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ドキュメンタリー[デンマーク 2010年)]
地下深く 永遠に 〜100,000年後の安全〜 Into Eternity
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各国が頭を痛める原子力発電所の廃棄物問題。北欧のフィンランドが世界に先駆け、核のゴミの最終処分場の建設に乗り出している。「オンカロ」(フィンランド語で「隠し場所」)と呼ばれる処分場は、太古の岩盤層を深さ500mまで掘り下げた先に作られ、施設が国内で排出される核廃棄物で満パンになる約100 年後に、入口を完全封鎖されるという。
核廃棄物の最終処分が難しい理由は、実はその先である。廃棄物が出す放射線が、生物にとって安全なレベルに下がるまで、欧州の基準では少なくとも10万年かかるとしている。つまりオンカロは、人類の歴史にも匹敵する膨大な歳月の間、安全性の確保が求められるのだ。革命や戦争が起きたり、気候や地殻の大変動に見舞われたりしたとしても・・・
最も危惧されているのは、今の人類が姿を消したあとの未来の知的生物が処分場に侵入し、放射線が漏れ出してしまうシナリオだという。そうならないよう、近づくと危険だという警告を伝えた方がいいのか?しかし、どうやって?あるいは何もせず、記憶から消し去ってしまう方がいいのか?原子力というパンドラの箱を開けた人類が直面する難問を描く。
2010年 国際環境映画祭(パリ)グランプリ受賞作品
原題:Into Eternity
制作:Magic Hour Films (デンマーク 2010年)
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ドキュメンタリー内容 文字おこし
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(地下に入っていく)
覚えておくべきです。ここはあるものを埋めた場所。
理由は、遥か未来に生きる人類を守るためです。
この場所は永久に手をつけずにおいて下さい。
人類が生きていける場所ではありません。
決してここには近づかないように。そうすれば安全です。
(フィンランド地図、オルキルオト島の地図が写る。ヘルシンキより西)
(暗闇にマッチの明かりを持って登場したのは、ディレクター「ミカエル・マドセン」)
「ここはあなたたち未来の人類が来てはならない場所、オンカロです。
フィンランド語で「隠し場所」。
オンカロの建設は20世紀、私がまだ子供だった頃に始まりました。
全ての作業が終わるのは22世紀。私がこの世を去ったずっと後です。
オンカロは10万年の間、持ちこたえなければなりません。
人間の作った物が、その10分の1ですら、姿を保ったことはありません。
しかし私達は現代の文明の力を信じています。
成功すればこのオンカロは、私達の文明の中で最も長く耐えた建造物となります。
遙かな未来に、あなた方がこれを発見したら、オンカロはなにを語りかけるのでしょうか。」
(画面が真っ暗になる)
(鉄の建造物の映像)
●放射性廃棄物
(森のなかに白のような建物がみえる。部屋の映像になり、オンカロの技術部長ティモ・エイカスが姿を現し、話はじめた)
技術部長「人類が原子力を使って発電を始めたときから、
副産物として放射性廃棄物が出ることは分かっていました。
そしてそれを、誰にも害を及ぼさないかたちで処理しなくてはならないことも。
放射性廃棄物を消し去ることはできません。害のない物にすることも出来ません。
どうすれば廃棄物を安全に処分出来るか、方法がいくつも検討されました。」
(スウェーデン核燃料廃棄物管理会社研究部員 ペーター・ヴィキベリ(以下"研究部員")が話す。)
研究部員「ロケットで太陽に送り込んでしまえばいい!そうすれば消えて無くなり誰にも害を与えません」
隣に座っているのは、スウェーデン核燃料廃棄物管理会社、
科学編集部のベリト・ルンドクヴィスト(以下"科学編集部・女性")が、苦笑いしながら相づちをうっている。
(別の風景。ディレクターの隣に白っぽいグレーのスーツを着たオンカロの技術部長ティモ・エイカス以下"技術部長"。)
技術部長「 しかし、もしそのロケットが発射台で爆発したらどうなります…海に落ちないという保証はありません!」
研究部員「放射性廃棄物を海に埋めるという方法も考えられます。
でもそれも、絶対に安全とは言い切れません...。
私達は、海はあらゆる生命の母だと考えています。
使用済み核燃料など放射性廃棄物を完全に処分する場所としてふさわしいとはいえません。」
(オンカロ広報部長ティモ・セッパラ以下"広報部長")
ー「いま世界全体で、どれくらい放射性廃棄物があるんでしょうか」
広報部長「正確には分かりませんが、おそらく、世界全体で二十万トンから三十万トン。その間のどこかでしょう。」
(森の風景。木の陰から、なにかの動物の胴体が少し見える)
ーもし廃棄物から放射線が外界に漏れ出せば、広大な地域を長期間にわたって立ち入り禁止にしなければなりません。
未来の場所にそんな場所があっていいのですか?
