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脱原発裁判&脱原発株主総会 おしどりマコケンの脱ってみる
http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/177.html
投稿者 taked4700 日時 2013 年 2 月 06 日 22:08:46: 9XFNe/BiX575U
 

約2年前の記事です。書いたのはあのオシドリマコさん。

面白いのは、記事中で次のように書いていること。

以下引用:
「原発1機につき(1機ごとなんですって!)1万4千円、そして郵便切手代が6400円で、それ掛ける10機だから…」
 そっか、弁護士費用が入ってないので案外お安いのね? でも1機ごとっていうことは、1機だけの訴訟も可能?
 「もちろん!」
 ということは、何人かで、1機ずつ請け負っての裁判もあり?
 「それももちろんできます」
 なるほど、では2万ちょっとで原発差し止め訴訟が起こせるということが分かりましたよー☆
以上引用終わり。

なぜ面白いかと言うと、「原子炉を1基止めるために私が裁判所に払わないといけないお金は1万3000円です。」と、同じように原発訴訟を起こした人が言っているからだ。
1000円の違いだが、同じ東京地裁のはずで、どうも疑問だ。更に、この二人とも訴訟についてのインターネットサイトを開いていない様子だ。googleで検索してもホームページが出てこない。なぜ訴状を公開しないのか。

上のことについては次のリンクを参照のこと。

日本の原子力政策を訴える――法曹家の卵が原発の行政訴訟を起こした理由
http://www.asyura2.com/12/genpatu29/msg/646.html
投稿者 taked4700 日時 2013 年 1 月 09 日 22:30:04: 9XFNe/BiX575U

**************************
http://www.magazine9.jp/oshidori/110629/
脱原発裁判&脱原発株主総会

第9回
「脱原発裁判&脱原発株主総会」
 い〜ち、に〜い、さ〜ん、ダーっツ原発!! というようなおじいさまにお会いしましたよ☆
 北海道からいらしてお一人で福島原発差し止め訴訟を起こした方、前川宗廣さん。6月27日に、東京地裁で第一回公判がありましたので、走って行ってきました。このことをいっぱい広めてね、ということで訴状や答弁書も頂きましたよ☆
 訴状の被告は、東京電力、清水正孝社長。そして、もう1つの被告は国! 国って書いてあるのよ〜斬新。代表者として江田五月法務大臣。
 請求の趣旨は、東電にも国にも、福島第一原発の1号機〜6号機、福島第二原発の1号機〜4号機の運転差し止め。
 請求の理由は、国も東電も原発事故を想定外としたのは、危機管理能力の低さのあらわれなので、原発は止めるべし。そして福島県民の基本的人権が守られてない、情報の隠蔽が多々見られるなども請求の理由でした。
 公判自体は10分弱で終わりました。あっさり。ま、第一回だし。けど610号法廷は傍聴人でいっぱい、といっても42人しか入らないのですが。
 前川さんが答弁を読み上げられて、東電も前川さんも弁論を続行、ということで次回は8月25日(木)13時半〜@530号法廷ですよ、という内容でした。
 終わって、前川さんにお話を伺いに! 北海道の北広島市の方。神棚やお仏壇を扱ってらっしゃる自営業の方ですって。お子さんはいらっしゃらないんだけど、仲良しの奥様がいらして、奥様が素敵な答弁書を考えてくださったんですって。訴訟を起こした理由は、
 「福島に行ってビックリしたから。もともと僕は原子力は容認してたんだけど、あんなに人も土地も痛めつける電力はいらないねぇ。日本中の原発が無くなればいいな、と思って、訴訟を起こせねえかな、と考えて。あのね、みんな僕に続いてくれたらいいんだ。原発を止める訴訟の起こし方と道筋を作るからさ、そしてネットとかいうのにも載せて、マニ、マニ、(マニュアルですか?)そうそれ! マニアル作るから、みんなたくさん訴訟を起こしたらいいんじゃないか?」

