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エンジニアの視点・本音−木村芳幸のブログから
http://engineer-view.asablo.jp/blog/2013/07/15/6902595
先週BSフジの番組に泉田新潟県知事が出演され、東京電力が柏崎・刈羽原子力発電所6、7号機の新規制基準に対する適合審査を申請しようとしている問題に対して、地元知事としての対応を説明していた。
ニュースで大きく報道された東電社長との会見の様子からは、地元への事前説明、了解がなく、審査請求する予定と発表したことに対して怒っているようで、この点は、見解の相違とはいえ、相手の受け取りからは、東電の対応が不十分なところがあったのだろうし、反省すべきだと思う。
ただ、テレビ番組の中で、知事は、科学技術的な内容にまで言及し、十分な知識、理解をもたないのに、思い込みで見解を表明しており、首長として責任ある立場からは極めて残念なことであった。前にも、この人は、宮城や岩手の災害廃棄物の広域処理受入れを犯罪とまで述べたようで、専門外の科学技術的問題に対して、十分な理解もなく、不用意に思い込みの発言をパフォーマンス的にする人のようで、今回もそうしたことが出たのであろう。尚、同じような発言は7月11日の地元での記者会見での質疑応答(http://chiji.pref.niigata.jp/2013/07/post-0545.html)でもあったようで、その発言も一部記載した。
自分が不十分な知識しか持たないことに、断定的に発言する人を私は信用しないが、今回は、その一例として泉田知事の発言の問題点を指摘しておきたい。
(発言1)
福島事故の原因に対する検証と総括が済んでいないのに、規制委員会が新規制基準を作り、再稼働することがおかしい
福島事故の調査については、国会事故調、政府事故調をはじめとして調査報告書が出されており、そうしたものを踏まえて規制委員会は、あらたな規制基準を長い間議論して策定してきたものである。新規制基準の考え方は、3,000頁に及ぶ全文を読むに越したことはないが、そうでなくとも規制委員会が発表している概要(http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0013_08.pdf)を読んでも一定の理解で切できるが、知事は一般論として言うのみで、新規制基準の具体的事項について検討不足のような指摘があるわけでなく、新規制基準を十分理解した上での発言とは思えない。
このブログでも何回か指摘してきたように、福島事故の直接原因は、津波による所内電源喪失・破損(地震は外部電源喪失要因)であることは、科学技術的には明確なので、新規制基準のベースとなっている。
尚、福島事故状況の最新知見をIAEAへ報告するためにも、各事故調の相違点(特に国会事故調が他と違う)について、客観的立場から事実の明確化の作業を「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」で規制委員会は5月から実施しており、国会事故調の見解の問題点は、現時点の最新知見で解明されようとしている(先の1号機原子炉建屋4階の出水目撃の原因究明等)。
(発言2)
新規制基準は、安全基準ではなく、事故が起こることを認めている基準であり、そもそもこのような事故が起こることを容認している基準はおかしい
これは、安全神話の裏返しの話で、事故は絶対おきないことでなければ認めないという、福島事故までの反対派の論議から抜け出ていない残念な発言である。こうした二項対立が事業者や規制側の安全に対する取組みをおろそかにさせた誘引であることは指摘してきたところであるが、そもそもリスクゼロのものはない、リスクがどこまで許容できるか、その根拠を明確して、判断する立場を取らなければいけないのであるが、(今回の新基準では福島事故相当のシビアアクシデントが起こる確率は100万炉年に1回ということを安全目標とすることは規制委員会内で合意されている)そのリスクが大きくてだめだというならわかるが、ゼロでなければだめだという論議では、聞く耳もたない人の立場と変わらない。
(発言3)
フィルターベント設備は、6年前の中越沖地震のときの3号機所内変圧器の火災事故の教訓の対応ができていない。変圧器の火災は原子炉側の建屋基礎と変圧器の基礎が別々だったので、地盤沈下で配管がずれてつなぎ目から油がもれて火災が発生したので、変圧器と建屋の基礎を一体にしてずれがないようにする対策としたが、フィルターベントの設備と原子炉建屋の基礎は一体化せず、同じことが起こる可能性がある。
尚、7月11日の記者会見でも記者の質問に同じ趣旨で以下のように答えている。
「何を懸念しているのかということです。新潟県中越沖地震のときの柏崎刈羽原発の棟内ですが、最大で1.5mくらい沈下したのです。道路も波打ちました。その結果何が起きたのかというと、火災です。火災が起きることとなりました。なぜ火災が起きたのかというと、配管が不等沈下したので、ずれてしまったために火が付いたということです。柏崎刈羽原発の地盤が揺れる中で配管が外れると火事になるということがわかったので、このときに何をやったのかというと、トランスと建屋を一体化する工事を行ったのです。その工事によって(配管が)外れないようにしますというのが当時の東京電力からの説明です。一方、今回のフィルターベントは、一体化せずに別々で作るのです。そのため事前了解を取ってほしいと言っているのです。当然地元軽視かどうかという話はあると思いますが、実態問題として配管が外れたら直接放射性物質が出てくるので、安全性について大丈夫なのかというところで事前了解をとってもらいたいということになると思います。」
こうしたことを、写真掲載のフリップを使って知事自ら説明されたので、驚いたが、私の記憶している変圧器火災の原因・対策も誤解しているし(東京電力の発表資料http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu08_j/images/080925i.pdf参照)、こうした技術的知見について、専門家でない人が、生半可な知識でテレビのような公の場面で説明してはいけないのであり、きわめて残念なことである。
尚、フィルタベント設備の耐震性については、規制委員会で審査されるし、心配なら新潟県でも独自に技術委員会で評価すればよいので、間違った認識をベースに首長が発言する問題ではない。
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