白衣を着た放射線・原子力安全センター(フィンランド)の女性、ヴェンドラ・パイレ以下"安全センター女性"が話し始める。
安全センター女性「放射線が発見されたのは今から百年前、わずか三世代前のことです。
当時は未だ危険な物だという認識はなく、とても役に立つと分かって、利用されるようになりました。
放射線はエネルギーであり、人体の奥深くまで入り込んで、健康に害を及ぼします。
しかしその危険性は目に見えません。感じ取ることも出来ません。臭いもしません。
それでも人を死に至らしめることがあります。」
安全センター女性「放射線はエネルギーの小さなパッケージのような物で、
細胞のなかのDNAに当たるとそれを切断・破壊してしまいます。
全身が広く強く被爆しても、1時間ぐらいは何の変化もありません。
でもしばらくすると、激しい吐き気に襲われ、嘔吐して、食中毒にでもなったかと疑います。
二週間もすると出血が始まり、下痢と発熱が続きます。そしてわずか数週間で死んでしまうこともあります。
放射線はその強さにより、遺伝子を傷つけたり変異させたりして、病気や機能障害の原因となり、
さらには生まれてくる子供の障害を引き起こさせることもあります。
ですから、放射線レベルが高い場所には決して留まってはいけません。
強い放射線を持つ物には絶対触れてはいけません。」
オンカロ広報部長ティモ・セッパラが写る。茶色のジャケットを着ている。(以下"広報部長")
広報部長「今私達は使用済み核燃料を水槽に保管しています。」
●中間貯蔵
(『現在 全世界にある高レベル放射性廃棄物の量、少なくとも25万トン』)
(『放射性廃棄物が人体への危険性を持続する期間ー少なくとも10万年と想定』)
(歌が始まり、処理施設が写る)
♪放射能、君や僕が吸う空気の中に、
放射能、キュリー夫人が発見した
研究部員「水には放射線を遮蔽する性質があります。だから水中に保管しているのです。
吹奏での保管は今後十年、二十年、あるいは100年ぐらいは可能かもしれません。
しかし千年となると。」
広報部長「 使用済み核燃料を安定した状態で保存しておける確実な場所は、地上にはありません。
たとえ100年でも難しいですね。何千年なんて、とても保証できません。」
(使用済み核燃料が水に入った状態、真っ白な施設の映像)
ー保管している間ずっと監視してすることが条件になります。
水槽を冷却する電力も必要ですし、
もちろんメンテナンスを欠かすわけにはいきません。
ただそこまでしても、廃棄物を永久に水槽で貯蔵しておくことは出来ないのです。
(地震の映像、棚から物がぱたぱた落ちる)
広報部長「この100年の間に世界中を巻き込む戦争が二度も起きました。
地上という場所、私達が住んでいるこの世界は、とてももろく不安定なのです。
(『1986年チェルノブイリ原発の事故で発生した放射能雲』)
研究部員「永久に安全な方法が無理なら、ともあれできるだけ長く安全に貯蔵しておく
方法を考えなくてはなりません。
原子力発電所から出る廃棄物は必ず処理しなくてはならないものです。」
技術部長「原子力を利用している国はどこでも廃棄物の処分に頭を痛めています。
この問題は現在では広く認識されています。」
研究部員「私たちは原子力エネルギーを利用してきました。
だから、当然廃棄物の処分もしなくてはなりません。」
技術部長「放って置くわけにはいかないのです。」
放射性廃棄物管理評議会(スウェーデン)カール・R・ブランケンヒエルム以下"評議員"「茶色のジャケットに眼鏡、水色のシャツで写る。
評議員「この地球上に住む人全てが、真剣に考えなくてはならない問題です。
原子力発電に賛成か反対かは、問題ではありません。」
