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ところで「脱原発」ってどうなったの?(日経ビジネス)
http://www.asyura2.com/13/genpatu31/msg/575.html
投稿者 BRIAN ENO 日時 2013 年 5 月 15 日 10:30:11: tZW9Ar4r/Y2EU
 

エネルギーの専門家、平沼光・東京財団研究員に聞く


金田 信一郎

2013年5月15日(水)


ここに来て、すっかりエネルギー政策の話題が萎んでしまった。震災後、「脱原発」と再生可能エネルギーの議論が沸き上がったが、安倍政権下でどう動いていくのか。エネルギーの専門家、平沼光・東京財団研究員に聞いた。
(聞き手は金田信一郎)

平沼 光(ひらぬま・ひかる)氏
東京財団研究員。日産自動車を経て2000年より現職。現在、政策研究部で外交・安全保障、資源エネルギー分野のプロジェクトを担当。著書に『日本は世界一の環境エネルギー大国』『日本は世界1位の金属資源大国』『原発とレアアース』。


東日本大震災による原子力発電所事故で高まったエネルギー問題に対する議論が、最近ではあまり聞かれません。

平沼:そうですね。民主党政権時代には、「(エネルギーの)ベストミックス」という話が出ましたが、今の政権は具体的な言葉や政策をあまり出していません。
安倍晋三政権は、民主党時代に比べると「脱原発」には消極的に見えます。
平沼:ただ、自公連立政権合意文書では、「原発の再稼働については、国際基準に沿って安全第一主義を徹底した原子力規制委員会の専門的知見の判断による」としています。また、「省エネルギー、再生可能エネルギーの加速的な導入や火力発電の高効率化等の推進によって、可能な限り原発依存度を減らす」という内容もあります。両党で合意している事項なので、この方向は簡単には変わらないでしょう。
確かに文章を見る限り、民主党政権時代からほとんど変わっていないことになります。
平沼:文字上はそう読めます。でも、原発を可能な限り減らすということと、民主党政権が打ち出していた「脱原発」と、イコールなのかどうかは、これから具体的な政策を見ていかないと分かりません。
安倍首相は就任前後に、民主党政権の脱原発政策を見直すという内容の発言を繰り返していました。
平沼:そうですね。そこがちょっと現政権のエネルギー政策の未来図を分かりにくくしています。日本のエネルギー政策は、はっきり言って、政府から具体的なものが出されていません。まあ、できることをやるしかない。当然、安くて安定した火力発電ができるのならば拡大していく。再生可能エネルギーも使えるのであればやりましょうと。
火力発電に関しては、北米のシェールガス革命が騒がれるようになりました。また、ロシアのサハリンから天然ガスのパイプラインを通す、という話も出てきています。ここに来て、この2つは大きな変化ですね。
平沼:特に北米のガスを取りに行こうという意思が、明確に日本から出ています。それを見越して昨年9月にはカナダの天然資源担当の大臣が来て、私も面会させていただきました。
どういう話し合いになったのでしょうか。
平沼:(カナダ側は)日本がこれから重要なパートナーだというメッセージを発していました。特に資源エネルギー関連の、シェールガスやレアアースなどについてです。これから需要が高まってくる日本に、食い込んでいこうという意図が表れていたと思います。
なるほど。しかし、レアアースに関しては、日本の領海内にも大量に埋まっていると言われています。
平沼:確かに資源としては、大きな意味を持っています。品質としても遜色ない。問題は、採掘が可能かどうかです。
それは、経済コストの問題ですか。
平沼:そういうことです。経済的に見合うのか、それがまだ分からない。
 ただ、日本の国土にレアアースが大量にあった、と。しかも大きな特徴は、放射性物質の含有量が極めて少ないことです。あとは、採算ベースにのった採掘技術が確立されるかどうか。しかし、そもそも(資源が)あるかどうかで大きな違いが出てきます。
要するに、資源獲得の交渉に影響するわけですね。
平沼:資源の世界は相場ですから、何かあれば上がったり下がったりするわけです。そうした意味で今後、技術革新があれば、相場に影響してくると思います。
「うちにはレアアースが眠っているし、実用化もできる」ということになると、輸入交渉も変化する、と。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130513/247957/?mlp&rt=nocnt

平沼:そうですね。「そのうち、彼らは本当に採掘するのではないか」と思わせれば、交渉に影響します。だって、日本ですから。

レアアースは「単なる泥」になる?


