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◆コメント:はじめにひとこと。
水野解説委員の時論公論を文字起こしして載せるのはこれが2回目です。水野解説委員はNHKにおける唯一の原子力専門解説委員で、2年前の震災後、福島第一原発が事故を起こした際、原子力安全委員会はレベル4だというのに、「明らかにレベル7です」と断言したり、そこまで言って大丈夫かね?ということまで、突っ込んで東電や国の対応を批判していました。私の知る限り文筆家では、小説家の伊集院静氏と歌人の俵万智さんが、水野解説委員を高く評価しています。
守りに回りがちの大手メディアの職員の中では気骨を感じる数少ない人物です。今回の解説は本当はNHKオンデマンドなどで映像も見て頂きたいです。文字だけだとよく分からないところがあると思います。しかし、放送があったことすら知らない方も多いだろうと思うので、せめて水野解説委員の言葉の部分だけでも、とおもい、私が文字に起こしました。ご参考になれば幸いです。
◆時論公論 「原発事故2年 廃炉への困難な道のり」 水野倫之解説委員(NHK 3月8日放送分、文字起こし)
事故直後の福島第一原発です(注:映像)。水素爆発で滅茶苦茶に壊れました。あれから間もなく2年。かなり、片付いてきているようにも見えます。しかしそれは建屋の外観だけ。内部のがれきは殆ど手つかずの状態です。
こんばんは。時論公論です。 作業が進まないのは、内部が依然として放射線がきわめて強く、人が容易に近づけないためで、ロボットなど遠隔操作による作業が、欠かせません。しかし過酷な環境で、操作ミスやトラブルも続き、ここにきて、遠隔技術の難しさもわかってきました。事故から2年。今夜は遠隔技術を如何に活用して廃炉を進めて行くのか。その課題を考えます。
福島第一原発の廃炉は、最長40年かかるとされています。廃炉工程表では、今年から使用済み燃料の取り出しを開始し、その後格納容器を修復して水で満たし、2021年から溶けた燃料を回収。2051年までには建屋も解体することが目標です。廃炉作業はまだ始まったばかりですが、順調なのは四号機だけです。
メルトダウンしていないため、放射線量が低く、プールまわりのがれきは片付けられ、今年11月から使用済み燃料を取り出す計画です。しかし、他の3基は、その目途さえ立てられません。三号機ではプールまわりの瓦礫の撤去がようやくすすみ始めたところです。一号機と二号機の建屋内のがれき撤去は、殆ど手つかずの状態です。3基ともメルトダウンを起こし、放射線が強くて人が近づけないからです。そこで遠隔操作の機器による作業が不可欠となっており、これまでに10種類以上が投入されました。
現場の状況確認や、がれきの撤去が主な任務ですが、過酷な環境のため、思わぬトラブルも起きています。一号機の5階のプール周りのがれきの状況の確認には、バルーンが使われました。建屋内に荷物を運ぶ吹き抜けがあり、メーカーの作業員が、アドバルーンにカメラを載せて、1階から飛ばせば5階を遠隔撮影できるのでは?と考えたのです。1階から吹き抜けを見上げたこの一枚の写真をもとにリハーサルを行い、去年の夏、本番に臨みました。
しかし、まもなく5階という所でバルーンがしぼみ、落ちてしまいました。その後、作業員が被曝を顧みずに3階から撮った写真には、爆発で垂れ下がった尖った金属の管が映っていました。これがバルーンを切り裂いたのです。最初の写真は逆光だったため、管は確認できませんでした。そこで、管をよけて飛ばせる楕円形のバルーンを特注して再挑戦し、ようやく5階を撮影することができました。天井クレーンなど大量のがれきがプールに覆い被さるように重なっていることが確認でき、東電はこの映像を元に、がれきの撤去方法を検討しています。
しかし、状況を確認するだけで準備開始から8ヶ月も、かかりました。また、三号機でも遠隔作業でミスが起きています。プール周りのがれきをクレーンで撤去しようとしたところ、鉄骨をつかみそこねて、プールに落としてしまいました。重さは470キロ。プール内の使用済み燃料にキズがつけば、放射性物質が漏れるおそれもあることから、東電は鉄骨の取り出しを優先しました。がれきの撤去作業は3ヶ月間、中断を余儀なくされ、使用済み燃料取り出し時期の目途も立っていません。
