02. 2013年3月14日 10:05:55
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ブログ:福島第1原発への再訪 2013年 03月 11日 17:3ブログ:「夏日」と「煙霧」が発する警告 ブログ:JCOM少数株主の不満でTOBの行方は ブログ:復興を阻む「ルール」との戦い ブログ:「強い国」が目指す国のかたち ロイター写真部 加藤 一生 「心をひとつに がんばろう!福島」──。東京電力・福島第1原子力発電所の4号機近くに立つ大型の鉄骨構造物には、こんな言葉を記した横断幕が掲げられている。 福島第1原発は2年前の東日本大震災で巨大な津波に襲われ、水素爆発やメルトダウン(炉心溶融)を引き起こした。 私は震災から丸2年となる11日を前に、2回目となる福島第1原発への訪問を6日に果たした。日本に拠点を置く外国メディアを代表し、崩壊した原発を撮影するためだ。今回私が驚かされたのは、現地の作業員がさらに増えていることと、汚染水に満たされた数多くのタンクが辺りに広がっていたことだ。 東電は、被害を受けた原発の建屋近くまで報道陣を案内し、息苦しい防護服に身を包み、壊れた建物の屋上で作業する関係者の撮影を許可した。4号機の使用済み燃料棒は年内に移動され、数十年にわたる廃炉作業の第一歩となる予定だが、燃料棒の移動先となる共用プールの建屋内部も撮影できた。 多層構造の防護服とガスマスクを身に付けた3000人前後の作業員は日々、現地で建屋を建設し、調査に当たり、汚染水タンクを設置している。ロイターの記事によると、福島第1原発の下請け作業員が低報酬の中で、ストレスや不安に苦しんでいるという。東電が昨年末に行った調査では、約70%の作業員が時給837円以上と回答。一方、同地域の日雇い労働者の時給は1500円に上る。 東電と政府が今後、原発での作業員をどのように引き留めるかは難しい問題だ。東電の高橋毅所長は報道陣に、廃炉までには「かなりの時間」がかかると語った。原発の将来像について世論がなお割れる中、現場では数千人が必要とされている。 *英文の写真部ブログはこちら(here)のリンクからどうぞ。 (東京 7日 ロイター) 関連ニュース 特別リポート:福島原発、廃炉までの「長い戦い」 2013年3月12日 特別リポート:福島原発 廃炉までの「長い戦い」 2013年3月11日 福島第1原発建屋への地下水流入解決に4年=東電幹部 2013年3月8日 東北電が値上げ申請、家庭向け11.41%・企業向け17.74% 2013年2月14日
特別リポート:福島原発、廃炉までの「長い戦い」 2013年 03月 12日 11:48 JST [東京 11日 ロイター] 東京電力(9501.T)福島第1原発の状況調査のため投入された緊急災害対応ロボット「Quince(クインス)」。2011年6月に建屋内に入ったこのハイテクロボットは、数カ月後には通信が途絶え、いまも発見されていない。 暗闇に包まれた建屋内の曲りくねった通路に閉じ込められたままだ。膨大な資金や人的資源を必要とし、開発を待たねばならない技術に依存する原発廃炉の困難さを象徴しているかのようだ。日本原子力産業協会の服部拓也理事長は「(日本のやり方は)戦争に竹やりでいくのと同じ」と語った。 マグニチュード9の東日本大地震が発生した2011年3月11日から戦いは始まった。13メートル超の津波が福島第1原発を襲い、非常用発電機が故障。冷却機能が失われた。その後、炉心溶融と数回の水素爆発が起きた。数週間、最悪の事態を避けるため職員や自衛隊員の必死の作業が続いたが、原子炉を冷却するためのヘリコプターからの放水など、場当たり的で非力な対応が目立った。 チェルノブイリ事故以来最悪となる原発事故により、日本政府の行政能力の高さや最先端とみなされていた日本の技術力に対する疑問が浮き彫りになった。 2011年12月に野田佳彦首相(当時)は原子炉の「冷温停止状態」を達成したと宣言したが、日本は今後、前例のない処理費用に直面する。専門家は、廃炉費用は少なくとも1000億ドルかかり、被害者への賠償金支払いや近隣地域の汚染除去でさらに4000億ドルが必要になる、と指摘する。 震災から2年、周辺地域の処理作業は、場当たり的だ。作業の大半は関連分野の経験がほとんどない建設業者が請け負っている。