北海道の「巨人」! 前川さん
 なんとも軽やかで素敵なおじいさまでしたよ☆ なんにもバックも支援者の方もついてらっしゃらなくって!
 けどアドバイザーはいらっしゃいました。アドバイザー「藤田先生になんでも聞いてるんだぁ」。アドバイザーをされた藤田正人弁護士にもお伺いしました。
藤田先生:「僕はなんにもしてませんよ、ほんと」
えー? では前川さんとの出会いは?
藤田先生:「あのね、東京地裁の前で裁判員制度についてのビラを配っていたら、前川さんがウロウロしてたの。どうしたんですか? って聞いたら、裁判を起こしにきたんだけども、どうやったらいいかわかんないんだ、どこに申し込んだらいいの? って聞かれて。どなたか弁護士さんにご相談なさったら、と言ったら、じゃ誰か紹介してください、と言われて。誰に紹介しようかと考えてたら、ビラを配っていた仲間の一人が、この人弁護士ですよ、とバラすからさ、そのまま相談のっちゃった」
 …な、な、なんか素敵な出会いね☆ いいわこの軽やかさ!
 でも先生、みんなが裁判起こしたらいいのに、っていっても、肝心の裁判費用のほうはおいくら?
 「原発1機につき(1機ごとなんですって!)1万4千円、そして郵便切手代が6400円で、それ掛ける10機だから…」
 そっか、弁護士費用が入ってないので案外お安いのね? でも1機ごとっていうことは、1機だけの訴訟も可能?
 「もちろん!」
 ということは、何人かで、1機ずつ請け負っての裁判もあり?
 「それももちろんできます」
 なるほど、では2万ちょっとで原発差し止め訴訟が起こせるということが分かりましたよー☆ ビックリするくらい、訴訟がたくさん起こっても面白いわね?
 そして! 同じように今、低額でできる脱原発アクションの1つに、東京電力の株主になるというやり方もあります。3万円ちょっとで100株買えちゃうからね! 株主になって総会に出て、脱原発を訴えるというアクション。
 そんな方々がいらっしゃるかも? と思い、6月28日は東京電力株主総会に走ってきましたよ☆
 総会前と総会後の株主の方々にたっくさんお話を伺いました。
 総会前は「原発推進か反対かは、東電の弁明を聞いてから判断する、そのために今日は来た!」という方々が多くって。以前からの株主だけれども、今回初めて総会に来た、という方も多数いらっしゃいました。 
 でも総会後は! 「原発が是か非か、というより、東京電力は原発を扱う器じゃあない!」という声ばっかり。「僕は原子力はいいと思うけど、今の東電にはまかせられないね、原発は怖いよ! 東電が扱うのは怖いよ!」とかね。
 総会前は、本当に、今日はしっかりと話を聞かねば! という方々ばっかりだったの。全く脱原発の方には当たらなかったのよ? 
 「収束するための工程表の道筋を知りたい」(70代男性)
 「詳しい実態を直接聞いて考えたい」(60代男性)
 「原発対策を聞きたい」(30代男性)
 本当にそんな方々ばっかり。

