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「けじめ」なきムラ体質 規制庁情報提供事件
2013年2月8日 東京新聞[こちら特報部]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013020802000125.html
贈収賄事件があったとする。贈った側ともらった側の言い分をうのみにした幕引きなどありえない。日本原子力発電敦賀原発(福井県)の断層調査をめぐり、原子力規制庁幹部が日本原電側に報告書原案を渡していた問題。規制庁は「個人の問題」とし、組織の責任を否定する。だが、規制庁の業務に関することで、個人に全責任を帰するという理屈は通用しない。徹底検証が求められている。(小倉貞俊、林啓太)
◆癒着の連鎖
この問題で規制庁は1日付で、原案を原電側に渡した同庁審議官の名雪哲夫氏を訓告処分にし、文部科学省大臣官房へ更迭、出向させた。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は6日の会見で、今回の問題について「個人の考え違い」と組織責任を否定した。
「こちら特報部」は名雪氏本人を取材。個人の資質の問題とも受け取れる田中委員長の発言についてただしたが、名雪氏はぎゅっと唇をかんだ後、「取材はお断りしています。お話しできません」とだけ告げた。
田中委員長は会見で、他の幹部についての調査予定も「ない」と否定した。原電についても「相当必死なところもあったのだろう。事業者がどうのこうのとは申し上げない」 「(業者との)癒着という言い方だと、誤解を招く。癒着とは言い切れない」と話した。
自身や他の幹部職員らの責任についても「進退に関わる問題ではないと思う」と言い切った。
しかし、発足から半年もたたないうちに規制庁のナンバー3が業者側とたびたび密会し、公表前の資料まで渡したことは「個人の問題」で済まされるとは思えない。
そもそも、規制委とその事務局の規制庁が「透明性、独立性の確保」を掲げて発足したのは、原子力規制機関が電力会社と癒着し、なれ合いを続けてきたからだった。その代表的な「負の足跡」を振り返ってみたい。
旧内閣府原子力安全委員会では作業部会が1992年、電力会社に対して、原発が長時間の全電源喪失に陥った場合の対策を「不要」にする根拠を考えるよう指示。東電の作文が部会の報告書に盛り込まれ、対策が見送られてしまった。
経済産業省原子力安全・保安院も2000年、東電の原発トラブル隠しを告発した申告者を特定できる情報を東電に伝えた上、その事実を2年間も公表しなかった。
保安院はプルサーマル発電の必要性を説くシンポジウムでは、05年に九州電力(玄海原発)、06年に四国電力(伊方原発)、07年に中部電力(浜岡原発)に、参加者の動員や原発に肯定的な発言を依頼する「やらせ」を指示していた。
06年には電力各社との勉強会で、津波で「非常用の電源設備が失われる危険性がある」として対策を取るよう指示。だが対策状況を十分確認せず、東電などは有効な対策を取らなかった。
10年にも保安院長が電気事業連合会の幹部らに、原発の過酷事故対策の法制化に関し「(運転停止の)訴訟リスクを考慮に入れ慎重に考える。悩みどころは一致している」と発言していた。
◆大甘の処分
組織の責任を回避するのに躍起な規制委、規制庁だが、名雪氏個人への措置についても「大甘」という批判がある。
規制庁は「(渡した)資料は守秘義務の対象には当たらず、国家公務員法(守秘義務)違反には抵触しない」と判断。名雪氏の処分は規制される側と単独で面談した内規違反として扱われた。
内規違反への罰則には訓告、厳重注意(文書)、同(口頭)、注意の4段階があり、同庁は「一番厳しい措置」に処したと強調する。とはいえ、給与面を例にとれば、次のボーナスが若干減る程度の影響だ。
ちなみに国公法違反となると懲戒処分。措置には免職のほか、停職、減給、戒告があり、内規違反よりはるかに重い。
複数の中央省庁に勤めた経験がある官僚OBの一人は「今回の処分は懲戒未満では最も重いが、今回の件は守秘義務に違反すると解釈することもできたのではないか。仮に内規違反でも降格や降任というペナルティーは可能だが、今回はそれもない」と冷ややかだ。
もうひとつ気になるのは、名雪氏が出身官庁である文科省に「出向」したという点だ。
規制庁は発足当時、「ノーリターン・ルール(出身官庁に戻らない約束)」を定めた。職員の多くは経産省や文科省など原発推進官庁出身で、それら官庁と人事面で一線を画さねば、規制できないと考えたためだ。
発足から5年は猶予期間となっているが、対象はあくまでも特例のみ。ところが、今回の処分で壁はもろくも崩れた。
官僚OBは「ノーリターン・ルールは透明性、独立性をその命とする規制庁の最大のウリだったはずだ。ましてや、不祥事を起こして古巣に戻れるなんて、あまりに軽すぎる」とあきれた。
ちなみに前出の東電のトラブル隠ぺいをめぐる保安院の不適切な調査では、当時の佐々木宣彦院長が懲戒戒告になっているほか、一昨年、女性との不適切な行為により更迭された保安院の西山英彦元審議官のケースですら、停職1カ月の懲戒処分が下されている。
その保安院より厳しさが求められる規制庁の「大甘」処分。「脱原発法制定全国ネットワーク」代表世話人の河合弘之弁護士は「規制庁の存在意義から考えても、懲戒処分に相当する」と指摘したうえで、「出身省庁に戻れるのは本人にとってペナルティーどころか、むしろラッキーな措置なのでは」と皮肉った。
規制庁は組織としての謝罪すら一度もしていない。今月1日の会見時点で、森本英香次長は「日本原電側に事情を聴く必要はない」と言った。組織体質の改革より、最高幹部級への監督・責任問題の波及回避を優先した格好だ。福島原発事故でも誰も責任を取っていない。無責任の系譜は見事に継承されている。
慶応大の金子勝教授(経済学)は「電力会社との癒着で失墜した信頼性を取り戻すことが、規制庁の使命だったはずだ。その重要さを当事者たちが全く認識していない」と語気を強める。
ノーリターン・ルールが破られたことに「猶予期間の5年間は、安全基準づくりや再稼働の可否などが決まる重要な時期だ。にもかかわらず、早くも都合のいい解釈を始めている。それはこれからの決定内容とも無縁ではない」と懸念する。
「この資料提供が再稼働につながり、再び原発事故が起きたら責任を取れるのか。今回の問題を一職員の過失で済ませたことで、規制委、規制庁はその存在意義が揺らいだといっていい」
[デスクメモ]
この話を聞いて「またか」と思った方は少なくないだろう。そうまたなのだ。ただ、かつてとは大きな違いがある。それは私たちが福島原発事故を経験していることだ。やっぱりねと看過し続けた結果、私たちはあの悪夢を見る羽目になった。今回も私たちは見過ごすのか。ボールは私たちの側にある。(牧)
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