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雲が垂れ込め、冷たい雨が風に吹かれて傘をたたく。初冬の福井・敦賀半島らしい荒れ模様の中、原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦(67)が、日本原子力発電敦賀原発を訪れた。2012年11月下旬のことだ。
自身が率いる専門家チームの現地調査を5日後に控えての下見だった。
「当日はこの辺りを見ていただきます」。先導する原電社員が島崎を案内した。
1、2号機の東約200メートルには、大きな活断層「浦底断層」がある。山肌が削られ、地層があらわになった7階建てビル相当の広大な斜面が広がる。地層を調べるための試掘溝もあちこちに掘られている。島崎が何かに気づいた様子はなく、原電社員は手際良く次の場所へと案内した。
実はその3日ほど前、原電開発計画幹部の神谷昌伸(46)は現地からある報告を受けていた。
「何か複雑な地層のずれが見つかった」
浦底断層の西側に掘られた試掘溝で見つかったずれは、後に敦賀原発の運命を左右することになる。
原電は、島崎が下見をした際、ずれの存在を知らせなかった。現地調査の前日、規制委を通じて専門家チームに配られた資料にもずれのことは記されていなかった。
調査当日、あらためて配られた資料に、ずれの線が書き加えられ、小さく「せん断面」と記されていた。専門家がずれの近くに差しかかっても、原電は自ら説明しようとはしなかった。
資料を手に一つ一つ地層の状況を確認していった専門家は、ずれを見逃さず、「これは何ですか」と原電にただしたが、担当者は「分かりません。われわれはまだ(なぜこのずれができたのか)解釈ができていません」と言うのみだった。
チームの一員で、名古屋大教授の鈴木康弘(52)が振り返る。
「原電は問題ない場所で(調査の)時間を使おうとしていた。問題のずれはわれわれが気づかなければ、そのままおしまいになるところだった」
専門家が新たに見つかった地層のずれに着目しないよう、原電は意図的に説明を避けたのか?そんな疑念さえわくが、神谷は「われわれの解釈がまとまっていなかっただけだ」と釈明する。
◆
原電の意図がどうあれ、12月10日、専門家チームは、このずれは2号機直下に延び、浦底断層と連動して動く活断層だと全員一致で判断した。委員長の田中俊一(68)は「再稼働の審査はできない」と、事実上の廃炉勧告を出した。
この後、原電はなりふり構わぬ猛反撃を開始する。東海第二原発(茨城県)は地元の反発で再稼働のめどは立たず、敦賀の廃炉が決まれば、原発の発電しか収入の道がない原電は、会社存亡の機に直面するからだ。
調査結果を議論する専門家チームの評価会合の翌日、原電副社長の増田博(60)は「科学的議論ではなく、疑問が多い」と、規制委事務局審議官の名雪哲夫(54)に公開質問状をたたきつけた。電力会社としては極めて異例のことだ。
増田らは2カ月間で8回も名雪と会い、秘密裏に公表前の報告書案を入手。名雪は更迭されたが、原電は「問題ない」と意に介さない。それどころか「評価会合で反論する時間が短すぎる」など規制委への攻撃を強める。ただ、専門家チームの結論は明快で、覆すにはよほどの証拠が出ないと難しい。(敬称略)
2013年3月23日 東京新聞 朝刊より
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