http://www.asyura2.com/13/cult12/msg/376.html
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flint blogから
http://www.flint.jp/blog/?entry=89
以前「震災の「呪い」としてのEM菌」というタイトルで、除染 (放射能除去) を口実に被災地で販売促進運動を展開するEMの疑似科学あるいはオカルト性について批判する記事を公開してから、およそ一年が経ちました。 その後もEMの活動について継続的にウォッチを続けてきましたが、その勢いは衰えるどころか、被災地の自治体や市民団体に取り入ることでますます拡大しており、事態はいよいよ深刻なものになりつつあります。
大袈裟な言い方で口幅ったいのですが、大学進学からの11年余りを過ごした福島 (福島市ではなく会津若松ですが) は、私にとって第二の故郷。 その福島が震災で蒙った痛手から立ち直ろうとしている今、そこにつけ込んで県民の財産と安全を詐取しようとするEM、そして、それを考えなしに受け入れることで復興の足を引っ張る各種団体を黙って見過ごすわけにはいかず、これらを批判する記事を再度書くことにしました。 この記事を読まれた方においては、もしご自分の周囲にEMの気配を感じたら、「まぁいいか」とスルーせず、できる範囲で構わないので、それらの活動に歯止めをかけるよう働きかけて頂きたいと強く願います。
復興推進EM活用モデル事業
そもそも、この記事を書こうと思い立ったのは、「復興推進EM活用モデル事業」なるものが行われているという情報を得たため。 その他にも、自治体としての福島市および地元のラジオ局であるふくしまFMが「うつくしまEMパラダイス」なるイベントの後援となっているという状況があります。
(Route 288沿いで見かけた.) http://t.co/Xd75PudwtC
hayano [2013-09-21 20:36:27]
@hayano 日本はあまり大丈夫ではないですね…
toofuya [2013-09-21 20:42:10]
あー、やっぱりはびこりつつある… > < 復興の名のもとに、まじやば感 @_nagashimam RT @h_okumura 復興推進EM活用モデル事業>< RT @hayano (Route 288沿いで見かけた.)
SparklingDwarf [2013-09-21 21:10:54]
福島県の皆様へ、大変残念なお知らせです。 福島市とふくしまFMが、ニセ科学『EM』のイベントを後援します。 #EM菌 / "第2回環境フォーラム「うつくしまEMパラダイス」|EM研究機構|EM Research Organizati…" http://t.co/LjmHBv26jI
breathingpower [2013-10-08 12:59:27]
うつくしまEMパラダイス - Togetter
しかし、その一方で福島市は「EMによる除染は効果が確認された方法ではない」という見解を公的に発表しています。
福島市復興計画(原案)パブリック・コメントの結果をお知らせします - 福島市ホームページ
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/soshiki/5/fukkoukeikakugenan.html
意見の概要
福島市は山や川など美しい自然に囲まれている。 その美しさと安全を取り戻すには、環境浄化するものを使うしかない。 EM(*)で実験して欲しい。 EMは放射能を無害化・消失させるといわれる。 これを早急に散布して欲しい。 効果があるかどうかはやってみないとわからないが、結果がすべてではなく、市民の声を聞き、どれだけ手をつくすかによって行政を信頼する。
市注釈(*)EM・・・有用微生物群 effective microorganisms 農地土壌を改良する微生物資材として開発され、現在では土木建築、食品加工、環境浄化など多目的に利用されている。
市の考え方
原案のとおりとします。
<説明> 除染については、国・県でも除染手法の開発を行っており、本市の除染にあたっては原則として、国・県で効果が確認された方法を採用しております。 また、本市においても効果の期待できる手法の実証実験等を行ってまいります。
島福島市復興計画(原案)に関する意見と市の考え方 [PDFファイル (504KB)]
「実際の除染効果ではなく、除染に取り組んでいるという姿勢 (ポーズ) で行政への信頼を決める」というある意味で病的な「市民の声」に対し、福島市は「原案の通り、国・県で効果が確認された方法を採用する。(= EMは効果が確認された方法ではない)」という考え方を毅然と打ち出しています。
しかしその一方で、先の Togetter まとめで報告されているようにEMによる復興が政策事業として推進されているという現実が。 言っていることとやっていることが完全に食い違っているわけで、これは市民に対する裏切り行為ではないでしょうか。
EMの宗教的側面
