グローバリズムのトリニティ(三位一体) 2017-03-29 自由貿易、規制緩和、緊縮財政の政策三点セットを、わたくしは「グローバリズムのトリニティ(三位一体)」と呼んでいます。
自由貿易と、規制緩和は、これは似通った話です。国境という規制を緩和し、モノ、ヒト、カネの移動を自由化するのが「自由貿易」ですが、国内で各種の規制を緩和するのが規制緩和です。TPPは「自由貿易」ですが、農協改革は「規制緩和」です。両者ともに、政府のパワーを小さくし、ビジネスを自由化するという点では同じ発想です。
なぜ、そこに「緊縮財政」が加わるのか。
もちろん、緊縮財政あるいは「財政破綻論」の蔓延なしで、公共サービス等の自由化、民営化が実現できないためです。
昨日も取り上げた、第69回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した「わたしは、ダニエル・ブレイク 」で、ある登場人物が警察を批判する際に、 「どうするんだ? 保守党得意の民営化か?」 と、揶揄するシーンがあるのですが、緊縮財政と民営化(規制緩和)は基本的にはセットです。ダニエル・ブレイクの脚本家は、正しく理解しています。
何しろ、緊縮財政を採ったところで、行政、水道、鉄道、空港、年金、医療、公共インフラ建設等の「公共サービス」は提供しないわけにはいきません。公共サービスは、たとえ経済がデフレ化し、不況に陥ったとしても供給されなければならないというタイプのサービスなのです。
財政が悪化している。とはいえ、公共サービスは提供しなければならない。
だからこその、民営化なのですよ。という、レトリックですね。 行政は、「公務員批判」という国民の声に応え、窓口職員を派遣社員に切り替える。もちろん、日本の場合は派遣社員の多くを「パソナ」が派遣することになります。パソナの取締役会長である竹中平蔵氏も、ボーナスが増えて、オッフオッフでしょう、たぶん(実際はどうなのか知りませんが)。
水道や地下鉄、空港はコンセッション方式で民営化。とりあえずは、浜松の下水道をフランスのヴェオリアを中心とする民間企業に委託。大阪の地下鉄も民営化。東日本大震災という「ショック」を利用し、仙台空港も民営化。ザ・ショック・トクトリン。
年金は、財政破綻論に絡め、年金不安を煽り、民間企業の年金保険にスイッチさせる。医療はもちろん、「医療亡国にならないために、先端医療の保険適用はしない。自由診療で!」と、混合診療(患者申出療養)を推進。
公共インフラの整備も、PFI等「民間活力の導入」とのスローガンの下で、民間の投資家や企業のビジネスチャンスを提供する。
最終的には、警察や消防、自衛隊の民営化まで達成しなければ、真の意味におけるグローバリズムとは言えないのですよ、はい。
もっとも、上記のスキームを推進するためには、
「政府は国の借金で破綻する〜っ!!!」 という、財政破綻論が不可欠です。財政に余裕がある(あるいは、あるように見える)ならば、公共サービスは政府が提供すれば済む話です。 財政破綻論に基づく緊縮財政こそが、レント・シーカーたちにビジネスチャンスを提供する根幹中の根幹なのです。 デフレ脱却を目指すのはもちろん、レント・シーカーたちのレトリックを潰すためにも、我が国は緊縮財政を「グローバリズムのトリニティ」として認識し、財政破綻論を潰さなければならないのです。
『「財政赤字の拡大」は政府が今やるべきことか 日本の20年にも及ぶ長期停滞の真因 http://toyokeizai.net/articles/-/164105 ◆財政を健全化させる必要などない 2016年のわが国の政府債務残高は、対GDP(国内総生産)比でついに約230%を超え、先進国の中でも最悪の水準になるという。 こんな状況にもかかわらず、次のように主張するとしたら、どう思われるであろうか。 「日本政府は、財政健全化に向けた努力などはしてはならない。なぜなら、政府が財政赤字を削減しようとしてもどうせ徒労に終わるからであり、それ以前に、そもそも日本政府は財政を健全化する必要などないからだ。政府が今やるべきことは財政赤字の拡大なのであって、とりあえず、財源など気にする必要はない」 こんなことを主張したら、たちどころに「とんでもない暴論だ」と一蹴されて終わりであろう。 しかし、実は、これを暴論と感じるのは、マクロ経済、財政そして通貨の本質を正確に理解していないからなのである。どれだけ通説や常識に反していようと、これこそが正解なのである。(後略)』 というわけで、評論家の中野剛志先生が「財政破綻論」を完膚なきまでに論破する寄稿が掲載されましたので、ご紹介。 特に重要なポイントは、
