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2013.03.07 23:30:00
メルトダウンを起こし、広範囲に放射能を撒き散らした福島第1原発の事故から2年が経とうとしている。事故直後から、世論は脱原発の方向へ舵を切った。民主党政権は、世論に配慮しながらも、2012年7月には福井県の大飯原発を再稼働させた。
事故の検証は、いまだ完璧に行われたとは言えない。そんな中で大飯原発の再稼働に踏み切った民主党政権に幻滅した読者も多いと思われる。そして、政権が自民党に代わってみると、原発の再稼働が前提となる議論が、堂々となされるようになっている。
安倍晋三首相は、2013年2月28日の施政方針演説で、原子力政策では「安全が確認された原発は再稼働する」と明言した(産経新聞、同日付)。同紙の記事によると、「エネルギーの安定供給とエネルギーコストの低減に向けて責任ある政策を構築」し、福島第1原発事故の反省を踏まえた上で「原子力規制委員会の下で妥協することなく安全性を高める新たな安全文化をつくる」と首相は説明した。
私たちは、自民党と政府、そして電力会社の「原子力発電所は安全です」という言葉を信じたが、福島第1原発事故でその言葉は裏切られた。今度は「安全文化」などというあいまいな言葉を使って、原発の再稼働を促そうとしている。まさに「喉元過ぎれば熱さを忘れる」である。
ずさんな安全基準で建設を促進し、その結果として原発は取り返しのつかない事故を起こした。事故当時、たまたま民主党が政権を握っていたが、原発の安全基準がずさんであったことの責任は、主に自民党と、自民党が過去に運営してきた政府にあるのは自明のことであろう。
首相の「安全文化」という言葉が、筆者には「原子力発電所は安全です」と言う、かつて私たちをだました自民党の言葉と同じに聞こえるのは、筆者だけであろうか。エネルギーの安定供給は重要な課題ではある。だが、安定供給が必要だから原発を再稼働するというのは、問題をすり替えていると言わざるをえない。
原発の再稼働がありえるのは、その安全性が完璧に確認され、国民がその安全性に納得いった場合に限定される。どれだけエネルギーが不足しても、どれだけエネルギーの供給コストが高まっても、その原理原則を崩さないことが、福島第1原発事故を経験した私たちの「学び」なのだと筆者は思う。
(谷川 茂)
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