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http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130212/243609/?P=1
経済産業省の総合資源エネルギー調査会総合部会の電力システム改革専門委員会は、2月8日の第12回会合で報告書を取りまとめた。民主党と自民党の政権をまたぎ、1年余りにわたった議論も、ようやく結実することとなった。
○規制改革会議と地域の元気創造本部
この会合の冒頭で茂木敏充経産相は、「電力システム改革をしっかり進めなければならない。電力システム改革なくして、新しいエネルギー政策に対する国民の理解を得ることは不可能と考えている」と力強く語った。電力業界に対しても、「電気事業を支えてきたプロのみなさんこそ、どうやったらできるのか考えてほしい」と、くぎを刺した。こうした発言の背景には、規制改革会議などで発信し続けている安倍晋三首相の明確なメッセージがある。今回の会合でも、現政権の規制改革推進に対する意思の固さを改めて確認することができた。
第2次安倍内閣は、規制改革会議を立ち上げ、1月24日に第1回会合を開いた。その冒頭で安倍首相は、「規制改革は安倍内閣の一丁目一番地。成長戦略の一丁目一番地でもある」と強調。目的は経済活性化であり、規制改革による経済成長および雇用創出を目指すことを明言した。規制改革を進めるべき具体的な分野としては、雇用、健康・医療などとともに、エネルギー・環境が挙げられている。
電力システム改革は積極的に進めるべきであることを、わたしは一貫して主張してきた。地域独占、総括原価方式などによる、これまでの体制を変革していかなければ、本当の意味で産業や経済を活性化することはできず、国力も増強できない。
各省庁も具体的に動き始めている。総務省は総務相が本部長を務める「地域の元気創造本部」を立ち上げた。同本部は、10人の委員で構成する「地域の元気創造有識者会議」を設け、2月15日に第1回会合を開催。わたしも委員の一人として議論に参加することとなった。
この会議では、地域活性化策として、次世代エネルギーシステムやスマートコミュニティ(次世代環境配慮型地域)による、地域密着型エネルギーの活用や安心安全の向上なども重要なテーマとなる。そして、これらは電力システム改革とセットで進めることで、より効果的な施策となるのである。
○経産省だけで対応できる広域系統運用機関の設立から
すでに新聞などのメディアでも報じられているように、改革は3段階で進められる。第1段階が広域化、第2段階が小売り全面自由化、そして第3段階が発送電分離である。
電力システムの工程表(略)
電力システム改革では、事業体制を大きく変革することになり、さまざまな法改正が必要になる。関わる省庁も経産省にとどまらず、国土交通省、環境省、総務省など複数にわたる。十分に準備し、慎重に進めるべきであり、3段階に分け、各段階で検証を重ねながら実行していく。
そして第1段階では、経産省のみが関わる電気事業法の改正などだけで実施できる広域化に、まずは取り組むこととした。2年後の2015年を目途に、「広域系統運用機関(仮称)」を設立する。もっと早くできないのかと思われるかもしれないが、拙速で中途半端なものをつくっても仕方がない。しっかりと準備を整えるには、2年間は決して長くはない。現在、会期中(1月28日〜6月26日の150日間)の第183通常国会に提出される予定の電気事業法改正案にも、この広域系統運用機関の設立が盛り込まれることになる。
一方、委員会にオブザーバーとして参加してきた、一般電気事業者(電力会社)10社で構成する電気事業連合会は、広域系統運用の機能を持たせたISO(独立系統運用者)を設立する案を自主的に提示していた。しかし、この案におけるISOは、需給が逼迫(ひっぱく)した緊急時に電力会社間の融通によって需給を調整する機能が中心で、これまでの体制と大きく変わらなかった。また、発送電分離の形態として、電力会社が送配電の設備を持ったまま、系統運用の機能だけを切り離す「機能分離」を前提としていた。
これに対して、新たに設立する広域系統運用機関は、広域系統運用における情報収集および調整の強い権限を持つ。広域の需給計画の策定、連系線・広域送電線の整備計画の策定、需給・系統の広域的な運用といった機能および権限を持つことになる。そして、発送電分離の形態は、現在の電力会社の送配電部門を別会社化する「法的分離」を前提としている。
委員会では、法的分離と機能分離の両方が検討されていたが、小売り全面自由化に向けて公平な競争環境を整える上で、送配電部門の独立性および中立性をより確かに実現できるとして、法的分離を支持する委員が圧倒的に多かった。
○中立性・公平性の確保に新規制組織
広域系統運用機関の設立と同時期に、電気事業の規制そのものも新組織に移行する。第2段階の自由化の前に、規制組織の強化が必要との考えからだ。新組織は、送配電部門の中立性を確保するための規制や、電力市場における適切な取引や健全な競争の監視、ルールの整備などを担う。さらには、緊急時の安定供給の実現においても重要な役割を果たす。
新組織には、現行の規制当局以上に高い独立性と専門性が要求されることになる。独立性を高めるためには経産省の外部に設置すべきとの意見がある一方で、高い専門性が求められることから、これまでと同様に経産省の内部に設置するのが適当との意見もあった。いずれにするかは、この報告書では結論を出さず、継続して検討することになった。
第1段階の広域化によって、緊急時の電力会社間の電力融通を円滑に実施できるようになる。また、電力会社を越えて発電コストの安い電源から利用する「メリットオーダー」を広域で実施でき、さらには電力会社同士の競争も促し、電気料金の上昇を抑えることができる。そのためにも、新規制組織への移行は、広域化と同時期に、できるだけ早く進めなければならない。