「国内民間部門の収支+国内政府部門の収支+海外部門の収支=0」 という恒等式です。 上記は、セイの法則やら、クラウディングアウトやらとは異なり、統計的な絶対真実です。すなわち、覆ることはありません。
海外部門の収支をゼロと仮定すると、政府部門の収支を黒字にするためには、民間部門を赤字にしなければならないのです。「誰かの負債は、誰かの資産」である以上、当たり前です。
実際、日本のプライマリーバランス(基礎的財政収支)を見ると、バブル期に見事に黒字化しています。
【日本の基礎的財政収支の推移(十億円】 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/image-12260625751-13893357244.html バブル期は税収が多く、かつ景気対策が不要であるため、政府の収支が黒字化するのです。反対側で、民間が投資を増やし、収支が赤字化しているのは言うまでもありません。
とにもかくにも、グローバリズムのトリニティの一つである「緊縮財政」「財政破綻論」を潰さない限り、我が国の経済が復活する日はありません。皆様、中野さんの寄稿などを活用し、是非とも日本の財政破綻論潰しにご協力くださいませ。
日本が財政破綻する可能性は「ゼロ」なのです。 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12260625751.html
「アメリカは70年間、衰退し続けている」——チョムスキーの視点 3/27 https://news.yahoo.co.jp/feature/566
ドナルド・トランプ米大統領は、国内の労働者たちに「内向き」の政策を掲げて圧倒的支持を得た。トランプ率いるアメリカは、このまま世界から「孤立」する方向に向かうのか。世界的に高名な言語学者であり、ベトナム戦争以来、アメリカの政治について鋭い論評を加えてきたノーム・チョムスキー氏に、率直な疑問をぶつけた。(インタビュー・吉成真由美/Yahoo!ニュース編集部)
トランプ就任前から「孤立」している トランプ率いるアメリカはどこへ向かうのか(写真:AP/アフロ)
——トランプ氏は、「内向き」の政策を掲げることで、大統領に当選しました。アメリカは、本当に世界情勢から手を引き、国内政策へ力を注ぐことになるのでしょうか。
アメリカにおいて、大統領の権限は小さくありません。トランプが決意すれば、多くのことを実現できます。例えば、キャンペーンで約束した通り、パリ協定から撤退することもできるし、イランとの核協議から撤退することもできる。ただ、こうしたアメリカの決定に、ヨーロッパ諸国が追随しない可能性は十分にあります。そうなるとアメリカは、世界の中でさらに「孤立」を深めることになる。近年ますます顕著になってきているのは、アメリカが世界情勢から孤立しつつあるということです。
西欧地域が、アメリカの完全な支配下にあった時代もありました。しかし現在は、むしろアメリカが疎外されているとさえ言えます。オバマ前大統領がキューバとの関係正常化に踏み出したのは、アメリカが西半球で完全に孤立してしまうのを避けるためです。西半球諸国は、以前からキューバとの関係正常化を望んでいました。それを阻止していたのが、アメリカだった。もしキューバとの関係改善に踏み出さなければ、2015年にパナマで開かれたサミット(南北アメリカ大陸全体のサミット:Seventh Summit of the Americas)にアメリカが呼ばれない可能性もあったでしょう。
