http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/650.html
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http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130311/p1
2013-03-11 赤の女王とお茶を
まず、311東日本大震災および原発事故関連の被害によって命を落とされた方々に追悼の意を表します。
津波被害に対する補償も十分進まない中、原発事故に関しては事故そのものが収束せず、現在進行中の公害問題であると考えられます。
特に大きな注目を集めたのは被曝による甲状腺ガンの発生ですが、現時点で結論を出すことは難しいとはいえ、少なくとも疫学的に見て高い数字であるという意見が津田敏秀氏より出されています。発症率、有病率に関する議論もありますのでぜひご一読を。
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2821.html
ただ、子どもの甲状腺ガンに関しては、ネット上にも情報があまりにも少ない。
ツイッターなどで断片的な議論はありますが、まとまった日本語の情報がないため、非常に散漫な印象を受けます。
そこで、2011年に公開された子どもの甲状腺ガンに関する英文総説を、特に重要と思われる部分を抜粋して和訳いたしました。
総説の原文はこちら。
Thyroid Carcinoma in Children and Adolescents―Systematic Review of the Literature
無料で読めますので、関心のある方はぜひ原文をどうぞ。
和訳したのは、2. Epidemiology of the Disease 3. Risk Factors 4. Presentation in Childhood 6. Prognosisの各項目です。
*1
小児および青年期における甲状腺ガン
■疾患の疫学
児童における甲状腺結節の頻度は、おそらく1〜1.5%程度と見積もられる。しかし、10代以上においては、有病率が13%にも達する場合もある。成人と比べた場合、甲状腺結節と診断された場合のガンリスクは児童では4倍大きい。米国では、毎年20歳以下ではおよそ350人前後が甲状腺ガンと診断されている。National Cancer Instituteによると、ブラジルでは、その発症率は小児ガンの2%におよぶといわれている。まれな病気であり、分化型甲状腺ガンは小児ガン全体の0.5〜3%にあたるとされている。
さらに、甲状腺は他の新生物の治療のために頸部に外部放射線治療を受けた子供において、もっともよく二次発ガンの起こる箇所の一つである。小児期における甲状腺ガンの発症はきわめてまれである。ただ文献によれば、1歳以下の小児で分化型甲状腺ガンが見つかった例もあるという。
また、甲状腺ガンの発症率は年齢にしたがって上昇する。Maria Sklodowska記念がんセンターでの235人の小児および少年の甲状腺ガン患者のうち、5%は6歳以下で、10%は7-9歳で発見されており、10代以降に大きく増加している。男子と女子の差も13-14歳以降により顕著になってくる。
近年の米国SEER (Surveillance, Epidemiology and End Results)コホート研究における20歳未満の甲状腺ガン患者1753名のデータによれば、女子では10万人当たり0.89人、男子では10万人当たり0.2人の発症率とされる。
■リスク要因
過去60年で、児童の甲状腺ガン発生率には明瞭な二つのピークがある。
最初のピークは1950年代、頭部白癬、ニキビ、扁桃炎、胸腺過形成など、子どもの様々な治療に放射線を使った時期だ。この時は、被曝後平均10〜20年後に甲状腺ガンが見いだされ、40年間はリスクが続いた。頸部被曝と甲状腺ガンの因果関係が確立され、このような方法が破棄された後、発生率は低下していった。これらのデータにより、放射線が甲状腺ガンのリスク要因であると認められるようになった。同様に、他の小児ガンに対する外部放射線治療も甲状腺ガンの発生率を増加させると考えられる。
次のピークは、1990年代中ごろより、西ヨーロッパ地域にて、1986年のチェルノブイリ原発事故以降に起こった。最初の症例は事故後4-5年後に診断され、特に被曝時に5歳以下だった児童に見いだされた。これらの症例のおよそ75%は出生から14歳までに、25%は14歳から17歳までに、原発事故のフォールアウトによって被曝した。チェルノブイリ事故によって、小児期には成人と比べ、高い放射線感受性があることが明らかとなった。
甲状腺に対する放射線の影響は、科学界の高い関心を集めている。イギリスの小児ガン調査BCCSSは、17980名の小児ガン患者に対する、17.4年にわたるコホート研究で、特に二次発ガンに注目している。この研究では、甲状腺ガンの88%は、頸部に放射線治療を受けた患者に見つかっている。甲状腺ガンのリスクはホジキン病および、非ホジキンリンパ腫の治療を受けた患者で高かった。
■児童における臨床像
臨床像においては、いくつかの点において小児における病態は大きく異なっている。
第一に、20歳以下においては、20〜50歳の患者よりも発見される腫瘍の体積が大きい傾向がある。Zimmermanらは1988年にに、新たに見つかる甲状腺ガンは4cm以上が児童では36%に対して成人では15%、1cm未満が児童では9%に対して成人では22%と報告した。乳頭ガンの患者のみを考慮すると、診断上は1.5-3%しか1cm未満が見つかっていない。さらに、おそらく児童では甲状腺の体積が小さいためだろうが、カプセル状の被膜や周辺組織の発生が早い。
このように、成人で使われているような微小ガン(1cm未満を含む)の分類は、児童においては除外されるべきである。つまり、1cmのガンをこの年齢においては見つけるのはきわめて重要なことだといえる*2。
第二に、児童では多中心性のガンが、特に乳頭ガンにおいて多い。これらの多くはポリクローナルなガンの発生であると考えられる。このことは、甲状腺ガンの外科的治療における全摘出処置を議論する際に特に重要であろう*3。
第三に、児童の甲状腺ガン患者では遠隔転移と同様に、頸部リンパ節への転移の割合が高い。Mayo Clinicにおける1039例の甲状腺乳頭ガンにおいては、成人では頸部リンパ節への転移が35%、遠隔転移が2%に対して、児童では頸部リンパ節への転移が90%、遠隔転移が7%であった。われわれが65人の青少年に関して行った調査では、リンパ節への転移は61.5%、局所浸潤は39.5%、遠隔転移(肺転移)は29.2%であった。
診断技術の向上にしたがって、児童における分化型甲状腺ガンの臨床像は変化してきた。ミシガン大学の1970-1990年における診断を、同1936-1970年の診断と比較すると、この何十年かの早期発見技術の進歩を反映し、最近のものの方がリンパ節転移の診断は低く(63%から36%)、局所浸潤も少なく(31%から6%)、肺転移も少ない(19%から6%)。また10年後の予後も改善している。
児童の甲状腺ガンの遠隔転移においてもっとも多いのは肺転移であるが、骨転移や中枢神経への転移も少数報告されている。サブタイプの分類は、成人のものと類似している。乳頭ガンが90-95%、5%が濾胞ガンである。未分化ガンはきわめてまれである。
■予後
児童の甲状腺ガンの予後は非常に興味深いテーマである。成人に比べて高い再発率であるにも関わらず、生存率は成人よりよいようだ。MazzaferriとKloosは16.6年の追跡調査により、20歳以上の患者は再発率20%程度であるが、20歳未満の患者の再発率はおよそ40%であることを見いだした。
一方、生存率は成人より高い。ミンスクでの741名のコホート研究によれば、児童の甲状腺ガン患者の5年生存率は99.3%、10年生存率は98.5%とされている。
年齢も、甲状腺ガンの予後に関してきわめて重要な因子である。小児と青年は通常、ともに比較的よい予後を持ち、45歳以下として分類される。しかし、Lazarらは、10歳未満の、おもに思春期前期の児童は、それ以降の青年期の場合よりも予後が悪いと報告している。
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