株主のみなさんにインタビュー。「マコちゃんはお一人お一人に本当に丁寧にお話しを伺ってましたよ」(ケン)
 その中でお一人、興味深い方がおられました。お話ししていて、あら、東電のOBの方? と思い、お聞きしたら、
 「言いたくない」。
 でも、
 「東電の株は全く売らなかったから、今の重役くらいの株は持っている」
 「事故後に幹部が家に謝りにきたけど、怒鳴りつけてやった」
 「俺が働いていた時分はこんな馬鹿げたことになるはずなかった!」
 「電気屋が電気が無いなんて、こんな情け無いことはない!」
 などなど、限りなくOBの方っぽかったです。
 そして、原発プラントにお詳しい! 絶対温度、マイナス270度の概念とか、あんまり理解できませんでした、ごめんなさい。けど、名言多かったのよ!
 「あのな、人が歩いてたって、人にぶつかることがあるんだよ、どんなに気をつけててもな! 絶対安全なんてないんだ! 外にはそう言っててもな、技術屋はそんなこと考えちゃいけねんだ!
 なんで東電はどんどん安全装置を外したんだ? なんで保険も掛けてなかったんだ? 俺んときはちゃんと掛けてたよ! 昔はな、車でも保険に入らなくても運転できたさ、でも、今は強制的に保険に入らないと車も運転できないだろうが。なんで保険をわざわざやめるんだ?
 ディーゼルでも何もかもな、10年たったら新しく作らなきゃダメだ、と俺ずっと言ってきたんだよ。言ったってな、上が聞いてくんないんだよ! 全部全部、金がかかるから、でダメなんだよ! 東電はな、みな優秀で一番いい会社だったよ、でも、もともとがダメだ。津波が来る前にダメだよ。想定外とか、1000年に一度とかいろいろ嘘言ってほんとに申し訳ないよ! 当たり前のことをやってダメだった、というのは明らかに失敗なんだよ」
 メモった範囲でこれだけのことはおっしゃってました。もう腰はとても曲がってすごく小さくなってらしたおじいさま(80代)で、歩きながらずうっとお話ししてくださいました。
 それで、総会が終わる前にパラパラと帰られる方々にもお聞きしました。めちゃくちゃ長かったからね! 6時間超えだよ、そりゃお腹も減るってー。
 「くだらない! 時間のムダだから帰る!」そういう方々がほとんど。でもお一人、私がお話を伺いながら泣いてしまった方がいらして。年配の女性で、途中で出られてトボトボ歩いておられたんです。
 「ダメですわ…もう全然あきません…。私はね…原子力で子供たちが働いていてね…だから株を買っただけなんです…。ずうっとずうっとね、一生懸命、本当に一生懸命働いていたんです…。…それだけなんです…。
 でもね…私…(震災後に)やめるように言いました…。子供たちにね…退職願いを書くように言ったんです…。本当に一生懸命ね…やってきただけなんですけどね…。どんないい案を出しても、上の人がとってくれなかった、と何度も聞きました…。もっといいやめ方をさせてやりたかったんですけどね…あきません…。
 もう、本当にあきません…。悔しいです…本当に…。(総会に)最後までいててもね…もう、悲しくなるだけだから…」
 お話ししながら、その方も涙を流しておられました。私と2人で泣きながら歩いていまして、ケンパルはどこ? 今、撮ってる? と思ったら、彼は一歩後ろで号泣してしゃくりあげてましたよ! 役立たずぅ!
 その他、
 「5000万損した! 2万1千500株持ってるよ! でも原発はこわいね、いらないよ。だって扱ってる人間がバカだから…」(70代男性)
 「経営陣の発言を聞きにきたんだけど、責任ある言葉は一切無かったわね〜。もう原発はいらないわ、危ないわよ、キラキラした電気ばかりの世の中が異常だったのよね」(60代女性)
 「俺はね、事故の賠償が免責かどうかを聞きたかったんだ。天災だから原発事故は免責とかおかしくないか? 何兆円かゼロかなんてそんな話あるか? 国と一体になって負担すべきだよ。ま、俺は損するだろうけど、ここまで損したからもう一緒だ。損したうえに、卑怯な会社の片棒担ぎたくないよな」(60代男性)
 「今年の総会はお互いバカだったね。株主も役員もバカだ。茶番だったよ。今まではお互いもっときちんとしていたよ。反論も説明もきちんとあったよ」(70代男性)
 「もうね、大株主の委任状を取ってるとかで、なんの採決もないよ、やりたい放題だよ。前のほうの席には総会屋がいっぱい座っていてね、僕は始まる45分前に入ったけど、前のほうの席には全部荷物が置いてあったよ。そして、そいつらが東電側の意見を全部凄い拍手で大賛成さ。第3号議案の採決も、明らかに賛成票が多くても、やり直して賛成票が多くても、大株主の票とかで、否決されたよ」(60代男性)
 その問題の第3号議案! ビリリと破って「もうあなたにあげる」と言われたんで頂きましたよ、これ!
「古い原子力発電所から順に停止・廃炉とする」 
「原子力の新設・増設は行わない」
 というのを定款につけくわえるというもの。

