04. 2013年5月01日 01:36:40
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JBpress>海外>欧州 [欧州] 世界中で広がる放射性廃棄物の不法投棄 英国、ドイツが大量に海へ、汚染拡大の懸念強まる 2013年05月01日(Wed) 川口マーン 惠美 ドイツのテレビチームが無人の潜水艦を使って、イギリス海峡の海底124メートルのところで、核廃棄物の入ったドラム缶の撮影に成功した(ユーチューブ動画:「Tausende Tonnen Atommüll im Ärmelkanal [何千トンもの核廃棄物がイギリス海峡に] 」。 1950年から63年の間に、イギリスとベルギーは、この海峡にドラム缶2万8500個分の核廃棄物を沈めた。 欧米諸国が沈めた大量の核廃棄物が眠る大西洋や北海 関係者は、これらのドラム缶はとっくの昔に錆びて、放射能物質は大海に流出し、すでに希釈して無害になっていると信じていたらしいが、このたびの撮影で、そうではないことが分かった。 もちろん、壊れているドラム缶も撮影されているが、原形を保っている物が2個撮影されているのだ。これが、壊れなかった最後の2個というわけではないはずで、少し探せば、おそらく近辺に、核廃棄物入りドラム缶は、まだまだたくさん転がっているのだろう。 フランスのコタンタン半島西方沖合い、イギリス海峡に浮かぶチャンネル諸島。一番北がオルダニー島(ウィキペディアより) 国際原子力機関(IAEA)の報告によれば、この2万8500個のドラム缶は、1万7244トンの軽度の汚染の核廃棄物とともに、チャンネル諸島のオルダニー島の北側の断層部分に沈んでいる。
このたび、調査チームが計量すると、この海域の放射線量が高かった。 ドラム缶の廃棄された場所は124メートルと深度が浅いので、これ以上放射能が漏れ出すと、海水が汚染され、困ったことになる。まずいことに、ここは漁業の行われている場所でもある。 ほぼ、あるいは、全く不可能なことを、常に力強く主張する緑の党は、ドイツ政府がこのドラム缶の引き揚げに向かって尽力すべきだと言っている。 しかしながら、イギリスとベルギーが、ドイツの提案に素直に従うとは、とても思えない。「だったら、ドイツがやってちょうだい」と言われるのが落ちだ。 核廃棄物は、どうやら大西洋や北海にもたくさん沈んでいるらしい。やはりIAEAの資料によれば、1949年から82年の間に多くの国が核廃棄物の詰まったドラム缶を海に捨てた。ドイツももちろん捨てている。 中でも海洋投棄の王様は、かつての海軍大国イギリス。大西洋と太平洋に投棄された放射能量の76.6%がイギリスの物であるという。イギリスの次に多いのが海のないスイスで、アメリカの投棄はイギリスの10分の1に過ぎない。 ただし、アメリカの場合、海に捨てなくても、多くを野ざらしにしているので、感心はできない。 海洋投棄は、最初は各国が個別に行っていたが、1967年からは各国が協力して行うことになった。72年にはそのための条約が採択されている。 ドイツでは核廃棄物で地下水汚染が懸念される事態も 旧ソ連による「核投棄」という過去をいまも引きずっているロシア北西部のコラ半島〔AFPBB News〕
そういえば、IAEAの統計には旧ソ連が抜けているが、北海に投棄された核廃棄物は、45%以上が旧ソ連の物だと推定されている。 その後、1982年以降、海洋投棄は行われていないということにはなっているが、本当のところはよく分からない。それに、海底に眠るドラム缶が、今どういう状態になっているかも、もちろん分からない。 どうなっているか分からない核廃棄物は、ほかのところにもある。ドイツ北部のアッセという場所では、1967年から78年の間に、岩塩の廃坑跡に12万6000個のドラム缶が運び込まれた。 地下725メートルという深さなので安全と思われたが、最近、皆が忘れたころになって、坑内が崩壊している可能性、あるいは、坑内に塩分の濃い地下水が浸み込んでいる可能性が指摘された。下手をすると、付近の地下水が汚染される危険がある。 事態を重く見た連邦放射能対策庁は、アッセのドラム缶を地上に回収することを決定し、2010年の初め、調査のためのボーリングを開始したが、はっきり言って、地下700メートルの彼方から、12万個以上の、ひょっとすると放射線を発しているかもしれないドラム缶を、どうすれば回収できるのか、誰にも分からない。 それに、回収しても、持って行き場もない。だから、数年のうちに回収というだけで、きちんとした予定も立っていない。コストに至っては、試算するのもおぞましいほどの額になるはずだ。 核廃棄物の仮貯蔵をめぐり、死者も出たほどの反対運動が30年続く 2022年までに原発を全廃する予定のドイツだが、実は、使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物の最終処分については、極めて混乱している。 今までは、北ドイツのゴーレーベンという場所の、やはり岩塩の廃坑に貯蔵場所を建設し、仮貯蔵してきたが、何しろ住民の反対運動が凄まじい。プロのデモ屋なども加わって、これ以上ここに核廃棄物を運ばせまいという過激な反対運動が、かれこれ30年も続いている。 フランスで処理された放射性廃棄物をドイツ北東部ゴーレーベンの核廃棄物貯蔵施設に輸送する列車(2011年11月25日撮影)〔AFPBB News〕
