http://www.asyura2.com/13/genpatu31/msg/719.html
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まず、次の新聞報道を読んでいただきたい。
以下引用:
http://www.asahi.com/special/08006/TKY200806160072.html
岩手・宮城地震の加速度、国内最大4022ガル
2008年6月16日11時9分印刷ソーシャルブックマーク
岩手・宮城内陸地震の震源に近い岩手県一関市で、防災科学技術研究所の観測網が国内最大の4022ガルの加速度を観測していたことがわかった。重力の加速度は980ガルで、上下方向でこの値を超えると地上のものが浮くことになる。これまで04年10月の新潟県中越地震の余震のとき同県川口町で気象庁が観測した2515.4ガルが最高だった。
観測地点では上下方向に3866ガルが記録され、これに東西と南北の水平2方向を合わせ、4022ガルになった。水平方向より上下方向の変動が大きく、観測地点は断層沿いで、地盤がもう一方の地盤に乗り上げた側の直上だった可能性があるという。
今回は、地震を起こした断層に極めて近いところに観測点があったため大きな値が観測された。防災科研は「断層の真上がどのように揺れるかを観測できた基本的な記録で、今後の地震対策のための貴重なデータになる」としている。
以上引用終わり。
重力加速度の980ガルの約4倍にあたる「上下方向に3866ガル」が観測されたのは、「地震を起こした断層に極めて近いところに観測点があったため」ということなのだ。現在、日本にある地震計は4000程度の様子。マグニチュード5以上のある程度震源深さが浅い地震の震源域の真上に地震計があって、上下方向の加速度を地震計が捉える確率はとても少なく、多分日本で起こっている震度を観測する地震数億回に1回もあるかないか程度だろう。これには、そもそも、M5以上の地震が起こることが年に日本全国で数回から十数回程度しかないことがある。
実を言うと、日本で初めて上下方向で980ガル以上の加速度が観測されたのは1995年の阪神大震災だ。そのため、それ以前は地震で物が飛び上がることがあるとは思われていなかった。実際には、ものが跳ね上げられたという言い伝えや目撃証言があったが、研究者の多くはそれを無視してきた。学会の主流がそう言った態度であったため、学説そのものがものが地震で跳ね上げられることはないとしてきたのだ。
多分、背景にはアメリカの地震の起き方が横ずれ断層型が主で、ものが跳ね上げられることが実際にほとんどないことがあるのだろう。
阪神大震災以降は、墓石とか鳥居とかが地震で跳ね上げられたという報告と言うか、観察記録がかなりの数上がってきている。実を言うと、これらの跳ね上げは地震の揺れというよりも地震衝撃波によって起こった可能性の方が高い。地震の縦波がいろいろなところで反射して特定の地表部分に集中し、そこで地表のものをはね上げるのだ。
そもそも日本で起こる逆断層型地震にしても正断層型地震にしても、上下方向にある程度でも大きく、つまり、10cmとか20cm実際に地面が揺れ動くことはまずない。阪神大震災のようなマグニチュードが7以上の地震で、震源域の真上に居ないと、そういった揺れに出会うことはない。それほど、日本の地盤は軟らかく、縦波は非常に簡単に減衰してしまい、同様に縦揺れもあまり伝わることがない。
更に、実際にモノが跳ね上げられるには、力のかかり方にいくつかの条件がある。単に地震計で上下方向の加速度が980ガル以上になるだけでは足りないのだ。
このことは、「物体のもつ運動量の変化はその間に物体が受けた力積に等しい」と表すことができる。運動量とは質量と速さをかけたものだ。力積とは力に時間をかけたものであり、力とは質量に加速度をかけたものだ。
ものが跳ね上げられるとは、運動量が0、つまり、速さが0の状態から例えば秒速1mの速さで動くことを意味する。
ものが動くとは、速度が変化することであり、それは運動量が変化することに等しい。そして、運動量の変化は、力積、つまり、力×時間=質量×加速度×時間の量に等しいことになる。
だから、例えば、「上下方向に3866ガルが記録され」た場所で、なぜ、地震計が跳ね上げられていないかと言えば、時間が極端に短くて、質量×加速度×時間 の加速度がいくら大きくても時間があまりに一瞬であるため全体の値が地震計をはね上げるほどの大きさになっていないからだ。
更に、地震計はある程度大きさがあり、センサー部分はその中のほんの一部だ。多くの場合、地震計本体は設置場所に何らかの形で固定されている。だから、質量×加速度×時間 の中の加速度と時間が仮にかなり大きくても質量が伴わなければ地震計を跳ね飛ばすところまで大きな力になれない。このことはボールペンで学習机を叩いてもほとんど学習机が動くことがないことと同じだ。ある程度勢いをつけてボールペンをぶつければ、かなりの加速度が出る。980ガルていどは普通に出るのだ。しかし、相当程度に勢いをつけてボールペンを机にぶつけても机が跳ね上がることはまずあり得ない。それだけ、もともとの質量差があるからだ。実際に地震でも、普通の地震であるなら、地面の揺れる個所はそんなに広くなく、幅数十メートルで長さが数キロといった程度だ。
1891年(明治24年)10月28日午前6時38分50秒に根尾村を震央として発生した濃尾地震(マグニチュード8.0)の震源断層は上下方向の最大変異量が6mていどであり、その写真を http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/thumb/b/bb/Neotani-danso.jpg/250px-Neotani-danso.jpg で見ることができる。
この濃尾地震が記録として観察できる日本の内陸で起こった最大の地震と言われている。過去2000年程度は現在観察が可能であるようすなので、この2000年で最大のものでも上下の変位が6m程度なのだ。しかも、この変異は一度の揺れで起こったというよりも、5分程度は続いたであろう全体の揺れの中で何回かの大きな揺れが集積してこの程度の変位になったはずだ。
M8の地震でもこうだから、日常体験できるようなM4程度の地震では地表面に段差が生じること自体がほとんどない。つまり、はっきり言ってしまえば、普通の内陸での直下型地震で原発が跳ね上げられるような地震はほぼ起きない。
ところが、例外がある。東海地震だ。東海地震はプレート境界型の地震であり、その震源域の真上に浜岡原発がある。
プレート境界型の地震は普通の内陸の地震とは異なり、プレートがある意味本当に跳ね上がる。普通の内陸の地震は地盤が断層面を境にして、その一方が他の上側にずれ上がるだけだ。その意味で、プレート境界型の地震における地面の跳ね上がりはまったく普通の地震とは異なるものだ。しかも、プレート境界型の地震の場合、跳ね上がる体積がとても大きい。数十キロ四方の広さで厚みがやはり10キロ程度あるものが一気に跳ね上がる。だから、その時間もある程度の継続時間がある。
おまけに、原発は岩盤の上に直接建設されている。揺れの勢いそのものが途中にクッションがない形で原発の建物へ直接伝わる。
プレートの跳ね上がりの大きさも浜岡原発がある地域なら数メートルは行くだろう。一回の揺れでそれだけの変位が生じるかどうかはよく分からないが、可能性はある。
ともかく、プレート境界型の地震が陸域を震源域として起こることは現代文明が成立してから多分今までに一回もない。この次の東海地震がコンクリート建造物が大規模に出現してからの第一回目の大きな地震になるはずだ。
浜岡原発が停止しているからと言って東海地震に安全だとするのはあまりに楽観的ではないだろうか。
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