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「カウントダウン・メルトダウン」(文芸春秋)は朝日新聞の主筆だった船橋洋一氏が、内外多数の人にインタビューして1月に出版した本で、上下2巻の大部です。船橋氏は民間事故調の主宰者でもあります。周辺のインタビューを積み重ねて、菅元総理の実際の発言を再現し、菅氏の判断や行動に対して冷静な評価をしていますので、抜粋してご紹介します。
抜粋はじめ
深夜の電話
午前1時すぎ、海江田が電話に出ると、清水がこわばった声で2号機の状況が一段と深刻になってきた事情を説明した。「このままでは作業員を退避させざるをえなくなると思います」「現在、福島第一原発では700〜800人の作業員が働いていますが、彼らを第一原発から第二原発に退避させたいと思います」海江田は一呼吸入れて言った。「清水さん、退避は無理です。もう少し頑張ってもらわないと困ります」 ただ、最後に「重大な決断なので総理と相談します」とつけ加えた。
御前会議
福山は、このままではズルズルッと撤退でいいという判断になるかもしれない、と怖れた。正式な会議を開き、総理の「聖断」を仰ぐことで、流れを変えられないか、と思った。枝野、寺田とも異論はなかった。のちに、官邸政務が「御前会議」と呼ぶことになる会議の開催が決まった。
海江田が「東電が原発事故現場から撤退したいと言ってきていますが、どうしましょう。原発は非常に厳しい状況にあります」と切り出した。
「撤退? 何だそれは。そんなのありえないだろ」菅の怒りに火が点いた。
「ええ、そうなんですが、ただ、東電の社員に死ぬまでそこに残れとも言えませんし・・・・」
海江田と枝野がやや「ひるんだ」感じの発言をした。
菅は「現場はどう言ってんだ。吉田さんに聞いてみよう」と言い、その場で、卓上の電話機から福島第一原発の吉田所長に電話した。菅は、受話器を耳に当て、なにやらうなずいていたが、電話を切ると「吉田はまだやれると言っている。おい、現場ではやれると言っている。撤退なんてありえないぞ」と高ぶった。「撤退したら一体誰が対応するんだ。6つの原子炉と7つのプールを放棄するのか。どういうことになるのかわかっているのか」その場の空気がピーンと張りつめた。菅はなおも続けた。「東日本全体がなくなるんだ。絶対ダメだ。何人死のうとも、引き揚げちゃだめだ」「自分の国で起きた原発事故を放置するなんてありえないだろう」「引き揚げることは、絶対に許さない」
東電乗り込み
一行は2階のオペレーションセンターに通された。正面には東電経営陣の席があり、勝俣、武藤らはもう着席していた。細野が「それでは、総理、ご着席いただいて・・・」と促したが、菅は立ったまま、真っ正面に座っている武藤をにらみつけ、怒鳴り上げた。
「君たちは、一体、状況がわかっているのか」
菅は右手にマイク、左手を腰に添え、立ったままで、演説を始めた。「一体どうなってるんだ!12日の1号機の爆発はテレビで放映されているのに、官邸には1時間も連絡がなかったじゃないか」「今、福島第一から撤退すれば、1号機から4号機、5、6号機まで全部爆発する。福島第一原発だけでなく、福島第二原発も爆発する」「日本の領土の半分が消えることになる。日本の国が成り立たなくなる。何としても命がけで、この状況を抑え込まないといけない」「撤退を黙って見過ごすわけにはいかない。日本が原発事故を自分で何もできないとなったとき、外国が、アメリカもロシアも、何もしないでいるだろうか。何十日間、何百日間、放置するだろうか。自分たちがやる、と言い出しかねない。それは日本が占領ということになる」「君たちは当事者なんだぞ。命をかけてくれ。東電は逃げても、絶対に逃げ切れない。金がいくらかかかっても構わない。日本がつぶれるかもしれないときに撤退はあり得ない。撤退したら東電は100%つぶれる」「会長、社長も覚悟を決めてくれ。60歳以上の幹部は現地に行って死んだっていいとの覚悟でやってほしい。おれだって行く。われわれがやるしかないんだ」「もう一度言う。撤退はありえない。撤退したら東電は必ずつぶれる」
10分間近く、菅は演説した。すさまじい形相だった。顔には疲れがにじみ出ていた。
菅という不幸 菅という僥倖
菅は、木を見て、森を見ることが苦手だった。大局観に欠けていた。マイクロマネジメントに傾斜しすぎた。官僚を上手に使えなかった。その上、言葉が粗暴な上、人を試す言い方をする。こらえ性がなく、怒りっぽく、人を怒鳴りつける。だから、情報が下から吸い上がってこないし、周りが円滑に流れない。そして、国家的危機に際して、国民の胸に響く言葉を発することがついぞなかった。リーダーシップのあり方からすれば、おそらく菅は落第点をつけられてもしょうがないだろう。
にもかかわらず、菅がいなければ「日常モード」から「有事モード」への思い切った切り替えはできなかっただろう。危機の本質を誰よりも早く察知し、緊急対応へとシフトさせた。東電の社員に命をかけて踏みとどまれ、という権限も強制力も政府にはなかった。15日未明の官邸5階での政務の議論の本質は、細野に言わせれば「作業員に死ねと言えるかどうか」をめぐるテーマだった。細野は、細野をはじめ、海江田、枝野、福山も官邸政務はそれを言えなかった、と証言している。
「菅直人は、間接的にだけど、東電の作業員は死ねと、死んでもいいと言ったんです。死んでも、一人の命より国家の重みのほうがあると言ったんだと思いますよ」細野は「 菅直人という政治家の生存本能というか生命力ってすさまじいものがある」と思ったという。「この局面で我が国が生き残るためには何をしなければならないのかという判断は、これはもう本当にすさまじい嗅覚のある人だと思っているんです・・・・撤退はありえないし、東電に乗り込んで・・・・そこでやるしかないんだという判断は、日本を救ったといまでも思っています」
菅直人の戦いは、日本という国の存在そのものをめぐる戦いだった。そのような危機にあって死活的に重要なリーダーシップの芯は、「生存本能と生命力」だった。そして、菅はことこの一点に関してはそれを十分すぎるほど備えていた。
抜粋おわり
以下にもう少し詳しく紹介していますが↓
http://www.minusionwater.com/countdownmeltdown.htm
詳しくはぜひ、本をお読みください。
3月3日の夕方6時から8時半まで、大阪天王寺のクレオ大阪中央で菅氏の講演会を開催いたします。関西の方はぜひお聞きください。脱原発を目指すすべての人々にとって、これからの脱原発の活動にとって、「ナマ菅」の話を聞くことが重要です。face to face で質問もできます。
詳しくは↓
http://www.minusionwater.com/
残席50あります。満席になりましたら締め切ります。
お申し込みはお電話でどうぞ 078-367-3477 褐抽ツ
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