クレーンは作業員がモニターを見て遠隔操作していましたが、鉄骨が下で支えられているか、確認しないまま吊り上げたため、落ちたことが分かりました。がれきは将棋倒しのような状況で、お互いどう支えあっているのか、確認した上で作業をしないと一歩進んで、二歩も三歩も後退することになるわけで、ミスを如何になくすかが、課題となっています。
そこで参考になる取組を大手建設会社と東北大学が進めています。建物内に積まれたこの大量のがれき。実はバルーンが撮影した映像を元に、一号機のプール周りのがれきの重なり具合が再現してあります。ここに、東北大学が開発したヘビのようにがれきの合間を縫うカメラを入れて、作業員がモニターで確認します。このカメラでがれきが地面に接しているかどうか。お互いどのように力がかかっているのか確認する技術を開発しており、
現場で使える目途が付きつつあるということです。今後、プール周りなどミスが許されない場所での作業前に、こうした機器でがれきの重なり具合を確認したうえで、事前に手順を決めておけば、効率的に作業ができる可能性がありますので、東電はシステム導入を検討して貰いたいと思います。
しかし今後は、こうした作業よりも何倍も難しい、溶けた燃料の取り出しに向けて格納容器の損傷場所を特定するなど、より高度な遠隔操作ロボットが重要となってきます。ただ、ここでも問題が起きています。これは、格納容器の汚染水の漏洩箇所を確認するため、メーカーが独自に開発した、階段の上り下りが出来る四足歩行ロボットです。去年の暮れ、二号機に投入されました。しかし階段で体勢を崩し、動けなくなってしまいました。
経済産業省は急遽、調査チームをつくり、検討しましたが、原因は単純なものでした。メーカーでは事前に階段をつくり、訓練を繰り返していました。しかし実際の階段は、穴が沢山開いたタイプのものだったことから、脚が挟まってしまい、抜けなくなってしまったのです。メーカーでは改良したうえで、今週ようやく調査を再開しましたが、漏洩箇所の確認作業は3ヶ月以上中断を余儀なくされました。
また、今回のケースでは、ロボットは作業員が救出に向かい、回収されましたが、建屋内にはこれまでに3台のロボットがトラブルでおきざりになり、がれきとなってしまっています。福島第一原発での活用を目指して現在、官民が開発中の遠隔操作の機器は数十種類はある、と見られています。今後同じようなトラブルを防ぐためにも、まずは東電とメーカーなど遠隔操作技術の開発側との間の意思疎通や情報連絡を、より密にし、現場の状況に合わせて機器の開発をしていく必要があります。
最近の原発は、現場の図面が電子データで保存されており、階段の状況などはすぐに分かります。しかし福島第一原発のように1970年代に建設された古い原発は、図面が紙でしか残されていないことが多く、その後設備が変更されても、図面に反映されていない場合もある、ということです。今後は、現場を一番良く知る、東電の作業責任者から直接現場の状況をきくなどして、対応可能な機器の開発を進める必要があります。そしてそのためにも、廃炉計画を作る経済産業省が遠隔操作技術の全体の開発状況を把握し、それぞれの技術レベルをチェックできる体制をつくるべきだとおもいます。
現在、経済産業省は、直接予算を出して開発を進めている機器については、専門家会議をつくり、信頼性をみていますが、メーカーや研究機関が独自に開発を進めている多くの機器については、把握しておらず、全体で何台が開発中なのかも分かっていません。福島第一原発での活用を目指す機器全体を把握し、現場の情報が伝わっているかどうか、技術に問題がないかどうかをチェックして、トラブルを未然に防ぐ体制を検討していくべきです。
福島第一原発の廃炉作業は、まだ入口に過ぎません。この先、極めて困難な溶けた燃料の取り出しも控え、遠隔操作技術が廃炉の進捗を左右するといっても過言ではありません。
国が先頭に立って、ここでしっかり遠隔操作の開発体制を確立し、着実に廃炉が進むようにしていって欲しいと思います。
http://jiro-dokudan.cocolog-nifty.com/jiro/2013/03/nhk-38-9965.html
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