株主の1人がビリっと破いて下さった第3議案のページ。(クリックすると拡大します)
 採決したら、賛成派が多数で、慌てた勝俣会長がもう一度採決を! と怒鳴ったんだけれど、そうしたらもっと賛成派が増えたんだってさ。
 でも、大株主の委任状があるとかで、そのぶんを入れたら、この議案は否決なんだって。いやーもう、株主さんがたカンカンだったよ!
「確かに私は零細株主だし、でも原発賛成派だったが、今日の総会はバカにしている!」(50代男性)
 TVニュースではどんなふうに放映されるのかしら? と思ってましたが、原発推進、反対、半分半分のような感じで、そして「脱原発の議案は採決により否決されました」というあっさりムードでしたね。新聞はどういう報道かしらね?
 今回は自分で実際、時間かけてお一人お一人たくさんのお話を伺ったので、かなーり正確に株主総会の雰囲気がつかめたもの。
 正直言うと、大手の方々が休んでいたときも、ずっと、インタビューしてたの。なんでかさ、私と話す方はとっても長話になって、そうしないとたくさんの方のお話を伺えなかったから。だから、ここに書けなかったお話もたくさんあります。ごめんなさい。
 IWJ(岩上安身さんところのウェブメディア)の若い衆もいらしてて、そちらもずっとインタビューを撮り続けていました。でさーほんっと暑くてさー、脱水症状気をつけなきゃね、とか言いながらせっせと動いていたの。
 そうしてたら日陰で休んでいた大手の方々が私たちを見て笑ってらしたので、そのとき遠くにいたケンパルにこっそり目で指示を出して、通りすがりに盗み聞きさせました。
 すると、大手の方々は私たちを
 「レポートしてるつもりになってる、何もわからないくせにねー」
 「ご苦労なことだねー」
 と、笑ってらっしゃいましたとさ。
 もちろん、後ほどどちらの方々かチェックさせて頂きましたよ! ウフ。素晴らしいお手本となるニュースを放映してくださいませね☆
***
追伸:

 株主総会の第三号議案議決について、のちほど正確な数字がわかりました!
 今日、来場した株主は9282名(13時半時点)、で、そのうち2名が、大株主の委任状を持った代理人だったのです。
 来場した株主の議決権は130万6633票、そのうち2名の代理人は107万8000票。つまり、2名の代理人の挙手によってのみ、議決が行われたわけです! 最後の脱原発の3号議案なんて会場の9割が賛成したのに否決。
 そしてそういった経緯を説明せず「否決」のみ報道するメディア…。今日の株主総会は確実に脱原発だったのに、ニュースを見た方々は、あらあらまだ原子力オッケーね? と思っちゃいますよ! 
  おっそろしいなぁ、もう!
***
追伸(その2):

 株主総会当日の夜のテレビニュースでは、原発議案は「圧倒的に(!)否決」とだけしか報道されなかったけど、翌朝のニュースでは、きちんと不公平な採決だった、と報じている局もいくつかありました。

 そりゃそうだよー。当日、実際総会に出た株主さんたちがツイッターやネットで、不公平な採決だったことを書きまくっていて、とても話題になってたもの! 何人かの株主さんは総会の動画や音声を取っていたから、テレビが報じなくてもバレバレだったんだよね!

 というわけで、これからもっと、みんなで目を光らせていかなくっちゃね!  