(「5,4,3,2,1、、、爆破!」爆破音とともに処分場を広げるため、地下で穴が広げられている映像、灰色のトンネルに黒い煙が立ち上る。)
●永久的解決策
ー『オンカロ 北緯61度14分09.54 東経21度28分55.39』
ー使用済み核燃料
ー「使用済み核燃料、いわゆる高レベル放射性廃棄物の最終的な処分は、
どの国でもまだ実行には移されていません。
フィンランドは、この分野では間違いなく先駆者ということになるでしょう。
放射性廃棄物の最終処分施設は、きわめて長い年月の使用を想定して建設されます。
少なくとも10万年は、持ち堪えなくてはなりません。 」
ー「人類は長い歴史を持っています。しかしそれも10万年という歳月の長さに比べれば、
ほんの一瞬です。10万年…、わたしたちの想像を超える時間です。」
研究部員「10万年の間核の廃棄物を人間や他の生き物から、完全に隔離するのは可能であるということ
それを証明したいのです。」
評議員「最終処分施設の建設と場所決定しました。フィンランドの18億年前の地層を利用します。
この岩盤の地層は、遥か未来まで変動することがないと、私たちは考えています。
最低でも10万年…。そこまでは大丈夫でしょう!」
もうひとりのスウェーデン核燃料廃棄物管理会社の女性、科学編集部のベリト・ルンドクヴィスト以下"科学編集部・女性"は話した。
科学編集部・女性「重要なのは処分施設を自己完結させることです。
つまり将来、管理の必要がなく、そのまま放置できるものにするということですね。
地下の岩盤の状態が安定しているので、変化が起こるとは考えられません。
でも地上の状態は違います。
どんなことが起こるか全く予想できません。
戦争が始まるかもしれないし、経済不況が起こるかも知れません。」
研究部員「地上では時が非常に早く進むが、岩盤の中ではゆっくり進みます。」
科学編集部・女性「一番安定した環境なんです。」
(アナウンス“オルキオト島が使用済み核燃料の最終処分場に選定されました。オンカロです”CMのような映像が流れる)
ー「(地下深くまでの制作予定は)どのあたりまで進んでいますか?」
作業員「このあたりだよ。(地下400mまで掘り進んだあたりを差す)この区域をもっと広めるんだ。
かなり広い空間ができるはずだよ。」
ー「大きな洞窟のような?」
作業員「ああ、あんたの想像より広い。地下の大都市みたいになる。」
「使用済み核燃料は2重構造の容器に収められ、さらに外側を緩衝材で重ねます。
幾重にも安全策を報じているので、万一、何らかのトラブルが起きても、
致命的な事態になることは避けられます。」
(優雅なクラッシック音楽にのせて地下通路が掘られていく様子がCGで流れる。
“最終処分施設は段階的に建設が進められ、22世紀に閉鎖されます”
“処分場所が満杯になれば、入り口を分厚いコンクリートで密閉します。“とアナウンス。)
ー「オンカロは、フィンランド国内の放射性廃棄物だけでいっぱいになり、
100年後には永遠に閉鎖されます。
数千年前エジプトのファラオの墓が二度と開けられないことを願って閉じられたように。」
(処分場の上には、自然が広がっていて、カモシカが雪景色をゆっくり歩いている)
技術部長「地下に埋めた放射性廃棄物の安全性が保たれているかどうか、気をもむ必要は全くありません。
見張ったり、手を加えたりは、しなくて良いので。オンカロは完全に自己完結型の施設になっている。」
ー「オンカロは閉鎖された後、最終的には埋め戻されます。」
技術部長「埋め戻すというのは、最終処分場の施設が作られる以前の状態に戻すということです。
建設前と同じ環境に戻すのです。