これまでもEM関連の活動は「提唱者である比嘉照夫氏を教祖とする宗教のようだ」と言われてきましたが、EMの歴史を遡ってみると、本当に宗教であることが判明します。
1982年
比嘉氏: 琉球大学教授
世界救世教が「自然農法国際総合開発センター」を設立。 比嘉氏に指導を仰ぐ。
1984年
世界救世教が「護持派 (世界救世教主之光教団)」(少数派) と「新生協議会」(主流派) に分裂。 比嘉氏は新生協議会側。
1985年11月
「自然農法国際総合開発センター」が「自然農法国際研究開発センター」と改称。 比嘉氏は「自然農法国際研究開発センター」の役員に。
1986年 5月
世界救世教の「新生協議会」が「再建派 (東方之光教団)」と「新生派 (いづのめ教団)」に分裂。 比嘉氏は新生派に同調。
EMの歴史 - warblerの日記
「カルト資本主義」 斎藤 貴男 (著) 文藝春秋 (2000/06)
上記の本の第5章「『万能』微生物EMと世界救世教」が、EM (有用微生物群) 批判にあてられ、それによると「EM菌は "神からのプレゼント" と形容され、新興宗教団体である世界救世教の教祖・岡田茂吉 (故人) が創始した救世自然農法の普及活動の一環である」とのこと。 食料不足をはじめ環境、エネルギー、難病など地球上のあらゆる問題を解決する "万能の救世薬" だそうな。
( 中略 )
世界救世教は1982年3月、重要な教義のひとつである自然農法の探究を目的とした任意団体「自然農法国際総合開発センター」を設立した。 同じ年の暮れ、琉球大の比嘉照夫 (ひが てるお) 教授は、教え子との縁で同センターの指導を頼まれ、岡田茂吉の思想に共鳴したこともあって、依頼を引き受けた。 1985年秋に同センターが「自然農法国際研究開発センター」と名称を改め、財団法人化した際にも発起人となり、役員として名を連ねている。
EM菌(有用微生物群) - Skeptic's Wiki
以前紹介したEM推進側の疑似科学的な主張は、カルトのそれだと考えるのであれば合点がいくところです。
科学にそれほど詳しくない人でも、明らかにそれと分かるほどの、正気を疑われるレベルのおかしな主張をしていることが分かります。 念のために補足しておくと、エントロピーも重力波も、確固たる科学的な概念ですが、それらのどこをどう解釈したところで、上記の主張には到底繋がりえないシロモノ。 「結界」に至っては、もはや疑似科学どころか、呪術あるいはオカルトの領域に踏み出しています。
flint blog: 震災の「呪い」としてのEM菌
先に紹介した「EMの歴史」からは、EMが有効とされる範囲が拡大するにつれて菌の耐久温度が際限なく上昇していく様子 (700℃ → 800℃ → 1200℃ → 2000℃) も見て取れます。 本当にこの温度まで耐えることのできる微生物が存在するのであれば、加熱による殺菌消毒は不可能であり、その微生物による汚染を防ぐことは限りなく困難 (事実上不可能) でしょう。 この耐熱性が事実だとすれば、そのような危険なものを土壌や河川に散布する団体を放置しておくことは、公衆衛生あるいは保安の観点から許されないはずです。 (勿論、そんなことはありえないわけですが。)
ところで、日本国憲法には政教分離の原則が掲げられています。 上記のような主張を掲げ、EMの普及活動を中心となって勧めているEM研究機構 (関連団体として「財団法人自然農法国際研究開発センター」をあげている) が「宗教上の組織若しくは団体」には当たらないのかどうか、その活動を後援する福島市の見解を伺ってみたいところ。
日本国憲法に「政教分離」の言葉はないが、根拠として日本国憲法第20条1項後段、3項ならびに第89条が挙げられる。
日本国憲法 第二〇条一
(中略)
三 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
日本国憲法 第八九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便宜若しくは維持のため、……これを支出し、又はその利用に供してはならない。
政教分離原則#日本の政教分離 - Wikipedia
ちなみに、「EMの教祖」比嘉氏は、福島県の人たちを評して次のように述べています。
いや〜福島県の県民を見てるとね、江戸時代の人民を見ているみたいでね。 凄いと。 会津藩というのはもう凄いですねと。
上がね、嘘を言ってもね、正しいと思って「へへぇ〜」と言って言う事を聞くと。 もうこんな住みやすい県は無いと。
だからすぐ原子力発電所が出来たのかも知れない。
( 中略 )
皆さんはもう上が嘘を言っても早いって聞くからね。 例えば あのBODが高いEMを入れたと、自分たちが川に流して綺麗になって喜んで新聞にも出て、そういう事を確認をしているのに、県がこれを入れるのを望ましく無いと言ったとたんに、新聞も報道しないし、みんなさっとやめるんですから。
そしてあの放射能で効きますよと言ったら私に何と言ったと思います? 「県が禁止しているの物、撒いていいんですか?」と。