アジアにおいても、アメリカは影響力を失いつつあります。中国の経済的な影響力は増大の一途を辿り、オーストラリアや日本は、その流れに組み込まれつつある。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主だった先進国が参加していますが、アメリカは参加していません。ひょっとするとヨーロッパも、アメリカに頼らないもっと独立した路線を歩むようになるかもしれません。
ピークは70年前に ノーム・チョムスキー:1928年、米フィラデルフィア生まれ。マサチューセッツ工科大学教授。すべての言語に共通する普遍文法を提唱して言語学に革命をもたらした、言語学者にして哲学者であり、ベトナム反戦運動を機に、政治活動にも深く関与。邦訳書に『生成文法の企て』『覇権か、生存か』『すばらしきアメリカ帝国』など多数(撮影:Carl Rutman)
——そうしたアメリカの「孤立」は、アメリカの国力の「衰退」とも関連しているのでしょうか。
近年、アメリカは斜陽の時代に入ったと言われています。それはその通りでしょう。
アメリカは、たしかに後退してきています。そしてそのほとんどが、アメリカ国内の政治・経済政策の失敗によって起きたことです。レーガン時代からの政策(規制緩和政策)によって、国内社会はひどく傷つけられてきました。国内生産力は大幅に削減され、賃金や収入は停滞したり減額したりして、インフラも崩壊しつつあります。ボストン市内を歩いてみれば、後退は明白です。
先日、講演のためにボストンからニューヨークへ列車で行ったのですが、アメリカ一の列車という触れ込みにもかかわらず、片道約4時間もかかりました。1950年に私が初めて同じ列車に乗ったときと同じだけの時間がかかった。ヨーロッパや日本の列車であれば、おそらく2時間もかからないでしょう。これがアメリカの実情です。
アメリカ社会は内側から崩壊してきているのです。金融セクターは、大変な勢いで伸びていますが、果たして金融が経済に貢献しているのかどうかは、大いに疑問です。
アメリカをむしばんでいるのは経済政策の失敗だけではありません。莫大な軍事費も、大変な負担になっている。健康保険システムも、完全に民営化されているために、非効率です。医療にかかる一人当たりのコストは、他の先進国と比べて2倍にもなっている。もし、他の先進国並みの健康保険制度に切り替えることができたら、それだけでアメリカの負債は消えてしまうでしょう。これらが、国をむしばんでいる国内政策です。
とはいえ、それでもまだアメリカは、世界最強の国として他の国々の追随を許さない状態ではありますが。
ただ、アメリカの「衰退」は、ここ最近になって「急に始まった」のではありません。アメリカの国力がピークに達していたのは、1945年です。今から約70年前。そこからだんだんと衰退してきているのです。
1950年代のニューヨークの風景(写真:アフロ)
当時のアメリカには、世界中の富の約半分が集中していました。それほどの権力の集中は史上初のことです。圧倒的な軍事力を持ち、大西洋と太平洋をともに支配下におさめ、西側諸国全体をコントロールしていました。
しかし、後退は、その後すぐに始まります。
1949年には、「中国の喪失(loss of China)」が起こりました。中国が中華人民共和国という社会主義国家としてスタートしたことを、アメリカでは「中国の喪失」と呼んでいます。
この「◯◯の喪失」という言葉の使い方が、当時のアメリカの意識をよく表しています。私は、「自分のiPhone」を失うことはできますが、「あなたのiPhone」を失うことはできません。つまり、「中国の喪失」という言葉からは、「われわれは世界を所有している」という当時のアメリカの深層心理が見てとれます。これは自分たちの世界なのだと。ですから、どこかの国が独立したら、その部分を失ったという意識です。もっと言えば、独立しようとしたり、アメリカのコントロールから逃れようとする行為は、必ず止めなければならないのだと思っていたということです。
「中国の喪失」は、アメリカの国内政策にとって、大きな問題になりました。誰の責任で「中国の喪失」が起こったのかという問題です。その後、ケネディが、「インドシナをどうするか」という問題に直面した時も、ケネディとそのアドバイザーたちは、「インドシナの喪失」の責任を問われる事態になりはしないか戦々恐々とした。また、「アラブの春」が起こったときも、今度は「中東の喪失」が問題視された。しかし、そうしたアメリカの「世界は自分たちのものだ」という意識とは裏腹に、後退は続いていきます。