原発近くの市町村は、処理作業が計画通りに進んでいないと指摘。作業員が運び出した汚染土や廃棄物は、政府が最終処分場所が決められない中、福島県内の至るところに積み上げられている。社団法人日本経済研究センターの試算では、福島県内の原発近隣地域の汚染除去作業費用だけでも、最大6000億ドルに達する。 建設後約40年の福島第1原発の閉鎖は、それ自体が類のない挑戦だ。東電と政府が示す廃炉に向けた行程表では、今年後半に7つの貯蔵プールのうち最も破損している4号機プールから使用済み燃料の取り出しに着手する。2021年からは全号機のプールから溶融燃料の取り出しを開始し、30─40年後に廃炉を完了する計画。 当局者は、作業はほぼ予定通りに進んでいるとし、政府は廃炉を前倒しで行いたいとしている。ただ、専門家はより慎重な見方を示している。 原子力安全推進協会(旧日本原子力技術協会)の元最高顧問、石川廸夫氏は、40年間の行程表について「あんなのは絵、夢物語だ」と述べ、完了はさらに数十年後になるかもしれないとの見方を示す。 <戦場の霧> 「Quince(クインス)」を共同開発した千葉工業大学・未来ロボット技術研究センター。この施設では、学生や技術者らが全力で災害現場に投入するロボットを開発する作業を進めている。 間仕切りのない広い施設内。ロボット部品に囲まれた仮設ベッドで休息する人、コンピュータースクリーンに見入りながら麺をすする人、スマホをいじる人とさまざまだ。 20代の研究員はシンプルなコントローラーを動かして、最新型の国産緊急災害対応ロボットに階段を上らせたり、狭い踊り場で方向転換させたりしている。通信が途絶えた「Quince(クインス)」の回収には失敗したが、開発者らはいずれ見つけ出し、電子機器に対する長時間の放射線照射の影響に関する貴重な情報が得られるとの希望を捨てていない。 後継機の「Sakura」(サクラ)は狭いスペースでも操縦できるだけでなく、従来型とは異なり、プラグイン充電方式を採用している。 原発内に残るがれきから放出される高線量の放射線から人間を守るため、原子炉の漏えい個所を特定して修復し、注水するというという最も基本的な最初のステップでさえ、達成するためには一層の技術開発が必要だ。 福島原発で一時的に使用された水処理システムのメーカーである米クリオン社のジョン・レイモント社長は「(混乱して過失や情報の錯綜が起こりやすい)戦場の霧のような状態だった」と指摘。「今になってやっと問題の様相が分かってきた」と話した。 これまでのところ東電は、内視鏡に似た遠隔操作カメラを原子炉外部の配管に挿入した段階で足踏みしており、燃料がれきの除去技術開発の手始めとして不可欠な有効データ収集はほとんど進んでいない。 1つの可能性として検討されているのは水中遊泳が可能なロボットで、ドーナツ型をして水の入ったサプレッションチェンバー(圧力抑制室)内を調査する。 日本でこうした技術開発への取り組みが遅れた大きな理由は、原発災害が発生する可能性を認めようとしない空気だった。認めれば、数十年にわたる原子炉の安全神話との矛盾が生じたからだ。1990年に東海村で原子力事故(臨界事故)があった後にロボットが開発されたものの、現在、研究は断念され、原発ロボットは科学博物館に展示されている。 未来ロボット技術研究センターの小柳栄次副所長は「それ(東海村事故)以降、国の予算がついた原発用のロボット開発はされていない。なぜかというと、記者発表したら『人が入れないほど重大な事故が起こるのか』という質問が出てくるからだ」と説明した。 原発の建屋内に最初に入ったのは米国製の多目的ロボット「パックボット」で、高線量エリアで使用された。 東電の喫緊の課題はプールからの使用済み核燃料の取り出しで、4号機プールから始められる。4号機プール内には1500本以上の核燃料棒が沈んでいるが、屋根部分は水素爆発で大破、大気にさらされた。 使用済み燃料プールにたどり着くためには原子炉建屋上部からのがれき撤去が必要だったが、放射線量が高過ぎて人による作業が行えなかったため、作業はクレーンなどの重機を使って慎重に行われた。 再び大地震が起きれば建物がさらに損傷を受けるのではないかとの懸念から、プロジェクトには独特な切迫感が漂っている。ただし東電は、東日本大地震と同程度の揺れに耐えられるよう構造は補強されていると説明している。 