要するに、技術力を磨いてなんとか掘り出す、と。
平沼:トヨタ(自動車)のプリウスがいい例です。ハイブリッドカーが出てきても、当初は「ニッチな市場しか作れない」と言われました。でも、今ではどうでしょうか。
 シェールガスだって同じです。米国が1970年代に開発した当時、「あんなものは使えない」という話だったんです。それが今は、「シェールガス革命」と言われているのですから。資源エネルギーという世界は、明日、何が起こるか分からない。
 だから、日本がこれからどうするのか、みんな見ていると思いますよ。本当に力を入れて取り組むのか、調査研究レベルで終わってしまうのか。
平沼さんはどうなると見ていますか。
平沼:やりようだと思いますね。技術の進歩は、考えている以上に早いと思います。
 レアアースの場合、考えるべきことは、中国以外の場所からレアアースを調達して積極的に使っていく動きと、もう1つは、「レアアースの使用を限りなく減らそう」という努力です。この両方が今、進んでいる。
 どちらの流れが勝つか。技術革新がどんどん進んで、レアアースという資源は使わなくてもいい、という世界になれば、「単なる泥」ですから。わざわざ他国から調達する必要などなくなります。
 逆に、レアアース資源を効率的に採掘できるようにして、潤沢に手に入ってしまえば、これからも引き続き使っていこうという方向に流れます。今は、ちょうど分岐点に来ています。どっちに行くのか、と。
でも、いずれにしても、日本の技術力がポイントになりますね。
平沼:この重要な時期に何をするか。私は今、世界のエネルギーの潮流が大きく変わり始めているんだと思います。
 4月に米国のオバマ大統領が出したエネルギー予算を見ると、よく分かります。米国はシェールガス革命で潤っているから、再生可能エネルギーには力を入れないというイメージがあります。ところが、実はオバマ大統領は再生可能エネルギー発電を2020年までに倍増するという。次世代自動車の開発予算も、2012年度比で75%増と、エネルギー分野で大きなイノベーションを起こそうとしている。そうした方向に舵を切っていくと明確にしていて、そのキーになるのがやっぱり技術力なんですね。
なるほど、米国は20世紀の「石油時代の覇者」から、今度は再生可能エネルギー時代のトップランナーに移行しようとしているわけですね。
平沼:そうですね。もちろん、思ったように全てが動くか分かりませんが、オバマ政権下で目指しているのは、イノベーションによるエネルギーの効率化でしょう。化石燃料も含めて、可能な限り技術レベルを高めていく。その中には、石炭火力や天然ガスの発電の弱点を克服することも含まれている。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130513/247957/?P=2



日本の再生可能エネルギーへの取り組みは、どう見ていますか。

なぜ「原発でもいいのでは」と思うのか?


