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イスラムの悲劇
シリア内戦についてのNHKのニュース報道を見て、改めて考えてしまった。9月15日午後6時からのニュースでのものだ。ヒズボラの拠点となっているある町でシリア内戦に参加して死亡した青年兵士を殉教者としてたたえる看板が林立している。そして、そういった青年のある母親が登場し、「自分たちの戦いは正義であり、これからもまだ残っている自分の息子たちを殉教者としてささげるつもりだ」と言うことをテレビに向かって語る。
もちろん、これがある種のプロパガンダ、宣伝である可能性はあると思っている。しかし、現実にイスラム教徒同士の殺し合いは相当程度に起こっている。いったいなぜなのかということを考えざるを得ない。
多分、最も大きな理由は宗教的な動機付けの大きさなのだろう。イスラム教では一応毎日5回の礼拝を行うことになっている。その内の最初のものは夜明けの時刻とされている。まさに早朝から寝る時まで、個人の意識を拘束する、または律することが求められている宗教だ。おまけにイスラム教の祝日である毎週金曜日にはモスクに集まって集団で礼拝をすることが奨励されているという。ここで言う礼拝とは地面に両膝をつき、額をやはり地面に擦り付ける、それほど大きな動作を伴うものだ。
もう一つは、中東と言う地域性がもたらす緊張だろう。石油が多く産出するということと、イスラム教だけでなくユダヤ教の聖地でもあることがイスラエル建国をもたらし、領土紛争が第2次大戦後発生。これがその後の地域紛争の原因になっている。
イスラム教は基本的に二つの宗派からなり、一つはシーア派、もう一つがスンニ派だ。ウィキペディアの「イスラム教」のページ(http://ja.wikipedia.org/wiki/イスラム教)には7世紀の後半に指導層の反目からこの二つの宗派に分裂したと説明されている。スンニ派が多数派でイスラム教徒全体の8割程度、残りの2割程度がシーア派と言うことのようだ。
シリアは第一次大戦後フランス領となり、このころから少数派のシーア派系アラウィ派が軍部を握り、政権中枢をつかさどる体制が作られていった様子だ。つまり、このころから、現在の少数派が政権を握り多数派を虐げるという政治体制が作られていったということだ。
ただ、必ずしも常に宗派対立があったわけではなく、1970年代ごろはかなり平和に共存していた様子だ。しかし、それが明確な対立となっていくのは、ムスリム同胞団の成立後のことの様子。エジプトで今軍部と対立しているムスリム同胞団は20世紀前半に西欧支配に対抗してできた組織であり、スンニ派の組織だ。つまり、イスラム教の多数派組織と言うことになる。そして、シリアでは少数派で支配層であったシーア派系アラウィ派に対して抵抗をし、それが1982年の「ハマー虐殺」という一種の内戦を引き起こす。ハマーと言う都市に拠点を置いていたムスリム同胞団の壊滅を当時の政府軍が行ったものだ。
ムスリム同胞団の歴史(http://ja.wikipedia.org/wiki/ムスリム同胞団)を読んでいると、ある意味、日本の学生運動の過激派の動きと似ているなと感じる。第二次世界大戦後の王政打倒に利用され、それ以降、必ず政治的な野党として政権に対立する役割を演じているからだ。
中東のイスラム教徒は地理的に西欧と隣り合い、石油と言う資源に恵まれていたことから、第2次世界大戦後は徹底的に内部分裂するように誘導されてきたと言っていいのだと思う。第一次世界大戦のころまでの異民族を奴隷支配するということが共産主義の出現のためにできなくなり、その代りの支配方法として内部分裂が使われだしたのだ。
そして、その内部分裂の有力な推進力として宗教が利用され、ある意味、ものの見事に中東各国で内戦が推し進められている。
シリア内戦では、シリアと同盟関係にあるロシアでさえ非武装地帯を作って停戦を仲介するという提案を行っていない。反対に、政府側の力を弱める化学兵器の廃棄を提案し、アサド政権にそれを飲ませている。今回のシリア内戦はシリア滅亡の第一歩のはずだ。内戦の終結には非武装地帯を設け、何よりも直接的な殺し合いをストップさせてから当事者間の話合いをさせるしかない。ところが、国連もEUもアメリカもそういったことをやろうとはしていない。
中東と言う、大陸と大陸を結ぶ地域に発達したイスラム教は、周囲との戦闘という宿命を今までの歴史の中で背負わされたと言っていいのだと思う。本来なら、文明の融和と言う役割を果たすことができるはずだが、現実には文明の衝突の道具として利用されている。これが今のイスラムの悲劇だ。
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