http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/505.html
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震災瓦礫の放射性セシウムがバグフィルターでは捕集できていないという根拠
以前から気になっていたことですが、バグフィルターで99.99%エアロゾル化したセシウムなどの放射性物質を捕集できるから焼却処分して安全だとしてきたことについて、その誤りがどこにあるか、確認しました。
簡単に言えば、エアロゾル化したときの粒子径がセシウムなどの場合、飛灰などよりも格段に小さく、とてもバグフィルターでは補修できないばかりか、99.99%捕集ができているという論文での分析機器がそのものでさえ捕集できていなかったということなのです。
環境省が99.99%除去の根拠にした論文「一般廃棄物焼却施設の排ガス処理装置におけるセシウム、ストロンチウムの除去挙動」は http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/03-mat_5.pdf で見ることが出来ます。この資料の後半に、問題の実験の詳細が載っています。
まず、4ページの「図1サンプリングセット」と言うところを見ていただきたい。この装置をバグフィルターの前後、つまり、バグフィルターを通る前と通過後のところに付けて、どの程度の放射性物質のエアロゾルがあったかを調べている。実際にエアロゾルを捕集している部分はカスケードインパクターという部分だ。そして、カスケードインパクターとは、目の細かさの異なったろ紙を何段にも分けてセットしてあり、そこで粒子径ごとにろ紙でこしとる装置だ。
次に5ページの「図3サンプル前処理操作」を見ていただきたい。分析にかけるものは「ダスト捕集後捕集紙」、つまり、カスケードインパクターの中にあるろ紙のことだ。
次に、4ページに戻り、使っているサンプラーが「アンダーセンスタックサンプラー AS-500東京ダイレック」であることを確認していただきたい。
http://www.t-dylec.net/products/ja/dylec_as500.html で東京ダイレックの「アンダーセンスタックサンプラー AS-500」の商品紹介が見れる。ここには、最少粒径が0.36μmだと書かれている。
次に、では、実際の放射性セシウムなどの粒径がどの程度のものになるかを調べてみよう。
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20120731/nr20120731.html に、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の「2012年7月31日 掲載 風に乗って長い距離を運ばれる放射性セシウムの存在形態」と言うレポートがある。これには、次のように書かれている。
2011年4月28日より茨城県つくば市にある産総研つくばセンターにおいて、エアロゾルを13段階の粒径に分級し吸引捕集した。2011年4月28日〜5月12日に捕集した大気エアロゾルに含まれる137Csや134Csの放射線量を測定し、これらの粒子の粒径分布を測定した。この結果、137Csを含む粒子と134Csを含む粒子の粒径分布はほぼ同じで、大部分が空気動力学径(以下「粒径」という)2μm以下の微小粒子領域に存在し、0.2-0.3 μmと0.5-0.7 μmに極大値を持つ二峰性の特徴的な分布を示した。(図1A)。
つまり、「2011年4月28日より茨城県つくば市にある産総研つくばセンターにおいて、エアロゾルを13段階の粒径に分級し吸引捕集した」結果、捕集できたエアロゾルは「0.2-0.3 μmと0.5-0.7 μmに極大値を持つ二峰性の特徴的な分布を示した」というのだ。まず、この段階で、アンダーセンスタックサンプラー AS-500で捕集できる最少粒径0.36μmよりもかなり小さいエアロゾルがつくばで採取したものにはあったことが分かる。
そして、問題はこの資料の次の部分だ。
これまでの研究により硫酸塩エアロゾルでは、硫酸塩が大気中で雲粒または霧粒に取り込まれ、さらに二酸化イオウ(気体)と反応して、より大きいエアロゾルが形成され、その結果として二峰に粒径分布が分かれる場合があることが知られている。放射性セシウムを含む粒子の微小粒子領域での二峰性の粒径分布は、このような硫酸塩エアロゾルの挙動により生じる粒径分布と一致する。
つまり、ここで捕まえていたものは硫酸塩エアロゾルであった可能性が高いのだ。ところが、硫酸塩エアロゾルは300度とか600度程度で分解してしまう。
http://kamome.lib.ynu.ac.jp/dspace/bitstream/10131/7161/1/biest111077.pdf
の6ページにあるTable4を見ていただきたい。Ce(セシウム)の硫酸塩が二種類示されていて、純粋窒素中と流れている空気中での分解開始温度が示されている。2と5というのは毎分の上昇温度のことだ。加熱のスピードを表している。つまり、焼却炉で焼却した段階では確実にエアロゾルは分解し、その後300度程度に冷やされても硫酸塩になっていずい、硫酸塩よりも小さい分子であるものがかなり多いはずなのだ。
更に問題なのは、「茨城県つくば市にある産総研つくばセンターにおいて、エアロゾルを13段階の粒径に分級し吸引捕集した」ということであり、これは当時の気温、つまり、4月末時点の気温でのことだから、せいぜい温度が高くても40度程度であり、硫酸塩エアロゾルはかなり凝集していた可能性が高いのだ。高温になれば分子の活動性が高まるので分解するが低温なら凝集するからだ。つまり、焼却炉で加熱したあと、まだ大気中へ出る前のパイプの部分を通過している状態ではかなり高温である可能性が高い。なお、99.99%取れるとした実験で、サンプラーをセットした部分の温度が何度かは示されていない。環境省では、バグフィルターのある部分では200度程度に温度が低下するとしている。環境省のサイトの http://kouikishori.env.go.jp/faq/ のQ14の回答に「排ガスはバグフィルターの手前で200℃以下に冷やされる」とある。だから、冷やされているとしても200度程度なので、バグフィルターの前後ではまだまだエアロゾルの粒子径は小さいままであり、大半が0.2-0.3 μm程度であったと考えられるのだ。
なお、上のQ14には「排ガス中のセシウムは気体から固体(融点約650℃の塩化セシウム等)に戻り、排ガス中の灰に付着します」として、硫酸塩というよりも塩化物になるとしている。しかし、硫酸セシウムと塩化セシウムを比べると圧倒的に塩化セシウムのほうが分子量が少なく、分子としての大きさも小さくなる。当然、塩化セシウムとか硫酸セシウムが分子ごとに独立して存在する場合もあればそれらが凝縮して存在する場合もあるが、いずれにしても塩化セシウムが分子として凝縮した場合は硫酸セシウムよりも小さくなるはずだ。
そして、バグフィルターで99.99%のセシウムが取れるという実験で使用したアンダーセンスタックサンプラー AS-500で捕まえられる最少粒径は0.36μmだ。だから当然、飛灰に付着したセシウムはかなりの程度捕集できただろうが、飛灰に付着していなかったものはかなりすり抜けていたことになる。つまり、とても99.99%など捕集できていたはずがないのだ。
*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています<<1363>>TC:38558, BC:20945
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