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原子力ムラ 復権へうごめく
2013年2月2日 東京新聞[こちら特報部:ニュースの追跡]
来月で「3・11」から2年がたつが、ここにきて原子力規制委員会の人事以外にも、政府系機関などに原子力ムラの復活がうかがえる。文部科学省では、福島原発事故直後に中止された原子力研究支援の事業が復活。経済産業省のエネルギー基本計画を定める枠組みからは、脱原発派が排除されつつある。(中山洋子)
◆文科省 元の顔触れで研究事業
一度は消えて、2012年度に復活したのは文部科学省の「原子力システム研究開発事業」。
05年度に始まった原子力関連の研究に国が資金を出す事業で、主に核燃料サイクルを進める研究を対象にしていた。一つの研究は原則4年間で、10年度には継続分と合わせ、計44億円が費やされた。
ところが、11年度は福島原発事故が発生。安全神話が崩壊し、脱原発世論も盛り上がった。このため、同省原子力課は「状況が変化した」と新規採択を中止した。
しかし、本年度から再開され、11件を新規採択(継続分と合わせて、計23億円)。13年度も、21億円の予算案を出した。
同課の担当者は「原子力技術全体への信頼が揺らいでいることは承知している。そのため研究開発事業の対象を、これまでの次世代研究ではなく、既存の原発の廃炉や安全維持に関する内容に絞った」と説明する。
廃炉研究は進めていただきたい。だが、この言葉をうのみにはできない理由がある。予算配分などを検討する専門家たちの顔触れが、事故前と変わっていないからだ。
同事業では、支援研究の方向性を決めるプログラムオフィサー(PO)が選ばれる。本年度のメンバーには、事故前にも努めた東大大学院の大橋弘忠教授や、京大原子炉実験所の山名元教授らが名を連ねている。
大橋教授は元東京電力社員で05年、「プルトニウムを飲んでもすぐに排出される」と発言したことで有名。原子力委員会の新大綱策定会議メンバーだった山名教授は、原子力関連企業などから多額の寄付を受けていたことで問題視された。
人選について、同事業の委託を受ける独立行政法人・科学技術振興機構(JST)に妥当性を尋ねたが、広報課は「(POの)基本的役割を十全に担えるかとの観点を判断材料として選任している」と文書で回答した。
◆経産省 脱原発論客排除の動き
脱原発派の排除も始まりつつある。エネルギー基本計画策定に携わる経産省総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会(25人)では、「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也氏ら脱原発派委員が、全体の約3分の1を占めてきた。
ところが、茂木敏充経産相は先月15日、「組織については、これまでと別な形を考えている」と、基本問題委を外した計画策定を示唆した。
このほか、「新安全基準」策定中の原子力規制委員会では、6人の外部専門家のうち、4人が電力会社などから計4,500万円を受け取っていたことが分かっている。いずれもムラの面々だ。
◆批判が弱いと一層揺り戻し
富士通総研の梶山恵司上席主任研究員は「官僚組織は、常に自省や運命共同体である原子力ムラの利益を優先する。文科省の事業復活などは典型的な官僚の行動パターンだ」と説明する。「彼らは世論を気にする。政権再交代を好機とし、世論の反応をみながらじわじわと揺り戻そうとする。批判が弱ければ、揺り戻しはどこまでも進む」
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