冷却水の処理や貯蔵もまた困難な課題だ。冷却に使用された汚染水が原子炉の地下部分に大量にたまっており、海水や地下水に浸透する脅威が存在している。 <悪化する作業員の待遇> 事故直後の約800兆ベクレルからは劇的に減少したものの、福島原発からは依然として毎時1000万ベクレルのセシウムが放出されている。 作業員は毎朝原発から20キロ離れた「Jヴィレッジ」に集合し、防護服とゴム手袋、靴カバーで身を包んでからバスで現場に向かう。到着するとマスクで顔を覆う。 第一線の作業員たちは匿名を条件に、息の詰まるような防護服での作業、低賃金、孤独、ストレスへの不満を次々に口にした。 昨年暮れに東電が行ったサンプル調査によると、作業員の約70%の最低賃金は1時間当たり837円。この地域の日雇い労働者では1500円稼ぐケースもある。 東電の財務状況に関する調査委員会の委員長をつとめた中央大学法科大学院の安念潤司教授によると、作業員の賃金は、この近辺で同様の技術が求められる職の水準を下回っている。 下請け業者に雇われているある40代の作業員は「賃金がどんどん下がっている。こんな状況で働こうとするやつはいない」と現状の厳しさを訴える。「胃は痛いし、いつもストレスを抱えている。作業を終えて自分の部屋に戻ってできるのは、翌日の心配だけ。メダルをもらってもいいくらいだ」と吐き捨てた。 メンタルヘルスの専門家は、作業員のストレスを戦場の最前線の兵士のストレスにたとえている。 原発作業に当たる東電社員1500人を対象に調査を行った防衛医科大学校・精神科学講座の重村淳講師は「(ベトナム)帰還兵の多くは社会から拒絶される中、ホームレスになったり、自殺してしまったり、アルコールやドラッグに溺れたりした。下手をすると、そうした米国の歩んだ歴史をここでも歩んでしまうのかなという懸念がある」と指摘した。 計画では今後数十年にわたり廃炉作業に携わる作業員は十分確保できるとされているが、被ばく線量が上限に達することなどを踏まえると、足りなくなることは目に見えている。 東電の公表データによると、2012年12月末の時点で、東電の作業員146人、下請け作業員21人の被ばく線量が5年当たり100ミリシーベルトの上限を上回った。 福島原発では、津波に襲われた震災当日の2人を含め8人の作業員が死亡しているが、放射能による死者は出ていない。 <暗闇を手探りで進む状況> 福島第1原発や他の老朽化原発の廃炉作業に必要な技術者の不足も問題だ。 安倍政権は、2030年代に原発稼働をゼロとする民主党政権のエネルギー政策の見直しを表明したものの、代替エネルギーの計画はまだ示していない。安全性に対する国民の懸念も根強く、原子力産業の将来に影を投げ掛けている。 東京大学大学院では、原子力工学の志願者数が前年比で約30%減少、東京都市大学でも学部での専攻志望が減少している。 福島原発事故の終息には、4基の原子炉の完全廃炉と核のゴミの処理が不可欠。しかし核のゴミは受け入れ候補地の反対に直面し、今だに最終処理場が決まっていない。 事故処理では、安全確保のための監視が困難との理由で、チェルノブイリ原発のように石棺で原子炉を封じ込める選択肢は除外された。処理コストの総額は、「神のみぞ知る」(中央大学の安念教授)世界だ。 最終的に処理費用がどれだけ膨らんでも、巨額の財政赤字と高齢化問題を抱える政府に余力はないのが実情だ。結局コストの多くは国民が税金か電気料金引き上げ、あるいはその両方で負担することになる。国民の不評を買うのは必至だが、避けては通れない。経験したことのない事態だけに、今後も「暗闇を手探りで進む」状況は続く。 (斎藤真理、竹中清、ジェームス・トパム記者;翻訳 伊藤恭子、関佐喜子、中田千代子 ;編集 橋本浩) アングル:原発廃炉へ日本製ロボットが前進、次世代産業にはなお高い壁 2013年 03月 11日 08:21 JST [東京 11日 ロイター] 福島第1原子力発電所の事故を受け、政府主導で開発されてきた廃炉作業用ロボットがようやく実用化の段階に入ってきた。