平沼:ポテンシャルでいえば風力、特に洋上風力が最も有望でしょう。それも、日本近海は海が深いので、福島県沖で実証実験している浮体式洋上風力発電(海底に着床させず、洋上に浮かんだ構造物を利用する発電方式)ですね。
 そのためには、対応した電力システムを作り上げることが必要です。再生可能エネルギーは風力や太陽光などの自然現象に左右されるので、発電量に変動が起きます。それを平準化しないといけない。それを考慮に入れた電力システム改革が議論されています。
これは、既存の電力会社が構築することになるのですか。
平沼:これは国によって、様々な方式が採られています。例えばスペインでは、発送電を完全に分離して、発電会社が持っていた送電網も全て送電会社に売るように決めました。その送電会社が、複数の発電会社から送られてくる電力を全てつないでコントロールする。例えば、風が強くなって風力発電量が上がってきたら、どこかの火力発電から来る電力を落とす、というような調整をしている。
発電会社が、「何で自分たちが調整弁にされるんだ」と怒ることはないのでしょうか。
平沼:それは怒りますよね。だからこそ、国が政策として優先順位を決めるわけです。要は、「再生可能エネルギーを優先的に接続しましょう」と。私はスペインで、「何でそう決めたのか」と聞いたら、単純明快な回答が返ってきました。「エネルギー安全保障です」と。自国には(化石燃料の)エネルギー資源がないから、海外に頼ることになる。しかし、石油ショックで痛い目に遭った。そこで、エネルギー分野での自立を目指して、風力中心の再生可能エネルギーをやっていこうと決めた、と。それに合った電力システムを作っているわけです。
日本にとって参考になる事例ですね。
平沼:欧州の話をすると「国が隣接していて、外国から電力を融通してもらえるから、再生可能エネルギーができるんだ」という。しかし、スペインはちょっと事情が違います。ピレネー山脈によって分断されていて、簡単に他国から電力を譲り受けられません。島国の日本とあまり変わらない条件です。「そっくり真似をしましょう」とは言いませんが、エネルギー多元化を議論するならば、欧州の事例は研究すべきでしょう。
日本は「エネルギー安全保障」という視点が定まっていません。
平沼:結局、今、日本が揺れてしまうのは、「自分たちは何をしたいのか」が見えていない。震災で電力供給の問題が起きて、「エネルギー供給を再考しなくてはいけない」となった。だけど、その話が消えかかっているように見えるのは、一時は騒がれたけど、今になると「何をしたらいいんだろう」というところが見えなくなってしまったからでしょう。エネルギーに関する優先順位が付いていないのです。
それで、原発が再稼働し始めたら、「それでいいではないか」という雰囲気になってしまった。
平沼:当然、現場で電力を作っている人たちは、それぞれのポジションがあるわけですから、主張しますよ。原発に関連している人たちは、「原発をやってくれよ」と言うだろうし、再生可能エネルギーを始めている人は、「もっと、力を入れてくれ」と言う。それは当然です。だからこそ、国として優先順位を示さないといけません。
結局、大きい会社が関わっている所の声が大きい。
平沼:それは当然ですよね。
日本の地形を考えれば、持続可能性を考えると、再生可能エネルギーを1番に考えるべきなのでしょうか。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130513/247957/?P=3

平沼:これは、時間軸で見て、今やるべきことは何なのか、ということをまず考えなければなりません。当然ながら、今やるべきことは、将来につながっていきます。今この瞬間の電力供給を補うことを考える、短期的な視点も必要です。しかし、もう一つ大事なのは、先を見据えた取り組み。これをやらないと、10年後、ほかの国に抜かれています。

「標準化戦争」で米韓に出し抜かれる

 オバマ大統領は、2020年までに再生可能エネルギー発電を倍増することを狙っている。それで今の予算も、このターゲットを見据えて、今やるべきことに落とし込んでいるのです。日本としても、早急に、何が日本のエネルギーにとって一番大切なのか、優先順位をつけることです。それに向かって20年後の目標を設定し、今やるべきことを決めないと国際競争に負けます。だって、オバマ大統領は、「これはレースだ」と言っていますから。日本は、まだレースだと感じてないんですね。
日本の再生可能エネルギーの施策は、20年後や50年後の姿を見据えているというよりも、目の前の電力供給を考えたものになっているのでしょうね。
平沼:だから、「今やってもペイしないだろう」という話になってしまう。そうではなくて、20年後のエネルギー体制や国際競争力のために、今、何をすべきか。大きな絵を描いた中で、1つひとつの政策を当てはめていくべきでしょうね。
そして、洋上風力では韓国が積極的に「国際標準を作ろう」と動いている。
平沼:最新の動きは分かりませんが、IEC(国際電気標準会議)で、浮体式洋上風力発電の国際標準化ワーキンググループの議長に韓国がつきました。しかし、技術が確立されていないため、出した案に各国が合意しなかった。今も韓国は、一生懸命、標準化に向けた努力を続けていると思います。しかし、このワーキンググループの事務局がどこの国か知っていますか。
どこですか。
平沼:米国です。本当に抜け目がないんです。しかも米国は、浮体式洋上風力で、もうポルトガルにおいて実証実験を成功させています。日本の1歩先に抜け出してしまった。しかも、米国の予算には洋上風力が入っている。見事ですよ。国際標準化でもしっかり要職にあって、実証実験を成功させ、「物になった」と思ったらカネを付ける。その米国の風力発電は、すでに世界2位ですからね。
米国の田舎町では、よく風車が回っている光景を目にします。
平沼:これを米国主導でビジネスにしようとしている。そのためにイノベーションだと。
エコロジーという米国に似合わない事業分野で、オバマ大統領がトップに押し上げたわけですね。
平沼:選挙でまた勝ちましたし、少なくとも彼が大統領の間は、この方針を変更しないでしょう。このまま走り続けるんじゃないかなと。
あと(大統領任期の)4年近く政策が続けば、技術的にかなり進んでしまいますね。
平沼:そこが本当に怖いんです。「日本は技術が進んでいる」と思っているけれども、標準化とか、いわゆるフレームワークで押さえられて、どうにも動けないような状況を作られしまうことだってあるんですよ。これまで日本は、様々な分野で、標準化を米国に握られて辛酸をなめてきましたから。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130513/247957/?P=4