ただ、そうは言っても、ゴーレーベン以外に保存場所がないので、今でもときどき処理済みの核廃棄物が搬入されるのだが、そのときの騒ぎは、日本人の想像力を超える。輸送を護衛する警察と、それを阻止しようというデモ隊が激しく衝突し、死者が出たことさえあった。 最初にちゃんと話し合いをしていなかったことがそもそもの原因とも言われているが、たとえ最初がきっちりと始まっていたとしても、事態が収まっていたかどうか。 時が流れれば、人間が変わり、時代が変わり、考え方が変わるので、どのみち反対運動は避けられなかったような気がする。しかもここ数年は住民だけでなく、国も、州も、自治体も、それぞれの利害を盾に、縦横無尽に争っていた。 ところが、このたび、一応その争いに終止符が打たれることになった。平たく言えば、今までのことをすべてなかったことにして、最終貯蔵地を一から探しましょうということになったのだ。 そのために「核廃棄物貯蔵地選定法案」というものができた。これをできるだけ早く議会に提出し、夏休み前に連邦議会を通し、貯蔵地選定に着手するという計画だ。 明らかになっている法案の内容は、気が遠くなるほど遠大で、まず、15年までに、選定の判断の基準を決める。それから候補地を5つに絞り、19年までにそれをさらに2カ所に絞る。20年より、その2カ所で試験掘削をし、複数の専門家の意見を聞く。31年までに決定し、工事にかかる。40年から貯蔵。 これを見ただけで想像がつくのは、候補地を5つに絞るまでに、ゴーレーベンで30年間起こっていたような住民の反対運動がそれぞれの候補地で盛り上がり、紛糾するだろうということだ。しかも、ゴーレーベンも、再び候補地の1つとなることはおそらく間違いない。まだまだドイツには平和は訪れない。 こじれにこじれる最終貯蔵地選定。そのツケは国民に 実は、ゴーレーベンは、核廃棄物の貯蔵所としては、最適の場所だという声が今でも専門家の間では高い。 元外交官で、評論家、およびエネルギー戦略研究会会長などを務める金子熊夫氏は、ゴーレーベンを過去に何度か訪れ、エレベーターで地下1300メートルまで潜って見学している。 「広大な岩塩層地帯で、日本人から見たら全く申し分のない、理想的な地形」というのが、その印象だったそうだ。「例えば岐阜県・瑞浪サイトのような大量の地下水に悩まされるなどということとは全く無縁の、勿体ないような地質条件」と見る。 ゴーレーベンの様子はよくニュースの映像でも出てくるが、確かに、巨大で堅固な地下都市と言った様相だ。 ただ、こじれすぎたため、そのままでは収まりがつかない。だから、すべてを振り出しに戻したうえで、つまり、ゴーレーベンも、他の土地と同じ条件で、また選定にかける。結局、ゴーレーベンを、今度は正規の手続きを踏んで、最終貯蔵地にするのが目的であるのかもしれない。 なお、この法案に一番反対しているのが電力会社だ。というのも、貯蔵地選定にかかる膨大な費用の負担は、すべて電力会社が持つと、法案が定めているからだ。 彼らにしてみれば、すでにゴーレーベンという最適な貯蔵地があるのに、なぜ無駄だと分かっている探索の費用を電力会社が出さなければいけないかというところだ。 この決定は、まさに政治的なものであるのだから、税金でやるべきだという主張でもある。しかし、電力会社の負担となれば、どうせそれは電気代に乗せられるだろうから、どちらに転んでも一般消費者がツケを払わされることには変わりない。 脱原発でCO2の大量排出国になりつつあるドイツ 1960年代、原発が華々しくデビューしたころ、それが将来、これほどさまざまな問題と、そして、莫大な出費をもたらすということを、誰が想像しただろう。 今日は触れないが、脱原発自体も、現在、スムーズに進んでいるとは言い難い。脱原発決定後のこの2年間、ドイツで起こったことは、議論と紛糾のみであったと言っても過言ではない。 確かなことは、すでに電気代が上がり、そして、これからも上がるだろうということだ。 将来は、送電線の建設地にしろ、核廃棄物の貯蔵地にしろ、決定はもっと住民の意見を聞き、合意を取り付けてからなどと言われているが、そんなことをしたら、100年待っても何も決まらない。 しかし、住民を無視して何かを決定するということも絶対に不可能だ。ドイツの脱原発は、このままいくと次第に膠着状態に陥るような気がする。 しかし、ドイツの電気の輸出は今、伸びている。今年最初の4半期(1-3月)では、太陽光と風力発電が減少した(前年同期比17%減)にもかかわらず、電気の輸出は2倍に増加し(輸出先はオランダ向けが急増)、過去最高とか。 輸出が伸びている最大の理由は石炭火力が頑張っているからだ。石炭の火力発電所の建設も進んでいる。 脱原発で世界的に注目されているドイツが、その実、石炭火力拡大で二酸化炭素(CO2)の大量排出国になりつつあるという事実を、日本の反原発派や環境保護派はもう少し調べた方がいい。 それに目を瞑ったまま「ドイツを見習え」とばかり叫んでいると、間違った方向に行ってしまうかもしれない。 |