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コメント
 
01. 2013年2月07日 00:23:20 : xEBOc6ttRg
誰かがしなければならない歴史的「犯罪現場」の記録
スリーマイル島からフクシマへの伝言(その5)
2013年02月07日(Thu) 烏賀陽 弘道
 アメリカ・スリーマイル島原発(TMI)の現地取材報告の5回目をお届けする。事故前の1974年から原発の監視活動を続けるハリスバーグの市民団体「スリーマイルアイランド・アラート(TMIA)」(スリーマイル島からの警告)代表のエリック・エプスタインさん(53)に話を聞いた。地元出身。大学で政治学を学び、大学教員として18年間歴史を教えていた。専門はマイノリティや障害者の歴史研究だ。名門ペンシルベニア州立大学で7年教え、退職してTMIAに専念している。

 興味深かったのは同じ原発をめぐる「市民運動」でも、形態がまったく日本と違うことだった。日本では国や福島県が運営している放射線モニタリングも「中立ではない」と自分たちでネットワークを始めた。その資金になっているのが、原発事故の訴訟で電力会社から得た和解金だという民事訴訟のあり方も興味深かった。

原発から20キロしか離れていなかった避難所

──1979年3月28日のメルトダウン事故が始まった日、どこで何をしていましたか。

エプスタイン氏(以下、敬称略) 「私はカルフォルニア州の大学の学生でした。実家はハリスバーグ市で家具商を営んでいました。すぐに家に戻ったところ、事故3日目から避難が始まり、父と姉も市外へ脱出しました」

── 3日間、住民の避難がなかったのですね。

エプスタイン 「そうです。3日目と言えばすでに水素爆発が起きていたころです。なのに、それまで学校は通常通り授業が行われていた。暖かい天気だったので、子供を含め多くの人が屋外にいました」

(注:TMI原発では数年後の格納容器内の調査で福島第一原発事故と同じ水素爆発 =hydrogen burn= が格納容器内で起きていたことが分かった。メルトダウンした燃料棒を覆うジルコニウムが酸素と反応して発生した水素、という点は福島第一原発と同じだが「爆発」というほどの規模にはならず「燃焼」したらしい)

──避難指示の内容を教えてください。

エプスタイン 「州政府はあくまで“precautionary evacuation”(念のための避難)だと言いました。就学年齢に達していない子供と妊婦は原発から半径5マイルのエリアから出るように。そんな内容だった」

──実際はどうなりましたか。住民は指示に従いましたか。

エプスタイン 「州政府が指示した避難対象はわずか5000人でした。しかし、実際には半径50マイル(80キロ)内の14万4000人が避難したのです」

──フクシマでも、避難対象の20キロラインより遠い地区(飯舘村など)に放射能雲が飛んで、住民は避難できないまま被曝しました。つまり避難指示対象が小さすぎた。TMIでは、どうしてそんな過小な避難指示しか出なかったのでしょう。

エプスタイン 「州政府のスポークスマンとして記者会見をしていたスクラントン副知事は『電力会社の出す情報が信頼できなかった』(unreliable)と言っています」

──避難の交通手段は用意されたのですか。

エプスタイン 「いいえ。みんな自家用車で避難しました。車のない貧困層は取り残されました」

──避難先は指定されましたか。


エリック・エプスタイン氏(筆者撮影)
エプスタイン 「事故の後になって“relocation center”(避難所)がいくつか指定されました。ハーシーパークアリーナ(注:8000人収容のアイスホッケースタジアム)やハリスバーグ高校です。しかし原発から12マイル(20キロ)しか離れていない。避難するならもっと遠くに避難しないと意味がない」

──フクシマでは自家用車で住民が一斉に避難したため道路が渋滞して動かなくなりました。

エプスタイン 「ハリスバーグ周辺のフリーウエイでは渋滞はなかったですね」(注:片側1車線の県道しかない福島第一原発周辺と違って、TMI周辺は片側2〜3車線のハイウエイが普通だった。筆者が訪問した感触では納得できた)

──どんな気持ちで避難しましたか。

エプスタイン 「いつ帰れるのか分からなかった。もしかするともう二度と帰れないかもしれないと思いました」

原発事故は「目の覚めることのない悪夢」

──その後のチェルノブイリ原発事故やフクシマの事故をどう見ていましたか。

エプスタイン 「原発事故はTMIが初めてでした。その当時は何が起きているのか分からなかった。チェルノブイリは『原発事故とはこういうものなのだ』と目に見えるようにした。フクシマは原発事故を進行に沿ってテレビで見ることができた」

