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今後の原発政策をめぐって今、「ゼロ」が焦点となっている。安倍晋三首相は民主党政権の脱原発依存政策を「ゼロベースで見直す」と表明し、原発維持派が巻き返しを狙う。対する脱原発を目指す人たちは危機感を強め、新たな運動に乗りだした。その名称に「ゼロ」を込めた思いや攻防の行方は−。(上田千秋、中山洋子)
「住民が安心して生活できるよう、県は一刻も早く結論を出すべきだ」
中国電力が山口県上関町に計画する上関原発で、建設予定地の水面埋め立て免許の延長を県がまだ拒否していないことに、ノンフィクションライターの山秋真さん(42)はこう疑問を呈した。
■県が結論先延ばし
免許の期限は昨年10月6日までで、中国電はその前日の5日に3年間の延長を申請。山本繁太郎知事と、昨年8月に退任した二井関成前知事がともに許可しない方針を県議会などで示していたにもかかわらず、県は結論を先延ばしにした。
「内容に分からない点がある」(県港湾課)として4度も中国電に補足説明を求め、4カ月以上たった今も、失効もせず宙に浮いた状態が続く。
本来、上関原発の建設計画は頓挫しているはずだった。福島第一原発事故を受け、枝野幸男経済産業相(当時)は昨年10月、上関原発を含む計画中の原発建設を認めない方針を表明していた。
県はなぜ態度をあいまいにしているのか。地元では、衆院選で自民党が政権に返り咲いたことと無縁ではないとの見方が広がっている。安倍首相は同県選出で、実弟の岸信夫衆院議員は上関町を含む山口2区が地元だ。
山秋さんは「『首相の地元だし、ひょっとして原発はできるんじゃないか』 『自民党の方針が決まるまでの時間稼ぎ』という声も出ている」と話す。
山秋さんは2010年秋から、上関原発の建設計画地の対岸にある祝島に長期滞在。反対運動の取材を重ね、新著「原発をつくらせない人びと──祝島から未来へ」(岩波新書)にまとめた。
取材で認識させられたのは、推進派も決して原発の存在を望んでいるのではなく、過疎化でやむなく原発マネーに頼ろうとする原発立地地域に共通する構図の存在だ。
県が中国電に求めた補足説明の回答期限は22日。早ければ数日以内に県の結論が出る可能性がある。「(建設計画が出た1982年から)30年以上も原発問題に向かい合わざるを得なかった身体的、精神的疲労は相当なもの。これ以上、住民の不安を長引かせることは許されない」
そうした状況に危機感を深める山秋さんらは、原発ゼロを目指す市民ネットワーク「チームゼロネット」を発足させた。上関原発のほか、建設中の大間原発(青森県大間町)、唯一稼働する大飯原発(福井県おおい町)の地元で反対運動に携わっている人や、首都圏の脱原発運動関係者と連携。ツイッターやブログなどで情報発信していく。
「地元からは言いにくいこともあるだろうし、情報の伝え方に詳しくない人も少なくない。お互いに力を貸し合って現地の実情を広く知らせ、国や山口県に『国民はちゃんと見ている』ということを理解させたい」
安倍政権は発足時から閣僚が次々に「原発ゼロ」方針の転換を示唆し、安倍首相は衆参本会議で、野田前政権が決めた2030年代に「原発稼働ゼロ」を目指す方針に「具体的根拠を伴わない。ゼロベースで見直す」とあっさり表明した。
この転換を歓迎するのは経済界だ。アベノミクスと呼ばれる経済政策への期待から円安株高が進行。自動車など輸出産業は久しぶりの朗報に沸く。その影でじわじわ浮上しているのが、原発ゼロ方針が経済再生を阻むというゼロ悪玉論だ。
昨年の日本の貿易赤字は過去最大の6.9兆円。輸出が伸び悩む一方で、原発停止の影響で火力発電に使う燃料費がかさんだことも大きい。
財務省の貿易時統計でも液化天然ガスや原油などの燃料輸入額は2011年は前年比4.4兆円増の21.8兆円に。昨年はさらに増えて24兆円。それだけ国富が流出していることになる。
電力業界も再稼働に向けて巻き返しを図る。円安による輸入コスト増を理由に関西電力など3社が電気料金の大幅値上げを申請中だ。値上げが認可されれば、家庭や中小企業の負担は増す。アベノミクス効果が相殺されるという声も強まる。
稼働中の原発は大飯原発の2基のみで、発電量全体に占める割合も3%弱。この2基が夏に定期点検に入れば、再び「原発ゼロ」となる。
だが、茂木敏充経産相は就任以降、「新しい安全基準で安全性を確認したものは、政府の責任で再稼働する」と明言。原子力規制委員会の規制基準は7月にもつくられるが、基準をクリアした原発は順次、再稼働を進める意向を隠さない。
ゼロをめぐる攻防が焦点となる中、脱原発の市民団体でつくる「eシフト」などは「原発ゼロノミクス」を提唱する。
アベノミクスを意識した造語で、20日に東京都内でシンポジウムを開き、原発ゼロシナリオこそが日本の経済と社会を再生させると訴える。
脱原発の経済人や学者らを中心に広く賛同者を募り、知恵やアイデアを集めていくという。
eシフトに加わる環境エネルギー政策研究所顧問の竹村英明さんは「昨年夏の政府のパブリックコメントでは(総数8万9,000件以上の)9割近くが原発ゼロを求めたはずだ。その国民的な議論がなし崩しにされつつある」と批判する。
「安倍政権は、脱原発が経済活動を阻むものであるかのように問題をすり替えているが、両者は対立しない」。アベノミクスの経済優先の掛け声にかき消されがちな脱原発の世論を目に見える形に示したいという。
神野直彦東大名誉教授(財政学)は「アベノミクスという極めて短期の経済変動と、中長期的に考えるべき原発政策を並べることに意味はない」とバッサリ。「80年代の電力供給は今よりも3割少ない。どこまで電気が必要かを見極めることも重要で、原発がなければ経済活動が阻害されるというのは脅しに近い」
青山学院大の児島敏郎教授(環境政策)も、原発政策をめぐるこの間の「国民的議論」を軽んじる動きを危ぶむ。「パブリックコメントは行政手続きのプロセスなので、単なる署名とは重みが違う。この手続きを経て示された『原発ゼロ』が国民の意思」と指摘した上で、こう強調した。
「民主市党政権がきちんと受け止めていたとも言い難いが、安倍政権が無秩序にそこからさらに離れるとしたら問題。選挙は白紙委任ではない」
[デスクメモ]
上関原発に長年反対してきたのが海を隔てた祝島の人たちだ。大間原発も津軽海峡の対岸の函館市の住民がノーを訴える。工藤寿樹市長は19日、建設の無期限凍結を求める要請書を政府に出した。大間といえば本マグロの漁場だ。海峡に生きて一攫千金の夢にかけるなら、原発の存在はそぐわない。(呂)
2013年2月20日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013022002000148.html
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