1970年代には、世界は3極に分かれました。ドイツを中心とするヨーロッパ、日本を中心とする東アジア、そしてアメリカを中心とする北アメリカ。アメリカがコントロールしている地域は、世界の25%くらいまで下がっていた。現在はさらに分散化が進んでいるので、アメリカのコントロールの及ぶ地域はもっと少ないでしょう。
もちろん、アメリカがまだ、圧倒的に大きな力を持った国であることは間違いありません。世界中には800ものアメリカの基地があります。中国は大きな経済力を持っていますが、国民一人当たりの所得はまだまだ低い。国の発展状態を表す人間開発指数(2015年発表)を比べてみても、中国は90位で、インドは130位です(アメリカは8位、日本は20位)。軍事力をはじめとして、まだアメリカとは比べものになりません。
トランプが勝った理由 ――「アメリカの国力の後退」は、トランプ氏の勝利の重要な背景ということでしょうか。
2017年1月20日、トランプ大統領の就任演説を聴くために連邦議会議事堂前に集まった群衆(写真:AP/アフロ)
大きな理由の一つであることは間違いないでしょう。新自由主義政策は、多くの人々の生活を困窮させ、国力を後退させることになりました。2008年の経済大破綻の直前、経済学者たちが「大エコノミック・ミラクル」と呼ぶ2007年ですら、アメリカの一般的な労働者の賃金は、25年前の賃金と比較して、低くなっていた。
さらにグローバル化は、労働者たちを国際的な競争の海に放り込みました。自由貿易協定とは、言い換えれば、製薬会社やメディア、大企業に対する保護政策です。プロフェッショナル・クラスは競争から保護される。そして投資家たちも前例のないほどのお金を手に入れた。しかし、労働者たちの生活水準は下がっていったのです。
そもそも「市場化」と呼ばれる政策は、引責しなくてもいい私的な権力(大企業や銀行など)に、判断権限をゆだねるものでした。結果として、民主主義が制限され、生活水準が下がったのです。
――トランプ大統領誕生の背景には、中産階級の消滅や、大企業寄りの政府に対する不信、移民恐怖、反クリントンなど、たくさんの理由が挙がっていますが、トランプ支持者たちの不満は、どのあたりにあったのでしょうか。
社会学者のアーリー・ラッセル・ホックシールド(カリフォルニア大学バークレー校教授)は、トランプ支持者たちを調査した結果、「彼らは、長蛇の列で順番待ちをしているんだ」と言っています。
彼らの両親も、彼ら自身も、よい生活を求めて懸命に働いてきた。保守的で、聖書に従う敬虔なクリスチャンで、よりよい生活を求めて一歩ずつ前進していた。ところが過去25年間、彼らは一向に前へ進めなかった。列の先頭の方は、次元の違う金持ちになった。でもそれは構わない。「懸命に働けば、金持ちになれる」というのがアメリカンドリームなのだから。問題なのは、自分たちの後ろにいる奴らだと。黒人や移民、シリア難民といった弱者たち。連邦政府は、「列の後ろに並んでいる奴ら」を優先して、列の前の方に押し入れてくる。外国人や職を失ったシングルマザーに、政府が経済援助するということは、彼らを列の前に押し出すということだ。こうして自分たちは割を食ってきた。もううんざりだ、というわけです。
「トランプ支持者たちの不満はどのあたりにあったのか」(吉成)(撮影:Carl Rutman)
こういった、スケープゴートを立てて不満のはけ口にするというのは、よく使われる手です。実は、こうした傾向はアメリカだけに見られるものではありません。ヨーロッパでも同じことが起きています。フランスでは北アフリカからの移民がその対象になっています。
フランスの共和党は、右寄りの代表(フランソワ・フィヨン元首相)を選出しました。彼は今年4月、極右政党「国民戦線」の代表(マリーヌ・ルペン)と大統領選で戦うことになります。オーストリアでも、ネオ・ナチにルーツを持つ政党「自由党」が、次の選挙で台頭する可能性がある。イギリスはEU離脱を決めてしまった。イタリアでは、昨年12月の国民投票の結果、改革派のマッテオ・レンツィ首相が辞任に追い込まれました。
