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この国は、既に起こった史上最大未曾有の原発事故の処理を誤った。結果として、意図的かつ徹底した放射能拡散と内部被曝の促進政策が実行されてきている。
これは明らかに国策といえるもので、見方を翻して、原発事故を利用して、環境への放射能汚染と人体に対する内部被曝を極大化させる戦略について考えてみよう。
その模範解答こそが、この国の現行政策となる。
現実にはウラン同位体を始めとする100以上の放射性核種が拡散しているにもかかわらず、ヨード、セシウムなどの一部のみをフレームアップして、放射能汚染の全体的把握を怠り、誤った過小認識を広める。その上で汚染状況のマッピング自体を放棄しており、適切な行政対応は望むべくもない。
隠蔽は、主体的な思考判断を要求しない国民教育の延長として行うなら、特別な方法は必要なく、単に無策でよいのだから、最も安易で低廉なやり方だ。
それに並行して「経済防衛」を第一に掲げる。これには国民的な多大の同調と共感が期待できる。
一連の行政主導による汚染地域の農林水産物の消費促進と瓦礫焼却の全国展開。住民の移住抑制を目的とした除染事業。
それらの汚染拡大の過程で生み出される焼却灰や木材チップの他、金属、プラスチックなど各種放射性物質のリサイクル事業。
除染事業で生じた汚染土の一部は、既に全国各地に移送されて造成や埋め立てによる放射能汚染を拡大させており、これから更なる増大が予想されている。
リサイクル事業の影響は、大手鉄鋼メーカーなどの素材産業全体に及び、輸出向け製品のために、高汚染物と低放射性素材との混合によるレベル調整や工場移転等の対応に追われている。
そして、これら全てに直接もしくは間接的に補助金が支出されており、行政利権が絡むのは、この国の官僚政策の常だ。その中には、高レベル汚染物資の受入れ先企業に対して、東電からトンネル会社を通じて資金が提供された例もあることが確認されている。
必然として、放射性廃棄物基準や放射線管理区域を定めた省令等、諸法令のなし崩し的失効が伴う。
更には、反原発を標榜しながら、「福島の経済を守らなければならない。」として、環境汚染と国民の内部被曝を拡大する国家政策の旗振り役をしている者もいて、まさに、反原発、推進を問わず「食べて応援」「福島復興」だ。
この時点までに、巷に言う反原発は、それだけでは放射能防護とは別物だということが明らかになる。
放射能被害について、この国特有の言説に「高齢者は被曝影響が少ない。」というのがある。
ベラルーシやウクライナの市民と医療関係者らが明確にするのは、高齢者ほど放射能内部被曝の影響が大きく、症状も早く発現するということだ。高齢者は、生理活性と各種免疫が弱く、恒常性維持能力が低いのだから当然であり、何ら意外性はない。
現に、初期段階での一般市民の心臓疾患や悪性腫瘍・癌などによる死亡例は、高齢者に集中している。
それにもかかわらず、現地を訪れた日本人のみが逆を口にして、その都度強く否定されているという事実は、何を意味するのだろうか。
ここでも、原理と実証から虚心に学ぶことをせず、道理に反して自己都合の迷妄に陥る風潮が示されている。
筆者が始めて原発による被曝者を知ったのは、33年前で、やはり福島の労働者からだった。甲状腺癌を患い、手術跡も生々しい五十代の男性は、その時は存命だったが、それから数ヵ月後には肺への転移を経て他界されたと聞いた。当時すでに日本の原発は、数万人の被曝労働者と数千人の死亡者を生み出していることが知られていた。
幼少の頃から原爆による被曝症状を学んでいたから、原発労働者の労務内容と被曝実態を知ることで、反原子力の思いは確信になっていた。
言うまでもなく、それら被曝労働者の殆どは中高年の男性だったから、福島第一原発事故の折の「高齢者と男性は、放射能の影響が少ない。」という発言と、その迎合者らの出現には、救い難い暗黒を見る思いがしている。
(上記人物については、福島原発事故を機会に彼から学んだ者と、それ以前から知識を有していた者との間で、評価に大きな隔たりが見られるが、公務員の地位を確保しながら国策に反対することはフィクションに過ぎず、いずれ事態の推移と共に、より客観的な評価へ収斂していくものと思われる。)
そして、オリンピック招致。将来、IOCの責任も問われることになるだろうが、これには内外の世論を放射能汚染の実態から遠ざける意図も込められており、一連の有力関係者の発言には、福島とのリンケージも見られる。
開催年からは、許認可利権に群がる官民一体のカジノ狂騒曲も奏でられようとしている。
だが、現実に進行しているのは、収束することなく延々と続く、再臨界を伴う大気と海洋への放射能放出だ。事故現場の破局的状況下においても、汚染水貯蔵タンクの建造に見られるように、常にコスト計算と東電の利益が優先されてきた。