広報部長「跡地にはまた森が広がり、新しい家が建つかもしれません。願わくば、そこに人が住んで欲しいですね。
もしできるなら、昔住んでいた人の子供や孫が同じ場所に家を建て、この場所を使ってくれればと思います。
氷河期の到来も、考えないわけにはいきません。氷河期になれば環境には劇的な変化が起こり、
多くのものが影響を受けます。私たちの想定では、6万年以内に、氷河期が訪れることになります。
そうなると、現状の全てが消えてしまう。何もかも変わってしまいます。」
技術部長「草木は枯れ、あらゆるものが凍りついて、地表は永久凍土となるでしょう。
最終処分施設がここにあったことも、きっと人々の記憶が消えてしまいます。」
ー「未来のあなた方に警告します。この先、役に立つものはありません。
私たちは手におえない危険な物質を、この洞窟の奥に封じ込めました。
それはあなた方の時代になってもなお、危険なのです。
ここは決して来てはならない場所。
すぐ引き返して、二度と戻ってこないでください。
この先は絶対に進んでいけません。」
ー「あなた方がオンカロを見つけて、開けてしまうかもしれないと考えました。
人類の侵入、それこそが1番恐れられてることです。
オンカロが開けられれば、放射性廃棄物を、地上の生物から隔離できなくなり、
壮大な計画は失敗に終わります。オンカロの安全性を脅かす最大の要因は人類そのものなのです」
技術部長「将来誰かの放射性廃棄物の埋めてある場所まで、掘ることができるとしたら彼らは
現在の人類と同じようなレベルの文明を持っているということになります。」
研究部員「そうですね。だとしたら、その人々は放射性物質とと気づくのではないでしょうか」
科学編集部・女性「ありうるシナリオですが私は考えは少し違いますね。もっと別の可能性も。
オンカロのような施設を見つけたとき、未来の人類はどう考えるか、
宗教的な建造物と考えるかもしれません。
例えば墓地とか…、宝の倉とか。」
技術部長「ピラミッドを考えてみてください。あれがなぜ作られたのか。
私達はその理由を未だにすべて解明できたとは言えません。
放射性廃棄物の最終処分施設についても、同じようなことが起こりえます。
私たちとピラミッドの上まさに同じようなことが。
遠い未来の人類は、私たちがこれをなんのために建設したのか、
理解されないことも大いに考えられると覚悟しておかなければなりません。」
ー「もし誰か、オンカロを発見したとして、これが何か理解できるのでしょうか?」
技術部長「放射線を測定する装置を持っていれば、かなりの確率でどういう施設か、
わかるでしょう」
ー持っていなかったら?
技術部長「化学分析をしなければならないですよね。」
ー分析もできなければ?
技術部長「だとしたらそこまで掘ることができないでしょう。」
科学編集部・女性「古代文明を築いた人々は、驚くべき偉業を達成しました。
偉業と言うこと、スウェーデンの鉱山労働者も負けてはいません。
16世紀に地下水100メートルの深さまで坑道を掘っています。」
評議員「未来の技術がが非常に高いレベルに進歩しているか、
それとも石器時代のレベルにまで後退しているか予想できません。
あるいは掘ることはできても、見つけたものを解明する技術が発達していない
という水準かもしれません。」
評議員「ローマ帝国は誕生し、繁栄し、滅亡しました。
私たちの文明も、恐らくは同じような過程をたどるでしょう。
繁栄し、そしていつかはぼろぼろになって滅びていくのでしょう。
300年後の社会がどうなっているか確かなことが何も分かりません。
50年後や100年後なら、まだ今の社会が続いていると期待することができます。
しかし300年後、500年後となるとどうでしょう?