 「フクシマは世界の原発の息の根を止めたと思います。日本の事故を見て、ドイツやスイスがドミノ式に『原発はやめる』と言い出した」

 「アメリカ人だって昔は『原発は安くてクリーンなエネルギーだ』『事故なんて隕石が落ちてくるくらいの確率だ』と、疑うことを知らなかったのです。でも電力会社や政府は『国民が聞きたいこと』を先回りしてごまかしていたにすぎなかった」

──原発反対運動は大規模にならなかったのですか。

エプスタイン 「なりませんでした。公民権運動やベトナム反戦運動が過ぎ去って、社会は疲れ果てていました。『もうデモはしたくない』。そう思っていたのです」

──TMI事故以後、原発への社会の認識は変化したと言えるのですか。言えないのですか。

エプスタイン 「アメリカ、ソ連、日本と『原発事故など起きるはずがない』と言っていた国はみんな失敗しています。リスクを査定する公式が変わってしまったのです。原発はロシアンルーレットのような危険なものだと認識されるようになった。『原発事故は起きるかどうか』という議論はもう終わっています。『次はどこで起きるのか』です」

──スリーマイル事故からの33年をどう振り返ると、どう見えますか。

エプスタイン 「原発事故が起きれば、それは『目の覚めることのない悪夢』です。33年経ってもまだ立ち入りできない場所がある(注:事故のあった2号機格納容器内部のこと)。溶けた燃料棒の処分には500年かかるという。みんな疲れ果ててしまうか、忘れてしまうかどちらかです」

──福島第一原発事故のその後の展開をどうご覧になっていますか。

エプスタイン 「日本人は礼儀正しくて感じのいい人々です。でもそれが度を越しているように思える。あまりに政府を信用しすぎるのではないか。意地悪になれと言っているのではありません。疑い、問いかけてほしい。いま始めなければ、みんなフクシマで何が起きたのか分からないまま、忘れてしまうでしょう。セシウムの半減期は30年です。記憶は30年続かない。私たちの活動も忘れ去られないよう『声を上げ続けること』(keep vocal presence)なのです」

観光と農業が受けた「風評被害」

──なるほど。では「スリーマイルアイランド・アラート」の活動を具体的に教えてください。

エプスタイン 「スリーマイル島原発を含め、地元にある3つの原発のモニター・監視をしています。あくまで「監視団体」(Watch Dog)です。「反原発」「反核」団体にならないように気をつけています

──それはなぜですか。

エプスタイン 「私たちのニュースソースは原発反対派にも推進派にもいます。プロパガンダ団体になって、そういう信頼できる情報源を失いたくないのです」

──なるほど。

エプスタイン 「地元にはプラント(原発)で働く人も大勢います。そういう人たちを敵視してはいけないし、敵視されるのもいけない。地元はそういうデリケートなバランスを30年かかって築きました。そうやってできた信頼は何より重要で、壊してはいけない」

──原発推進派は強くないのですか。

エプスタイン 「もう誰も原発産業を信じてはいません。スリーマイル島原発はじめチェルノブイリ、フクシマと信頼を失った。いったん信用を失うと、元に戻りません。何世代もかかるのです。TMIでは30年経っても信頼回復できない」

──アメリカの世論では、福島第一原発事故はどんなインパクトがありましたか。

エプスタイン 「フクシマは“Game changer”(注:世論を大きく変えてしまうもの)でした。フクシマがなければ、若い世代は原発容認に傾いていたのです。二酸化炭素削減に役立つ、クリーンでグリーンなエネルギーである。そう言われていましたから」

