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◆核のごみ 権益守る? 最終処分場 町の一握り誘致推進
二〇一一年秋、北海道北部にある人口約二千六百人の小さな町・幌延町(ほろのべちょう)の飲食店で、町議の佐々木忠光(62)が突然、「原発の事故があったばかりだぞ。何を考えているんだ」と声を荒らげた。
町には、核のごみの最終処分技術の研究をする日本原子力研究開発機構の深地層研究センターがある。佐々木は、センターの「今後を考える」会に誘われたのだった。
「今後を考える」とは、最終処分場の誘致も視野に話そうとの意味だ。原発事故の衝撃が続く中、誘致話が受け入れられるとは考えにくいが、こんな動きが出た背景には、相応の理由があった。
会の仕掛け人は、町長の宮本明(70)と会社を経営したこともある町の商工会長、松永継男(65)だ。
センターの研究期間は〇一年からおよそ二十年とされ、あと十年もすればセンターは使命を終える。困るのが松永と宮本だった。
松永が社長を務める警備会社「ほくせい」は、機構に職員住宅一棟を貸し、センターの警備も請け負う。創業当時は宮本が取締役を務め、町長に就任したとき、その座を息子に譲っている。
宮本が社長を務め、町長就任時に息子に引き継いだ会社「幌延商事」も、機構に職員住宅を二棟貸している。
二社が毎年、機構から得る収入は計三千万円以上。センターがなくなれば、新たに住宅の借り手を探すのは極めて難しくなる。「考える」会への動きは、そうなる前に、確実に借り手がつくよう準備することでもある。
◇
機構から幌延町内の業者に落ちる仕事の総額は毎年二億円ほど。町はこの数字をセンターがもたらす経済効果だとアピールするが、実際の効果は極めて限定的だ。
機構の公表資料によると、一二年度に受注した地元業者はわずか九社。その内容も、職員住宅の賃貸と運営管理、センターの警備、タクシーの契約、暖房用の燃料の納入など波及効果が小さいものばかり。
しかも、職員住宅は、ほくせいと幌延商事を含め特定の五社が随意契約を続けており、他社が入り込める余地はまずない。
その一角を首長らのファミリー企業が占める状況は、機構との癒着を疑われるが、宮本は「契約は私が町長になる前の話で、何も問題はない」と意に介す様子もない。「職員住宅は建てるのに金がかかったし、修繕費もある。もうかる話ではない」とも言う。
◇
一二年四月、松永の「処分場誘致の期成会を立ち上げたい」との発言が地元紙に大きく取り上げられた。反対派を中心に強い反発が出たため、現在は表だった動きはなくなっている。松永も「しばらくは無理。今は時期が悪い」と話す。
ただ、宮本も町として誘致に乗り出すことは否定する一方、民間で誘致を進める動きは容認する態度を示してきた。幌延町は過疎化が進み、産業らしきものがないだけに、福島事故のほとぼりが冷めれば、また水面下で動きが出始めそうだ。
そんな様子に町民の一人、岡本則夫(66)は複雑な思いだ。長引く不況で数年前、経営していた建設会社をたたんだ。町の活性化につながるかもしれない処分場誘致に一定の理解は示すが、懸念も感じる。「一部の利害関係者だけで決めるような進め方では、とても合意は得られない」(敬称略)
<核のごみの最終処分> 国は、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物を、地下300メートル以上深い地中に埋める「地層処分」を実施することを関連法で定めている。処分場を誘致する自治体には、地盤の文献調査に応じるだけで最大20億円を支払うなどの優遇策を提示しているが、進展はない。
2013年3月27日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013032702000114.html
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