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ギリシャ神話のヘルメスは商業の神様。ある男が、その木像をつくって市場で売ろうとした。なかなか買い手がつかない。そこで男は「恵み深く、御利益あらたかな神様はいかがですかあ」と売り声を上げた
▼聞いていた客が尋ねた。「おまえの言う通りなら、なんでそれを売ってしまうんだ」。男が答えて言うには、「私はすぐに利益が欲しいのですが、この神様ときたら利益をお授けになるのが遅いんです」
▼イソップ寓話(ぐうわ)の「木像売り」。安倍晋三首相は中東歴訪で「原発はいかがですかあ」と輸出のトップセールスをして歩いた。三菱重工と仏アレバ社の企業連合がトルコの原発建設を受注する運びになり、官民連携の“成果”と評価する向きもある
▼が、本当にそれでいいのか。大いに疑問だ。福島第1原発の事故収束のめども立たない中、「原発は安全に御利益を生む」という“神話”をいまだに信じ込んでいる人は、日本にどれだけいるだろう
▼再稼働をめぐって賛否は分かれている。事故の原因究明さえできていないのに、なぜ「安全」と胸を張れるのか。たとえ相手国が望み、契約に納得しているとしても、事故の際に人生を破壊されるのは、どこの国でも原発の周辺に暮らす住民だ
▼万が一の時、被災者は売り手を恨むだろう。ちなみにヘルメスには「うそつきとばくち打ちの庇護(ひご)者」との肩書もあるそうだ。
2013・5・9
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/
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