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エンタージー社のバーモント州ヤンキー原発
米国で原発の閉鎖相次ぐ―天然ガス価格急落でコスト逆転
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324829004578272933366137440.html
2013年 1月 30日 15:49 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
1950年代には、原子力発電は安価な電力の供給源と期待された。しかし現在、米国の電力会社は予想もしなかった事態に直面している。一部の天然ガスの発電所では発電コストが原発よりも安くなっているのだ。このため、発電会社の中には原発の閉鎖を考えるところも出てきている。
米国のほとんどの原発は、歴史的な安値に落ち込んでいる天然ガス発電所と熾烈な戦いを演じている。天然ガス発電所は、一部の小型原発や高コストの修理が必要な原発よりコスト面で有利となっている。米国では、原発の発電量の約40%は自由市場で売電されているが、自由市場では石炭火力発電所も天然ガス発電所との競争に四苦八苦している。
UBSインベストメント・リサーチによると、財務的にぜい弱と見られている原発は、エクセロン社所有のイリノイ州クリントン原発(運転年数25年)とニューヨーク州ギナ原発(同43年)、さらにエンタージー社のバーモント州ヤンキー原発(同40年)とニューヨーク州フィッツパトリック原発(同38年)。また、修理費用が高額になると見込まれているのは、エディソン・インターナショナル社のカリフォルニア州サンオノフレ原発と、デューク・エナジー社のフロリダ州クリスタルリバー原発で、いずれも現在は運転を停止している。
閉鎖を発表する会社も出てきている。ドミニオン・エナジー・リソーシズ社は昨年10月に、ウィスコンシン州ケワウニー原発を13年半ばに廃炉にすると発表した。同原発は、運転許可期間をあと20年も残している。同社は廃炉にする理由として、同原発を利用するよりも公開市場で電力を購入した方が安上がりなことを挙げる。
エクセロンも、ニュージャージー州オイスタークリーク原発を、運転許可の失効まで10年を残して、19年に閉鎖する計画だ。ただ同社広報担当者は、「現在の市場環境ではそれ以外の原発については、閉鎖は計画していない」としている。
連邦政府の試算によると、エネルギー源別の発電の固定費用は天然ガスがメガワット当たり約1万5000ドルで、石炭が3万ドル、原発が9万ドルとなっている。原発はこのほか警備費用がかさみ、放射性物質を扱うため装置導入コストも高くなる。
一方、原発では燃料費はコストとして大きくない。これに対し、天然ガス発電では燃料費は最大のコスト要因だが、現在それが急落している。エネルギー情報局(EIA)によれば、米国の昨年のスポット物天然ガス価格は平均31%低下し1英熱量単位(BTU)当たり2.77ドルとなった。
原発は1年半ごとの定期点検以外休まずに稼働するため電力の市場価格が高ければ利益を出しやすい。しかし電力価格の低下には弱い。原子力による発電量は昨年の1〜11月に前年同期比2.5%減少した。一方、天然ガス発電所の発電力は24%増加した。
天然ガス価格の下落に伴い電力の卸売価格も低下しており、昨年の米市場の卸売価格は15〜47%下落し、最大で2008年の半分に落ち込んだ。消費者もこの恩恵を受けているが、送電費用が上昇していることもあり恩恵は一部にとどまっている。
今後も原発の閉鎖が相次げば、電力会社は温暖化ガスの削減が困難になる。議会やオバマ政権が温暖化ガス削減を打ち出せば、「原発の価値が高まる」と、非営利環境保護団体の天然資源保護協議会(NRDC)のDan Lashof氏は言う。
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