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「原発依存度を減らすため、再生可能エネルギーを育てよう」と、昨年7月に施行された再生エネの固定価格買い取り制度。大手電力には、太陽光などの電気事業者から電力を買い取ることが義務付けられた。だが、電線の接続段階でトラブルが多発している。いくら商売敵になるとはいえ、これでは「名ばかり」買い取り制度だ。監視すべき国の対応やシステム自体に問題はないのか。(荒井六貴、小倉貞俊)
「新参の事業者は自分では何も決めさせてもらえない。大手電力の顔色をうかがうしかない」
大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画が頓挫した岡山県の企業社長はこう嘆いた。
固定価格買い取り制度の施行を受け、この社長も昨春から同県内に1メガワット規模の太陽光パネルを敷設するメガソーラー建設計画を進めてきた。
ところが、辛酸をなめた。なぜか。つくった電気を送るには大手電力会社の送電網と接続しなくてはならないが、そのための手続きはこうだ。
まず、電気を送る大手電力の変電所の空き容量を確認する「事前検討(相談)」がある。認定まで約1カ月かかる。
次に接続するための「接続検討」。事業者は発電施設の詳細な設計図などを手数料21万円とともに大手電力に提出する。電力会社は3ヵ月以内に回答し、双方が了承すれば契約となる。
この社長は昨年7月、地元の中国電力に事前検討を申請。十数キロ離れた変電所に空き容量があり、発電設備が2メガワット以下であれば最寄りの電柱までの電線のみ自己負担になるという回答を得た。
「電柱はメガソーラーの敷地沿いにあるので、自己負担は100万円ほどと考えていた」(社長)
ところが、接続検討を申請し、1月末になって示された工事費は1億5千万円。所要工期も3年半だった。この際、中国電力は「変電所までの電線が細く、電力系統にトラブルが起きないよう伝線を太くしたり、電柱を交換する必要がある」と説明したという。
この社長は土地を準備し、メガソーラーの建設費3億円も工面済みだったが、「費用が倍増する上、運用時期がずっと先では事業が成り立たない」と計画を断念。測量・設計費の500万円が無駄になった。「多方面の信頼を損ねる結果にもなった。今後は銀行の融資も受けられるかどうか」
社長は「電線の太さが十分か否か、は事前検討のときにある程度は分かったはず。それに電線の工事は電力会社の関連会社が実施し、工事費は電力会社側の言い値だ」と悔しさをにじませる。
中国電力の担当者は一般論として「再生エネ発電をしたいというのは事業者の都合なので、自己負担は当然」と話す。
こうした姿勢に、社長の怒りは収まらない。
「大手電力は再生エネ促進どころか、『頼まれるからやってやる』と言わんばかり。結局、太陽光発電の施設建設は外れクジの多いクジ。発送電分離が進まない限り、電力会社の独善的な姿勢は変わらないだろう」
再生エネ普及を研究する財団法人「自然エネルギー財団」(東京)は先月、国内の太陽光発電業者(計画中、断念も含む)をアンケートした。
全国の252社のうち、79社が回答。大手電力に相談した業者のうち、約2割が変電所の容量不足などを理由に接続を拒否されていたことが分かった。
拒否されなかった場合でも、「送電網に接続する工事などの負担金が重い」ことで、17件の事業が断念されていた。
ほかにも大幅な設備容量の縮小など、接続に制限が課せられた事業も4割弱に上っている。
買い取り制度を定めた再生可能エネルギー特別措置法には、大手電力は再生エネの発電業者からの送電を接続する義務を負う(5条)と定められている。それなのに、なぜ大手電力は接続を拒否できるのだろうか。
実はこの法律には穴があいている。例えば、同じ5条の第2項には「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがあるとき」という例外規定がある。つまり、大手電力は送電線や変電所の容量を超える電力は受け入れなくてもよいわけだ。
そのうえ、送電線や変電所へ接続するためのインフラは、発電業者の負担。その接続工事を担う会社は電力会社の子会社が多いため、競争原理が働かず、コストは高止まりという具合だ。その高コストが新規発電業者には過大な負担になる。
ライバルの再生エネの普及を遅らせ、原発の再稼働に固執する大半の大手電力にとって、これは当然かもしれない。
同財団の真野秀太・上級研究員は「大手電力会社は法に反しない限り、接続を拒否しようとしている。発送電分離によって、送電網を道路のようにオープンに使えるようにならないと、再生エネの普及はなかなか進まない」と指摘する。
ただ、発送電分離が実現しても、大手電力以外の事業者が多く参入するためには、送電網の基盤の能力を上げることが課題になる。
真野さんは「大手電力は一般の発電事業者よりも、送電網に関する情報量や交渉力が圧倒的に強く、対抗するためには国の関与が不可欠。現行の買い取りシステムは国が再生エネ促進を掲げてつくったのだから、抜け穴は許されない。送電網強化も国の責任で整備されるべきだ」と訴える。
その国側だが、経済産業省資源エネルギー庁再生可能エネルギー推進室の担当者は「電力会社は停電を回避し、安定的に電気を供給する義務がある。そのため、再生エネ事業者からの送電接続を拒否できる」と語る。
だが、空き容量の有無や新規の電線敷設などが必要なのか、については大手電力の言いなりがまかり通っている。言い値の接続工費も含め、検証する政府や第三者の機関が必要ではないのか。
推進室の担当者は「検証機関については、電力システム改革委員会で議論している。電力会社には接続工事の際に、見積もりの比較ができるよう情報提供を求めている。だが、なかなか事情はつかめていない」と説明。結局、運用は電力会社任せなのが実態だ。
経産省の有識者会議、総合資源エネルギー調査会総合部会の委員を務める京都大経済学部の植田和弘教授(環境経済学)は「大手電力は原発のための送電網を整備してきたが、再生エネを導入するためには別の整備が必要だ。買い取り義務があいまいな点は、より明確に義務化すべきだ。地熱発電の際の土地利用などの規制改革も不可欠だろう」と話している。
[固定価格買い取り制度]
太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーで発電した電気を大手電力会社が10〜20年間、決まった価格で買い取る制度。買い取り費用は電気料金に上乗せされ、消費者が負う。昨年11月時点で、認定を受けた設備の総発電量は365万キロワット(18万7,297件)。太陽光が大半を占める。
[デスクメモ]
日本人は情に厚く、論理に弱いとよく聞くが本当だろうか。情に厚ければフクシマの棄民化を看過できないし、米中が再生エネ促進に懸命なことは論理以前の常識だ。その方向に進むことを妨げているのは、既得権益にしがみつく思考停止にほかならない。これは怯懦(きょうだ)と言い換えてもよい。(牧)
2013年3月5日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013030502000145.html
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