改めて振り返ってみると、果たして、これ以上の放射能汚染戦略が現実に可能だろうか。
3・11から今日までの汚染推進者と行政双方の言動から見えてくるのは、全ての判断の基底に金銭的尺度を据える体質だ。(その中には、反原発と原発推進の両者が含まれる。)
その結果、現在進行しているのは、ゴーダマ的愛執ならぬ、云わば「カネ執」がもたらした国民的心中事象だ。
記録によれば、行政官僚らは、ソビエト方式を放射能被害に対する過大評価と決め付け、経済的代償に見合わないとして、初期の段階で切り捨てた。
まさに、コスト・ベネフィット思考の発露であり、それを放射能汚染にまで適用するのが、この国の特質だ。
汚染地帯からの避難についても、語られるのは、まず金銭の有無。
しかし、ある人はこう語っている。「自分は決して裕福ではなく、避難してきて未だ定職も見つからずアルバイトでやっと生活している。将来、子供に残してやれる物は何もないが、唯一、困難があっても何としても生き抜く親の姿を残してやりたい。」と。
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主題から逸れるので詳しくは触れないが、この国の国家経済の未来は、決して明るいとは言えない。
過去から積み上げられた必然の結果であり、既に取り返しの付かない時点に来ているが、特に現行の経済政策は重大な問題を孕んでいる。
経済活動の増大は通貨流通量の増加をもたらすが、逆は等しいとはならない。通貨と公債の同時増発は、財政ファイナンスに他ならず、本質は、国家経済全体のクレディビリティの低下と引き換えに量的拡大を図るもので、手にする利得は、云わば時限的ドーピングに過ぎない。そのための代価は、一時の享楽のために未来を放棄するに等しく、経済体制に可塑性の無い質的劣化をもたらす。
これは、歴史的にも体制の終焉に用いられる破滅の手段として知られてきた。
挙げることのできる最古の例としては、ペロポネソス同盟末期の金融スキームがこれに当たり、それを最期に、世に古代ギリシア文明として知られたアテネを盟主とする植民都市群の歴史は、盛衰を後にして時を刻むのを止めた。当初は、画期的と持て囃され、衰退からの復調に沸き立ったという都市の記録が、その虚しさを今に伝えている。
上記の時限ドーピングとして予測された輸出企業の為替差益、金融・証券投機市場の高騰、建設業界の活況の他には、新たに加わったカジノ利権の原資と目されている国民金融資産も、年金資金を含め、すでに大半が実質的に一般・特別会計と地方債などの公的債務の抵当に充てられており、その流動化の先には債券市場の金利上昇と財政破綻が待ち構えている(日銀の買い支えによる金利維持こそが時限政策の典型)。
相場と経済との区別も付かない昨今の風潮は論外としても、真っ当に経済を学んだ者なら未来について正しい判断ができなければならない。これは、過去二百数十年の世界経済の歴史的な変遷の結末としての全体的な成長余力の限界を前提にしている。
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権力・経済以前の普遍文化を起源にしない民族にとっては、精神性の実体が遠いのは必然かもしれないが、真実のところ、親が子に残せるのは、精神的遺産のみだ。体制依存の利得は、所詮、体制の盛衰に左右され、いずれ消えていく。日本経済のケースは、如何にしがみ付いても最早長くはないというに過ぎない。
首都圏からの避難については、家庭内の対立も多く伝えられ、「十年後の日本経済は、今と何も変わらず続いている。」と、主張して、頑なに反対する家族について語る人もいた。
このような典型的な正常性バイアスも、経済的利得の喪失に対する強い恐れから生じている。
正気を逸して久しく、極限まで放射能拡散が実行されてきているこの国で、吸気被曝を圧してまで行う再稼動反対デモに何の意味があるだろうか?
意味はある。放射能の内部被曝を問題化することは、国民利害の分断になるからという理由で、それを批判する首都圏反原発運動にも現れたように、現在進行の破滅政策から国民の意識をミスリードする意味が。
ここで、我々は、反原発ではなく、反放射能拡散、反内部被曝だということを改めて確認する必要がある。
3・11からの経験は、この二者が決して重ならないこと、それどころか利害を境に対立さえすることを教えてくれている。
同時に、人は「カネ執」では正しい選択はできないということも。
筆者は三十数年間明確に原子力に反対してきて結果を知っていたので、この事故を切欠に新たに学んだことは限られるが、経済に固執する国民体質が最悪な形で浮き彫りにされたと感じている。
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