──スリーマイル島原発事故以降、アメリカでは原発の新規オープンが30年間認められなかったと聞いています。なぜですか。

エプスタイン 「まずウォールストリート(金融業界)が原発閉鎖を望んだ。事故を含めた原発建設のコストが高すぎて、カネを貸さなくなったのです。ついで、火力発電燃料であるシェールガス(頁岩層に埋蔵された天然ガス。新しい採掘方法が開発されて採掘可能な量が増えた)がアメリカにはあります。自分の地元にあって、安い。第3に冷却水の不足です。温暖化で冷却水の温度が上昇、原発の冷却に適さなくなってきた。結局グリーン(環境)問題はマネー(経済)問題ですからね」

──共和党のブッシュ政権から民主党のオバマ政権になったこととは関係がありますか。

エプスタイン 「いいえ。共和党も民主党も、どちらも原発支持です。初期のオバマ政権は“nuclear revival”を唱えていました」

──原発事故で被害を受けた地元産業と言えば何ですか。

エプスタイン 「観光と農業です。この地元にはリンカーンの演説で有名なゲティスバーグ(南北戦争の古戦場)がある。アーミッシュの集落がある。チョコレートで有名なハーシーの本社工場があり、そこには遊園地ハーシーパークがある。事故前は夏休みになると人口が増えたものです。でも、みんな近くにスリーマイル島原発があるのを見て『こんなに近くにあのスリーマイルがあるのか!』とびっくりするのです。そして観光客が来なくなった」

──なるほど。それはフクシマでは「風評被害」と呼ばれます。

エプスタイン 「最初の5〜6年は現在のフクシマと同じでした。農業では、地元産のトウモロコシや鶏が売れなくなった」

──訴訟は起きましたか。

エプスタイン 「もちろん。経済的損害の賠償を求めて総額2500万ドルの集団訴訟が起きました」

──結果はどうなりましたか。

エプスタイン 「30年前に法廷外の和解で決着しました」(合意内容は公表されていない)

──廃炉にかかる費用はどれぐらいなのでしょうか。

エプスタイン 「“Defueling”(注:メルトダウンした燃料棒の抜き取り)だけで1993年までかかりました。費用は7億8600万ドルです。廃炉には数十億ドルかかるでしょう。2034年(事故から65年)までかかると聞いています。原発そのものは1号機(運転中)の廃炉までずっとそのままでしょう」 

原発事故によって20年も戦争状態が続いた

──エプスタインさんは電力会社や原発会社を提訴する訴訟に関わりましたか。

エプスタイン 「4つ関わりました。うち3件が異なる条件でそれぞれ和解しています」

──なぜ判決でなく和解で裁判を終わらせたのですか。

エプスタイン 「この周辺では20年も戦争状態が続いたのです。地域社会にとって、これは不健康なことです( It is unhealthy for community to stay in the state of war for twenty years.)」

──和解の条件はどんな内容ですか。

エプスタイン 「金額など、詳しい内容は言えないのです。電力会社から支払われたお金を地域社会に還元する約束をさせました。線量計を住民に配って、行政や電力会社から独立した放射線モニタリングのネットワークを作りました。その機材や資金を提供してもらい、住民はマンパワーを提供しています。他には、解決金を放射線の影響によるがん研究の基金にしてもらった例もあります」

 「原発推進論者と反対論者両方を大学に招いて、3時間のトレーニング(学習会)をしています。放射性物質の封じ込めもモニタリングも、地域住民と企業、行政のパートナーシップが必要です。フクシマでも必要になるでしょう。戦争状態が20年も続くのは不健全です。対話があった方がいい」

──そういった橋渡しの役割もTMIAにはあるのですね。しかしボランティアで続けるのは大変ではないでしょうか。

エプスタイン 「私たちがやっていることは、犯罪現場の記録保存のようなものです。物語を語るには、事件をすべて見て知っている『刑事』が必要ですよね。刑事は目撃者に語りかけて話を聞かなくてはいけない」

 「この仕事は代理が利かないのです。誰かがやらないといけない。私たちでないとできないのです。そうやって歴史の記録の第一歩になることで、未来との橋渡しをするのです。ピラミッドを造るような仕事ですね。時間がかかります。なので、私はこうして土曜日も記者さんのインタビューを受けて働いているのです(笑)」


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