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「土木学会の津波評価部会が福島県沖に津波を起こす「波源」がないことを公表し、日本の防災の最高機関である中央防災会議(本部長・総理大臣)が、「福島沖を防災対策の検討対象から除外する」という決定を行っていた・・・・」
「巨大防潮堤の建設は、簡単なものではない。仮に本当に大津波が来て巨大防潮堤にぶち当たれば、津波は横にそれ、周辺集落へ大きな被害をもたらすことになる。巨大防潮堤は、海の環境も変えてしまうので、漁業への影響ほか「環境影響評価(環境アセスメント)」など、クリアしなければいけない問題もある・・・」
nippon.comから
http://www.nippon.com/ja/currents/d00093/
津波対策にも奔走していた矢先に発生した大震災
吉田さんの死後、反原発を主張するメディアが、「吉田は津波対策に消極的な人物だった」というバッシングを始めたことに私は驚いた。それは、まったく事実に反するからだ。
吉田さんは、2007年4月に本店の原子力設備管理部長に就任した。その時から、津波について研究を続けている。
土木学会の津波評価部会が福島県沖に津波を起こす「波源」がないことを公表し、日本の防災の最高機関である中央防災会議(本部長・総理大臣)が、「福島沖を防災対策の検討対象から除外する」という決定を行っていたにもかかわらず、吉田さんは明治三陸沖地震(1896年岩手県三陸沖で発生、津波による犠牲者が約22000人)を起こした波源が「仮に福島沖にあった場合はどうなるか」という、いわば“架空の試算”を行わせた。これによって「最大波高15.7メートル」という試算結果を得ると、今度は、土木学会の津波評価部会に正式に「波源の策定」の審議を依頼している。
さらに吉田さんは、西暦869年の貞観(じょうがん)津波の波高を得るために堆積物調査まで行い、「4メートル」という調査結果を得ている。
巨大防潮堤の建設は、簡単なものではない。仮に本当に大津波が来て巨大防潮堤にぶち当たれば、津波は横にそれ、周辺集落へ大きな被害をもたらすことになる。巨大防潮堤は、海の環境も変えてしまうので、漁業への影響ほか「環境影響評価(環境アセスメント)」など、クリアしなければいけない問題もある。
吉田さんは、津波対策に「消極的」どころか、その対策をとるため、周辺自治体を説得できるオーソライズされた「根拠」を得ようと、最も「積極的」に動いた男だったのである。
しかし、その途中でエネルギー量が阪神淡路大震災の358倍、関東大震災の45倍という、どの学会も研究機関も予想し得なかった「過去に類例を見ない巨大地震」が襲った。福島第一原発の所長となっていた吉田さんは、自らの命を賭けてこの事故と闘った。
吉田さんのもと、心をひとつにした部下たちが放射能汚染された原子炉建屋に何度も突入を繰り返し、ついに最悪の事態は回避された。吉田さんが、「あの時」「あそこにいた」からこそ、日本が救われたのである。
(2013年8月14日 記、タイトル写真=福島第一原子力発電所の免震重要棟で、報道陣の質問に答える吉田昌郎所長<中央>[2011年11月12日、写真提供=読売新聞 / アフロ])
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