http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/690.html
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昨年の1月の記事です。ドイツでの原発作業員の方の被ばく管理について述べられています。
http://webronza.asahi.com/global/2012010400001.html
ドイツの合理的な放射線防護行政に学ぼう
原発労働者の被曝問題は、原子力発電所の誕生と同時に半世紀近く存在し続けている。3・11から3カ月もたたないうちに脱原発を決定したドイツだが、放射線防護体制は、原発震災渦中でなお推進を続ける日本よりもはるかに合理的に整備されている。被曝管理体制を支える所管の行政も含めて、日本の問題とドイツに見習うべき点を挙げてみよう。
3・11後の欧州での脱原発デモ=2011年9月、ベルギー
■日本学術会議の提言
3月11日に起きた東京電力福島原発事故後の現地での労働者について、ドイツの有力週刊誌シュピーゲルのオンライン版に、次のような記事があった(9月12日付、一部抜粋)。
「日本の厚生労働省は8月中旬、今後健康監視が必要な17,561名の被曝労働者を登録した。(中略)東京電力はこの数ヶ月間原発労働者の追跡調査を行ったが、3月から6月まで福島原発で作業した88名を捜し出せなかった。同社は、労働者に直接会うことなく下請け業者に立ち入り許可証を配布しており、写真とバーコード記載の労働許可証ができたのはつい最近になってからだ」
5カ月も経ってから被曝労働者を登録したり、作業者の所在が不明になったり、下請け業者任せで本人確認をせずに働かせたり等、日本の原発労働者管理はドイツ人にはひどく杜撰なものに映っている。
この記事に先立つ日本の報道によると、東京電力が7月になっても約4300人の半数にも満たない作業員しか被曝線量測定を実施しておらず、厚生労働省の指導を受けた。そのうち約1300人とは、連絡も取れなくなっていた。
日本でこのような実態が罷り通る理由は、放射線作業者個人の被ばく線量の管理が事業者任せになっており、しかも実際に法規制どおりに運用されておらず、国への報告義務がないからだ。
ドイツでは、労働者が作業期間に被曝した線量が、累積被曝線量という形で公的に管理保存されており、生涯の線量限度が400mSvと決められているが、日本の現状では個人の被曝量測定すら徹底されてない。
公的な被ばく管理の必要性は、実は日本でも指摘されていた。日本学術会議が2010年7月に、「放射線作業者の被曝の管理の一元化について」という提言書を発表していたのだ。
同提言書には、「放射線作業者の、被ばく線量の把握システムを公的機関等で確立する必要性に関しては、わが国で商業用の原子力発電が始まった昭和40年代前半に原子力委員会等からも提言されており、それからほぼ50年が経過したが、一元的な管理は未だに実現していない」とあり、愕然とさせられる。
■徹底した労働者の被曝管理
ドイツでは、この日本学術会議の提言を具現化したような一元化管理体制を実現している。
原発で放射線業務に従事する場合は、まず雇用主に放射線手帳を提示することが義務付けられている。従事者は、手帳を作業中のみ雇用主に預け、就業時以外は本人が携行する。
放射線手帳の発給を受けるには、連邦州の所管当局から認定された放射線防護を専門とする医師による証明書が必要だ。
また認定医師は、当局の要求に応じて労働者の書類を閲覧させなければならない。したがって、労働者が他の原発で働く場合は、移転先の医師が労働者の全書類を、移転前に証明書を発行した医師に要求する。
作業中は個人線量計で被曝量を測定する。線量計の配布と線量分析は、当局による認証済み測定機関6ヶ所が行い、データは連邦放射線防護庁の登録簿に送られて一元管理される。
このような仕組みは、EURATOM(欧州原子力共同体)の指令に基づくもので、ドイツに限らずEU諸国は、作業者の事業所間の移動、外国での雇用にも対応できるシステムを確立してきた。個々のEU加盟国と相互に協定を締結した 非加盟国も、このシステムを導入し積極的に活用しているという。
■一元化された放射線防護行政
前述のドイツの被曝・健康管理体制の中に頻繁に出てきた「当局」とは、州の環境省など所管省を指す。これらを連邦レベルで総轄し、国全体の環境・エネルギー政策を主導するのが連邦環境・自然保護・原子炉安全省である。放射線防護分野の行政一元化は、1986年のチェルノブイリ原発事故後に進められてきた。
ドイツの省庁は有識者が適材適所に配置されており、博士号取得者も多い。霞ヶ関のように2〜3年で頻繁に異動することもなく、各部署の責任の所在が明確だ。1999年には放射線防護分野が、連邦労働・社会秩序省から連邦環境省に移管され、一元化がほぼ達成された。脱原発を公約した連立政権の時である。
1989年に設置された連邦放射線防護庁では、連邦環境省とほぼ同数の約750人(日本の環境省職員は約1200人)が原子力・医療・核廃棄物・自然放射線・電磁波などすべての関連分野を所管。年次報告書には、各分野の窓口担当者氏名と内線番号、決算や人事報告も記載されている。
翻って、日本では責任の所在が曖昧な縦割り行政が、相変わらず蔓延っている。
3月に緊急作業時の線量限度を100mSv(ミリシーベルト)から250mSvに引き上げた放射線審議会に諮問したのは、人事院総裁、厚生労働大臣及び経済産業大臣だった。一方、4月に子どもたちに適用する線量限度を20mSvに引き上げた答申は、文部科学省が仕切る原子力安全委員会が行った。同様の縄張り争いは、他の審議会や国会答弁など、様々な局面で見られる。
こうした無責任な行政がもたらした結果を、ドイツ放射線防護庁ヴァイス(Weiss)部局長はドイツ国営ラジオで鋭く指摘した。
「福島原発の作業者たちは、事故後の6〜8週間に最高680mSvまで被曝した。そのうち80%は吸入によるもので、放射線防護対策が全く機能しなかったことがはっきりした」
680mSvは、100mSvから引き上げた緊急作業時線量限度の250mSvに比べても、あまりにも高すぎる値だ。しかし、縦割り行政の中でこの被曝問題を検証している当局は見当たらない。ちなみにドイツでは、人命を救う目的に限り、当局の管理の元で生涯に一度だけ250mSvを超える被曝が許されている。
2012年4月、原子力安全庁(仮称)が環境省外局に設置される予定で、形の上では行政一元化にみえる。だが内実は経産省と文科省からの出向者に頼るので、内部は縦割りのままだ。
また、環境大臣にドイツのような包括的な権限がないことは、「エネルギー政策の新たな検討体制」(首相官邸ホームページより)http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201110/__icsFiles/afieldfile/2011/10/27/27kentoutaisei.pdfの図からみてとれる。
「原子力発電の安全性を世界最高水準に高める」と世界中に宣言し、原発技術輸出まで進める野田首相や、図中の閣僚の多くは原発推進派である。このメンバーにとって、放射線防護体制を整備することは、原発の安全神話を蘇らせるのに不都合なのかもしれない。しかし、ドイツのように合理的な被曝管理や行政の一元化さえ実現できない内閣に、被曝労働者を生み出す原発を、国内外で推進する資格などないだろう。
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