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原発の再稼働も、新設増設も悪い冗談にしか聞こえない。福島第一原発の事故機に加えて、活断層の存在が確定的になった敦賀原発2号機(福井県)など、廃炉はもはや現在形の話だ。しかし、その道筋は険しい。商業用原発では国内初の廃炉作業に取り組んでいる東海原発(茨城県)でも、難航を強いられている。小型の東海原発にして、この始末。政府に本当の危機が見えているとは思えない。(荒井六貴)
「福島第一原発の廃炉作業とは違う。原子炉などの解体は遠隔操作でやり、作業員が足りないこともない。スケジュール通りにいっている」
東海原発の廃炉にあたっている日本原子力発電(原電)の広報担当者はそう言い切る。
しかし、疑問は尽きない。廃炉作業は2001年に始まった。当初計画では作業の完了は17年度だったのが、最近になって、3年後の20年度に先送りされた。
「こちら特報部」は原電に対し、廃炉作業の進行状況を四半期に1回、県に説明している同社作成の報告書について問いただした。だが、原電側は「公表を目的としていない」と出し渋った。結局、県が原電を説得し、ようやく応じた。
原電側の説明では、今年1月に提出された報告書(2012年10〜12月分)には「対象工事は熱交換器等解体撤去や、使用済み燃料移送用チューブの解体。現場への立ち入り人数は143人で、平均放射線量は0.01ミリシーベルト。ドラム缶168本分の廃棄物、今後の予定は、廃棄物処理設備の解体撤去」などと記されているという。
1998年の営業運転終了後、01年度までに使用済み核燃料を取り出し、再利用のため、英国に搬送した。現在は原子炉本体解体の手前の作業にあたる4基の熱交換器を撤去している。20年度に全作業を終わらせ、更地にする計画だ。
進行の遅れの理由について、原電側は作業員の被ばくを抑えるため、原子炉の解体に使う遠隔操作ロボットの準備が遅れたことを挙げている。
しかし、理由はそれだけか。現場ではトラブルが噴き出している。
火災や汚染水漏れ事故が続発している。昨年1月には、低レベル放射性廃液処理施設の屋上から出火。隣接する東海第二を含めて火災が頻発しており、県が文書で注意や再発防止を求めた。
2カ月後、作業服などを洗って出た放射性セシウムを含んだ汚染水が、タンクから流出していたことも判明。1年半以上前から漏れていたことが分かり、総流出量は約3.7トンに上った。汚染水漏れ事故では、周辺自治体への連絡も遅れた。
東海原発の廃炉には、総額885億円が見込まれている。作業が長引けば、費用はかさむ。原電は東海第二のほか、敦賀原発(福井県)1、2号機を運営するが、再稼働の見通しはたたず、経営は厳しい。資金確保のため、先月までにウランの一部を売却した。
仮に経営破綻した場合の作業の行方を聞くと、「そこまでの仮定はできない。責任を持ってやっていくとしか言えない」(広報)と答えた。
実は廃炉作業には、事故やロボット技術以上の難問が隠されている。
原子炉解体で排出される配管やコンクリートなど、放射性廃棄物約2万4000トンの行方が決まっていないことだ。この処分先が決まらない限り、原子炉の解体に着手できない。地下に埋設する計画だが、候補地はない。
予定では、原子炉の解体着手は来年4月からになっている。しかし、処分場について、原電側は「検討している」と述べるだけだ。処分場を確保できなかった場合について、原電は「原子炉は解体せず、安全貯蔵期間-を延長する」とした。つまり、原子炉を東海村に置いたまま長期間、管理し続けるということだ。
こうなると、廃炉作業の終了は20年度どころか、永遠に見えない。
政府は本年度補正予算で、福島第一原発の廃炉研究費用として850億円を計上。来年度も原発の廃炉研究費用として約87億円を見込むが、肝心の最終処分場にメドは立たず、廃炉の道筋は描けていない。
放射性廃棄物の処分に詳しい法政大の藤田貢崇教授(物理学)は「このままでは各地の原発が完全に解体されないまま、放置される。そうした問題を直視せず、再稼働や新設するのはあまりにも無責任だ」と語る。
東海村で、子ども2人を抱える農業男性(37)は「福島原発事故の直後、ホウレンソウから放射性ヨウ素が5万ベクレルも出て驚いた。事故が起きれば、生活や仕事を失うことになる」と訴える。
その一方で、家業を手伝う一人の地元女性(72)はこう言った。
「原電で掃除の仕事をしていた。原発のおかげで裕福な村になっている。お世話になったから、なくせと言いにくい。廃炉の廃棄物は、他の場所に移しても迷惑。ここに置いておくしかない」
■「3年内の再稼働」こそ無責任
福島原発事故以来、脱原発を訴えてきた東海村の村上達也村長(69)=写真=は廃炉作業中の東海原発について「しばらく野ざらしになるのは仕方がない。廃炉技術が確立せず、廃棄物の行き先がないのだから」と話した。
「原発は便利な道具かもしれないが始末に負えないモノの象徴だ。犠牲になるのは立地自治体であり、国民たちだ」
村上村長は東海原発のみならず、東海第二原発の廃炉も求めて、国などに要望を続けてきた。
「政府と(原電に出資する)電力業界が決断する段階にきている。原電は『安全対策』を進めようとするが、それができるとは思わない。大手電力会社や国が原電をどうするかを考えないと、社員もかわいそうだ」
村は電源立地地域対策交付金を毎年、12億円程度受け取る。原発関連施設で働く人も多い。廃炉は村財政や雇用を悪化させかねない。村議会には、それを恐れる再稼働派が少なくない。
村上村長は「原発にぶら下がっている限り、いつかは事故ですべてを失う。決断するときだ。雇用と財政で尻込みするようでは、前に進めない。失うものはあるが、別の形で補う努力をする。国が当面、交付金や補助金を出すやり方もある。国は弱い自治体に原発を押しつけてきた。そうである以上、穴埋めする義務がある」と語る。
安倍首相は3年以内に原発を再稼働させることを明言した。村上村長はそれをこう断罪した。
「原発推進の旧体制に戻ろうとしている。しかし、福島の事故は国民の意識を変えた。いまはそれを信じたい。安倍政権は『原発ゼロは無責任だ』と言う。そうなのか。どこを廃炉にするのかを明示しないことこそ、無責任ではないか」
[デスクメモ]
福島の事故機の廃炉には40年かかるというが、数字に根拠は薄い。被ばく実態の顕在化にも長い年月がかかるだろう。だから、3・11から「2年も」ではなく、「たったの2年」のはずだ。あの当時、虚飾がはげたこの国の荒れ地を見た。それは私たちの精神にも見つけた。修復は始まったばかりだ。(牧)
2013年3月11日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013031102000152.html
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