○発送電分離は料金規制撤廃と同時に
第2段階の小売り全面自由化は、さらに2段階に分けて進める。まずは3年後の2016年を目途に、小売りへの参入を自由化する。ただし経過措置として、料金規制は残す。「規制なき独占」状態を回避するためである。十分に中立かつ公平な競争環境を整えるには、さまざまな法改正やルールの整備などが必要で、ある程度の時間が必要になる。
そうした環境が整う前に料金規制を撤廃すれば、新電力(PPS=特定規模電気事業者)など新規参入者に比べて圧倒的な体力を持つ電力会社が、市場を独占してしまう可能性が極めて高くなる。それでは、電気料金の上昇を抑えることで国際的な産業競争力を高め、経済を活性化するという本来の目的が達成できなくなってしまう。電力システム改革の大きな目的の1つである、再生可能エネルギーやコージェネレーション(熱電併給)システムなどの分散型電源の大幅な導入促進にも、支障をきたすことになる。
料金規制を撤廃して完全な形で小売りを全面自由化するのは、5〜7年後の2018〜2020年を目途とする。同時に、電力会社の送配電部門を法的分離する発送電分離も実施する。これが第3段階であり、今回の電力システム改革は、これで完結することになる。
第2段階では、小売りの参入自由化に合わせて、卸規制の撤廃による卸電力市場の活性化、将来の発電能力を取引する「容量市場」の創設などによる供給力確保のための新たな仕組みづくり、需給調整のための1時間前市場の創設なども実施する。第3段階では、すべての小売り事業者に供給力の確保を義務付け、1時間前市場をさらに進めたリアルタイム市場も創設する。
第3段階の改革を実現するには、スマートメーター(次世代電力量計)の導入をはじめ、需要家側も含めた電力システム全体の高度なデジタル化が前提となり、時間がかかる。5〜7年後の2018〜2020年を目途とするのでは遅いという声も一部の委員から上がったが、わたしは妥当ではないかと考える。
発送電分離、小売りの全面自由化が進むことによって期待できるのは、競争原理の導入によって電気料金の上昇を抑制し、さらには低減することだけではない。いろいろな事業者が参入することにより、さまざまなビジネスモデルが創出され、産業および経済が活性化することこそが大きな果実になると、わたしは考えている。
従来の電力会社と伍して競合できる新規参入者は、実は異業種で力を持つ企業ではないだろうか。これまでの事業で培ったノウハウなどを生かし、電気事業とのバリューチェーンによる新たなサービスが創出されることも期待できる。例えば、通信事業者が電気事業とセットでサービスを提供することで付加価値を高めてシェアを拡大したり、マンションのデベロッパーが安く電気を供給することで商品の付加価値を高めて売り上げを伸ばしたり、といったケースが考えられる。
○懸念される与党内の“ねじれ”
茂木経産相は今回の会合の冒頭で、取りまとめられた報告書をベースに、「政府の方針を決定し、今国会に電気事業法の改正案をパッケージで提出したい」とも発言した。これは、法改正案に広域系統運用機関の設立を盛り込むとともに、新規制組織への移行も進め、さらには小売り全面自由化や発送電分離についても附則などのかたちで法改正案に盛り込むことを意味するものと思われる。
しかし、国会に法改正案を提出するには、まずは閣議決定が必要である。さらに国会での審議も待っている。その過程で、法改正案が本来の趣旨とは異なるものに、ゆがめられてしまう懸念が全くないわけではない。
そのようにゆがめられてしまった苦い記憶が、わたしには強く残っている。昨年7月に施行された、再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度(FIT)を定めた再生可能エネルギー特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)が、まさにそうだった。
わたしは、その法案のベースとなる報告書を取りまとめた総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会の買取制度小委員会で、委員長を務めた。報告書では、再生可能エネルギーの大幅な導入を促進すると同時に、国民負担を極力抑えるように買い取り価格・期間を設定することを提言した。だが、法案成立の際には、再生可能エネルギーによる発電事業者に大きく配慮する内容に修正され、結果として、電気料金の上昇という形で国民負担を増加させてしまうこととなった。
今回の法改正の場合、特に懸念されるのは、実は与党である自民党内の“ねじれ”ではないだろうか。議席数が単独でも6割以上、連立を組む公明党と合わせれば3分の2を超える衆議院に対し、参議院では自公の与党合計でも議席の過半数を大きく下回り、依然として民主党が第1党である。だが、そもそもこの電力システム改革は、前の民主党政権が推し進めたものであり、安易に反対したり、改革を後退させたりすることを、それほど心配する必要はないだろう。むしろ自民党内に残っている既得権益を守る議員らにより、法改正案の方向性がゆがめられてしまうのではないかと懸念される。
電気事業法改正案においては、決して改革の基本的方向性が後退するような修正が加えられることのないよう、しっかりと注視していきたい。2月16日には19時30分からの生放送で、これからのエネルギー政策を徹底討論するNHKスペシャル「シリーズ日本新生 どうするエネルギー政策」に出演する予定だ。こうした場なども活用して、電力システム改革の意義を広く理解してもらい、技術の進展や需要側のデジタル化の導入スピードなどに合わせて、現実的に意味のある改革を着実に推進していく所存である。
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