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原発2年04 多重防御
http://takedanet.com/2013/04/2_f9c6.html
平成25年4月8日 武田邦彦(中部大学)
福島の原発の汚染水プールから大量の放射性物質(数兆ベクレルと考えられます)が漏洩しています。すぐに私たちの生活に影響を及ぼすことは無く、漏れたものの内、セシウムは土に付着すると思いますが、ストロンチウム始め、危険な元素のこれからが心配です。
このニュースは随時、書いていきますが、緊急性はないので、とりあえずシリーズを出します。
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(ところで、このシリーズは原発の安全について、1)専門的なレベルで、2)国会事故調などの素人議論では無く、解説をしていきたいと思います。)
固有安全性と対を為していた原発の安全思想が「多重防御」でした。多重防御のわかりやすい例が「電源」で、原発は停電すると爆発する可能性が高いので、4重の設備で停電しないようになっていたはずでした。
外部からの電気を受電する主電源、同じく外部からの電気を受ける副電源、ディーゼル発電機を用いた自家発電、それに非常用バッテリーの4つです。
ところが実際には東北大震災の揺れと津波で4つとも壊滅しました。まず主電源は地下にあったこと、原子炉建屋が立っている海抜が7メートルで津波による海水面の上昇が15メートルでしたから、地下は水没し、主電源は止まりました。
次に副電源も地下にありましたから、これも浸水で停止しました。
さらにディーゼル発電機も地下にあったので、これも浸水で停止しました。もともと副電源もディーゼル発電機も主電源とは異なる所においてあるはずでしたが、いつの間にか同じ地下室にあったのです。
日本の原子力発電所は海岸線にあることだけでも世界で特殊な立地です。アメリカやフランスなど原子力発電所が多い国では、ほとんどが内陸にあり、海水では無く、川の水で冷却をしています。
海は荒れることがあり、高潮、津波も危険です。また塩水なので腐食も起こりますので、安全を第一にすれば内陸で川の水を使うのが当然でもあります。でも日本ではなぜ海岸線にあるのでしょうか?
内陸に作ると住宅がそばにあったり、川の下流の人が廃液が危険と反対するので、反対する人が少ない「過疎地の海岸線」に日本では原発を作っています。つまり「原発は危険だと言われるので、より危険な場所に作る」という矛盾があるのです。
海岸線に作っている原発の電源を地下におくことは危険だという指摘はありましたが、固有安全性の問題と同じで「原発は安全だから、安全だ」という循環論法が官僚や電力会社の間に根強く、技術的な安全性は軽視されていたというのが実体です。
第四の電源、バッテリーが動かなかった原因はあまりハッキリしていません。一説では一回も非常訓練をしていなかったので、コンセントが合わなかったという考えられない理由も言われています。
また主電源、副電源、ディーゼル発電機が同時に破壊される可能性のある地下に設置していたので、8時間しか持たないバッテリーでは不十分だったのですが、これも「事故なんか起こらない」という「安全神話」のなかで冷静な議論は行われなかったのです。
「多重防御」は電源ばかりではありません。
たとえば先ほど書いた2年後の停電では、配電盤でネズミによるショートが起こっただけで停電してしまいました。「事故後だから多重防御はしない」ということを誰かが決めたのだと思います。福島原発は事故後も原発であることは間違いなく、原子炉にも使用済み核燃料プールにも大量の放射性物質があるのですから、原子力発電所と同じような多重防御が必要ですが、それも実施されていませんでした。
核反応、電源喪失の他に制御室などがテロなどの攻撃に遭ったときに、予備の制御室から原発をコントロールする必要があるのですが、その施設もありませんでした。
「多重防御」を使用とすると、まず「何重にするか」の理論が必要ですし、さらにそれによるコストアップをどうするかという問題があります。このことについて著者は原子力委員会で研究費を増額することを求めたことがありますが、そこでも「原発は安全なのだから、そんなことに研究費を出せない」ということになりました。
結局、核反応、電源、冷却、地震による倒壊、津波や高波による浸水、ネズミなどの生物、テロなど、ある程度、発生する確率の高いものでも、多重防御は「やっていると言うけれど、本当はやっていない」という作戦をとることになりました。
このような「作戦」は委員会で合意を取るということはできないのですが、「どうせ、大きな地震やテロなんか起こるはずは無いよ」という暗黙の合意があり、さらに「そんなことを考えるのは面倒だし、原発反対派に塩を送ることになる」という心配などがあって、「誰も多重防御がされていないことを口に出さない」ということになります。
著者のような変わり者がいて、時に指摘すると、委員の先生はみんな具合が悪いような顔をして、次の話題に入ろうとします。日本人が「原発は多重防御と言っているが、本当に多重防御なのか」ということをシッカリ議論するまでにはまだかなりの時間が必要と考えられます。
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ところで私の著書に書いてありますが、原子力安全委員会は2006年に「想定外の事が起こると原発は爆発して、付近の住民は著しい被曝をする」という書類を回しました。
そのことに全く触れない国会事故調などは全く意味のない事故調査であることがわかります。技術には「大人」は要らないのです。
原発は安全だというのは、すべては「幻想」だったのです。そして今でも「原発を再開しよう」とする人は、技術者ではなく、また愛国者でも無いでしょう。
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