一般的に、民主主義への攻撃が見られます。労働者の権利や社会福祉などに対する強い反発が出てきているのです。
「トランプのもっとも『確か』な点は、彼が『不確か』だということです」(チョムスキー氏)(撮影:Carl Rutman)
――トランプ大統領のもとでは、反グローバリズムになるのではないかという恐れがある一方、ロシアとの関係改善を期待する声もあります。トランプ氏のもとで、アメリカはどのような方向に進んでいくのでしょう。
トランプのもっとも「確か」な点は、彼が「不確か」だということです。予測不能です。彼は、多くの事柄について発言していますが、その発言がどのような意味を持つのかわからない。彼の言うことは、全方向に向けて矢を放っているようなもので、たまに的に当たる場合もありますが、一体何をしたいのかわからない。本人にもわからないという状態です。
もしロシアとの非常に危険な対立関係が緩和するのであれば、それは歓迎すべきことです。しかし、もし彼の得意とする「取引(deal)」というものが、プーチン大統領との間でうまく行かなかった場合、彼は頭にきてハチャメチャな行動に出るかもしれない。ミス・ユニバースが彼を批判した時と同じような、度を越した行動に出るかもしれません。彼がどのような行動に出るか、本人も含めて誰にもわからない、という状態なのです。 https://news.yahoo.co.jp/feature/566
【施光恒】黄門様に期待!From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学 https://38news.jp/politics/10279 テレビ時代劇の「水戸黄門」が今年10月から復活するそうですね。 前作は2011年に終わったので、6年ぶりの復活です。 主演は武田鉄矢。博多弁交じりの黄門さまになるのではないかと少々心配です。
残念ながら地上波ではなく、衛星(BS-TBS)のようですが、視聴率がよければ地上波に移ることもあるでしょうね。 私は結構、時代劇好きですので楽しみです。また、いまの世の中こそ、水戸黄門のような勧善懲悪型の時代劇の復活が必要なのではないかと思います。 というのは、このところ、黄門さまご一行に吟味してほしい悪辣な事柄が、悲しいかな、増えてきているように思います。 新しい水戸黄門では、ぜひ次のような設定の回を作ってほしいです。そして、黄門さまに「助さん、格さん、懲らしめてやりなさい!」と言ってもらいたいものです。 ● 悪徳南蛮商人と癒着して、天下のご政道を捻じ曲げ、博打を解禁し、ご法度だったはずの賭場を江戸や上方、長崎などに大々的に作り、一般庶民からカネを巻き上げようとする役人や商人をとっちめる回 ● 莫大な口銭(手数料)を懐に入れるために、やはり天下のご政道を捻じ曲げ、ルソン辺りの婦女子の貧しさに付け込み、江戸や上方、相模などに彼女らを送り込んで女中奉公をさせようとたくらむ悪辣な口入屋やそれと結託する役人を成敗する回 以上の例もそうですが、水戸黄門をはじめとする時代劇でかつてよく見られた悪役は、強欲な商人、ならびに強欲商人と癒着する役人でした。そして、強欲商人と役人が結託して庶民を苛めている状況に主人公が気づき、懲らしめるという話が多かったのです。 こうした悪辣な商人・役人連合は、私のみるところ、現在の日本に、はびこっています。ですが、時代劇が少なくなったからでしょうか、世間は、こうした財界と政界の癒着に鈍感になってしまったようです。あまり問題視しなくなっていると思えてなりません。 例えば、企業担当制です。 (内閣府の「企業担当制」についてのサイト) http://www.invest-japan.go.jp/investment_advisor_assignment_system/index.html 「企業担当制」とは、以前も本メルマガで取り上げたことがありますが、「海外から日本に重要な投資をする企業には、安倍内閣の副大臣や政務官を相談相手につける」という制度です。 (下記のリンク先は「企業担当制」を批判した私のメルマガ記事です。施 光恒「『企業担当制』という約束」2015年4月3日付『「新」経世済民新聞』) https://38news.jp/archives/05453 つまり、外国企業からさまざまな要望を直接聞き、進出しやすいように各種の便宜をはかるというものです。悪く言えば、各省庁のナンバーツークラスを担当者としてつけ、グローバル企業の御用聞きをしようとするものです。 これ、普通に考えれば、おかしな話ですよね。あからさまに日本の政権の高級幹部とグローバル企業が結託し、グローバル企業に様々な便宜をはかりますよ、ということですから。 もちろん海外からの投資が増えれば、国内に雇用が生まれ、経済が活性化することもなきにしもあらずです。 しかし、当然ながら、外国企業の利益と日本の一般国民の利益は、必ずしも一致するとは限りません。むしろ、両者は乖離してしまう場合が多いのです。 言うまでもなく、グローバルな企業や投資家は、日本国民の生活の安定や福祉、日本の社会や経済の長期的発展などに特段の関心を持ちません。端的に自分たちの利益のみを追求してきます。 例えば、外国企業からすれば、日本に進出する際、労働法制は、なるべく緩い方が望ましいのです。従業員のリストラはしやすいほうがいいですし、残業代もできれば払いたくないでしょう。社会保障費の会社負担が少ないことも望むはずです。法人税率も低いにこしたことはありません。 賃金も安いほうがいいので、日本が外国人労働者や移民を大規模に受け入れてくれた方が有難いのです。 各種の安全基準や環境基準、健康基準も、なるべく緩いほうがグローバル企業にとってビジネスしやすく望ましいのです。 このように、グローバル企業の利益と日本の国民一般の利益とは、多くの場合、一致しません。それなのに、政府の高級幹部が、グローバル企業の要望を直接的に聞き、便宜を図る体制を作ってしまって大丈夫なのでしょうか。 企業担当制はすでに始まっており、現在では、実際にいくつかのグローバル企業に日本政府の高級幹部が担当者(御用聞き)としてついています。 次のようなグローバル企業です。 IBM(情報システム)、エア・リキード(化学)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(医療機器)、スリーエム(化学)、デュポン(化学)、ファイザー(医薬品)、フィリップス(医療機器)、マイクロンテクノロジー(半導体)、メルク(医薬品)といった外国企業です。 (詳細は下記の内閣府HPのなかほどの【公募結果】のところの「対象企業」というPDFファイルをご覧ください)。 http://www.invest-japan.go.jp/investment_advisor_assignment_system/index.html 例えば、このファイルによりますと、ジョンソン・エンド・ジョンソンやファイザー、フィリップス、メルクといった医薬品や医療機器関連の企業の場合、厚生労働省の副大臣が「担当者」としてつくようです。 こうしたグローバル企業は、日本でビジネスしやすいように、日本の各種規制やルールを緩和もしくは撤廃するように担当者である副大臣に要求することになります。 医薬品や医療機器のグローバル企業の担当者としてつくのが、経産省の副大臣ならまだ理解できないことはないですが、厚労省の副大臣であることに非常に大きな懸念を覚えます。 厚労省とは、本来、日本国民全体の健康や安全を長期的観点から守るためにあるはずです。 そうであるはずなのに企業担当制の下では、厚労省は、実際のところ外国の医薬品メーカーや医療機器メーカーの声を直接的かつ優先的に聞き、便宜をはかる存在となってしまっていないのか大いに心配です。 近い将来、例えば、薬や医療機器の価格決定システムや著作権保護に関して、国民一般にではなく、グローバル企業のほうにもっぱら有利な規制緩和やルール変更が行われたりする恐れはないのでしょうか。 こうした懸念は、ごく普通のものだと思うのですが、政府は、あまり自覚がないようです。