想像すると想像するだけではわからないことの方が多くなります。」
放射線防護期間(スウェーデン)分析担当ミカエル・ジェンセンは語る。以下"放射線分析員"
放射線分析員「社会はとても速いスピードで変化しています。
未来の社会は、科学や技術が現在ほど重要ではなくなってるかもしれません。
時代の流れに逆するようですが、それも送りうることです。
未来の人類の技術力が上がるかもしれないし、下がるかもしれない。
何か想像もつかないような事が起きて、ネアンデルタール人の時代に戻るかもしれません。
科学編集部・女性「どんなふうに変わっていくか、予測なんて、できるわけないわ」
技術部長「設計、建設、そして放射性廃棄物の適切な処分、それが完了すれば、
あとはいかなる知識も必要ありません。未来の人類が何一つ知識を持っていなくても
オンカロは安全です。」
研究部員「しかしした未来の人類が、地下に掘り進んで最終処分場を見つけたら、
まず興味を持つのは使用済み核燃料を収めた銅の入れ物です。
自分の遺体を納めたくなるような容器ですよ。当然気になるでしょう。
何か意味があるんじゃないかと。」
隣の科学編集部・女性もにやにやした。
放射線分析員「宝物と勘違いされる恐れもあります。
未来の人々は、貴重な宝がそこに隠されていると考えて、入れ物を開けるかもしれません。
あるいは危険と知りつつ、価値の高いものと考えて、あえて暴いてしまうことも考えられます。」
ー「放射性廃棄物が、将来金のように価値のあるものになることは考えられますか?
研究部員「率直に答えれば、はい、その可能性はあります。」
放射線分析員「私たちにとっては廃棄物ですが、将来は宝の山になるかもしれません。
大量の銅と、ウランとプルトニウムですから。」
●未来への警告
技術部長「人間の行動は予測不可能です。穴を掘るかどうかなんて分かりません。」
研究部員「岩ばかりの場所に、500メートルの深さを開けるとなれば、それなりの同期が必要です。
ーどうしたら掘らせずに済むでしょうか?
技術部長「わかりません。」
ー「廃棄物についての知識が不十分なために掘ってしまう可能性は?
研究部員「もちろんありますね。」
ー「“ここを掘るべからず”と書いておくのは?」
技術部長「そのアイデアは少なくとも一定の期間は有効でしょうねぇ。
ある一定の期間であれば。」
ーどういうことですか?
技術部長「標識を設置するんですが、私たちはマーカーと呼んでいますが、」
ー既に検討されてるわけですね
技術部長「ええ、充二分に検討しているアイディアです。
最終処分場の敷地にさまざまにマーカーを配置するという方法ですよ。」
放射線分析員「まず目立つのはいわゆる石碑のような言葉を刻んだマーカーです。
これがそうです。物の姿のマーカー。
国連の各公用語でメッセージを繰り返します。
その場所の総合的な条件として少し詳しい情報を記入します。
しかしこれは、マーカーシステムの1部でしかありません。
システム全体では、もっと詳細な情報が得られるようになっています。
敷地内の別の場所に行けば、このようなキヨスク形のマーカーがあります。
これにはさらに詳しいメッセージを書き込みます。
もっと先に進むと、厳重に保管された記録文書が、
おそらく自分の下で見つかるはずです。」
ーそこに書いてあるのはどんな内容ですか?
