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脱原発を望む国民は世論調査で7割近くに達する。しかし、「単一のテーマ」は国政選挙にはなじみにくい。ならば是非が分かれる「原発」をどうするのかについて、主権者一人一人が考え、判断しようという国民投票の実施を目指す運動が10日から本格化する。その取り組みへの思いとハードルは−。(出田阿生、荒井六貴)
「何でも直接投票がいいとは思っていないが、原発問題については国民投票にかけなければいけない」。法政大学の杉田敦教授(政治理論)は7日、東京都内でこう話し始めた。福島の事故後、活動を始めた市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」の共同代表を務める。
議会制民主主義の日本で民意を示す手段はまず選挙となるが、政党の公約は一括してとらえられがちで、原発問題だけを争点にするのは難しい。
「エネルギー問題は専門性や利害が絡み、政党政治で十分に争点化されない。だからこそ、単一の問題を問いかける国民投票が必要なんです」
実際、先の衆院選で争点となったのは民主党政権の是非や、景気回復のための経済政策だった。自民党は原発問題をあえて争点にしようとせず、脱原発票の受け皿とみられた政党も迷走した。
「保守政党は利権で結集するが、野党はそれぞれの理念を貫こうとして結集力が足りなくなる傾向がある」と振り返る。今や安倍政権は選挙時に明言していなかった「再稼働」 「新規増設」に向けて動き始めている。
杉田氏が国民投票を考えるもうひとつの理由は、原発問題が「どう生きるのかという倫理観に深くかかわる」ためだ。
生命・環境が第一なのか、生活の利便性を優先させるのか。安全と効率性のどちらに重きを置くのか─。さらに放射能汚染や放射性廃棄物の処理・処分のリスクを後の世代に追わせていいのかの是非もある。
これまで原発の住民投票が行われたのは、新潟県巻町(現新潟市)など立地予定自治体に限られた。住民は熱心に学び、議論を重ねた。だが国民投票となれば、遠い消費地の住民も参加する。
杉田氏は、そうした地域間の意識差があっても「国民投票の実施が決まれば、議論が生まれる。そこに大きな意味がある。今のままだと、国民は熟慮する機会を持たないままだ」と語る。
原発事故直後、東京都、大阪市、静岡県、新潟県で住民投票運動が行われたが、いずれも議会で否決された。その理由に「原発は国策で決めること」を挙げた。それならば、国民投票が向いているともいえる。
市民グループは署名集めに加え、10日午後、東京・新宿などで国民投票実現を求めるデモと大集会「『原発』国民投票 TOKYO APPEAL」を初めて開催する。
「原発推進派こそむしろ展望がない」とスタッフの宝川雅彦さんも訴える。「原発を動かせば使用済み核燃料が発生するが、貯蔵の限界を迎えている。青森県六ケ所村の再処理工場は稼働せず、最終処分場も決まっていないことを、どれだけ国民が意識し、考えているのか。そうした根本的な問題を知り、未来に責任を持つ契機になります」
国民投票をめぐっては、憲法改正の手続きを定めた国民投票法はあるが、それ以外はない。国には、地方自体のように国民が政府に直接請求する仕組みなどもない。
第一のハードルは、原発稼働の是非を問う国民投票法をつくることだ。
事故後、脱原発の機運の高まりを受け、民主、みんな、みどりの風などの野党議員らが法案化に向け動き始めた。
民主の桜井充・政調会長は「間接民主制を否定しているわけではなく、国民が大事なことを決められる道を開きたい」と意欲を示す。そのうえで「自分の一票で社会が変わると実感できれば、選挙で議員を選ぶときの意識も高まり、議員への監視にもなるのでは。政治不信を払拭する切り札になる」と話す。
憲法で「国会は唯一の立法機関である」と定めているため、国民投票の結果に、法的拘束力を持たせることは厳しい。そのため投票は、国民の意見を参考に聴いてみる諮問型の特別法を想定。「諮問型にしても、民意の表れを国が覆すことは難しいだろう」とみる。
仮に国民投票が実現した場合、「原発推進」が多数を占めることもあり得る。今後、野党でまとまり、自民など与党にも声を掛けて議連をつくり、今国会中にも法案を提案したいとしている。
海外では国民投票が実施されている。スウェーデンでは米スリーマイル島事故を受け1980年、「30年後までにすべての原発をなくす」と民意が示され、スイスで90年、原発廃止は否決されたが「10年間は新設を凍結する」と決めた。
福島事故後は、脱原発の流れが加速する。2011年6月のイタリアで90%を超える人たちが原発再開に反対した。リトアニアでは昨年10月、新設原発に65%が「ノー」を突きつけた。
国民投票に詳しいジャーナリストの今井一さんは「国内の自治体では400件以上の住民投票が行われ、住民が勉強し理解を深めた。だから国民投票でも不安はない」。
ただ、諮問型を採用したスウェーデンでは、国民投票の結果が政治の力で覆され、原発の建て替えが決められた。「投票後の努力も大事だということが分かった。国民投票を実施することで、勉強もするし、その精神は残るから、投票は無意味ではない。一歩を踏み出すことが重要だ」
■北海道、島根でも準備始まる
原発の是非を住民の投票で決めようという住民投票条例を制定する運動は「0勝4敗」だ。それでも、動きは続く。
泊原発がある北海道では、「みんなで決めよう『原発』道民投票実行委」が設立。まとめ役のコンビニ店経営の山下元伸さん(37)=札幌市=は「つじ立ちをして道民に訴え、制定に反対する議員にプレッシャーをかけたり、説得していく方法を考えたい」と語る。
島根原発を抱える島根県では、住民団体が地域振興やエネルギー政策の基本方針を定める条例制定を求め、今夏にも署名活動を始めるという。第二段階として、原発の是非を問う住民投票条例の制定を検討していく。
主導する「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」事務局の上園昌武・島根大教授(環境経済学)は、これまで議会で条例案が否決されてきたのを踏まえ「同じように住民投票を求めても、結果が見える。原発があっても、過疎化や高齢化が解決されないことを訴え、地域の将来を考える議論にしたい」と話した。
[デスクメモ]
「100年以上前の先祖は無責任だ。エネルギーを使い放題のうえ、核のごみを放置していった」。憤るのは22世紀の日本人。先祖とは私たちのことだ。原発の過酷事故を引き起こした21世紀初頭に生きた世代だ。未来の前に先々、子どもらに問われるだろう。立地地域も消費地も「責任共同体」なのだ。(呂)
2013年3月8日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013030802000152.html
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