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「内部被曝という言葉を「外部被曝と比較できないような危険な被曝」として使っている人が、このブログにもTwitterにもたくさんの書き込みをしてきました。しかしそれは上記のような、実証を伴わない主観的な珍説をもとにしたものと私は判断します。それが珍説でないというのなら、医療で使われているRI内用療法の廃止ないし抜本的見直しを求めるのが、科学者としての正しい態度ではないでしょうか。」(放射線医療の専門家)
誇りはどこにあるから
http://blog.livedoor.jp/furusatochan/archives/5651400.html
内部被曝の危険をあおる矢ヶ崎克馬氏
反原発信者の馬鹿の一つ覚えに「内部被曝は外部被曝より危険」というのがあるので、極端な例を上げて論証してみます。たぶん、彼らが論拠としているのは琉球大学の矢ヶ崎氏の以下の小論と大差ない内容だろうと思うからです。
内部被曝についての考察[PDF]
http://www.cadu-jp.org/data/yagasaki-file01.pdf
この小論は、福島原発事故の直後にTwitterに流れてきたものだったと思います。ICRPやWHOに真っ向から挑戦する意欲的な(笑)考察ですが、これを信用するなら世界標準の放射線治療を受けることは不可能になります。
ここで唱えられているのは主観的な「内部被曝による障害のメカニズム」であり、実証的な根拠が何も示されていません。また、政治的な市民団体のために書かれたものでしょうが、それにしても「恐ろしく過小評価するものです」「まるでアメリカ政府の代弁者のような言い方」「ウランが発ガンを誘発する根拠は充分すぎるほどあります」など、無意味な強調が随所に散りばめられています。
矢ヶ崎氏によれば、飛程の短いα線やβ線は、体内に取り込まれると周辺の小さな領域に集中的なダメージを与えるために、遺伝子の異常をたくさん作るということらしい。
左図(http://livedoor.blogimg.jp/furusatochan/imgs/c/8/c86615be.png)のように、γ線は飛程が長いので、遠くの細胞まで傷つけるけれどもその密度は低い。これに対して、α線の場合は隣同士の細胞が連続して傷つくので、細胞の修復機能が誤って作動するというモデルが提示されています。
いやはや、これでは低線量の内部被曝など恐ろしくてたまりませんね。
では、実際に医療で行われているRI内用療法はどのようなものか、毎度参考にしているteam_nakagawaのブログ(http://tnakagawa.exblog.jp/15314393/)から見てみましょう。
甲状腺の細胞だけがヨウ素を細胞内に取り入れるという性質を、がん治療に応用したものが「放射性ヨウ素内用療法」です。
なにやら、難しそうな治療ですが、実は非常に単純で、I-131を小さなカプセルに入れて、患者さんに口から飲んでもらうというものです。(中略)
I-131は、主に、飛程(注1)が数ミリの「ベータ線」(ウィキペディアリンク)を放出します。I-131が、甲状腺がんの細胞に取り込まれれば、がん細胞だけが、“選択的に”、かつ、“内部から”攻撃を受けることになります。甲状腺がんだけを“ピンポイント”に照射できるのです。
数十年に渡る実績を持つI-131内用療法は、
・I-131が甲状腺細胞に選択的に取り込まれること
・I-131が放つβ線の飛程が短いこと
を利用したものです。
「矢ヶ崎モデル」から見るとずいぶん乱暴なことをする、と感じた人は正解です。
I-131をカプセルで飲み込んでがん細胞に取り付くまでの間も、がん細胞以外の様々な細胞に対してβ線を放出することは避けられないでしょう。でも、そこに長くとどまることはなく、甲状腺由来のがん細胞に取り付いてからの期間が長い(それでも半減期は8日だから、短期間に集中して叩くのですが)ことが、治療に使われる所以だと思われます。
もし、内部被曝による低線量のα線がそんなに危険だとするのなら、I-131内用療法でも、内服後通過する消化器に始まり、がん細胞に取り付くまでに通過する各器官に与える線量などを考慮すれば、かなりの副作用が伴うはずです。東大病院では毎年数十名の患者にこの治療を施しているそうですから、問題があればとうの昔に多数の医療事故を起こし、裁判にかけられているでしょう。
しかし、人間の体には少量の放射線被曝に対する細胞の修復機能があるために、I-131が他の細胞に与えるダメージは限定的なものだということのようです。実際、治療の場面では多量の放射性ヨウ素が投与されます。
なお、I-131内用療法で使われる放射線の量ですが、甲状腺がんの治療では、3.7〜7.4 GBq(1 GBq=1,000,000,000 Bq=10億Bq)を投与しています。これは、福島第一原発で問題となっている、I-131の飲料水1kgの暫定規制値300 Bqと比べて1千万~2千万倍に相当します。(水の量で言えば、1万~2万トン!)バセドウ病でも、甲状腺がんの10分の1くらいの放射線量を使います。
こんなに乱暴なことをしても、がんが治療できれば社会復帰している人が大勢いるのです。その後の文章でも説明がありますが、追跡調査で奇形児が生まれるリスクも増加していないことがわかっています。
「内部被曝は恐ろしい」「リスクは解明できていない」などといたずらに恐怖を煽るような似非科学者は、現場で放射性物質を患者に投与している医師にどう向き合うのでしょうか?投与されたが運悪く死亡した患者がいた場合に、その医師は医療事故で訴えられるのでしょうか?
劣化ウラン撲滅の市民団体のために主観的な学説を開陳するだけなら実害はないけれども、国民の多くが放射線被曝を恐れているいまの状況下で、余計な心配をあおるのは明らかに実害を伴います。
内部被曝という言葉を「外部被曝と比較できないような危険な被曝」として使っている人が、このブログにもTwitterにもたくさんの書き込みをしてきました。しかしそれは上記のような、実証を伴わない主観的な珍説をもとにしたものと私は判断します。それが珍説でないというのなら、医療で使われているRI内用療法の廃止ないし抜本的見直しを求めるのが、科学者としての正しい態度ではないでしょうか。
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