放射線分析員「”ここにあなた方の役に立つものはない。危険な場所だから立ち去りなさい。
この敷地は、決して乱してはいけない”そのようなメッセージになるはずです。」
ー現在のあらゆる言語を使って書き残されるメッセージ。
果たしてあなた方未来の人類に理解できるものはあるのでしょうか。
科学編集部・女性「雲をつかむような話です。どうやって石の札を測ればいいのか。
多分同じ言語を話さないでしょう。同じ文字も使わないでしょう。
何か普遍的なもの見つけなければなりません。」
放射線分析員「ひとつの方法がイラストです。洗練されてはいませんが、メッセージを的確に伝えることができそうです。
細かなメッセージは伝えませんが、ここが怖い場所だというイメージをつけてしまおうという試みです。
人間は恐ろしいものに対して、本能的に強い拒否反応示しますからそれに期待しています。
威嚇するような壁や、尖ったものがたくさんある風景は、ここでは何か悪いものがある、
入ってはいけない場所だという、メッセージになるかもしれません。
感情に訴える手法として絵画も検討されました。
例えばエドワード・ムンクの叫びです。あの絵はネガティブな感情を率直に表現しています。
観るものの心に恐怖や絶望の感情呼び起こし、怖いものがあると明確に伝えることができます。」
ーしかし遥か未来でも通用すると思いますか?
放射線分析員「ええ、可能性は十分にあると思います。」
ー「普遍的な表現人なら理解できるはずです。」
ー「あなた方未来の人類への警告をどうやって残せばよいのでしょうか。
私たちも古代文明のメッセージを見つけました。
しかしその解読には長い年月がかかりました。
そしてまだ全て終わってはいません。
オンカロ研究部長ユハニ・ヴィラが映る。(以下"研究部長")
研究部長「未来の人類に、よく理解できないものを残しておくのは問題です。
意味がわからないものを見つければ何とか解明したいと思うのでは?
我々の思惑とは反対に、好奇心を刺激してしまいます
マーカーで危険だというメッセージを理解できるかどうかは疑問です。
理解しても、どんな危険かを突き止めたいと思うかもしれません。」
研究部長「警告を残すより、むしろ存在そのものを忘れさせるほうが良いという人もいます。
何も手がかりが無ければ、処分場を発見する可能性が低いと言うのです。
ー「忘れさせるという方法ですね?」
研究部長「ええ、専門家の考えは分かれています。
未来への警告、いわゆるマーカーを残すべきだというグループ、
何もせず処分場のことは、忘れ去った方がいいと主張するグループです。」
ーあなた自身はどうです?マーカーを残すと、かえって侵入されるリスクが高くなると思いますか?
研究部長「はい、私はずっとそう言ってきました。
私自身は、処分場があることをする全ての人が忘れてしまっても、深刻な状況になるとは思いません。
(森でトナカイが雪の中でじっと佇んでいる風景が映る)
ー「でもどうやって、処分場の存在を忘れさせるんです?
オンカロのような施設のことを、私の記憶から消してしまうなんてことができるんでしょうか?」
研究部長「ええ、確かに簡単なことではありません。」
(地下で巨大な爆発音がし、穴が開く。その上で森の中にいる鹿が2匹、ちょっと頭をあげたが、じっと佇んでいる。)
マッチを擦っている暗闇のディレクターの姿が語り始める。
ー「埋葬の部屋が完成しました。男はそこに、新しく手に入れた火を葬り、忘れ去ろうと勤めました。
しかし心配でした。子供たちがその部屋を見つけて、危険な火を眠りから覚ますかもしれない。
そこで男は子供たちに命じました。その部屋のことは忘れるようにと。
子々孫々、忘れるように伝えていけと。永遠に忘れ去られるまで。」
放射線・原子力安全センター法務担当(フィンランド)エスコ・ルオコラが映る。
安全センター法務「フィンランドでは1987年に法律を制定しました。原則は3つ。
まず1つめは未来の世代が負うことになる義務の軽減です。
未来の人類に、過度の負担を強いるべきではありません。
第二の原則は、未来の世代の保護です。
未来の人類の住む世界の安全レベルが、現在の安全レベルより低いものになってしまってはなりません。
