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http://www.nikkei.com/article/DGXNZO51230470R00C13A2EA2000/
2013/2/1 1:43
原子力発電所の再稼働は津波や活断層のリスクが比較的小さい西日本から進む見通しだ。立地する自治体の理解も目立つ四国電力伊方(愛媛県)や九州電力川内(鹿児島県)は今秋以降の再稼働が有力となってきた。一方で東日本の原発は型式でも不利な面がある。大規模な投資に踏み切りにくい古い原発は廃炉の選択肢も迫られる。使う原発の選別が進みそうだ。
伊方、川内はいずれも西日本の原発で、電力会社や有識者の間では「西日本の方が地盤は安定している」との見方が多い。地震や津波のリスクが低く、新規の安全対策をとる必要性が薄い。津波のリスクは太平洋側が高いとされている。
両原発は型式でも有利な面がある。西日本に多い加圧水型軽水炉(PWR)は格納容器が大きく、圧力を逃がすフィルター付きベント(排気)設備がなくても当面の安全性は保たれる。このためフィルター付きの排気設備はPWRに限り猶予期間が設けられる見通し。伊方、川内ともにPWRだ。関係する自治体が再稼働におおむね前向きな点も共通している。
日本で稼働中の原発は関西電力大飯3、4号機(福井県)のみ。大飯は9月に定期検査に入る予定だ。それまでに他の原発が再稼働できなければ、日本の電力供給は東日本大震災の後にあった「原発ゼロ」に戻る。
原子力規制委員会は活断層の定義で12万〜13万年前以降の地層を対象に問題の有無を判断している。40万年前以降にさかのぼる案が出る半面、限定した解釈を求める声もある。日本海側は活断層の点で問題視される原発が多い。
再稼働の時期を左右するのは新基準の猶予期間だ。第2制御室などを収めた特定安全施設は対策をより強固にする設備と位置付け、規制委は未完成でも再稼働を認める方針だ。ただ猶予の対象や期間は骨子案にない。特定安全施設の建設期間で規制委の更田豊志委員は「一般に3〜5年かかると思う」と語った。
火災対策には猶予期間が設けられない見通しだ。難燃性ケーブルを使っていない古い原発は国内で少なくとも13基あり、規制委は原則交換を求める。ケーブルの長さは1基1千〜2千キロとされる。工事に1年以上かかる場合もありそうだ。
過酷事故対策を巡り原発の型式で濃淡が出る。西日本に多いPWRに対し、東京電力福島第1(福島県)と同じ沸騰水型(BWR)は対策への負担が大きい。原子力規制庁幹部も「当面はPWRの審査の方が多いはず」とみて、7月以降にPWRの審査に携わる職員の増員を検討し始めた。
早期の再稼働が厳しいのはBWRが多い東日本の原発だ。防波堤の建設などにも時間がかかる。更田委員は「BWRは7月の基準施行時点で(審査の)列に並ぶことはないだろう」と説明した。東日本の電力需給は綱渡りが続きそうだ。
規制委の田中俊一委員長は骨子案を「地震と津波について間違いなく世界一厳しい」と強調した。一方、北海道大学の奈良林直教授(原子炉工学)は「箸の上げ下ろしまで指示しており、電力会社やメーカーに創意工夫の余地がない。骨子案は40〜50点で落第だ」と批判する。過酷事故対策はようやく国際標準に並んだとの見方も多い。
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