議するとみられている。
倫理を捨てた“修羅”の事例はまだある。安倍内閣は、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35の部品の対米輸出を、武器輸出三原則の「例外」とした。F35が米国からイスラエルに供与されれば、「紛争当事国に武器を輸出しない」とした三原則は崩れる。
「通常の商品輸出、システム輸出と同じように原発の輸出を位置付けてしまう安易な政治。それが地球的な危機を招いてしまうんですね」。原発への警鐘を鳴らし続けてきた経済評論家の内橋克人さんは、そう語った。輸出先の国を、原発事故とは異なる危機をはらんだ社会にしてしまうという指摘だ。
「例えば、日本が原発を輸出しようとしている中東諸国は絶対君主制の国が多い。それらの国では王族周辺に利益が集中しやすい。原発輸出は彼らの蓄財に手を貸すことで、裏を返せば市民社会の成熟、民主化にブレーキを掛ける。これに日本が加担してしまうことになるのです」。つまり、原発の輸出は社会的な不安定要素を輸出することにもなるという。
日本の原子炉の初の輸出先は台湾だった。台北市から東に約40キロに建設中の台湾電力第4原発で、原子炉は日立製作所と東芝、タービンは三菱重工業が受注。当初は04年稼働を目指したが、工事は進捗(しんちょく)率95%で中断している.。
00年の台湾初の政権交代で、民進党政権は工事凍結を打ち出した。建設続行か凍結かを巡って、発足したばかりの内閣が瓦解(がかい)するなど政治は混乱。その後も与野党対立の大きな軸となってきた。現在、建設の是非を巡る住民投票実施案が審議されている。台湾で日本の原子炉が生み出したエネルギーは、今のところ政治の摩擦熱だけだ。
「デフレからの脱却」という安倍政権の掛け声のもと、円安・株高が進行し、企業ばかりでなく、庶民も沸いている。経済にプラスなら、核保有国に原発を売り、武器輸出禁止の原則も捨て去るのであれば、それはエコノミックアニマル(動物)を飛び越え、ビースト(野獣)だろう。少なくとも、政府が掲げる対外戦略のうたい文句「クール・ジャパン」(かっこいい日本)にはとてもみえない。
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