日本のお家芸である産業用ロボットだけでなく、官民ともこれを機に将来は災害用ロボットに発展させ、次世代産業として育成したい考えだ。だが、需要創出や量産化などが難しく、ビジネスとして成り立たせるにはなお超えるべき壁がある。 <日本が世界一なのは産業用だけ> 折れ曲がる7つのアームが高さ8メートルまで伸びる姿は、まるでキリンの首。三菱重工業(7011.T)製ロボット「スーパージラフ」は、エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導し、約10億円の政府補助金を受けて研究開発が進められた廃炉作業ロボットの1つだ。伸縮するはしごの先に搭載されたアームがバルブの開閉やパイプの切断などの動作を器用に行う。放射線量の高い原子炉建屋内は人の立ち入りが困難なため、遠隔操作が可能。同じNEDOのプロジェクトの中で開発が進む東芝(6502.T)など他社製ロボットとも通信規格が統一され、連携作業ができる。 一方、資源エネルギー庁の音頭で開発が進む遠隔除染ロボット「アラウンダー」は、ゾウが長い鼻の先から水を吹き出すように、ノズルヘッドから水を高圧で噴射し、床や壁に付着した放射性物質を洗い落とす。日立製作所(6501.T)が手がけるこのロボットは、水圧を最大にするとコンクリートの表面を1センチメートル削れるほど強力だ。最長2メートル伸びるヘッドを壁面に押し付け、汚染物質が混じった洗浄水を吸引して残さず回収する。 いずれのロボットも、今夏に福島へ投入することを目指している。 2011年3月の原発事故発生直後、投入できる日本製ロボットがなく、海外製に頼る事態になったことに「日本のロボット技術は世界一」と信じていた多くの人が驚いた。だが、日本が世界一といわれるのは「産業用だけで、災害・生活支援用はまだまだ十分ではない」(NEDOの古川一夫理事長)。まずは廃炉作業用が最優先だが、政府はその先を見据えている。重電各社も災害用などでのビジネスを視野に入れ、1台億単位とされるコストをかけて廃炉作業ロボットを独自に開発している。 <汎用性、量産化に壁> しかし、実際は民間企業では採算が合わないと開発しにくい。特に廃炉作業ロボットは特注品。あるロボット開発者からは「廃炉作業を急ぐあまり、技術が福島に特化しすぎて、その先を見据えた汎用性がない」との声も聞かれる。塗料や材質が違うだけでロボットが機能しないことも多く、その造りは想像以上に繊細だ。 東芝が独自開発した四足歩行ロボットは、すでに福島原発2号機の汚染水漏えい経路を調査している。だが昨年12月、投入した翌日に階段の溝に足を引っ掛け、バランスを崩して動けなくなるなどの不具合で調査の中断を余儀なくされた。テストを実施した5号機と、実際に作業をした2号機の階段の形状が違ったことが原因だった。東芝は事前に階段の違いを認識していたが、投入を急いでおり、ロボットの性能を信頼しすぎたという。その後改良され、今月5日から調査は無事に再開した。 たとえ廃炉以外の災害用に応用できるようになったとしても、そもそも需要がどの程度あるのか分からないという問題もある。実際に災害が起きない限り買い手は少なく、売り上げや生産の見通しが立てにくい。実際のビジネスとなると「なかなか難しい」と重電メーカー関係者は本音を漏らす。別のロボット開発者からは「国が自治体にロボット配置を義務づけてほしい」との声もあがる。 <『死の谷』をどう越えるか> 東京大学の淺間一教授は「日本は技術があっても『死の谷』を越えられない」と指摘する。死の谷とは、需要を作れないことなどが理由で、研究開発成果が事業化に結びつかない溝を意味し、「強化すべきは、これまでのシーズ(技術の種)主体からニーズ(需要)創出だ」と訴える。通信するために周波数を使い、様々な現場での使用が想定される災害ロボットは、総務省や国土交通省、防衛省など各省庁がかかわってくるため、市場を作り出すには「管轄省庁が連携し、国全体の視点での体制や戦略が必要」とも提言する。政府も問題意識は持っており、経産省幹部は「廃炉作業でロボットが活用されれば、災害用にも弾みがつき、省庁連携や需要創出も進むと期待している」と話す。 今後、世界では年間20数カ所のペースで発電用原子炉が廃炉になると言われ、「最先端ロボットによる廃炉ビジネスの海外展開も期待される」(重電メーカー幹部)。重電各社は廃炉作業で培った技術や経験を、災害全般からゆくゆくは生活支援、介護医療向けなど幅広い用途に活用できないかと模索している。淺間教授は「福島の原発事故は決して起きてはならなかったが、ロボット産業を前進させる好機にできれば」と話す。 (ロイターニュース 白木真紀;編集 久保信博) |