つい先日(3月27日)も、外務省、内閣府、経産省などが主催した「日米欧ビジネスセミナー――双方向の投資拡大が切り拓く日米欧経済関係の新時代」という会合で、政府の幹部は、グローバル企業関係者の前で「企業担当制」を宣伝し、日本に投資するように呼び掛けていました。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/oecd/page22_002792.html 近い将来、例えば、モンサント社と農水省の副大臣が直結してしまい、様々な規制緩和やルール変更が行われていく――などというあまり考えたくない事態も生じるのかもしれません… 企業担当制以外でも、もっと素朴にまずいのではないかと思われる事案でさえも、最近では、あまり問題にされないようですね。 例えば、よく知られているように(私もかつて問題にしましたが)、竹中平蔵氏は、外国人家政婦の受け入れ解禁に非常に熱心でした。。 (施 光恒「『外国人家政婦』は日本人の倫理観に合うのか?」『産経ニュース』2014年6月5日付) http://www.sankei.com/economy/news/140605/ecn1406050001-n1.html 竹中氏が委員として名を連ねる国家戦略特区諮問会議の強い働きかけもあり、結局、神奈川や大阪などでは、外国人家政婦の受け入れは実現してしまいました。今後、東京にも広がるようです。 そして、外国人家政婦を受け入れ、派遣するビジネスを行う業者の一つとして認定されたのは、竹中氏が取締役会長を務める人材派遣大手パソナです。 (「フィリピン人家事代行、4時間1万円 パソナが入社式」『日本経済新聞』2017年3月21日付) http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HA3_R20C17A3000000/ (「外国人家政婦、東京にも 都が家事代行6社認定」『産経ニュース』2017年2月23日付) http://www.sankei.com/politics/news/170223/plt1702230016-n1.html 企業と政治とのこうした密接な関係というのは、いいんでしょうかね…。本当に、公正だといえるのでしょうか。日本国民一般のことを考えた政策決定が行われているのでしょうか。 (´・ω・`) 新しい水戸黄門では、ぜひこうした癒着構造を取り上げ、痛烈に風刺してもらいたいものです。 そして、マスコミにしろ、われわれ国民一般にしろ、きちんと監視していかなかればなりませんね。 https://38news.jp/politics/10279 政商たちの栄華 2017-04-04
政商とは、特定の政治家や官僚と結びつき、自己利益最大化のために政治を動かし(大抵は規制緩和)、ビジネスを拡大しようとする連中を意味します。 本来、政府の目的は、国民を豊かにする経世済民です。経済の語源が、経世済民であることは言うまでもありません。
それに対し、企業の目的は利益です(それで、いいのです)。営利企業をすべるため、企業を管理することを「経営」と呼びます。
経済と、経営は異なる概念なのです。
現実の世界では、政府が国民全体の豊かさを追求するが故、特定の企業のビジネスチャンスを潰すケースというのは、ままあります。政府と企業では目的が異なる以上、両者の利害が衝突することになっても、これは仕方がない話です。
無論、政府は経世済民のためであれば、企業のビジネスを片端から潰していい、という話ではありません。逆に、特定企業の利益最大化のために、経世済民が無視されるのも問題です。
政府と企業という、目的が違う存在が綱引きすることで、政治は動いていきます。もっとも、民主主義国の場合は、国民の票で選ばれた政治家が政治をコントロールするため、本来であれば「経世済民」的な政策が推進されるはずなのです。
何しろ、「あちら側」と「こちら側」では人数が違います。面倒なので「あちら側」を政商側と呼称しますが、政商側と「国民」では、人数比が1対100くらいの差はあるでしょう。まともに「情報」が国民に伝わってしまうと、政商側に勝ち目はありません。