今回も日本としては厳しい状況ですね。

圧倒的な技術で巻き返す

平沼:まあ、こうなった以上、日本はやっぱり得意な分野で勝負するしかない。つまり、技術で圧倒的なイノベーションを起こすことです。「より良いもの」を世界に供給していくのが、日本の伝統的なやり方ですから。
そう開き直って、技術で勝負する、と。
平沼:だって、今はレアアースの調達で大騒ぎをしているけど、振り返ってみれば、レアアースがハイブリッド自動車のモーターに使用されたから、これだけ注目されているわけです。そのモーター技術を開発したのは日本人ですから。洋上風力発電のモーターにも使われている。多くの製品にレアアースが使われていますけど、日本人が考えなかったら、世の中に広まらなかったことばかりですよ。
 だから、日本はこの分野で、一生懸命汗をかくべきだと思いますよね。それと同時に、努力の成果がきちんと得られるように、電力システムを構築することです。
 結局、安倍首相がロシアに行って交渉ができるのは、日本の技術があるからです。それを提供すると相手に言えば、資源交渉だって動き出します。発電に使う資源エネルギーを獲得するためにも、エネルギー分野における技術の「交渉カード」を作り上げる。
領海内に大量のレアアースが眠っている、という事実だけでは弱いわけですね。
平沼:それだけでは、ちょっと弱いでしょう。他にも、日本は高い技術を誇るエネルギー分野があります。洋上の風や、太陽光をエネルギーに変換する技術も優れています。高効率の石炭火力発電など、いい技術は山ほどあるわけです。
 そして、浮体式洋上風力発電は、まだ世界で本格的な商業化が実現していないので、是が非でも成功させるべきでしょうね。地熱だってインドネシアなど、海外で売ることができます。米国も地熱には注目していますから。そうやって、多くのエネルギー分野で技術のトップに立つことで、資源だって獲得しやすくなります。それが、日本のエネルギーにとって、進むべき道として「正解」だと思っています。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130513/247957/?P=5


 

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コメント
 
01. 2013年5月15日 11:03:36 : ICDifRZ5LQ
原発のネガティブな部分には全く触れない文章、主張。

02. 2013年5月15日 12:22:24 : 7OpGsifAXA
原発推進派のこの間、脱原発を刺激しないようにひたすら隠れて再稼働も進められてないだろ。いつもの手だ。
再稼働を発表した途端に脱原発運動も再開する。

03. 日高見連邦共和国 2013年5月15日 12:43:45 : ZtjAE5Qu8buIw : C7Wqvb1wZA

反吐が出る。

04. 2013年5月15日 16:32:05 : UXKjQTYwdw
この東京財団というのは、日本財団(旧日本船舶振興会)が設立した財団法人。
顧問が笹川良一の三男・笹川陽平。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%B2%A1%E5%9B%A3

こんな団体の研究員だから、このどうしようもない発言も納得がいく。


05. 2013年5月16日 10:42:59 : 45vbbEzEG6
------平沼:結局、今、日本が揺れてしまうのは、「自分たちは何をしたいのか」が見えていない。

記事の最重要ポイントでしょうね。あいも変らず「自然エネルギーはまだ現実的では
ない」などという馬鹿が日本にはいる。世界は数歩も先にいる。

スペインの自然エネルギーの取り組みが似た環境にある日本に参考になる点や、アメリカ
のオバマ政権の強力な自然エネルギー推進(かってはそれほどでなかった)とか外国の様子を見てしか動けない日本人にも響く内容だ。


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