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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013052290070732.html
2013年5月22日 07時07分
二〇二〇年東京夏季五輪は電力の余裕が十分あると国際公約しながら、国内では電力の安定供給のために原発再稼働を進めるという相反する説明を安倍政権がしている。電力確保は国民生活や経済活動はもちろん、世界各国から大勢の人が訪れる五輪開催に不可欠。整合性の取れた説明がなければ開催計画の信ぴょう性が疑われかねない。 (関口克己)
安倍政権発足後のことし一月、五輪招致委員会は国際オリンピック委員会(IOC)に詳細な開催計画書「立候補ファイル」を提出した。電力に関する項目では「東京では、既存の配電システムで、二〇年東京大会で発生する(電力の)追加需要に対応することができる」と明記した。
ここに、東電や他の電力会社の原発再稼働方針は書かれていない。にもかかわらず、ファイルでは電力は今後も安定して確保できるとアピールした。
最大の根拠として、昨年七〜八月の東電管内の最大電力需要五千七十八万キロワットに対し、七百八万キロワットの予備力があったことを挙げた。
この時期は東電の全原発が停止中。国外に向けては、再稼働がなくても電力に余裕があると宣伝したことになる。加えて、今後の新たな電力増強策として(1)東電が一五年までに既存の電力発電所の増強や新設で約三百万キロワット(2)東京ガスグループが約二百万キロワットの天然ガス発電所を建設・保有する−と列記した。
これらの余力は計約千二百万キロワット。日本の平均的な原発十基分に相当する。
ファイルは、IOC委員が五輪開催地を決める際の重要な判断材料。「東京大会のコンセプトは都や国との綿密な協議を重ねて作られた」と政府のお墨付きを得たと強調している。安倍晋三首相は招致委の最高顧問。全閣僚が特別顧問に名を連ねる。
だが安倍政権は、国内向けには原発再稼働へと前のめりの姿勢を隠さない。
この問題は、四月二十五日の参院予算委員会で取り上げられた。生活の党のはたともこ氏が、ファイルの電力に関する記述が正しいなら原発再稼働は不要だとただすと、茂木敏充経済産業相はファイルの内容について「間違いがあるか、ないかはお答えする立場にはない」と答弁。「電力供給は、ある時点とか東京が良ければいいという話ではない」と原発再稼働の必要性を強調した。
茂木氏の発言は、ファイルの内容に誤りがあるかの印象を国内外に与えかねない。
それでも安倍首相は五月十五日の参院予算委員会で、今後の再稼働について「できる限り早く実現していきたい」と表明。柏崎刈羽原発の再稼働を目指す東電を後押しした。
東京五輪の最大の目的の一つは、震災からの復興のアピール。だが、矛盾しているともとれる説明は、日本が原発事故から得た教訓と向き合っているのかどうか、国際社会に疑問を抱かせるおそれがある。
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