そして第3の原則は、廃棄物処分場についての情報を未来の世代に伝えていくということです。」
●法律
ー「情報を伝えていく方法について、法律は?」
研究部長「まだ何度も言っていないはずです。」
ー「確かですか」
研究部長「はい」
放射線防護期間(スウェーデン)分析担当ミカエル・ジェンセンは語る。
放射線分析員「法律では、オンカロを建設した後の、安全性評価の実施が義務付けられています。
しかしこれにはまだ議論の余地があります、反対する意見が少なくありません。」
安全センター法務「法律はそれぞれの世代で安全性を確認すべきだとしていますね。
システムが適切かどうか。」
ー「世代のことには触れていないのでは?放射線原子力安全センターな情報を伝えておくべきであるということだけで」
安全センター法務「ええ、まあ、法律では"全ての情報を永続的な方法で残すべきである"としていますね。」
オンカロ研究部長ユハニ・ヴィラが映る。
ー「永続的な方法と表現していますね?どういう意味だと思いますか」
研究部長「それは政府に聞いてください。この問題は何度も話し合ってきたんです。
永続的というのは強すぎる表現じゃないでしょうか…」
ー「フィンランド情報を伝える義務があるということですね?未来の人類に。」
安全センター法務「そうです」
ー「未来のすべての人が理解できるような方法で、放射性廃棄物の処分場に関する情報を伝えるよう求められている…そういうことですね?」
研究部長「いや、"未来の全ての人々が理解できるように"とは言われていません。
フィンランド人だけです。」
ー処分施設についての記録を、私たちが残していけば、未来の人々はその情報を保存し、
必要に応じて理解できる言語に更新していかなければなりません。
未来の何千もの世代に、その継承を期待できるのでしょうか?
飢餓に襲われたら?戦争や洪水に見舞われたらどうなのでしょうか?
こうした記録は、放射性廃棄物の保管と同様、風安全性を永久に保証できるものではありません。
だからこそオンカロを建設しているのです。
ー「基本的に未来の準備を信頼していますか?」
安全センター法務「うーん」
研究部長「私たちはオンカロを、できるだけ人間から離れた存在しようと努力しています。
人間が、将来どのような行動をとるか、全く予測できないからです。
安全センター法務「…答えるのが非常に難しい質問ですねえ。まあ…信頼するかと聞かれれば、するとも言えないし、しないと言えません。
放射線分析員「これほどの歳月の尺度で人間を信頼できるかと聞かれても、
正直どう答えて良いかわかりません。想像もできないことです。
まあ何か言うとすれば、誰にもわからない。そんなとこでしょうか」
(道路が映っている)
ー「オンカロは世界初の、放射性廃棄物の最終的な処分施設です。
しかしここでは人類全体が抱えている放射性廃棄物の、
ごく1部の処分することしかできません。
すべての廃棄物を隔離していくためには無数のオンカロを建設しよければならないのです。
ー「今再び原子力への期待が高まっていますね?」
研究部長「方々でそう言われています。政治家の多くも、原子力発電が必要だと考えています。
二酸化炭素の排出量を減らすのに、有効な手段ですから。」
科学編集部・女性「これから20年で中国やインドの人たちを欧米と同じ生活水準に引き上げようとしたら、
新しい原子炉を一日に3機ずつ作っていかなければならないでしょうね。」
研究部員「使用済み核燃料は、再処理して使えると考えられています。
つまり再利用ができるんです。しかし絶対に再処理すべきではありません。
使用済み核燃料から取り出したプルトニウムが、外部に漏れることがあります。
また核兵器に転用されたりする可能性も否定できません。
研究部長「違う角度からのアプローチとして、放射性廃棄物を人体に無害なものに変えようという研究もありますが…」
ー「うまくいきそうですか?」
研究部長「理論上はね。でも実際は無理でしょう。
結局、全ての放射性廃棄物の処分できる方法はないと思います。」
ー「廃棄物からは逃れられないんですね?」
研究部長「原子力の使う以上は、いまのところに道はありません。残念ですが。
科学編集部・女性「原子力は、エネルギー問題の根本的な解決策になるとは思えません。なるとしても短い間だけしょうね。向50年か…長くても21世紀一杯。