だからこそ、政商側はメディアを使い、情報をコントロールし、政府の諮問会議に「民間議員」と称して乗り込み、さらには「公務員叩き」が典型ですが、国民の嫉妬心、怨恨、妬みを煽る、ルサンチマン・プロパガンダを展開。国民の支持を得た上で、自分たちのビジネスを拡大しようとします。
具体的には、行政の窓口を「派遣社員」でも可能とする規制緩和を実現し、パソナに代表される派遣会社が「行政という市場」に新規参入。利益を稼いでいくわけです。派遣ビジネスは、人材紹介とは異なり、「永遠に抜き続けることが可能」という点で、実に美味しいビジネスなのでございます。
あるいは、 「日本の農業は高齢化している。若者が農業に参入しないため、このままでは日本の農業は消滅する」 といった恐怖プロパガンダを展開し、人手不足の現場に「外国人」を導入。当然ながら、パソナに代表される派遣会社が外国人を派遣し、これまた延々と手数料収入を稼ぎ続ける。
さらには、「一億総活躍」といった空虚なスローガンを政治家が叫び、女性を労働へと駆り立てる(別に、女性が働くことに反対しているわけではありません)。配偶者控除もなくし、専業主婦がまるで「悪いこと」であるかのごとき、社会的な空気を醸成する。(ちなみに、三橋は「女性が働けない社会は腐っているが、女性が働かざるを得ない社会はさらに腐っている」という価値観の持ち主です)
専業主婦までもが職場に駆り立てられると、当然ながら「家事」「育児」が困難になっていきます。 というわけで、外国人メイドという「新規事業」の立ち上げです。
ヒャッハーッ!!! 『外国人の家事代行 最前線ルポ なし崩し的拡大に懸念 https://mainichi.jp/articles/20170403/k00/00m/040/022000c
コンビニ、居酒屋、町工場……。今やありとあらゆる場所で働く外国人が、とうとう家庭にも入り始めた。国家戦略特区では外国人による家事代行が解禁され、第1陣としてフィリピン人女性25人が3月に来日した。最前線を取材すると、政府が成長戦略の柱に掲げる「女性活躍」を外国人女性が下支えする構図が浮かんだ。 ◆国家戦略特区で東京、神奈川、大阪で解禁 「わくわく、ドキドキし、とってもうれしく思っています」。東京・大手町の人材派遣パソナ本社で3月21日、南部靖之パソナグループ代表が新入社員25人を前に興奮気味に切り出した。「40年前、女性の社会進出の場を作ろうと起業した。みなさんが私の夢を実現させてくれます」 入社式に臨んだ25人は、各自であつらえた白いシャツと黒いスーツの上下を着ている。昨年、東京都と神奈川県、大阪市で外国人家事代行サービスが解禁され、パソナのほか5社が特区内で許可を受けて事業を担う。 (後略)』 さて、パソナの取締役会長は、ご存知の通り竹中平蔵氏です。 http://www.pasonagroup.co.jp/recruit/message/#takenaka
この竹中氏が未来投資会議の民間人(民間議員ではありません)であり、国家戦略特区構想のキーマンであることは、皆様もご承知の通り。
以前(2014年5月)、テレビ愛知の「激論コロシアム」で、パソナの取締役会長である竹中氏が、政府の諮問会議で影響力を発揮しているのは問題であることを、ご本人に指摘して差し上げたところ、 「無礼だ!」 と、キレられてしまったわけですが、その後も着々と政商ビジネスは推進され、ついに外国人メイドという新規ビジネスがパソナによって始められることになったわけです。
「いや、日本で外国人メイドとか、受け入られるはずがないだろ」
という意見は多いでしょうし、わたくしも賛同する部分がありますが、そういう問題ではないのです。そもそも、外国人メイドなどという一種の「奴隷文化」を日本が受け入れる必要はありません。それにも関わらず、安倍政権が政商たちの思うがままに、政治を動かしているという現実自体が問題なのです。 現在の日本は、まさに「政商たちの栄華」としか呼びようがない時代なのです。 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12262421534.html
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