「あぁ、もっと火傷しなさい」と本当は言いたかったのですが、「あれはやっぱり江戸時代の人民だな」と、こう言ったんです。 そしたら福島の人はね、言いましたよ。 「あ、やっぱり私たちも声を上げなきゃダメですね」と。
YouTube 【実践活動・比嘉照夫氏講評と今後】A - Zutto_3のブログ - Yahoo!ブログ
これを読んで、福島県の人たちはどのように思うのでしょうか。
自治体・企業の責任は重い
被災地を標的とした詐欺的な活動は、震災発生直後から数多く現れてきました。 発覚・摘発されたものはおそらく、それらの中のほんの一部に過ぎません。
「きみたちも相談に来た人の話をよく聞いておいてね。 これから怪しげな連中がどんどん増えてくるから。 こういう大きな災害の直後に起きる詐欺といえば『義捐金詐欺』だけど、今後は被災した人を標的にした詐欺が増えるよ。」
「被災者相手の詐欺…!?」
「世の中には正真正銘、ホントのクソ野郎がいるってことだな。」
人の不幸につけ込むという点では最も悪質かつ卑劣な詐欺である。 未曾有の被害となった東日本大震災後、様々な形で詐欺が横行した〔詳しくは拙著『震災ビジネスの闇』(宝島SUGOI文庫) をご参照ください〕。
新クロサギ (13) (14) 震災復興詐欺 / 黒丸, 原案: 夏原武
原発事故もえげつない詐欺を生んでいる。 放射線という目に見えない恐怖を煽ったのは、マスコミにも責任があるが、それ以上に酷かったのはネット情報だろう。 速報性は認めるものの、まったく検証もされていない、デマが飛び交ったのも事実だ。
( 中略 )
その原発をネタにまたもや詐欺や騙しが横行していく。 放射能を防ぐ、放射能を取り除く。 そんな商品や嘘話があまりにも多い。 本当に防げて本当に取り除けるのなら結構なことだ。
しかし、多くは推測程度のものであったり、科学的根拠がまったくないものだった。 そういう怪しげなものを、原発だ放射能だと相手を脅かしては売りつけていく連中もたくさんいる。 さらにはマルチ商法にまで発展していくのだから嫌になる。
先述のサプリメントにしても、飲むだけで除去できるのなら最高だ。 原発で安心して働くこともできるだろう。 民間にまかせず国家が買い取って提供すべき話である。 日本国民全員にただちに配らなければいけない話だ。
だが、そんなことが行われたという話は寡聞にして知らない。 当たり前だ。 そんな都合のいいものがあるのなら、どうして、物々しい防護服を着て、しかも短時間しか滞在できないのだ。
筆者は科学者でもないし、科学に詳しいわけでもない。 けれども、親切に解説してくれている科学者はいくらでもいる。 それを普通に読めば、こと放射能に関しては民間療法や民間信仰でどうにかなるレベルでないことぐらいは理解できる。
何とかしたいという気持ちはわかるのだが、疑似科学や似非医療に頼るのだけは絶対に避けなければいけないのである。
震災ビジネスの闇 / 夏原武
被災地を食い物にする詐欺の標的は全国の被災地支援活動から被災者へとシフトしてきました。 そして今では、その過程で撒き散らされてきた放射能汚染の「恐怖」を背景として、復興事業を推進する自治体やこれに協賛する企業をターゲットとした更に大規模で、それ故に一層悪質な騙しが動き始めています。
原発事故の発生から二年半が経ち、当時飛び交った情報に関する当否も検証され、世の中は比較的落ち着いて状況を判断できるようになっているはず。 そうした状況にあってもなお、事故直後の混乱期に拡散され、既にデマだと広く知られているような話を疑わず、これに基づく事業を後押ししている自治体や企業の無能と怠惰は厳しく批判されて然るべきでしょう。 インチキ活動に投入される助成金や協賛金は広告宣伝費として使われ、新たな被害者を生む騙しの原動力になります。 この期に及んでも「悪意なき詐欺への加担」を止められない団体のボンクラぶりは、もはや犯罪的。 多くの住民や社員の生活に対して責任を負っている自治体や企業がその程度の判断力で動いていることに、薄ら寒いものを感じずにはいられません。
市民から「NO」の声を
自治体によっておかしな施策が行われるとき、その影響・被害を最初に受けるのはその地域に住む市民ですが、自治体の在り方を決めるのもまた市民です。 自治体による行政がおかしくなるのは、市民による意思決定プロセスに問題があるからに他なりません。
「政府が不甲斐ない」「自治体が助けてくれない」といった事柄とは関係なく、むしろ、そういったお上がアテにならない状況だからこそ、情報を多角的に吟味し、理性的な判断力を維持することが重要になってくるのではないでしょうか。
flint blog: 震災の「呪い」としてのEM菌
私は現在山梨県に在住しているので福島の地域社会に直接働きかけることは困難ですが、こうして集めた情報を検証 (複数ソースの突き合せなど) 整理すると同時に、自身の知見を付け加えて発信することで、少しでも貢献できればと思う次第。 そして、冒頭でも述べたように、この記事を読んでくださった方々が、自分にできる範囲でこの問題に対してコミットしてくれるようになることを切に期待しています。
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