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重大事故を起こした東京電力福島第一原発はこの後どうなっていくのか。全国の人々がかたずをのんで心配していた2011年春、各地の原発立地自体では、別の心配をし始めていた。
「予想した以上に厳しい」。財政担当の職員から報告を受けた佐賀県玄海町長の岸本英雄(59)は町長室で顔をしかめた。
資料には、九州電力玄海原発の4基全てが廃炉となる場合や一部廃炉となる場合、全て存続する場合まで5つのパターンで、町の歳入はどうなるのかシミュレーションした結果が記されていた。
全て廃炉の場合が最も厳しく、翌12年度に28億円の減収、一気に歳入の4割が消えると出た。厳しい数字だが、同町は財政の6割までを原発関連に依存。ある程度は予想できた。
衝撃だったのは、たとえ全基存続しても、18年度には歳入の2割近い12億円が減収になると予測されたことだった。
1、2号機は既に運転開始から30年を超え、老朽化が進んでいる。減収の主な原因は固定資産税の減収。建て替えが極めて難しい今となっては、古くなって建物の価値が下がり、価値に応じて決まる固定資産税も減るばかりだ。
岸本はすぐに副町長ら幹部を集め、「財源確保は懸命にやる。住民サービスの質を落とさないよう、しっかり仕事をしてほしい」と求めた。予測の結果は「町民が動揺する」として、公表されないことになった。
当面は、原発が止まっていても、原発受け入れの見返りである電源立地地域対策交付金は、満額の8割が国から支払われる。ただ、いつまで支払いが続くのかは不透明だ。
岸本は「このままなら、いずれは予測のようになっていく」と観光や農業、漁業の振興を模索するが、いい知恵はまだない。
◇
関西電力高浜原発のある福井県高浜町も水面下で財政の予測をしていた。町長の野瀬豊(52)は「新増設が難しい」と感じ、予測を指示していた。
玄海町と同じく、全4基存続でもいずれ財政は非常に厳しい状況に追い込まれるとの結果だった。
野瀬は「原発は維持すべしが持論だが、情勢は変わった」とし、今度の事業計画を見直し、歳出を切り詰めることにした。
高浜町も予測結果は公表していないが、野瀬は予測を踏まえ、これまでならあり得ないような形で、国への働き掛けをし始めた。
今年2月21日、経済産業相の茂木敏充(57)を訪ねた野瀬は、主に原発の早期再稼働を訴えた。
この際、26項目からなる要望書を手渡したが、その中に「原発の解体完了まで、交付金の交付期間と固定資産税の課税期間を延長する」と記した。
原発の維持を唱えつつ、「廃炉が終わるまでは、これまで通り、収入源は維持させて」と求めている。矛盾とも言えるが、現実を考えれば、もはやそんなことにかまってはいられない。
一方、日本原子力発電東海第二原発のある茨城県東海村は、同原発が廃炉になった場合の財政状況を分析した上で、村長の村上達也(70)は廃炉を強く求めている。
玄海、高浜両町より人口がずっと多く、廃炉を言いやすい環境にはあるが、村上は「福島事故後、原発では地方財政が組み立てられないとはっきりした」と言い切った。(敬称略)
=第十部おわり(大野孝志、大村歩、小野沢健太、加賀大介、加藤裕治、桐山純平、清水祐樹、山川剛史が担当しました)
2013年3月29日 東京新聞 朝刊より
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