長期的に持続するのは無理だと思います。」
ー「なぜですか?」
科学編集部・女性「ウランがいずれ足りなくなるからです。石油と同じですよ。
石油は、いつかは無くなることは誰だって知っています。
ウランだって同じことです。」
広報部長「地球上のエネルギー資源の枯渇していくにつれ、世界全体が非常に不安定な状態になっていくでしょう。
最後に見つけたウランを巡って、奪い合いが起こるからです。国家間の戦争にまで発展するかもしれません。」
技術部長「最終処分と言うからには、とにかく最終なんです。放射性廃棄物を地下に処分したら、もうそこから動かすことはありません。」
広報部長「オンカロはいわゆる不確実性の問題です。放射性廃棄物の問題は、不確実性のもとで処分されるしかないのです。」
ーこのようなプロジェクトを実行するときは、隠し事は許されません。
知っていることは知っている。知らないことは知らない時と、はっきり言うべきです。
ー「視聴者にかたりかけてもらえますか?ただし、未来の視聴者に。
遥か未来に暮らす人たちにメッセージをお願いします」
(最初は無言でみんなそれぞれが映った)
広報部長「私の個人的意見ということでお話しすれば、
オンカロに誰かが侵入するようなことは絶対に起こりえないと強く信じています。
ー「間違いないですよね?」
安全センター女性「もし未来のあなたたちにあうことができたら、どうしてもお話しておきたいことがあります。」
放射線分析員「オンカロは、おそらく現代がどんな時代かを伝える、唯一の物でしょう」
科学編集部・女性「あなた達は今、21世紀の使用済み核燃料の処分場に入るとしていますよ!」
広報部長「安全な場所に隔離しておかなくてはいけません」
放射線分析員「この場所を乱してはいけません」
科学編集部・女性「入ってはいけません。放射能に汚染されてしまいます」
広報部長「目には見えません、臭いもしません。」
放射線分析員「触れてはいけない」
科学編集部・女性「地上に戻りなさい。そしてあなた達のいる世界を大切にしてください」
放射線分析員「そこから離れていれば安全です」
科学編集部・女性「幸運を!」
ー「ここは、オンカロの奥深く。あなた方が決して足を踏み入れてはならない場所です。
ここには大量の放射能があります。気づかないうちに体に異変が起こり始めます。
何も感じません。臭いもしません。でも目に見えないエネルギーが体を貫いています。
それはかつての私たちの文明が手にした宇宙の力、その最期の輝です。
♪巨大な黒き眠りが私の人生に降りてくる、眠れ全ての希望よ。眠れ全ての希望よ。
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インタビュー(略称)
◆研究部員…ペーター・ヴィキベリ/スウェーデン核燃料廃棄物管理会社研究部員
◆科学編集部・女性…ベリト・ルンドクヴィスト/スウェーデン核燃料廃棄物管理会社研究部員 チェックのシャツ
◆技術部長…ティモ・エイカス/スウェーデンオンカロの技術部長 白い髪丸い鼻
◆広報部長…ティモ・セッパラ/オンカロ広報部長 茶色のジャケット
◆安全センター女性…ヴェンドラ・パイレ/放射線・原子力安全センター(フィンランド)
◆評議員…カール・R・ブランケンヒエルム/放射性廃棄物管理評議会(スウェーデン)茶ジャケットに眼鏡、水色のシャツ
◆放射線分析員…ミカエル・ジェンセン/放射線防護期間(スウェーデン)分析担当 スピルバーグ風
◆研究部長…ユハニ・ヴィラ/オンカロ研究部長 カルキン風
◆安全センター法務…エスコ・ルオコラ/放射線・原子力安全センター法務担当(フィンランド)眼鏡の四角い顔
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↓以下gataroさん投稿より↓貴重な動画有難うございます。
世界のドキュメンタリー「地下深く永遠に 〜10万... 投稿者 dm_4fe5d773d97d4
ABCテレビ・キャストの特集 2013.2.5。
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